虚位以待
きょいいたい
席を空けて必要とする人物を待つことを「位を虚けもって待つ」という。待たれる側からすれば、期待に応えようとする心境が動くいい成語である。
古くは「虚左以待」として使われたのは、車の席が左が上座とされたことからで、異動が喬遷(出世)によるならば喜びもひとしおといった場面である。
いまでもよく企業内ではもちろん知名企業が就職募集をしたり、市人事部が高校卒業生に奉職を呼びかけたりする時にいわれる。百社を超える企業が参加して数千人規模の就職面接会を催すともなれば壮観な「虚位以待」の人材市場が展開されることになる。
市による専門職の幹部や銀行による博士課程の学生の応募を求める場合などが心持よく響くのは、いずれの場合も席に着く相手に対する特別な敬意が示されているからで、オリンピックの種目別代表の座が決定者を待つ間でも同様である。みんなに歓迎されてそんな座につく経験をしてみたいものである。
『欧陽文忠公集「奏議集」』