四字熟語-賢妻良母

賢妻良母
けんさいりょうぼ

日本では「良妻賢母」といい、中国では「賢妻良母」という。四字の語順の違いに、近代啓蒙期の女性観や女性の果たした役割の違いがこめられている。

日本の場合は、明治維新のあと西洋留学から帰った啓蒙家が女性教育の指針とした。内助に努めて家を守る「良妻」となり、子女を薫育して「賢母」となるという目標が定着した。初代文部大臣森有礼は「良妻賢母教育」こそ国是とすべきといっている。富国強兵策の陰で大戦時の銃後を担い、戦後の混乱期を支えた。

中国の場合は、日本に留学した康有為や梁啓超が理念に賛同して「賢母良妻」教育として移入したが定着しなかった。男女がともに家を出て働き、ともに子育てをし、平等の社会的役割を果たした中国では、自立意識を持つ「賢妻」であり優しい「良母」であることが伝統的で新しい女性像として志向された。

日本は妻が良で母が賢、中国は妻が賢で母が良というところに「賢良な妻と母」のありようの違いをみる。

馮玉祥『我的生活』など