冰心玉壺
ひょうしんぎょくこ
終生変わることのない友情の証として、氷のような澄明な心を玉製の壷に入れておくことを「冰心玉壺」という。唐の詩人王昌齢が長江沿いのいまの鎮江から都の洛陽へゆく辛漸に、「一片の冰心玉壺に在り」の詩句に託して、都の友人に伝えたことから。「一片冰心」あるいは「冰壺」ともいう。ただし現代の「冰壺」は冬季スポーツで人気のカーリングのこと。
友を思う「冰心」は今も昔も変わりないが、現代の「玉壺」はどうだろう。パソコン(個人電脳)のフォルダ(文件挟)であろうか。フォルダに澄明な心で付き合える友人の名前と送ったE―メール(電子郵件)が保存してあり、さらに一片また一片と増えていくようすに例えられるだろう。
最近はスマートフォン(知能手機)の広告にも「一片冰心在玉壺」をみる。モバイル(移動)玉壺ということになる。忘れたり落としたりしては「良師益友」に申しわけがない。やはり「玉壺」は胸中に収めておいたほうがいいようだ。
王昌齢「芙蓉楼送辛漸詩」より