多重標準の時代

「多重標準」というと、
デジタル化した情報機器を
まず思い起こすだろう。
機能を個別に分担しながら
発展してきた家電・情報機器が、
ちかごろは「多重標準搭載」として
機能を集約する方向にむかっている。
われわれの暮らし方もまた、
「多重標準搭載」つまり「多重標準の人生」を
受容することができてはじめて、
うまく暮らすことができるのではないか。
ひとつのテーマに多重の対応を準備する
という意味あいにおいて、
暮らしの場での「多重標準」のいくつかを提示してみよう。
「少子・若年化」社会と「高齢・成熟化」社会
「陽暦国際化」と「陰暦(農暦)地域化」
「常温型(エアコン)住宅」と「四季型(通風)住宅」
「職域ミドル化」(リストラ)と「職域シニア化」
「途上国マスプロ廉価品」と「国産手作り高級品」
「都市集中化」と「田園分散化」
「国家」同盟と「姉妹都市・友好都市」提携
「国語教育」充実と「バイリンガル(トリリンガル)」
「戦争」と「平和」・・・
この先のことは、 『多重標準の時代』(制作中)をみてほしい。

総人口が減少に

個人が実感できることではないが、
わが国の総人口が減少にむかうところにきているという。
統計には幅があるのであろうが、
1億2774万人あたりがピーク。
人口減少へむかうぶん高年者がもつ潜在力を活かすことで、
国民の総活力を維持することになるだろう。
そこで次の「高年者五歳階級」表をみてほしい。
・・・・・・
50~54歳 844・5万人 昭和27(1952)~昭和31(1956)
55~59歳1078・6万人 昭和22(1947)~昭和26(1951)
60~64歳 806・4万人 昭和17(1942)~昭和21(1946)
65~69歳 752・0万人 昭和12(1937)~昭和16(1941)
70~74歳 675・6万人 昭和 7(1932)~昭和11(1936)
75~79歳 535・4万人 昭和 2(1927)~昭和 6(1931)
80~84歳 360・3万人 大正11(1921)~大正15昭和元(1926)
85歳~   305・0万人 大正10(1921)~
・・・・・・
昭和生まれの50歳以上だけで4500万人を超えている。
知識も経験も豊かなこれだけの高年者層が、本来あるべき存在感を
示していないことに問題がある。
文化的にも経済的にも新たな社会構造の創出が課題で、
それを「昭和丈人層」がなしとげるにちがいないというのが、
ここでのゆるぎない洞察と確信なのである。

高年者用キャリッジ

高年者の運転ミスによる
交通事故への非難が起きているが、
高年者から車を奪うのではなく、
高年者むけの「安全な車」の導入と
高年者を保護する法規やマナーが
求められているのである。
大都市では街中の道路に
自動車道、自転車道、歩行者道(舗道)
といった3つの分離帯ができて、
歩行者や運転者にも使い分けが明確になり、
移動のためのまちづくり(基盤整備)がすすんでいる。
日常生活の足として自転車とともに自転車道を共用するのが、
高年者用キャリッジである 「高年者用電動車」 である。
自転車と違って止まっても倒れないし、
スピードも人が走る程度に制限され事故も起こさない。
値段がほどよく設定できて、
地域カーナビや地域商店情報機器が搭載されれば
「高年化時代」の乗り物として定着するだろう。
自動車、自転車、高年者用電動車、
わが家三代の主要自家用車である。
将来の有力輸出商品になるだろう。

高年文化圏

[実現目標2020]
のひとつである
「高年文化圏」というのは、
「人間五十年」を過ごして、それぞれに
わが道での事績を積んできた高年者が、
異なった成果をえた人びとと出会い、
人生に達意の高年者でなければ
味わえないレベルの理解を共有する場。
少し排除的にいえば、「利」を優先させずに
「文を以って会す」ような場。
青少年や中年の存在を気にせずに、高年者同士が
「文化を語って文化を生じる」ような場。
「学友」と「同僚」と「親族」の3点セットだけでは
高年期の人生を充足して送るには心もとない。
心躍る人生をめざして、「地域」や「関心のある分野」での
いくつかを加えた5つ~7つのわが「高年期文化圏」。
そこでの活動が、人生に厚みと多様性のある成果を
刻んでいくことになる。
お互いに存在を意識し合いながらも、
それぞれに自立した地域や分野別の「高年期文化圏」が多種多彩に、
大小の水玉模様のようにどこまでも広がり重なるとき、
豊かな 「日本高年文化圏」 が
総体として成り立つことになる。

四季型(通風)住宅

実現目標2020
+世紀の夢2100
である「わが家」について。
内向きで閉鎖的な
「常温型(エアコン)住宅」から、
外向きに開放的に「季節感」を取り込んだ
「四季型(通風)住宅」 が主体になる。
地域の高年層の人びとが工夫をこらして
庭や垣根やアプロ-チを外向的にしつらえて、
街空間の形成にも参加する
エアコン+通風の新和風住宅である。
家は可能であれば世代それぞれの
特徴をとりこんだプライバシー空間をもつ
「三世代同等住宅」を指向する。
そういう「わが家」が増えることによって、
三世代がそれぞれに内でも外でも暮らしやすい
家、家並み、街並みが姿を現わすことになる。
季節感をシャットアウトし、
地方性を見失った家並みに代わって、
新幹線の車窓から「おらが地方の四季」を謳歌する
地域特有の街並みの展開が楽しめるまでには、
世紀のプロジェクトとなるだろう。

[和風街着]の復活

全国各地に展開した
前世紀の街空間は、
専門店が並ぶ商店街があって、
その中心に「銀座通り」があって、
地域住民に流行の新商品を提供した。
とくに若い女性たちの洋風ファッションは
各地の「銀座通り」を華やかな舞台にした。
さて、新たな世紀の街着はどうなるのだろう。
愉快な情景として想定されるのは、
地域の素材と意匠をいかした
四季折り折りの街着の復活と新製品。
日常着として楽しめる「和装街着」である。
街を風靡してきた女性ファッションに重ねて、
新たな世紀での「和装街着」を演出するのは、
新たな人生を模索する高年期の男たちだ。
着心地のよい 「和装男性街着」 が各地に定着し、
季節ごとに競われて話題になる。
隣家のジージが「春の街着ベスト・ドレッサー」なんて
あっていい情景である。
とくに洋風では過ごしずらい夏季シーズンには、
新たに個性的な地域衣装をつくり出し、
地域の街並みに似合う
ローカル・ファッションを楽しむ。
街着は和風洋風(欧風)折半ほどほどがいい。

「男子必厨」と「長寿料理」

日々の食事は
けっこういける
コンビニ食品に頼って、
誰かが作ったみんなのための<
与えられた味覚に慣らされてきた。
高年期の暮らしともなると、
似つかわしくもないし、
それで終わってはなるまい。
時節とともに店先に現れる
新鮮な旬の食材を求めて調理した
自作料理による自家味覚の創出をめざす。
「男子必厨」丈人 として
みずから包丁をとって調理に立ち、
素材を吟味して 「自作長寿料理」 を考案する。
寿命の男女差7歳は少しは縮まるだろう。
時には自宅に朋友を招いて、
できたての旬菜を前に並べて
「しずかに新酒の数盞を嘗め、酔って旧詩の一篇を吟じる」
(白楽天の詩から)のもいいではないか。
季節の恵みによるこれぞ贅をつくした
わが家の食のシーンである。
味覚は生涯にわたって成長する
右片あがりの能力である。

国産の高年者用品

「高年化社会」を支える
モノと場の創出に乗り出す
健丈な高年層の人びと。
「昭和丈人層」の姿が
なお見えにくいが、
しかし優れた生活感性を持っている
この国の高年層の人びとが、
このまま途上国製品(百均商品)に
埋もれてしまうことはないだろう。
すぐれたノウハウと技術を蓄積している
活力のある「日本中小企業」が、
社員・社友をふくめた成員全員の力を結集して、
「やや高くとも、丈夫で長持ち」する
良質な 「高年者向け(超人生)用品」 を製作する。
丈夫で長持ちする手作りの製品は、
50歳代から使うとしての一生ものだから、
およそ30~40年の利用が目安だ。
ものによっては遺産となるような耐久性をもつもの。
引退した社友も現役社員も、みんなで資産としての
製品と会社を愛着をもって支えあい、
社会と会社をともに成熟させていくことで、
高年者が暮らしやすい社会が形成されていく・・。

百季人生

福祉・介護
の方面では
75歳以上を後期高齢者
と呼んでいるが、
ここでは50歳以上を二分して、
高年前期(50~74歳)
高年中期(60~84歳)
高年後期(75~99歳)
とし、それぞれの25年に属する
春夏秋冬の100季を、
暮らしの基準にすえている。
ひとつひとつの季節を ていねいに迎えては送る人生。
さまざまに季節小物を配して、 わが 「百季人生」 の日また一日を、
繊細に個性的に過ごすのは、 いささかささやかともいえる目標であるが、
人生の味わいはおおいに深まるだろう。
密室でぶんぶんクーラーを回して過ごす 無季節無機質な「常温」指向にかわって
「地域の四季」を家庭内にふんだんに取り込むこと。
忘れ去られていた床の間を折り折りの「四季花軸」が飾り、
しゃれたデザインの「四季カレンダー」が季節を伝える。
和洋折衷の住空間に、 豊饒な「わが百季人生」が刻まれる。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

高齢者のための国連五原則

二〇世紀末の
一九九九年は、
「国際高齢者年」だった。
その年の一〇月一日が 「国際高齢者の日」。
いま高年期を迎えている人びとのうち、
どれほどの人がみずからが参加する機会として
理解していただろうか。
国際活動は「国連中心」でといいながら
ここにも「分担金は多く実践は少なく」の姿がある。
国連は、21世紀に先進国から迎える「高齢化社会」への
熱い願いを込めて、
自立・・・・・(independence)
参加・・・・・(participation)
ケア・・・・・・・・・(care)
自己実現・・(self-fulfilment)
尊厳・・・・・・・・(dignity)
という「高齢者のための国連五原則」を
新世紀を前に採択して、(九一年)
毎年一〇月一日を「国際高齢者の日」と定めたのである。
「高年化」の成果を、この日に国際発信するのも、
高齢化先進国として期待されるわが国の 高年者の役割なのである。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範