四字熟語-濫竽充数

濫竽充数
らんうじゅうすう

成語の意味は、竽(竹製の管楽器)の合奏者の中にうまく吹けない者が混じっているというもの。
斉の宣王は竽の合奏を聞くのを好んだ。三百人の吹き手を集めて合奏させたという。そこで南郭先生が吹き手を集めて演奏したところ王は喜んで、国費で楽員を抱えた。南郭先生は吹き手ではないが吹奏者から慕われていただろう。問題は宣王が死んで湣王が立ち、個々の演奏を好んだことにある。そこで演奏者として実力のない南郭先生が去ったのはいうまでもない。
この成語はさまざまな意味合いでよく使われる。無能なのにいい地位にいる、実力以上の待遇や声価をえている、全員のレベルを乱している・・もちろん手ぬき品やニセのブランド品などモノにも言われる。
楽団がいい演奏をするには、全体の調整を図る指揮者やコンサートマスターが必要である。後者は演奏の名手だが、必要な指示を出していた南郭先生は指揮者に近い役割をしていたという解釈はあっていい。

『韓非子「内儲説上」』から

 

 

新編集『現代シニア用語事典「人生90年代」を生きることば』が完成公開

新編集『現代シニア用語事典「人生90年代」を生きることば』が完成公開。 212ページ 580KB
!!『現代シニア用語事典』丈風用 pdf
堀内正範著のペーパー版 『丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』 (武田ランダムハウスジャパン・2010年7月刊)を項目別に編集しなおし補足しました。
◎高齢者みんなが安心してくらせる社会をどうこしらえるか。
◎まずは家庭内の高齢化をどうするかに具体的な提案。
◎経済の活性化のための高齢者起業(国産化)へのアドバイス。
◎日本再生は「地域と四季」の再生であること。
◎新「高齢社会対策大綱」を活かす官民事業の展開。
◎どうすれば国際的に先行し、将来モデルとなる高齢社会にできるか。
「丈人」=「三世代多重型社会」を達成する「支える側」の高齢者。
「丈人力」=丈人層が保持する生活力(生命力)。大丈夫!の気慨。
「平和団塊」=平和時代の証としての「日本高齢社会」達成の中心になる戦後(一九四六~五〇年)生まれの一〇〇〇万人の若き高齢者層。

月刊「丈風」 2012年9~10月号

月刊「丈風」 2012年9~10月号 目次
!!「丈風」2012年9~10月号
!編集月旦1001
!!緊急提案(請願)1001
三世代年表・人口流行語流行歌
!高齢社会白書平成24年版・下
編集人 堀 亜起良(堀内正範)
日本丈人の会https://jojin.jp代表  朝日新聞社社友  高連協オピニオン会員
tel & fax  0475-42-5673   〒 299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
blog  らうんじ・茶王樹・南九十九里から https://jojin.jp

月刊「丈風」 2012年9月号

月刊「丈風」 2012年9月号   7日・白露 17日・敬老の日 22日・秋分
   !「丈風」2012年9月号pdf 目次  
 
○編集月旦  !編集月旦
◎緊急提案 持続的な経済成長のために「日本長寿社会」を!
!緊急提案(請願)0928
◎新情報 新しい「高齢社会対策大綱」が閣議決定される
!高齢社会対策大綱平成24年0907
○新「高齢社会対策大綱」発表ニュース0907
!高齢社会対策大綱ニュース0907
○「高齢社会対策大綱」見直しが明かす10年の渋滞 !大綱見直し
「高齢社会対策」担当大臣って誰? !「高齢社会対策」担当大臣a
新情報『高齢社会白書』(平成24年版)を読む(上)
 !高齢社会白書平成24年版
寄稿 高齢者が活躍する場を創造しよう 岡本憲之(JTTA)
 !高齢者が活躍する領域の創造
小論 「日本長寿社会」は三世代多重型 堀内正範
!小論 「日本長寿社会」は三世代多重型
◎新情報 特集「喜寿期」 ことば・賀寿期・人名録   !「喜寿期」について
◎居場所づくり(地域大学校):いなみ野学園2 カリキュラム  !「いなみ野学園」2カリキュラムa
◎現代シニア用語事典 平均余命(50歳~105歳) !平均余命a
○「人生90年時代」を生きることば https://jojin.jp/412
◎新情報 三世代(15歳~100歳)年表 人口・流行歌・流行語  !三世代人口流行語流行歌a
ご意見や資料・原稿の転送は mhori888@ybb.ne.jp  へどうぞ。
募集:○自選人生五句(春・夏・秋・冬・新年) ○わたしの座右の銘(150字)
○全国水玉模様の会・自己紹介(800字) ○高齢期人生と高齢社会(800字)
○関連著書 『丈人のススメ  日本型高齢社会 -「平和団塊」 が国難を救う-』
256ページ 1500円(税別) 2010・7・1発刊 武田ランダムハウスジャパン
丈人は「アクティブ・シニア」(支える側の高齢者)のこと。熟年期を元気ですごす人びと。
平和団塊は戦後生まれ(1946~1950年・1000万人)の人びと。新高齢者(65歳以上)の仲間。
編集人 堀 亜起良(堀内正範)
日本丈人の会https://jojin.jp代表  朝日新聞社社友  高連協オピニオン会員
tel & fax  0475-42-5673   〒 299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
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2012・9・17
 
 
 

新情報ー新しい「高齢社会対策大綱」が閣議決定される(9月7日)

新しい「高齢社会対策大綱」が閣議決定される
平成24年9月7日 閣議決定

堀内正範
朝日新聞社社友 高連協オピニオン会員 web「月刊丈風」編集人

昨年、平成23(2011)年10月から10年ぶりの改定作業にはいっていた「高齢社会対策大綱」が仕上がって、9月7日の「高齢社会対策会議」に報告され、閣議決定されました。内容は内閣府のホームページで公開されています。

大綱は史上初・国際的に先行する「日本高齢社会」をどうつくるかの中・長期的指針となるものであり、高齢者が安心して暮らすことができる将来の姿を示すものですから、3000万人の高齢者に広く熱く待たれていていいはずのものなのです。
それほど大部ではありませんが多岐にわたっており、細部の理解には時間を要しますが、瞥見したところでは、前半の「目的及び基本的考え方」で、有識者が検討した「報告書*下注」の趣意や他の意見(高連協1月12日の「提言」など)を取り込んで、後半の「分野別の基本的施策」では前回平成13(2001)年の「大綱」の手直しと新たな取り組みが示されています。

今回は何よりも「人生65年時代」の「支えられる高齢者」から「人生90年時代」の「支える高齢者」への高齢者意識の変革と「社会参加」による仕組みの変換を、多方面にわたって指摘し要請していることが画期的なところです。処々に学者・官僚主導の構想力をみることができます。同じ時期に、この高齢社会対策の「大綱」の見直しに関心を示さず、ありうべき「長寿社会」構想を論じることもなく、財源となる「消費税増税」論議に終始していた政治の側がいかに周回遅れであるかが際立つばかりです。

9月7日の「高齢社会対策会議」のあと閣議決定される前に、会議の長である野田総理は資料原稿を読み上げました。その中で「高齢者が地域社会で元気に活躍し、長年培ってきた知識や技能を次の世代に伝え、尊敬を得ていただく。加えて、高齢者の経済力をわが国のマーケットに積極的に取り込んでいく。こうした好循環を生み出すことが、日本経済を再生させる重要な鍵」と述べて、元気な高齢者の登場と活動に期待するとともに、経済再生の面からの対策実施を閣僚に指示しました。

注: 大綱本文に、意見を添えた部分をイタリックで示しています。その上で、
支えられる高齢者 2世代+α型社会 「人生65年時代」 「高齢社会」形成期(20世紀後半)
支える高齢者   3世代多重型社会 「人生90年時代」  「本格的な高齢社会」形成期(21世紀前半)
の立場からの意見を太字で添えています。

「報告書」 「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」(高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会 清家篤座長 平成24年3月)

高 齢 社 会 対 策 大 綱
平成24年9月7日 閣議決定

目次

1 大綱策定の目的  1
2 基本的考え方  2
(1)「高齢者」の捉え方の意識改革  2
(2)老後の安心を確保するための社会保障制度の確立  3
(3)高齢者の意欲と能力の活用   3
(4)地域力の強化と安定的な地域社会の実現  4
(5)安全・安心な生活環境の実現  4
(6)若年期からの「人生90 年時代」への備えと世代循環の実現  5

第2 分野別の基本的施策  6

1 就業・年金等分野に係る基本的施策   6
(1)全員参加型社会の実現のための高齢者の雇用・就業対策の推進  6
ア 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組  6
イ 多様な形態による雇用・就業機会の確保   7
ウ 高齢者等の再就職の援助・促進  7
エ 起業の支援  8
オ 知識、経験を活用した65 歳までの雇用の確保  8
(2)勤労者の生涯を通じた能力の発揮   8
ア 勤労者の職業生活の全期間を通じた能力の開発   8
イ ゆとりある職業生活の実現等   9
ウ 職業生活と家庭生活との両立支援対策の推進    9
エ 多様な勤務形態の環境整備  9
(3)公的年金制度の安定的運営  9
ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立  9
イ 低年金・無年金問題への対応  10
ウ 働き方やライフコースの選択に中立的な年金制度の構築  10
エ 年金記録問題への対応・業務運営の効率化  11
(4)自助努力による高齢期の所得確保への支援  11
ア 企業年金制度等の整備  11
イ 退職金制度の改善  11
ウ 高齢期に備える資産形成等の促進  11
2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策  13
(1)健康づくりの総合的推進  13
ア 生涯にわたる健康づくりの推進  13
イ 健康づくりの施設の整備等  14
ウ 介護予防の推進  15
(2)介護保険制度の着実な実施  15
(3)介護サービスの充実15
ア 必要な介護サービスの確保  15
イ 介護サービスの質の向上  16
ウ 認知症高齢者支援施策の推進  16
(4)高齢者医療制度の改革  .16
ア 高齢者医療制度の見直し  16
イ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供  17
(5)住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進  17
ア 地域の支え合いによる生活支援の推進  17
イ 地域福祉計画の策定の支援  17
3 社会参加・学習等分野に係る基本的施策  18
(1)社会参加活動の促進  18
ア 高齢者の社会参加活動の促進  18
イ 「新しい公共」の担い手の活動環境の整備  19
(2)学習活動の促進  19
ア 学習機会の体系的な提供と基盤の整備  19
イ 学校における多様な学習機会の提供  20
ウ 社会における多様な学習機会の提供  20
エ 勤労者の学習活動の支援  21
4 生活環境等分野に係る基本的施策  22
(1)豊かで安定した住生活の確保  22
ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進  22
イ 循環型の住宅市場の実現  23
ウ 高齢者の居住の安定確保  23
(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進  23
ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進  23
イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備  24
ウ 建築物・公共施設等の改善  24
(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護  25
ア 交通安全の確保  25
イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護  25
ウ 防災施策の推進  25
(4)快適で活力に満ちた生活環境の形成  26
ア 快適な都市環境の形成  26
イ 活力ある農山漁村の再生  .26
5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策  .27
(1)高齢者向け市場の開拓と活性化  .27
ア 医療・介護・健康関連産業の強化  27
イ 不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化  28
ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現  28
(2)超高齢社会に対応するための調査研究等の推進と基盤整備  28
ア 医療イノベーションの推進  28
イ 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等  29
ウ 高齢者の自立・支援のための医療・リハビリ・介護関連機器等に関する研究開発  29
エ 情報通信の活用等に関する研究開発  29
オ 高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究  29
6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策  30
(1)全員参加型社会の推進  30
ア 若年者雇用対策の推進  30
イ 雇用・就業における女性の能力推進  30
ウ 非正規雇用労働者対策の推進  31
エ 子ども・子育て支援施策の総合的推進  31

第3 推進体制等  32
1 推進体制  32
2 推進に当たっての留意事項  32
3 大綱の見直し  32
(別表)高齢社会対策大綱数値目標  34

高 齢 社 会 対 策 大 綱
平成24年9月7日 閣議決定

p1(大綱の本文ページ。以下同)

第1 目的及び基本的考え方
1 大綱策定の目的

我が国は、戦後の経済成長による国民の生活水準の向上や、医療体制の整備や医療技術の進歩、健康増進等により、平均寿命を延伸させ、長寿国のフロントランナーとなった。このことは、我が国の経済社会が成功した証であると同時に、我が国の誇りであり、次世代にも引き継ぐべき財産といえる。
しかしながら、人口縮減に伴い、世界に前例のない速さで高齢化が進み、世界最高水準の高齢化率となり、世界のどの国もこれまで経験したことのない超高齢社会を迎えている。

・・・・・・・・・・・意見

前文。平和な国で、みんなが高齢期を安心して暮らして、後人に次代を託して“尊厳”をもって終わる人生。だれもが個人としてまた社会として願う姿です。冒頭の語りかけは、戦後の経済社会活動が成功し、平均寿命の伸長(延伸)、世界最高レベルの長寿国のフロントランナーとなったことを誇りとし、次世代に引き継ぐべきものと述べています。

「平和」は守って得るものであり、「高齢社会」は作って得るものです。高齢者が増えても新たな活動をしなければ「高齢者社会」であっても「高齢社会」にはなりません。対策大綱は、このままでの推移による「国際的モデル国」の到来を留保しています。

長寿国のフロントランナー。「長寿国(社会)」は、平均寿命が際立って延伸する時期に、すべての世代がそれぞれの立場で参加して形成する社会。「高齢社会」は、高齢化率が際立って高まる時期に、増えつづける高齢者自身が高齢者としてつくる社会。高齢者にとって両者の関係が「長寿社会≧高齢社会」であることを意識化することが必要でしょう。
「超高齢社会」について。現状は“超”高齢社会ではなく“本格的な”高齢社会であること。高齢化率21%を超えた「高齢社会」を「超高齢社会」と呼びますが、「これまでに経験したことのない高齢社会」であって、事象が限界点に近づいた場合をいう超・・とは違います。高齢化率が23%を超えたいま、三世代が六人そろっている家族は限界点どころかあっていい将来の姿です。“超”は誤解をまねく用法です。

・・・・・・・・・・・

また、戦後生まれの人口規模の大きな世代が65 歳となり始めた今、「人生65年時代」を前提とした高齢者の捉え方についての意識改革をはじめ、働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境の在り方、高齢期に向けた備え等を「人生90 年時代」を前提とした仕組みに転換させる必要がある。

・・・・・・・・・・・意見

前世紀の「人生65年時代」から新世紀での「人生90年時代」への意識改革、仕組みの転換、その実現への高齢者の活動を提案しています。今回の見直しの基本にかかわる画期的な観点です。

・・・・・・・・・・・

そして、活躍している人や活躍したいと思っている人たちの誇りや尊厳を高め、意欲と能力のある高齢者には社会の支え手となってもらうと同時に、支えが必要となった時には、周囲の支えにより自立し、人間らしく生活できる尊厳のある超高齢社会を実現させていく必要がある。
さらに、少子高齢化に伴う人口縮減に対応するためには、人材が財産である我が国においては、今まで以上に高齢者のみならず、若年者、女性の就業の向上や職業能力開発の推進等により、国民一人ひとりの意欲と能力が最大限に発揮できるような全世代で支え合える社会を構築することが必要である。
このため、高齢社会対策基本法(以下「法」という。)第6 条の規定に基づき、政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針として、この大綱を定める。

p2

2 基本的考え方

高齢社会対策は、法第2 条に掲げる次のような社会が構築されることを基本理念として行う。
① 国民が生涯にわたって就業その他の多様な社会的活動に参加する機会が確保される公正で活力ある社会
② 国民が生涯にわたって社会を構成する重要な一員として尊重され、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会
③ 国民が生涯にわたって健やかで充実した生活を営むことができる豊かな社会
これらの社会の構築に向け、以下に掲げる6 つの基本的考え方に則り、高齢社会対策を進める。

(1) 「高齢者」の捉え方の意識改革

高齢者の健康や経済的な状況は多様であるにもかかわらず、一律に「支えられる」人であるという認識と実態との乖離をなくし、高齢者の意欲や能力を活かす上での阻害要因を排除するために、高齢者に対する国民の意識改革を図る必要がある。
また、1947 年から1949 年に生まれ、社会に対して多大な影響を与え得る世代であると考えられる団塊の世代が2012 年から65 歳となり、2012 年から2014 年に65 歳以上の者の人口が毎年100 万人ずつ増加するなど高齢者層の大きな比重を占めることになる。このため、これまでに作られてきた「高齢者」像に一層の変化が見込まれることから、意識改革の重要性は増している。このため、高齢者の意欲や能力を最大限活かすためにも、「支えが必要な人」という高齢者像の固定観念を変え、意欲と能力のある65 歳以上の者には支える側に回ってもらうよう、国民の意識改革を図るものとする。

・・・・・・・・・・・意見

先の大戦後の1947 年から1949 年生まれの「団塊の世代」が、2012 年から65 歳となり、2012 年から2014 年(2015年も)には毎年200 万人ずつが高齢者の側に移ります。高齢者のうち毎年100万人余が亡くなりますから増加するのは100万人ですが。高齢者層のうちの大きな比重を占める3年で700万人。戦後5年(1946年~1950年の「平和(団塊)世代」)1000万人増が記されてもよかったところです。

支える側に回ってもらう。「支える側の高齢者」(報告書p14本文17行目)あるいは「支える役割を担っている高齢者」(報告書p8本文うしろから5行目)とすべきではなかったか。「支える側に回ってもらう」という表現では握力が弱い。「支えが必要な人」に対して「支える側の高齢者」あるいは「支える高齢者」として意識してもらうことが必要です。報告書(p15)に見えた「現役シニア」はわかりやすいし、紹介してもよかったのではないか。

・・・・・・・・・・・

p3

(2) 老後の安心を確保するための社会保障制度の確立

社会保障制度の設計に当たっては、国民の自立を支え、安心して生活ができる社会基盤を整備するという社会保障の原点に立ち返り、その本源的機能の復元と強化を図るため、自助・共助・公助の最適バランスに留意し、自立を家族、国民相互の助け合いの仕組みを通じて支援することとする。
また、格差の拡大等に対応し、所得の再分配機能の強化や子ども・子育て支援の充実を通じて、全世代にわたる安心の確保を図るとともに、社会保障の機能の充実と給付の重点化、制度運営の効率化を同時に行い、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って負担の増大を抑制する。これらを通じ、国民一人ひとりの安心感を高め、持続可能な社会保障制度の構築を図るものとする。その際、年齢や性別に関係なく、全ての人が社会保障の支え手であると同時に、社会保障の受益者であることを実感できる制度を確立する。

(3) 高齢者の意欲と能力の活用

高齢期における個々の労働者の意欲・体力等には個人差があり、家庭の状況等も異なることから、雇用就業形態や労働時間等のニーズが多様化している。意欲と能力のある高齢者の、活躍したいという意欲を活かし、年齢にかかわりなく働くことができる社会を目指すために、多様なニーズに応じた柔軟な働き方が可能となる環境整備を図るものとする。
また、生きがいや自己実現を図ることができるようにするため、様々な生き方を可能とする新しい活躍の場の創出など社会参加の機会の確保を推進することで、高齢者の「居場所」と「出番」をつくる。
さらに、今後、高齢者の意欲と能力が最大限発揮されるためには、高齢者のニーズを踏まえたサービスや商品開発の促進により、高齢者の消費を活性化し、

p4

需要面から高齢化に対応した産業や雇用の拡大支援を図るものとする。

・・・・・・・・・・・意見

一般的記述ではなく、日本の高齢者層が置かれている事情に注意したい。今世紀にはいって際立っているアジア地域の経済発展(暮らしの近代化)は、先行してきた日本からの技術ノウハウ・資金・人材の進出(移動)によってもたらされたということ。それは日本の高齢者(熟練技術者)の立場からすれば、「列島総不況」(高齢技術者リストラ)に遭遇して職場を失うとともに、日本ブランドの途上国製「百均商品」(粗悪日用品)にさらされるという“二重の被害(渋滞)”を余儀なくされてきたといえます。が、アジア諸国のほどほどの“日本化”が進むとともに、「団塊の世代」の高齢者側への移入によって、わが国に多様なニーズと商品レベルをもとめる「シニア市場」が登場してきます。「モノ(機器・設備・施設)」やサービスなどの面で、高齢期の暮らしを豊かにする経済活動が活発化すること、高齢者は需要者であるとともに企画・生産者でもあること、「高齢社会」「シニア市場」の現役としての活動が本格化することになります。

・・・・・・・・・・・

(4) 地域力の強化と安定的な地域社会の実現

地域とのつながりが希薄化している中で、高齢者の社会的な孤立を防止するためには、地域のコミュニティの再構築を図る必要がある。また、介護の面においても、高齢化が進展する中で核家族化等の世帯構造の変化に伴い、家庭内で介護者の負担が増加しないように介護を行う家族を支えるという点から、地域のつながりの構築を図るものとする。地域のコミュニティの再構築に当たっては、地縁を中心とした地域でのつながりや今後の超高齢社会において高齢者の活気ある新しいライフスタイルを創造するために、地縁や血縁にとらわれない新しい形のつながりも含め、地域の人々、友人、世代や性別を超えた人々との間の「顔の見える」助け合いにより行われる「互助」の再構築に向けた取組を推進するものとする。また、地域における高齢者やその家族の孤立化を防止するためにも、いわゆる社会的に支援を必要とする人々に対し、社会とのつながりを失わせないような取組を推進していくものとする。さらに、高齢者が安心して生活するためには、高齢者本人及びその家族にとって、必要な時に必要な医療や介護が受けられる環境が整備されているという安心感を醸成し、地域で尊厳を持って生きられるような、医療・介護の体制の構築を進める必要がある。

・・・・・・・・・・・意見

高齢者の社会的孤立を防止するために、地域コミュニティの”再構築”が必要であり、「地域力」を強化するに当たっては、「顔の見える」助け合いである「互助」が求められるという。「自助」と「共助」「公助」の間に、かつて隣近所にあった「互助」を呼び戻そうという提案は身近な実行項目としてあっていい。

・・・・・・・・・・・

(5) 安全・安心な生活環境の実現

高齢者にとって、日常の買い物、病院への通院等、地域での生活に支障が生じないような環境を整備する必要があり、それを可能とするバリアフリーなどを十分に進める。あわせて、子育て世代が住みやすく、高齢者が自立して健康、安全、快適に生活できるような、医療や介護、職場、住宅が近接した集約型の

p5

まちづくりを推進し、高齢者向け住宅の供給促進や、地域の公共交通システムの整備等に取り組む。また、高齢者を犯罪、消費者トラブル等から守り、高齢者の安全・安心を確保する社会の仕組みを構築するために、地域で孤立させないためのコミュニケーションの促進が重要である。このため、高齢者が容易に情報を入手できるように、高齢者にも利用しやすい情報システムを開発し、高齢者のコミュニケーションの場を設ける必要がある。

(6) 若年期からの「人生90 年時代」への備えと世代循環の実現

高齢期を健康でいきいきと過ごすためには、若い頃からの健康管理、健康づくりへの取組や生涯学習や自己啓発の取組が重要である。また、男性にとっても女性にとっても、仕事時間と育児や介護、自己啓発、地域活動等の生活時間の多様でバランスのとれた組み合わせの選択を可能にする、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進を図るものとする。また、高齢期における経済的自立という観点からは、就労期に実物資産や金融資産等のストックを適正に積み上げ、引退後はそれらの資産を活用して最後まで安心して生活できる経済設計を可能とする取組を図るものとする。あわせて、高齢者の築き上げた資産を次世代が適切に継承できるよう、社会に還流できる仕組みの構築を図るものとする。

なお、非正規雇用の労働者は正規雇用の労働者と比べ、教育訓練の機会が少ないため職業能力の形成が困難であり、かつ雇用が不安定で、相対的に低賃金であるなど、資産形成が困難であるため、非正規雇用の労働者に対しては、雇用の安定や処遇の改善に向けて、社会全体で取り組むことが重要である。

p6

第2 分野別の基本的施策

上記の高齢社会対策の推進の基本的考え方を踏まえ、就業・年金等分野、健康・介護・医療等分野、社会参加・学習等分野、生活環境等分野、高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進、全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築の6つの分野別の基本的施策に関する中期にわたる指針を次のとおり定め、これに沿って施策の展開を図るものとする。

1 就業・年金等分野に係る基本的施策

少子高齢化が急速に進展し労働力人口が減少する中、経済社会の活力を維持するため、意欲と能力のある高齢者がその知識と経験をいかして、65 歳以上であっても経済社会の重要な支え手、担い手として活躍することができるような社会を目指す。

・・・・・・・・・・・意見

ここはなお旧態の就業意識を脱していない。現状の経済社会の活力を維持するための「ささえ手」としてはもちろんですが、重要なのは「高齢社会」形成のために新たな「モノ・場・しくみ」を創出する「つくり手」であること。長年かけてつちかった知識と経験(技術)をいかして、新たな「モノや居場所」をつくり出すことができる社会を創出すること。

・・・・・・・・・・・

現在の年金制度に基づく公的年金の支給開始年齢の引上げ等を踏まえ、希望者全員がその意欲と能力に応じて65 歳まで働けるよう、定年の引上げや継続雇用制度の導入等による安定的な雇用の確保を図ると同時に、年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備を図る。

・・・・・・・・・・・意見

65歳まで働いて年金支給年齢につなぐ「定年延長」は、企業の福祉負担であって企業を強める収益増対策にはならないでしょう。定年の引き上げや雇用延長にあたっては、新たな高齢者コミュニティで必要と想定されるわが社製品を企画し、製作し、販売することによる起業が同時にはかられなければ成功しない。就業延長は「支える高齢者」による企業再リストラなのです。

・・・・・・・・・・・

勤労者が、職業生活と家庭や地域での生活とを両立させつつ、職業生活の全期間を通じて能力を有効に発揮することができるよう、職業能力の開発、労働時間の短縮、育児・介護休業制度の普及などの施策を推進する。

・・・・・・・・・・・意見

上記の観点からすれば、能力の発揮のための「労働時間の短縮」は、ここでは多重の意味をもつことになります。

・・・・・・・・・・・

職業生活からの引退後の所得については、国民の社会的連帯を基盤とする公的年金を中心とし、これに職域や個人の自助努力による企業年金、退職金、個人年金等の個人資産を適切に組み合わせて、その確保を図る。

(1) 全員参加型社会の実現のための高齢者の雇用・就業対策の推進

ア 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組
年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広

p7

く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。併せて、労働者自身による中高年期からの高齢期を見据えた職業能力開発等、高齢者の多様な就業ニーズに対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を進める。
また、労働者の募集及び採用に関しての年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力を得つつ、公共職業安定所が主体となって年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう引き続き事業主に対する啓発・指導を行う。

・・・・・・・・・・・意見

すべての業種でとはいかないが、労働者の就業ニーズには就業の成果として収益性のある「高齢社会」対応の企画・提案を必要とする。そのための期間と支援は事業主側の裁量に属する。労働者側になすべき仕事が用意されていれば、年齢制限は意味をなさない。

・・・・・・・・・・・

イ 多様な形態による雇用・就業機会の確保

高齢期は、個々の労働者の健康・意欲・体力等に個人差があり、雇用就業形態や労働時間等についてのニーズが多様化することから、多様な雇用・就業ニーズに応じた環境整備を行うことにより雇用・就業機会の確保を図る。
特に、退職後に、臨時的・短期的又は軽易な就業等を希望する高齢者等に対して、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業を推進する。
その他、労働者が様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、必要な情報を提供するとともに、事業主による援助を促進する。

ウ 高齢者等の再就職の援助・促進

定年、解雇等により離職する高齢者等が可能な限り早期かつ円滑に再就職できるよう、事業主に対し、再就職援助措置による在職中からの再就職の援助及び職業能力開発等について指導・援助を行うとともに、離職予定者に対し、的確な職業相談及び職業紹介を行う。
離職した高齢者等については、失業期間中の生活の安定を図るため雇用保険を支給しつつ、その早期再就職が可能となるよう、効果的な職業相談

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及び職業紹介を行うほか、職業能力開発、求人開拓、雇用情報提供等を実施する。

エ 起業の支援

自らの職業経験を活用すること等により、高齢者が事業を創出し、継続的な就業機会の確保ができるよう、起業の意欲を有する高齢者に対して、起業に伴う各種手続等の相談や資金調達等の支援を行う。

・・・・・・・・・・・意見

3000万人の高齢者が参画する「三世代多重型社会」(これまでのピラミッド型からつりがね型社会へ)が必要とする「モノ・場・しくみ」の創出にかかわる事業の多くは、高齢熟練社員の起業・発案によります。同じ職場での継続した就業を必要としますが、その処遇(就業形態・資金調達ほか)は多様な形態になることが想定されます。

・・・・・・・・・・・

オ 知識、経験を活用した65 歳までの雇用の確保

事業主に対して定年の引上げ、継続雇用制度等の雇用確保措置の導入等について指導を行うとともに、現在の年金制度に基づく公的年金の支給開始年齢の引上げ等を踏まえ、無年金・無収入者が生じることのないよう雇用と年金を確実に接続させ、希望者全員がその意欲と能力に応じて65 歳まで働けるよう、安定的な雇用の確保を図る。
あわせて、職業能力の開発及び向上、賃金・人事処遇制度の見直し、その他諸条件の整備に係る相談・援助などを実施するとともに、高齢者の雇用に関する各種助成金制度や給付制度等の有効な活用を図る。
加齢に伴う心身機能の変化を考慮して、労働災害防止対策、働きやすい快適な職場づくり及び健康確保対策を推進する。

(2) 勤労者の生涯を通じた能力の発揮

ア 勤労者の職業生活の全期間を通じた能力の開発

職業生涯の長期化や働き方の多様化等が進む中、勤労者が職業生活の全期間を通じてその能力を発揮できるようにするために、勤労者の段階的・体系的な職業能力の開発・向上を促進し、ひいては人材の育成・確保や労働生産性の向上につなげる。
このため、職業訓練の実施や能力本位の労働市場の形成を支援するのみならず、個々人にあった職業生涯を通じたキャリア形成支援を推進する。

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イ ゆとりある職業生活の実現等

労働時間等に関する事項について、高齢者を含めたすべての労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善し、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現を図る。
具体的には、年次有給休暇の取得促進、所定外労働時間の短縮に引き続き重点を置いて、労使の自主的な取組を積極的に促進する。
さらに、子の養育や家族の介護を行う労働者、自発的な職業能力開発を図る労働者、ボランティア活動や地域活動等を行う労働者など、特に配慮が必要な労働者に対する特別な休暇の普及等について労使の取組を推進する。

・・・・・・・・・・・意見

「仕事と生活の調和」(ワーク・ライフ・バランス)は、労働者側(生活)から事業主(仕事)への要求として表現されてきました。子どもの養育、親の介護、所定外労働時間の短縮・・。高齢社会・高齢期の「仕事と生活の調和」は、長年かけてつちかった知識・技術を保持している高齢者(社友・社員)から、それを利用して「高齢社会」に貢献しようとする仕事(ワーク)として提案されます。高齢社会・高齢期の暮らし(ライフ)に対する提案を実現する仕事(ワーク)による「仕事と生活の調和」は、「自己実現」にかかわって表現されることになります。

・・・・・・・・・・・

ウ 職業生活と家庭生活との両立支援対策の推進

育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境づくり、育児や介護をしながら働き続けやすい環境の整備などを進め、仕事と育児・介護とを両立することができる雇用・就業環境の整備を図る。

・・・・・・・・・・・意見

これまであまり議論されていませんが、高齢社会での家庭生活の形態は、親・子・孫の三世代多重(同居・近居)型を標準として考慮されることになります。したがって仕事も同一業種(同一製品)の三世代対応となり、ユニバーサルデザインとは逆に、三種の特徴を活かした業務(製品)をコーディネートすることとなります。

・・・・・・・・・・・

エ 多様な勤務形態の環境整備

パートタイム労働や派遣労働など多様な働き方を選択できる環境を整備する。また、様々な働き方を希望する高齢者の就業機会の創出等に資する、情報通信技術を活用した場所と時間にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークの一層の普及拡大を図る。

(3)公的年金制度の安定的運営

ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

公的年金制度は、老後の生活を支える柱であり、長期にわたり、多くの国民の生活に影響を与えるものである。制度安定化のため、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、基礎年金国庫負担2分の1を恒久化した。

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また、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24 年2 月17 日閣議決定)では、「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる一つの公的年金制度にすべての人が加入する新しい年金制度の創設について、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む旨等が盛り込まれた。
さらに、社会保障制度改革推進法では、「今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得る」とされたところであり、政府としては、同法の規定に則し、高齢化が急速に進行する中で、年金制度が高齢期の生活の基本部分を確実に支えるという機能を将来にわたって担っていくことができるよう、国民年金制度の今後のあり方、公的年金制度における最低保障機能のあり方などの課題について、様々な意見をもとに幅広く議論し、国民的な合意を得て必要な改革を行い、持続可能で安心できる制度の確立を図る。

イ 低年金・無年金問題への対応

わが国の人口構成や産業構造が大きく変化する中で、国民年金の加入者に非正規労働者が増えた結果、不安定な雇用者に対する将来の年金保障が十分なものになっていないという問題や、保険料の負担増により未納・未加入問題が加速し、将来の無年金・低年金が増加する懸念があるといった問題が発生している。このような問題に対応し、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」の附則で法制上の措置を講ずることとされている「低所得高齢者等への福祉的給付」など、低年金・無年金者問題に対応するための施策に取り組む。

ウ 働き方やライフコースの選択に中立的な年金制度の構築

人口構成や雇用形態、家族形態や地域のありかたが大きく変化する中で、出産・子育てを含めた多様な生き方や働き方に中立的な制度を目指し、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大や第3号被保険者制度の見直しな

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ど働き方やライフコースの選択に中立的な年金制度の構築に向け、検討を行う。

エ 年金記録問題への対応・業務運営の効率化

年金記録問題への対応を「国家プロジェクト」として位置づけ、平成25年度までにできる限りの取組を進めているところであり、今後年金記録問題を発生させないため、再発防止策に取り組む。
また、国民年金保険料の納付率の向上を図るため、未納者の属性に応じ、保険料免除の勧奨や強制徴収の強化など、収納対策を一層徹底するとともに、年金制度を運用するための業務処理体制やシステムを改善する。

(4) 自助努力による高齢期の所得確保への支援

ア 企業年金制度等の整備

企業年金制度等は公的年金の上乗せの年金制度として、公的年金を補完し、国民の多様なニーズに応じた自助努力による老後の所得確保を支援するものとして重要な役割を担っている。資産運用の手法が多様化・複雑化し、金融市場の変動幅も大きくなってきている状況を踏まえ、時代に即した厚生年金基金等の資産運用と財政運営の在り方を検討するとともに、企業年金制度等の普及促進を図る。

イ 退職金制度の改善

高齢化が進展する中、退職金制度が老後の所得保障として果たす役割は依然として大きいことにかんがみ、退職金の保全を図る等の観点から、社外積立型の制度の導入等を促進する。さらに、引き続き中小企業における退職金制度の普及促進を図る。

ウ 高齢期に備える資産形成等の促進

ゆとりある高齢期の生活に資するため、勤労者の在職中からの計画的な財産形成を引き続き促進する。

・・・・・・・・・・・意見

70歳や年齢制限なしの就業を主張しながら、一方で退職金や年金の形態は旧態のままというわけにはいかないでしょう。いま実際に退職後の見定めえない長い期間の定年後の余生を過ごしてできれば個人資産を残してという年金・退職金計画を、在職中からという発想は、活力ある社会の側から検討されなければならないでしょう。

・・・・・・・・・・・

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また、判断能力が不十分な高齢者の安全な財産管理の支援に資する成年後見制度の周知を図る。

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2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策

我が国において少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、生活習慣及び社会環境の改善を通じて、全ての国民が共に支え合いながら希望や生き甲斐を持ち、高齢期に至っても、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、長寿を全うできるよう、生涯にわたる健康づくりを総合的に推進する。

・・・・・・・・・・・意見

個人的な対応として。長寿を全うできる健康づくりの基本は、つねに年齢相応の体(健康)と志(知識)と行(技能)とを三位一体として心がけること。体志行を意識したバランスのいい生活は、高齢期に多病と痴呆と不能とにつきまとわれることのないように。パソコンの前に坐りつづけている同士のみなさんに、3時間単位の八方時刻(更、明け方、朝方、午前、午後、夕方、晩方、夜)ごとに少時の休憩をとることをおすすめします。

・・・・・・・・・・・

高齢者介護については、介護を国民皆で支え合う仕組みとして創設された介護保険制度の着実な実施を図る。また、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の確立を目指す。加えて今後急速に増加することが予想される認知症を有する人が地域において自立した生活を継続できるよう支援体制の整備を更に推進する。
また、今後も高齢化の進展等で医療費の増加が見込まれる中、引き続き安心して良質な医療を受けることができるよう、人口構造の変化に対応できる持続可能な医療保険制度を構築する。

・・・・・・・・・・・意見

わが国の高齢者の幸せであることは、これまで食、衛生、医療、介護、予防、住まいといった個人的・家庭的な場で手厚い「社会保障」に守られてきたこと。それを一体化し地域化したケアシステムとして「新しい公共」「ライフ・イノベーション」として推進することで、公的な支援サービスがいっそう拡大する。この基本的施策への「支える高齢者」層の積極支援が、成果を手厚くすることになるのは確かです。

・・・・・・・・・・・

(1) 健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

「健康日本21(第2 次)」を踏まえ、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣の改善に若年期から取り組むことにより、健康を増進し、疾病を予防する「一次予防」に重点を置いた対策を推進するとともに、合併症の発症や症状の進展等の「重症化予防」に重点を置いた対策を推進する。
また、個人による選択を基本とした、国民の主体的な健康づくりを支援するため、十分かつ的確な情報を提供する。また、性別、年齢等の差異を

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踏まえ、科学的根拠に基づいた目標を設定し、目標を達成するための活動の成果を適切に評価して、その後の健康づくりに反映させる。
さらに、多様化、高度化する住民ニーズに対応するため、地域に根ざした住民の生活に密着した社会関係資本(ソーシャルキャピタル)等の地域資源の活用が維持されるよう、その核となる人材の育成に努めるとともに、健康づくりに関連する関係機関、民間団体等が相互に連携して健康増進の取組を推進する体制を整備する。さらには、企業における健康の保持増進に係る措置など勤労者の健康管理等の実施を促進することはもとより、学校保健との連携などライフステージを通じた取組を推進する。
あわせて、生活習慣病の予防対策として、医療保険者による特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上など、各般の健診に関する取組を進めていく。
また、子どもから成人、高齢者に至るまで、ライフステージに応じた間断ない食育を推進し、「生涯食育社会」の構築を目指す。そのため、国は、一人ひとりの国民が自ら食育に関する取組が実践できるように、情報提供する等適切な施策を推進する。
その際には、家庭の態様の多様化、社会的あるいは経済的環境要因、高齢化等により、健全な食生活を実現することが困難な立場にある者にも十分配慮し、NPO などの新しい公共との連携や、協働等を含めた支援施策も講じつつ、食育を推進する。

イ 健康づくりの施設の整備等

生涯にわたる健康づくりに資するため、地域における健康づくりに関連した施設の整備等を推進するとともに、自然とのふれあいの中で健康づくりができるよう、必要な施設等の整備等を推進する。あわせて、健康づくりに関する活動に自発的に取り組む企業、民間団体等との連携や健康づくりの支援の役割を担う人材の確保及び育成等を図る。

・・・・・・・・・・・意見

地域の四季の特徴や特産物を活かした国民宿舎や民宿の整備、企業の保養施設の開放、地域の居場所同士の交流など、企業・民間団体の地域交流にかかわる人の連携は急務といえます。

・・・・・・・・・・・

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ウ 介護予防の推進

高齢者の自立支援と生活の質の向上のために、疾病予防、介護予防やリハビリテーションにさらに取り組むとともに、高齢者の地域活動への参加を促し、地域活動の担い手としての役割を果たすことができる地域社会の構築により介護予防の取組を推進する。

(2)介護保険制度の着実な実施

介護を国民皆で支え合うことにより要介護高齢者等の自立を支援する制度として創設された介護保険制度の着実な実施を図る。また、その実施状況を踏まえ、運用面において必要な改善を行うこと等により、制度の定着を図る。
また、介護保険の関連施策として、高齢者の生活支援等の施策の充実を図る。

(3)介護サービスの充実

ア 必要な介護サービスの確保

地方公共団体における介護保険事業計画等の状況を踏まえ、要介護高齢者の需要に応じた良質な介護サービス基盤の計画的な整備を進めるとともに、地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指す。
このため、訪問介護員、介護福祉士等の人材の養成確保を図るほか、24時間対応の定期巡回・随時対応サービス等の在宅サービスの充実や、認知症対応型共同生活介護事業所、特別養護老人ホーム、老人保健施設などの介護基盤やサービス付きの高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備な

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どを進める。
また、福祉用具・住宅改修の適切な普及・活用の促進を図る。あわせて、介護労働者の雇用管理の改善、公共職業安定所及び民間による労働力需給調整機能の向上などを図る。

イ 介護サービスの質の向上

高齢者介護サービスを担う介護支援専門員、訪問介護員、介護福祉士等の資質の向上を図るとともに、利用者が介護サービスを適切に選択し、良質なサービスを利用できるよう、情報通信等を活用した事業者の情報公開等を進める。

また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、特別養護老人ホームの個室ユニット化を進めるとともに、介護従事者等による高齢者虐待の防止に向けた取組を推進する。

ウ 認知症高齢者支援施策の推進

今後急増が見込まれる認知症高齢者に対する支援を図るため、標準的な認知症ケアパスの作成・普及、早期診断・早期対応を行う体制の整備、地域での生活を支える医療・介護サービスの構築を進めるとともに、地域での日常生活・家族の支援の強化を行う。また、医療・介護サービスを担う人材の育成を行う。こうした施策の推進により、認知症高齢者ができる限り住み慣れた地域のよい環境で生活できるような体制づくりを推進する。

・・・・・・・・・・・意見

予兆からはじまり重篤にいたる症状の経緯を見定めながらの高齢期。心臓停止のPPK(ピンピンコロリ)から、がんの転移による長期の闘病。さまざまありえますが、自分がどれと出会うかはだれにもわかりません。体の機能(心臓など)、知の機能(脳、認知症)、技の機能(肢体不全)のいずれであっても本人の暮らしへの影響、他者への負担の増加からは逃がれられません。住み慣れた地域での生活が最後まで確保されることは望ましく、大綱がさまざまな分野で住み慣れた地域での生活を指摘し要請していることは注目していいでしょう。

・・・・・・・・・・・

(4) 高齢者医療制度の改革

ア 高齢者医療制度の見直し

平成20 年度から75 歳以上の高齢者等を対象とする後期高齢者医療制度が施行されたが、よりよい制度を目指す観点から、平成22 年12 月、厚生労働大臣主宰の高齢者医療制度改革会議で制度の見直しについてとりまとめが行われ、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24 年2月17 日閣議決

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定)では、このとりまとめ等を踏まえ、関係者の理解を得た上で、後期高齢者医療制度廃止に向けた見直しを行う旨等が盛り込まれた。
社会保障制度改革推進法では、「今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得る」とされたところであり、政府としては、同法の規定に則し、高齢者医療制度の見直しを国民健康保険の広域化とともに進めていく。

イ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供

住み慣れた生活の場において、可能な限り安心して自分らしい生活を送ることができるよう、在宅医療を担う医療機関等の役割の充実・強化を図り、多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を推進する。

(5) 住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進

ア 地域の支え合いによる生活支援の推進

一人暮らしの高齢者等が住み慣れた地域において、社会から孤立することなく継続して安心した生活を営むことができるような体制整備を推進するため、民生委員、ボランティア、民間事業者等と行政との連携により、支援が必要な高齢者等の地域生活を支えるための地域づくりを進める各種施策を推進していく。

イ 地域福祉計画の策定の支援

地域住民が主体となって、住民相互の支え合いの仕組み作りを促進できるよう、福祉サービスの適切な利用の推進や福祉事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進、要援護者に係る情報の把握・共有・安否確認等の方法等を盛り込んだ地方公共団体による地域福祉計画の策定を推進していく。このため、先進的で優れた事例を収集して地方公共団体に情報提供を強化するとともに、当該計画を未策定の市町村に対しては、都道府県と連携しながら策定をより一層促していく。

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3 社会参加・学習等分野に係る基本的施策

高齢社会においては、価値観が多様化する中で、社会参加活動や学習活動を通じての心の豊かさや生きがいの充足の機会が求められるとともに、社会の変化に対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会が必要とされる。
このため、高齢者を含めた全ての人々が、生涯にわたって学習活動を行うことができるよう、学校や社会における多様な学習機会の提供を図るとともに、その成果の適切な評価の促進を図る。
また、高齢者が年齢や性別にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍したり、学習成果を活かしたりできるよう、ボランティア活動を始めとする高齢者の社会参加活動を促進するとともに、高齢者が自由時間を有効に活用し、充実して過ごせる条件の整備を図る。

・・・・・・・・・・・意見

前回の大綱は「学習・社会参加」でした。それを「社会参加・学習等分野」としたところに、地域変革への高齢人材への期待が示されています。自治体による「生涯学習」が個人の生きがい学習のニュアンスが強く固定化しているに対して、新しい知識や技術を習得してまちづくりや社会参加に活かす生涯学習が要請されていることに10年の変化をみることができます。とくに60歳以上を資格者とし、まちづくりの高齢者を養成する「地域高齢者大学校」などは、高年期に必要な知識や技術を得るとともに生涯にわたる活動の同好の士を得ることで、個人には生きがいを与え自治体には積極的参加者が見込めることから、さまざまな試みがなされています。

・・・・・・・・・・・

さらに、ボランティア組織やNPO 等における社会参加の機会は、自己実現への欲求及び地域社会への参加意欲を充足させるとともに、福祉に厚みを加えるなど地域社会に貢献し、世代間、世代内の人々の交流を深めて世代間交流や相互扶助の意識を醸成するものである。このため、高齢者を含めた市民やNPO等が主体となって公的サービスを提供する「新しい公共」を推進する。

(1) 社会参加活動の促進

ア 高齢者の社会参加活動の促進

活力ある地域社会の形成を図るとともに、高齢者が年齢や性別にとらわれることなく、他の世代とともに社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍したり、学習成果を活かしたりできるよう、高齢者の社会参加活動を促進する。
このため、情報通信技術等も活用して、高齢者の情報取得の支援を行うとともに、学校教育支援・子育て支援などの高齢者が活躍できる場の充実

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等を通じて、高齢者と若い世代との交流の機会を確保し、ボランティア活動を始めとする高齢者の自主的な社会参加活動を支援する。そのほか、高齢者の社会参加活動に関する広報・啓発、情報提供・相談体制の整備、指導者養成などを図る。

・・・・・・・・・・・意見

高齢者と若い世代との交流はさまざまに試みられているのですが、青少年・中年・高年の三世代による「三世代会議」といった形態の交流がさまざまな分野で展開されることが期待されます。それはそれぞれの暮らしの「モノと場」の形成を多重的におこなうとともに交流の利用にもかかわるからです。

・・・・・・・・・・・

また、高齢者等の能力を広く海外において活用するため、高齢者、退職者等の専門的知識・技術を海外技術協力等に活用した事業を推進する。さらに、高齢者の利用に配慮した余暇関連施設の整備、既存施設の有効活用、利用情報の提供、字幕放送等の充実などにより、高齢者がレクリエーション、観光、趣味、文化活動等で充実した時間を過ごせる条件を整備する。

イ 「新しい公共」の担い手の活動環境の整備

高齢者は経済的な側面だけではなく、生きがいや社会参加を重視していることも多いため、雇用にこだわらない社会参加の機会の確保を推進していく。このため、高齢者を含めた国民が積極的に「公」に参画する社会を再構築する「新しい公共」を推進する。「新しい公共」の担い手は、特定非営利活動法人、ボランティア団体等のほか、自治会など地域に根付く昔ながらの組織も含め、公共的な財・サービスを提供し、地域の人々に社会参加の機会を創出する様々な主体である。こうした担い手の活動環境を整備するため、寄附税制や改正特定非営利活動促進法の円滑な施行・周知等を促す。また、震災復興にも重要な役割を果たす「新しい公共」の担い手による自立的活動の広がりを後押しする。

・・・・・・・・・・・意見

「新しい公共」は、民主党政権になって以来の用語ですが、内容には幅があって多様に使われています。ここでは高齢者を含めた国民が積極的に「公」に参画する社会を「再構築」することを指しています。「高齢社会」の形成には、地域のこれまでのありように加えた新たな態様の「場としくみ」の形成が想定されるのですが、この大綱の制作者に共有されていないために不明確な記述になっています。

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(2)学習活動の促進

ア 学習機会の体系的な提供と基盤の整備

生涯学習社会の形成を目指し、多様な学習機会を体系的に提供するため、社会教育施設、高等教育機関等の関係機関及び民間団体等との連携を図り

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つつ、生涯学習を総合的に推進する体制を整備することとし、地域における連携を図るための会議の開催、総合的推進に必要な基本計画等の策定などを推進する。
また、多様な学習機会の提供に係る基盤の整備として、生涯学習に関する普及・啓発、情報提供・相談体制の充実、指導者の確保及び資質の向上を図るとともに、学習成果の適切な評価の促進を図る。

・・・・・・・・・・・意見

生涯学習あるいは高齢期学習の領域において、「新世紀10年の失政」は地域行政の欠落として典型的にみられます。この期間の国家的な政策課題は「平成の市町村合併」でした。財政事情の逼迫、地方分権、生活圏の広域化とともに「少子高齢化」が課題のひとつにあげられていましたが、合併協議会で「高齢化」対策の新たな試みについては論じられませんでした。「高齢化」の対象は「支えられる高齢者」であり、「支える高齢者」への視点がなかったからです。明治の大合併では「村立尋常小学校」が、昭和の大合併では「町立新制中学校」が新自治体の人材養成の施設として設立されました。が、平成の大合併では「市立高齢者大学校」は議論されませんでした。「人生65年」から「人生90年」へと25年を得た高齢者のための知識と技術を提供し、地域づくりの人材を養成する施設の形成は国の課題とならず、「高齢化」対応の施設の不在をもたらすことになったのです。「地域高齢者大学校」については本誌別項をご覧ください。

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イ 学校における多様な学習機会の提供

初等中等教育機関においては、地域等との連携を図りつつ、ボランティア活動など社会奉仕体験活動等による高齢者との交流等を通じて、介護・福祉などの高齢社会に関する課題や高齢者に対する理解を深める。あわせて、学校教育全体を通じて、生涯にわたって自ら学び、社会に参画するための基盤となる能力や態度を養う。
また、大学等の高等教育機関においては、高齢者を含めた社会人に対する多様な学び直しの機会の提供を図るため、社会人入試の実施、通信制大学・大学院の設置、公開講座、科目等履修生制度や履修証明制度の活用などに取り組むとともに、専修学校の実践的な職業訓練における単位制・通信制の制度を活用した取組の支援、放送大学の学習環境の整備・充実を図る。
さらに、地域住民を対象とする開放講座の開催、余裕教室を活用した社会教育の実施など学校の教育機能や施設の開放を促進する。

ウ 社会における多様な学習機会の提供

多様化・高度化する国民の学習ニーズに対応するため、民間事業者の健全な発展の促進を図るとともに、先進的な学習プログラムの開発の促進や公民館等の社会教育施設における多様な学習機会の提供、公民館等を中心とした地域におけるネットワーク形成の推進等により社会教育の充実を図る。そのほか、美術館等における文化活動の推進、スポーツの振興、自

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然とのふれあいなどにより、情報通信技術も活用しつつ、生涯にわたる多様な学習機会の提供を図る。

エ 勤労者の学習活動の支援

生涯学習社会を形成するためには、勤労者が学習活動に参加しやすい条件を整備することが必要であり、有給教育訓練休暇制度の普及促進などを図るとともに、教育訓練給付制度の活用などにより自発的に職業能力の開発・向上に取り組む勤労者個人を直接支援する施策を推進する。

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4 生活環境等分野に係る基本的施策

住宅は生活の基盤となるものであり、生涯を通じて豊かで安定した住生活の確保を図っていく必要がある。このため、将来にわたり活用される良質な住宅の供給を促進し、併せて、それらが適切に評価、循環利用される環境を整備することを通じ、高齢者が保有する住宅の資産価値を高め、高齢期の経済的自立に資するとともに、その資産の次世代への適切な継承を図る。さらに、高齢者の居住の安定確保に向け、重層的かつ柔軟な住宅セーフティネットの構築を目指す。
高齢者等全ての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進するとともに、子育て世代が住みやすく、高齢者が自立して健康、安全、快適に生活できるような、医療や介護、職場、住宅が近接した集約型のまちづくりを推進するものとし、高齢者向け住宅の供給促進や、地域の公共交通システムの整備等に取り組む。また、関係機関の効果的な連携の下に、地域住民の協力を得て、交通事故、犯罪、災害等から高齢者を守り、特に一人暮らしや障害を持つ高齢者が安全にかつ安心して生活できる環境の形成を図る。
さらに、快適な都市環境の形成のために水と緑の創出等を図るとともに、活力ある農山漁村の再生のため、高齢化の状況や社会的・経済的特性に配慮しつつ、生活環境の整備等を推進する。

(1) 豊かで安定した住生活の確保

ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進

高齢者等すべての人にとって安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築に向け、住宅の安全性、耐久性、快適性、エネルギーの使用の効

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率性その他の住宅の品質又は性能の維持及び向上により、良質な住宅ストックの形成を図る。また、若年期からの持家の計画的な取得への支援等を引き続き推進する。

イ 循環型の住宅市場の実現

良質な既存住宅の資産価値が適正に評価され、その流通が円滑に行われるとともに、国民の居住ニーズと住宅ストックのミスマッチが解消される循環型の住宅市場の実現を目指し、建物検査・保証、住宅履歴情報の普及促進等を行うことで、中古住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進める。
また、高齢者が有する比較的広い住宅を、子育て世帯等向けの賃貸住宅として活用するための住み替えを支援する。

ウ 高齢者の居住の安定確保

高齢者が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、サービス付きの高齢者向け住宅の供給等により、住宅のバリアフリー化や見守り支援等のハード・ソフト両面の取組を促進する。また、民間事業者等との協働により、公的賃貸住宅団地等の改修・建替えに併せた福祉施設等の設置を促進する。
さらに、高齢者が、その特性に応じて適切な住宅を確保できるよう、公的賃貸住宅の供給を促進するとともに、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体、宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者、居住支援を行う団体等から構成される居住支援協議会に対する支援を行い、民間賃貸住宅に関する情報の提供や必要な相談体制の整備等を図る。

・・・・・・・・・・・意見

「住宅」は、わが家三代(二代ではありません)の暮らしの知恵を伝承するたいせつな場であり、人生の成果を確認する場でもあります。子育てのあとの高齢期の孫育てにも配慮して、プライバシーを確保しつつ三世代同居・近居が可能な住宅が「日本標準住宅」として指向されていい時期を迎えているのです。「高齢社会」時代の本流である視点を無視した財産としての住宅価値が述べられることには、将来を展望する大綱の視点として違和感があります。

・・・・・・・・・・・

(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進

ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進

高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリア

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フリー環境の整備を推進するとともに、地方都市や大都市周辺部において、地域における包括的なケア、子育て支援、買い物、教育等の日常的な生活サービスが距離的・時間的に近接したエリアを形成(「医職住」の近接化)するとともに、都市機能の相互補完を促進することにより、サービスの水準の維持・向上を図り、持続可能な地域社会を再構築する。
また、超小型モビリティ等、先端技術等を活用し、高齢者や子育て世代等の住生活や移動を支援する機器等の開発導入を促進するとともに、新しい交通システムの普及に向けた取組を図る。

・・・・・・・・・・・意見

こんな例では最良とはいえませんが。100m競争をします。ヨーイドンでみんな精いっぱい走ってゴール。1着から*着の差がでます。そのとき1着の人に注目、平均着順の人に注目、そして最後尾の人に注目という視点の違いがありえます。社会資本はまずは1着の人のためへの投下からはじまります。ユニバーサルデザインあるいはバリアフリーによって、さらに多くの人にかかわる視点によって現状が修正されます。といって1着の人の営為を阻害することではないでしょう。高齢者用の設備・施設の多くは最後尾の人への視点で新たに多重的に設けられるべきものなのです。

・・・・・・・・・・・

イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備

駅等の旅客施設における段差解消等高齢者を含むすべての人の利用に配慮した施設・車両の整備の促進などにより公共交通機関のバリアフリー化を図る。
また、駅、官公庁施設、病院等を結ぶ道路等において、幅の広い歩道等の整備や歩道の段差・傾斜・勾配の改善、無電柱化等により歩行空間のユニバーサルデザインを推進する。
さらに、高齢者が安全にかつ安心して外出できる交通社会の形成を図る観点から、限られた道路空間を有効活用する再配分の推進等により安全で安心な歩行空間が確保された人優先の道路交通環境整備の強化を図るとともに、高齢者が道路を安全に横断でき、また、安心して自動車を運転し外出できるよう、バリアフリー対応型の信号機の整備、道路標識の高輝度化・大型化の推進等の道路交通環境の整備を進める。

ウ 建築物・公共施設等の改善

病院、劇場等の公共性の高い建築物のバリアフリー化の推進を図るとともに、窓口業務を持つ官庁施設等を高齢者はもとより、すべての人の利用に配慮した仕様とすることを推進する。

・・・・・・・・・・・意見

現状修正でのユニバーサルデザイン、バリアフリーについては上に記しましたが、新設される建築物や移動などの施設は最初からすべての人の利用に配慮した仕様とすべきでしょう。家庭内はもちろん、地域でも、企業内でも、青少年・女性・中年・高齢者が加わって合議した形態があってはじめて、社会の成員を考慮しコーディネイトした生活環境が形成されます。若者によし、女性によし、高齢者によし、そのうえみんなにもよいという世代同等多重型の「モノ・居場所・しくみ」の創出が推進されることになります。

・・・・・・・・・・・

p25

(3) 交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護

ア 交通安全の確保

高齢者の交通事故の防止を図るため、高齢者に配慮した交通安全施設等の整備や参加・体験・実践型の交通安全教育の推進、高齢ドライバーを対象とした、講習予備検査及び高齢者講習の実施、運転免許証を返納した者の支援のための取組の促進、高齢者交通安全教育指導員(シルバーリーダー)の養成、各種の普及啓発活動の推進等により、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者の交通事故の防止を図る。
また、歩行中及び自転車乗用中の交通事故死者に占める高齢者の割合が高いことを踏まえ、高齢者、歩行者、自転車事故の削減に向けて、歩行者、自転車事故が多発する交差点等での対策の重点化や、歩行者、自転車、自動車が適切に分離された空間の整備を図るとともに、高齢化に対応した車両等への対応を図る。

イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護

振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺等の高齢者が被害に遭いやすい犯罪、認知症等によるはいかいに伴う危険、人権侵害、悪質商法等から高齢者を保護するため、各種施策を推進する。
特に、要介護等の高齢者に対する家庭や施設における虐待等の人権侵害については、高齢者の人権に関する啓発、人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ、その予防及び被害の救済に努める。

ウ 防災施策の推進

災害については、高齢者など災害時要援護者が大きな被害を受けやすいことを踏まえ、その避難支援対策については、災害時要援護者名簿等の策定状況を把握しつつ、その取組を促進する等、防災施策の推進を図る。

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(4) 快適で活力に満ちた生活環境の形成

ア 快適な都市環境の形成

誰もが身近に自然にふれあえる快適な都市環境の形成を図るため、都市公園等の計画的な整備を行うとともに、高齢者の憩いと交流の場ともなる親しみやすい水辺空間の整備等を行う。
また、福祉・医療施設の市街地における適正な立地の計画的誘導、公園等との一体的整備を進めるとともに、施設周辺の基盤の整備を図るなど、福祉施策と連携したまちづくりを推進する。

イ 活力ある農山漁村の再生

活力ある農山漁村の再生を図るため、意欲ある多様な農林漁業者の育成・確保を推進することはもとより、高齢者が農林水産業等の生産活動、地域社会活動等で能力を十分に発揮できる条件を整備するとともに、高齢者が安心して快適に暮らせるよう、地域特性を踏まえた生活環境の整備を推進する。さらに、活力ある開かれた地域社会を形成する観点から、都市と農山漁村との間の共生と交流を促進する。

・・・・・・・・・・・意見

10年前には「再生」とは記されず、「活力ある農山村の形成」となっていました。環境の一歩後退が示唆されています。

・・・・・・・・・・・

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5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策

高齢者が健康で活躍しやすい環境づくりのために、高齢者に優しく、ニーズに合致した機器やサービスの開発を支援することで、高齢者向け市場を活性化させ、高齢者の消費を高めるとともに、高齢化に対応した産業の強化等を通じて高齢者が生活の質を保ち、安心で快適で豊かな暮らしを送ることができるような環境を形成する。
また、科学技術の研究開発とその活用は、高齢化に伴う課題の解決に大きく寄与するものであることから、高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究、高齢者の利用に配慮した福祉用具、生活用品、情報通信機器等の研究開発など各種の調査研究等を推進するとともに、そのために必要な基盤の整備を図る。

・・・・・・・・・・・意見

「支える高齢者」の存在をまってはじめて高齢者による「シニア市場」が想定され、把握され、実態が明確になります。その範囲は高齢者に優しく、ニーズに合致した機器、サービスといったもの柔らかなアプローチを必要としないでいいでしょう。高齢者が参画して、みずからを鼓舞するような厳とした製品だってあっていいのです。高齢者対応の製品・サービスをあつめて出展する展示会が各地で開催されることになるでしょう。

・・・・・・・・・・・

(1) 高齢者向け市場の開拓と活性化

ア 医療・介護・健康関連産業の強化

高齢社会において高い成長と雇用創出が見込める医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し、安全の確保や質の向上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する。医療・介護機関と民間サービス事業者等の連携によるサービス提供を通じ、サービスの有効性や安全性、持続可能性等を担保する仕組みの構築を行う。
さらに、こうしたサービスが自立的に創出・提供がなされるよう、多様な機能を有する異業種の連携等により、新たに医療・介護周辺のサービスを立ち上げる医療機関、事業者等を支援する。

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イ 不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化

高齢者が将来の不安を払拭し、不安のための貯蓄から、生涯を楽しむための支出を行えるように医療・介護サービスの基盤を強化する。
そのため、医師養成数の増加、勤務環境や処遇の改善による勤務医や医療・介護従事者の確保とともに、医療・介護従事者間の役割分担を見直す。
また、医療機関の機能分化と高度・専門的医療の集約化、在宅サービスの充実や介護基盤の整備などを進め、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備する。

ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現

住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと考える高齢者は多く、地域主導による地域医療の再生を図る。このため、医療・介護の連携と、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め、そこに暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築する。
高齢者が安心して健康な生活が送れるようにすることで、生涯学習や、教養・知識を吸収するための旅行など、新たなシニアサービスの需要を創造するとともに、高齢者の起業や雇用につなげ、高齢者が有する技術・知識等を次世代へ継承する好循環を可能とする環境を整備する。

(2) 超高齢社会に対応するための調査研究等の推進と基盤整備

ア 医療イノベーションの推進

日本発の新たな医薬品・医療機器等の創出により、健康長寿社会を実現するとともに、国際競争力強化による経済成長に貢献することを目指す「医療イノベーション」について、「医療イノベーション5 か年戦略」(平成24 年6 月6 日医療イノベーション会議)に基づき、具体的な取組を進める。

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イ 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

認知症、がん等高齢期にかかりやすい疾患について、その病態や発症機序解明等の研究とともに、ゲノム科学など先端科学技術の活用等による、新たな医療技術・新薬の研究開発やその成果の臨床応用のための研究、これらによる効果的な保健医療技術を確立するための研究等を推進する。
また、老化に関する基礎研究とその成果の臨床応用のための研究や効果的・効率的な介護等に関する研究、社会生活を営むための必要な機能の維持を重視する観点から、生活習慣病の重症化予防に関する調査研究等健康づくりに関する研究などを推進する。

ウ 高齢者の自立・支援等のための医療・リハビリ・介護関連機器等に関する研究開発

高齢者の自立及び社会参加を支援するとともに、介護負担を軽減する観点から、高齢者の特性等を踏まえつつ、ものづくり技術を活用した医療・介護ロボット、身体機能の補完・回復等につながる福祉用具等の医療・リハビリ・介護関連機器等の研究開発・実用化を推進する。

エ 情報通信の活用等に関する研究開発

高齢者の生活の質の向上や介護者の負担軽減を図るため、情報通信技術を活用した高齢者の身体機能を代償する技術及び自立支援や生活支援を行う技術等について、ハード及びソフトの両面から研究開発を推進する。また、高齢者等の安全快適な移動に資するITS(高度道路交通システム)の研究開発及びサービス展開を実施する。

オ 高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究

大綱の基本的考え方や高齢社会対策基本法に規定された分野別施策について国民の意識を把握するための調査や、政策課題を把握し、政策立案に寄与するための調査を行う。

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6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策

今後の超高齢社会に対応するために、高齢者のために対応が限定された社会ではなく、高齢社会に暮らす子どもから高齢者まで、全ての世代の人々が安心して幸せに暮らせる豊かな社会を構築する。そのために、高齢者のみならず、世代間の交流を通じた若者や子育て世代とのつながりを醸成するとともに、若年者や女性の能力を積極的に活用するなど、全ての世代が積極的に参画する社会を構築するための施策を推進する。

・・・・・・・・・・・意見

上記の整理者は、なお「人生65年時代」の旧態依然とした二世代+α型の社会形態から全世代型へのゴムひも型「高齢社会」への拡大を説いています。「人生90年時代」の「高齢社会」は、史上に新たな三世代多重型=つりがね型の形態をしているのです。「長寿社会」は、10歳の少年や25歳の青年にとっても、40歳の中年にとっても、もちろん65歳になった高齢者にとっても、それぞれ自らの人生にかかわる課題としてあります。生活空間もそれぞれに固有の限定したものでいいのです。世代それぞれが固有の生活空間をもって暮らすことになります。既存の居場所の少ない高齢者は、高齢者の暮らしのための生活環境を新たに構築することになります。その上で「みずからはその木蔭に憩うことのない木を植える」(W・リップマン)という次世代とのかかわりをもつ活動を重ねることになります。この「多重性」の意識と実際の生活空間の形成は、「団塊の世代」の高齢者移動がすんだ5年後には明解になっていると想定されます。

・・・・・・・・・・・

(1) 全員参加型社会の推進

ア 若年者雇用対策の推進

若年者雇用については、若者の失業率が上昇し、新卒者の就職率が低下するなど、厳しい状況が続いている。このため、「若者雇用戦略」(平成24年6 月12 日 雇用戦略対話合意)を踏まえ、学校等との連携による大学生等に対する就職支援機能の強化、若者の採用・育成に積極的な中小企業等を軸としたマッチング支援、就職氷河期世代も含めたフリーター等に対する正規雇用化支援の強化等、我が国の将来を担う若者が安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できるよう、若年者に対する就職支援を強力に推進する。

イ 雇用・就業における女性の能力発揮の推進

雇用・就業において女性が能力を十分に伸長・発揮できるよう、男女の均等な機会及び待遇の一層の確保を図るほか、企業における女性の活躍促進状況の「見える化」の促進、メンター(女性社員の相談・サポートをする社員)、ロールモデル(キャリア形成での目標となる社員)の育成・支援等を進め、格差解消に向けたポジティブ・アクションを促進するとともに、女性のニーズに対応した職業紹介や職業訓練、農林漁業経営、6次産

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業化の取組等への女性の参画の促進、女性の起業支援、ネットワーク化などの施策を推進する。
また、女性の就労を促進するため、社会における子育て支援の拡充、仕事と家庭の両立支援対策を推進するとともに、雇用形態に中立的な社会保障制度、税制の見直しを行う。

ウ 非正規雇用労働者対策の推進

非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比べて、雇用が不安定、経済的自立が困難、職業キャリアの形成が十分でないことや、非正規雇用に固定化しやすい等の問題もあることから、将来に備えた資産形成が困難である。このため、こうした問題に総合的に取り組み、一人ひとりの労働者が希望する社会全体にとって望ましい働き方を実現するため、2012 年3月に取りまとめた「望ましい働き方ビジョン」に基づき、非正規雇用の労働者の正規雇用への転換の促進、公正な処遇の確保、職業キャリア形成の支援等を推進する。

エ 子ども・子育て支援施策の総合的推進

今後の子育て支援の方向性についての総合的なビジョンである「子ども・子育てビジョン」(平成22 年1 月29 日閣議決定)に基づき、具体的な数値目標を掲げ、保育等の充実、母子保健医療の充実、ワーク・ライフ・バランスの推進など、子どもの育ちを社会全体で支え合う環境づくりを推進する。
また、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進するため、認定こども園制度の改善の実施、認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付等の創設、各地域の保育需要に機動的に対応できる仕組みの導入及び地域の子ども・子育て支援の充実等を強力に進め、より子どもを生み、育てやすい社会の構築を目指す。

p32

第3 推進体制等

1 推進体制

高齢社会対策を総合的に推進するため、高齢社会対策会議において、本大綱のフォローアップ、国会への年次報告の案の作成等重要事項の審議等を行うものとする。

2 推進に当たっての留意事項

高齢社会対策の推進に当たっては、以下の点に留意するものとする。

(1) 内閣府、厚生労働省その他の地方公共団体を含む関係行政機関の間に緊密な連携・協力を図るとともに、施策相互間の十分な調整を図ること。
(2) 本大綱を実効性のあるものとするため、各分野において「数値目標」を示し、施策の着実な推進を図るとともに、政策評価、情報公開等の推進により、効率的かつ国民に信頼される施策を推進すること。
(3) 「数値目標」とは、それぞれの重点分野において掲げる具体的施策を総合的に実施することにより、政府全体で達成を目指す水準であり、数値目標に係る項目に直接取り組む機関・団体等が、地方公共団体や民間団体等、政府以外の場合には、政府がこれらの機関・団体等に働きかける際に、政府として達成を目指す水準として位置付けること。
(4) 高齢化の状況及び高齢社会対策に係る情報の収集・分析を行うとともに、これらの情報を国民に提供するために必要な体制の整備を図ること。
(5) 高齢社会対策の推進について広く国民の意見の反映に努めるとともに、国民の理解と協力を得るため、効果的な広報、啓発及び教育を実施すること。

3 大綱の見直し

本大綱については、政府の高齢社会対策の中長期的な指針としての性格にか

p33

んがみ、経済社会情勢の変化等を踏まえておおむね5 年を目途に必要があると認めるときに、見直しを行うものとする

・・・・・・・・・・・意見
変化が想定される時期でもあり、10年後の成果を長期的に想定しつつ、中期の「5年を目途」に見直しとしたこと。継続性として目配りがきく時間幅で次の機会が配慮されていて納得がえられる判断と思います。
・・・・・・・・・・・

以上、勝手なことをるる申し上げました。(2012・8・7 堀内)

高齢社会対策大綱数値目標

分類項目 項目        現状(直近の値)  (参考)中間目標   数値目標
(平成23年)     (平成27年)    (平成32年)

1.就業・年金等分野に係る基本的施策

60~64歳就業率        57.3%(※1)    60.1%*      63%*

週労働時間60時間以上の雇用者の割合 9.3%(※1)  7.4%*  (10%(平成20年)から)5割減*

年次有給休暇取得率      48.1%(平成22年)   59%*      70%*

短時間勤務を選択できる事業所の割合 20.5%     24%      29%

自己啓発を行っている労働者の割合(※2)

 (正社員)             43.8%(平成22年度)  55%     70%

 (非正社員)            19.3%(平成22年度)  35%     50%

在宅型テレワーカーの数      490万人       -      700万人(平成27年)

2.健康・介護・医療等分野に係る基本的施策(※3)

介護サービス利用者数     452万人(平成24年)  505万人  657万人(平成37年度)

(1)在宅介護        320万人分(平成24年) 361万人分  463万人分(平成37年度)

(2)居住系サービス     33万人分(平成24年)  38万人分   62万人分(平成37年度)

(3)介護施設        98万人分(平成24年)  106万人分  133万人分(平成37年度)

介護職員数                149万人(平成24年) 167~176万人  237~249万人(平成37年度)

在宅医療等(1日あたり)      17万人分(平成24年)   23万人分     29万人分(平成37年度)

訪問看護(1日あたり)         31万人分(平成24年)   37万人分     51万人分(平成37年度)

P34

(別表)

高齢社会対策大綱数値目標

分類項目 項目        現状(直近の値)  (参考)中間目標   数値目標
(平成23年)     (平成27年)    (平成32年)

3.社会参加・学習等分野に係る基本的施策

大学への社会人入学者数  4.6万人(推計値。一部、平成20年度)※4 6.5万人* 9万人*

専修学校での社会人受け入れ総数  約10.8万人    13万人*    15万人*

「新しい公共」への参加割合の拡大 26%(平成22年)   38%      約5割

4.生活環境等分野に係る基本的施策

新築住宅における認定長期優良住宅の割合 8.8%(※5)   -   20%(平成32年度末)

既存住宅の流通シェア(既存住宅の流通戸数の新築を含めた全流通戸数に対する割合)

14%(平成20年)   -   25%(平成32年度末)

高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合 0.9%(平成17年) 2~4%  3~5%(平成32年度末)

一定の旅客施設のバリアフリー化率(※6)①78%(平成22年度末) - 約100%(平成32年度末)

                    ②92%(同上)      -  約100%(同上)

                    ③75%(同上)      -  約100%(同上)

特定道路におけるバリアフリー化率(※7) 77%(平成23年度末)  - 約100%(平成32年度末)

都市公園における園路及び広場、駐車場、便所のバリアフリー化率(※8)

             園路及び広場 47%(平成22年度末)  - 約60%(平成32年度末)

                駐車場:39%(同上)     -    約60%(同上)

                 便所:32%(同上)      -   約45%(同上)

特定路外駐車場のバリアフリー化率(※9) 45%(平成22年度末)  -  約70%(平成32年度末)
不特定多数の者等が利用する一定の建築物のバリアフリー化率(※10)
48%(平成22年度末)    -  約60%(平成32年度末)

車両等のバリアフリー化率(※11)

                 ①  50(平成22年度)    -     約70%(平成32年度末)

                 ②36%(同上)       -     約70%(同上)

                 ③3%(同上)        -     約25%(同上)

                 ④12,256台(同上)     -     約28,000台(同上)

                 ⑤18%(同上)         -      約50%(同上)

                 ⑥81%(同上)         -      約90%(同上)

P35

高齢社会対策大綱数値目標

分類項目 項目        現状(直近の値)  (参考)中間目標   数値目標
(平成23年)     (平成27年)    (平成32年)

5.高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策

健康関連サービス産業と雇用の創出 市場規模 13.1兆円(平成19年)   -  25兆円

                  雇用  150万人(同上)      -    230万人

6.全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策

          20~34歳の就業率                 74.2%           75.4%*           77%*

      若者フリーターの数          176万人(※1)    165万人*       124万人*

      25~44歳の女性就業率         66.9%(※1)      69.8%*         73%*

第1子出産前後の女性の継続就業率        38%(平成22年)    50%*        55%*

ポジティブ・アクション取組企業数の割合   31.7%       -   40%超*(平成26年)

男性の育児休業取得率                  2.63%           8%*           13%*

P36

(注)

※1 岩手県、宮城県及び福島県を除く全国結果を使用(労働力調査(平成23年平均)による)。
※2 能力開発基本調査では、前年度(22年度)の自己啓発の実施状況について調査。
※3 本分類の項目における数値目標は、社会保障・税一体改革に基づく医療・介護サービス量等の見込み。
※4 国公私立大学(短期大学除く。通信制大学含む。)の学位を取得する課程・科目等履修・履修証明プログラムにおける、社会人を対象とした入試方式による入学者(通学)、職業を持たない者を除いた学生数(通信)等を基に推計。
なお、科目等履修・履修証明プラグラムについては、平成23年度についての調査を実施していないため、平成20年度の値を用いて推計。
※5 認定長期優良住宅の供給が開始された平成21年6月から平成22年3月までの数値。
※6 1日あたりの平均的な利用客数が3,000人以上である全ての旅客施設(鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル)のうち、①段差解消、②視覚障害者誘導用ブロックの整備、③障害者対応型便所の設置がバリアフリー法に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するように行われているものの割合。
※7 バリアフリー法に規定する特定道路(*)のうち、道路移動等円滑化基準を満たす道路の割合。
* 特定道路:駅、官公庁施設、病院等を相互に連絡する道路のうち、多数の高齢者、障害者等が通常徒歩で移動する道路の区間として、国土交通大臣が指定したもの。
※8 特定公園施設(バリアフリー法に基づき、同法政令で定める移動等円滑化が必要な公園施設)である園路及び広場、駐車場、便所が設置された都市公園のうち、各施設がバリアフリー法に基づく都市公園移動等円滑化基準に適合した都市公園の割合。
※9 特定路外駐車場(駐車の用に供する部分が500㎡以上、かつその利用に対して料金を徴収している路外駐車場のうち、道路付属物であるもの、公園施設であるもの、建築物であるもの、建築物に付随しているものを除いた駐車場)のうち、バリアフリー法に基づく路外駐車場移動等円滑化基準に適合した路外駐車場の割合。
※10 床面積2,000㎡以上の特別特定建築物(病院、劇場、ホテル、老人ホーム等の不特定多数の者または主として高齢者、障害者等が利用する建築物)の総ストック数のうち、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化基準に適合するものの割合。
※11 車両等のうち、バリアフリー化が公共交通移動等円滑化基準に適合するように行われているものの割合等。①:鉄軌道車両のバリアフリー化率、②:バス車両(基準の適用除外の認定を受けた車両を除く)のうち、ノンステップバスの導入率、③:適用除外認定を受けたバス車両のうち、リフト付きバス又はスロープ付きバスの導入率、④:タクシー車両のうち、福祉タクシーの導入台数、⑤:旅客船のバリアフリー化率、⑥:航空機のバリアフリー化率。
* これらの目標値は、新成長戦略において、「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」等としていることを前提。

新情報 『高齢社会白書』(平成二四年版)を読む(上)

高齢社会白書 『高齢社会白書』(平成二四年版)を読む(上)
「高齢社会白書」は、平成7(1995)年に制定された「高齢社会対策基本法」に基づいて平成8年から内閣府がまとめて閣議決定し、国会に提出されている年次報告「高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」のこと。コンパクトにまとめた概要版があります。
平成24年版(平成23年度)は、6月15日に閣議決定して公表されました。(担当大臣は中川正春議員)

各分野での毎年の成果を内閣府でまとめて積載してきたために密度が濃く、内容の正確な把握は広く深くなされねばなりませんが、本稿ではそういう立場とは別に、「高齢社会=三世代多重型社会」の立場から、10年不在のありうべき姿を想定しながら、率直で気軽な“読中感想”を<注:>の形で添えています。
太字の部分をひろってお読みください。

[平成23年度目次]を利用しています。表や図は添えられているページに。

高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況
第1 章 高齢化の状況
第1節 高齢化の状況 2
1 高齢化の現状と将来像 2
(1)  高齢化率が23.3%に上昇 2

わが国の総人口は1億2780万人(2011年10月1日現在)。65歳以上の高齢者人口は2975万人(前年2925万人)。高齢化率は23.3%(前年23.0%)に。1970年の7%(高齢化社会)から1994年の14%(高齢社会)に。<注:この高齢化が急速にすすんだ24年というあまりの期間の短さに社会の変容が追いつかなかったことが問題。高齢者個人への医療・介護・年金対策とは別>

表1 - 1 - 1 高齢化の現状 2
(2)将来推計人口でみる50年後の日本 3
ア 9,000万人を割り込む総人口 3
イ 2.5人に1人が65 歳以上、4人に1人が75歳以上 3
図1 - 1 - 2 高齢者人口の対前年度増加数の推移 3
ウ 年少人口、出生数とも現在の半分以下に、生産年齢人口は4,418万人に 4
図1 - 1 - 3 年齢区分別将来人口推計 4
図1 - 1 - 4 -(1) 高齢化の推移と将来推計 5
図1 - 1 - 4 -(2) 高齢化率の前回将来推計との比較 5
エ 現役世代1.2人で1人の高齢者を支える社会の到来 6
オ 男性84.19歳、女性90.93歳まで生きられる 6

総人口が減少するなかで65歳以上の高齢者が増加することにより「高齢化率」は上昇を続け、平成25(2013)年には25.1%で4 人に1 人となる。<注:近い将来推計はともかく、長期予測統計は、何もしないならばという政策不在を前提にしており、政策要請でもあることに注意。4人にひとり(21%以上)を「超高齢社会」ということもあるが、状況認識を間違える。「本格的な高齢社会」であって、先行的にあっていい姿なのである>

2 地域別にみた高齢化 6

高齢化率が最も高いのは秋田県で29.7%、最も低いのは沖縄県で17.3%。<注:東北や北陸の中小都市の「モノ・場所・しくみ」のありように将来の「高齢社会」を考える契機を見出すこと>

図1 - 1 - 5 出生数及び死亡数の将来推計 6
図1 - 1 - 6 高齢世代人口の比率 7
図1 - 1 - 7 平均寿命の推移と将来推計 7
表1 - 1 - 8 都道府県別高齢化率の推移 8

3 高齢化の要因 9
(1)死亡率の低下に伴う平均寿命の延伸 9
図1 - 1 - 9 死亡数及び死亡率の推移 9
(2)少子化の進行による若年人口の減少 10
図1 - 1 - 10 高齢者の性・年齢階級別死亡率(1950~2010 年) 10

高齢化の要因は大きく分けて、①平均寿命の延伸による65 歳以上人口の増加と、②少子化の進行による若年人口の減少、の2つ。死亡率を男女別年齢別にみると、いずれの年齢層においても女性が低い。平均寿命(2010年)では、男性79.64 年、女性86.39 年。少子化については、人口置換水準(人口を長期的に維持するために必要な水準で2.1 程度)前後で推移してきたが、1975年に1.91 と2.00 を下回ると、1993年に1.46 と1.50 を割り込んだ。その後も低下傾向は続き、2005年には1.26と過去最低を記録した。2010年は1.39となっている。<注:独居する高齢女性の増加と子どもが産めない(産みづらい)若い女性についての仔細な実情調査と政策が課題>

4 高齢化の社会保障給付費に対する影響 11
(1)過去最高となった社会保障給付費 11
図1 - 1 - 11 社会保障給付費の推移 11
(2)高齢者関係給付費は引き続き増加 11

社会保障給付費(年金・医療・福祉その他)は、99兆8507億円に。国民所得に占める割合は、29.4%。社会保障給付費のうち高齢者関係給付費は、68兆6422億円で、68.7%。前年から3兆2825億円の増加。<注:増税でなく持続的な経済成長がなければ継続しつづけることは困難に。次世代への期待ではなく、増えつづける高齢者自身による解決策と実行が必要。まずは意識そして実行>

5 高齢化の国際的動向 11
(1)今後半世紀で世界の高齢化は急速に進展 11
(2)我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えている 11
表1 - 1 - 12 世界人口の動向等 12
図1 - 1 - 13 世界の高齢化率の推移 13

世界総人口は、68億9589万人。65歳以上が占める割合は7.6%(2010年)。わが国の高齢化率は、平成17(2005)年に世界で最も高い水準に。<注:先行国としてどういう経緯でどういう「長寿社会」を達成するかのモデル形成(成功例)が要請されている。体現者としての国際性を高齢者は意識すること。そのひとつが「国連高齢者五原則=自立・参加・ケア・自己実現・尊厳」の一つひとつを一人ひとりの高齢者が実行すること>

第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向 14
1 高齢者の家族と世帯 14
(1)高齢者のいる世帯は全体の4割、そのうち「単独」・「夫婦のみ」世帯が過半数 14
図1 - 2 - 1 - 1 65 歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65 歳以上の者がいる世帯の割合 14

65歳以上の高齢者のいる世帯は、2071万世帯(2010年)。全世帯(4864万世帯)の42.6%に。三世代世帯は、昭和55(1980)年には50%だったが、平成22(2010)年には16.5%に減少。東北地方や日本海側の県では高齢者も多いが三世代世帯も多い。<注:単独、夫婦のみが増えるよりも三世代世帯(敷地内同居なども)を増やすことが重要課題に。親・子・孫によるわが家三代の暮らしの継承が「絆」の基本>

(2)子どもとの同居は減少しているが、配偶者や子どもが心の支えとなっている人は多い 15
図1 - 2 - 1 - 2 65歳以上の者のいる世帯のうち各県で最も割合が多い世帯構造 15
図1 - 2 - 1 - 3 高齢世帯数(家族類型別)及び一般世帯総数の推移 16
図1 - 2 - 1 - 4 家族形態別にみた高齢者の割合 17
図1 - 2 - 1 - 5 心の支えとなっている人(複数回答) ・17

高齢者の心の支えとなっている人は、「配偶者あるいはパートナー」は日本(65.3%)やスウェーデン(70.9%)、「子ども(養子を含む)」はアメリカ(69.8%)。韓国、ドイツは双方同等に。<注:同等が当然。スウェーデン、アメリカの事情を知ることも必要だが、日本の場合は高度成長期を支えた「2DK・標準家族」(夫婦と子ども二人)がある。親離れ(女性は姑離れ)した夫婦は子どもに親支えを求めづらいからである>

(3)一人暮らし高齢者が増加傾向 18

一人暮らしの高齢者は、男性約139万人、女性約341万人で増加の傾向。<注:これで「暮らしいい高齢社会」に向かっているといえますか>

(4)女性の有配偶率は5割弱だが上昇傾向 18
図1 - 2 - 1 - 6 一人暮らし高齢者の動向 18
2 高齢者の経済状況 19
(1)暮らし向きに心配ない高齢者は約7割 19
(2)高齢者世帯は、世帯人員一人当たりの年間所得が全世帯平均と大きな差はない 19
図1 - 2 - 1 - 7 高齢者の配偶関係別の割合 19
(3)高齢者の所得格差は他の世代と比べて大きいが、縮小傾向 20
図1 - 2 - 2 - 1 高齢者の暮らし向き 20
表1 - 2 - 2 - 2 高齢者世帯の所得 20
(4)世帯主が65歳以上の世帯では、一人当たりの支出水準は全世帯平均を上回る 21
(5)世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄は全世帯平均の1.4倍で、貯蓄の主な目的は病気や介護への備え 21
図1 - 2 - 2 - 3 高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合21
図1 - 2 - 2 - 4 年金の給付水準と社会保障費の負担に関する意識 21
図1 - 2 - 2 - 5 年齢階級別ジニ係数(等価所得)22
図1 - 2 - 2 - 6 世帯主の年齢階級別世帯人員一人当たりの1 年間の支出 22
図1 - 2 - 2 - 7 優先的にお金を使いたいと考えているもの(3 つまでの複数回答)23
図1 - 2 - 2 - 8 世帯主の年齢階級別1 世帯当たりの貯蓄・負債、年間収入、持家率 23
(6)遺産相続や生前贈与に関する意識 24
図1 - 2 - 2 - 9 貯蓄現在高階級別世帯分布 24
図1 - 2 - 2 - 10 貯蓄の目的 24

(7)生活保護受給者(被保護人員)は増加傾向 25

(8)相対的貧困率は高齢期に上昇する傾向 25

図1 - 2 - 2 - 11 遺産相続に関する意識 25
図1 - 2 - 2 - 12 子どもへの財産の生前贈与に対する意識(年齢階級別) 25
図1 - 2 - 2 - 13 被保護人員の変移 26
図1 - 2 - 2 - 14 男女別・年齢階層別相対的貧困率 26
図1 - 2 - 2 - 15 ホームレスの年齢分布 26

(9)ホームレスも高齢化、60歳以上で増加傾向 27

世帯主が65 歳以上の世帯の支出は全世帯の平均を上回る。60歳以上の高齢者の支出に関する意識をみてみると、「健康維持や医療介護のための支出」(42.8%)、「旅行」(38.2%)、「子どもや孫のための支出」(33.4%)の順。貯蓄現在高は、世帯主の年齢が65歳以上の世帯と全世帯平均(いずれも二人以上の世帯)とを比較すると、前者は2,257 万円で後者の1,664万円の約1.4倍。貯蓄の目的については、「病気・介護の備え」が62.3%、次いで「生活維持」が20.0%。<注:貯蓄・支出が「健康維持」「医療・介護」のためであり、長寿の将来がわからず不安であれば、平均より多額な貯蓄が安心を支えることになる。「子どもや孫のため」も傾向からすれば継続的に増加する。それに耐えうる平均以上の高齢者が「いいおじいちゃん、おばあちゃん」。貯蓄の3分の1は留保し、3分の1は子孫に、そして3分の1はみんなのために社会の活性化に投下する。そこで持続的な経済成長が可能になる>

3 高齢者の健康・福祉 27
(1)高齢者の健康 27
ア 高齢者の半数近くが何らかの自覚症状を訴えているが、日常生活に影響がある人は5分の1程度27
図1 - 2 - 3 - 1 65 歳以上の高齢者の有訴者率及び日常生活に影響のある者率(人口千対)27
イ 健康寿命が延びているが、平均寿命に比べて延びが小さい 28
図1 - 2 - 3 - 2 65 歳以上の高齢者の日常生活に影響のある者率(複数回答)(人口千対)28
図1 - 2 - 3 - 3 健康状態に関する意識 28
図1 - 2 - 3 - 4 健康寿命と平均寿命の推移 ・29
図1 - 2 - 3 - 5 健康についての意識(国際比較)29
ウ 高齢者の受療率は他の年代より高く、国際的にみても高齢者が医療サービスを利用する頻度は高い30
図1 - 2 - 3 - 6 年齢階級別にみた受療率の推移  30
表1 - 2 - 3 - 7 主な傷病別にみた受療率(人口10 万対) 30
図1 - 2 - 3 - 8 65 歳以上の高齢者の主な死因別死亡率の推移 31
図1 - 2 - 3 - 9 死亡場所の構成割合の推移 31
図1 - 2 - 3 - 10 医療サービスの利用状況(国際比較) 32
図1 - 2 - 3 - 11 第1 号被保険者(65 歳以上)の要介護度別認定者数の推移 32

65 歳以上の高齢者の健康状態。有訴者率(人口1,000人当たりの自覚症状のある者。入院者を除いた数、2010年)は471.1と半数近くの人が何らかの自覚症状。日常生活に影響のある者率(人口1,000 人当たりの「日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に影響のある者(入院者を除く)」の数)は、209.0と、有訴者率と比べると半分以下に。日常生活への影響では、「日常生活動作」(起床、衣服着脱、食事、入浴など)が人口1,000人当たり100.6、「外出」が90.5、次いで「仕事・家事・学業」が79.6、「運動(スポーツを含む)」が64.5。日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、男性が70.42 年、女性が73.62年。<注:有訴者が半数おり、日常生活への影響が5人にひとり。身近な数値である。が、それによって半数あるいは5人の4人の元気な人びとが高齢期の積極的活動を控えてしまうことになれば問題>

(2)高齢者の介護 33
ア 高齢者の要介護者等数は急速に増加しており、特に75歳以上で割合が高い 33
表1 - 2 - 3 - 12 要介護等認定の状況 33
図1 - 2 - 3 - 13 日常生活における介助等の必要度(国際比較)33
表1 - 2 - 3 - 14 介護保険サービスの利用状況 34
イ 主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在 35
ウ 家族の介護・看護のために離職・転職する人が増えている 35
図1 - 2 - 3 - 15 要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因 35
図1 - 2 - 3 - 16 介護が必要になった場合の費用負担に関する意識 35
エ 「要介護5」では約半数がほとんど終日介護を行っている 36
オ 介護を受けたい場所は「自宅」が約4割 36
図1 - 2 - 3 - 17 要介護者等からみた主な介護者の続柄 36
図1 - 2 - 3 - 18 介護・看護を理由に離職・転職した人数 36

(3)最期を迎えたい場所は「自宅」が半数を超える 37

図1 - 2 - 3 - 19 介護・看護を理由に離職・転職した人の年齢構成割合 (18 年10 月~19 年9 月に離職・転職した人) 37
図1 - 2 - 3 - 20 同居している主な介護者の介護時間(要介護者等の要介護度別) 37
図1 - 2 - 3 - 21 介護を受けたい場所 38
図1 - 2 - 3 - 22 最期を迎えたい場所 38
図1 - 2 - 3 - 23 自宅で最期まで療養することが実現困難な理由(複数回答) 38

高齢者の死因。死亡率(高齢者人口10 万人当たり死亡者数の割合。2010年)は、「悪性新生物(がん)」が967.5と最も高く、次いで「心疾患」576.8、「肺炎」391.2 の順。死亡場所の推移をみると、昭和26(1951)年では「自宅」が82.5%、病院が9.1%だったが、平成22(2010)年には「病院」が77.9%、「自宅」は12.6%に。医療サービスの利用状況については、韓国、アメリカ、ドイツ及びスウェーデンと比較すると、日本は「ほぼ毎日」から「月に1回くらい」までの割合が61.6%で最も高い。<注:病院にせっせと通い、「がん」で病院で死ぬのが一般的。身近に居場所、情報源がない。接骨院の待合室は地域高齢者のサロンになっている>

4 高齢者の就業 39
(1)高齢者の雇用情勢 39
図1 - 2 - 4 - 1 雇用者数の推移(全産業) 39
図1 - 2 - 4 - 2 定年到達者の状況 39
図1 - 2 - 4 - 3 完全失業率の推移 40
図1 - 2 - 4 - 4 労働力人口の推移 40
(2)労働力人口 41
(3)就業者の状況 41

60~64歳の雇用者(2011年時点)は450 万人、65歳以上の雇用者は308万人。また定年者で継続雇用された人の割合は73.6%となって、65 歳以上の人は556 万人(8.9%)に。労働力人口総数に占める比率は上昇して6.1%に。職業別でみると「生産工程・労務作業者」が148万人(26.0%)で最も多く、次いで「農林漁業作業者」が113万人(19.8%)。<注:定年65歳あるいは70歳化、定年なしなど、を要請されている企業にとって、不況下の対応は苦しい。増える高齢者層が必要とする新たな製品が求められ、高齢熟練技術者にしごとが回る需給関係の形成が急務>

表1 - 2 - 4 - 5 農林業・非農林業、週間就業時間別就業者数(65 歳以上) 41
表1 - 2 - 4 - 6 職業別就業者数(65 歳以上) 41
5 高齢者の社会参加活動 41
(1)高齢者のグループ活動 41

グループ活動への参加状況。60歳以上の高齢者のうち59.2%(2008年)が何らかのグループ活動に参加しており、10 年前(1998年)と比べると15.5 ポイント増加。「健康・スポーツ」(30.5%)、「地域行事」(24.4%)、「趣味」(20.2%)、「生活環境改善」(10.6%)の順。<>
図1 - 2 - 5 - 1 高齢者のグループ活動への参加状況(複数回答)42
図1 - 2 - 5 - 2 高齢者のグループ活動への参加意向  42
(2)高齢者の学習活動 42

60 歳以上で学習活動に参加している人の割合は17.4%。活動内容をみると、「カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動」が7.6%、「公共機関や大学などが開催する公開講座など」が4.8%などとなっている。また、行ってみたい生涯学習の内容は、60~69 歳は「健康・スポーツ」(健康法、医学、栄養、ジョギング、水泳など)が60.9%で最も多く、70歳以上では「趣味」(音楽、美術、華道、舞踊、書道など)が57.2%。<注:内容については、体(健康)志(知識)行(技術)の3カテゴリーをバランスよく学習できるよう開設することが肝要である>

図1 - 2 - 5 - 3 高齢者の学習活動への参加状況(複数回答) 43
図1 - 2 - 5 - 4 行ってみたい生涯学習の内容(複数回答) 43
(3)若い世代との交流の機会への参加状況 43
図1 - 2 - 5 - 5 世代間交流の機会の有無 44
図1 - 2 - 5 - 6 若い世代との交流の機会の参加意向 44

若い世代との交流の機会。60 歳以上で何らかの交流の機会がある人の割合は平成20(2008)年で54.9%。また、若い世代との交流の機会への参加意向については、参加したいと考える人の割合は平成20(2008)年で62.4%となっており、平成5(1993)年の調査以来、初めて6 割を超えた。<注:交流の機会。意欲の調査で、具体的な設問ができないことが現況を示している。三世代同居が少なくなって独居が増えている環境の下で、どういう場が設定できるか>

6 高齢者の生活環境 45
(1)高齢者の住まい 45
ア 高齢者の9割は現在の住居に満足しており、体が弱っても自宅に留まりたい人が多い 45
図1 - 2 - 6 - 1 現在の住居に関する満足度 45
図1 - 2 - 6 - 2 虚弱化したときに望む居住形態 45

60歳以上の高齢者に現在の住宅の満足度について聞いてみると、「満足」又は「ある程度満足」している人は総数で89.3%、持家で91.2%、賃貸住宅で69.9%となっている。<注:現在の住居に満足しているのは、無からつくりあげた住居(資産)であり慣れ親しんだ生活空間だからである。傷んでも多額の費用をかけて修理ができないのが実情であろうが、それでも他に求めることのできない人生の記憶(子育てなど)の現場だからである>

イ 高齢者は家庭内事故が多く、最も多い事故時の行動は「歩いていた(階段の昇降を含む)」46
図1 - 2 - 6 - 3 高齢者の家庭内事故 46
(2)高齢者の居住環境 47
(3)高齢者の安全・安心 47
ア 高齢運転者による交通事故件数が高い水準で推移 47
イ 振り込め詐欺の被害が依然として深刻 47
図1 - 2 - 6 - 4 地域における不便な点(複数回答) ・47
ウ 消費トラブルに関する高齢者からの相談が依然として10万件を超えている 49
エ 住宅火災における死者数は約6割が高齢者 49
図1 - 2 - 6 - 5 年齢層別交通事故死者数の推移 48
図1 - 2 - 6 - 6 高齢者の刑法犯被害認知件数 48
表1 - 2 - 6 - 7 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成18~23 年) 49
図1 - 2 - 6 - 8 契約当事者が70 歳以上の消費相談件数 49
オ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定 50
(4)高齢者による犯罪 50
図1 - 2 - 6 - 9 住宅火災における死者数 50
(5)高齢者の日常生活 51
ア 生きがいを感じている人は約8割 51

生きがいを感じている人8割を超えている。男女別には「十分に感じている」人の割合は女性(42.4%)に比べて男性(34.8%)が低くなっている<注:8割が生きがいを感じている社会はいい社会である。問題はこれからの推移にある。けっして楽観的であない>

図1 - 2 - 6 - 10 養護者による虐待を受けている高齢者の属性 51
図1 - 2 - 6 - 11 高齢者による犯罪(高齢者の包括罪種別刑法犯検挙人員と犯罪者率)・51
イ 今後、毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい人が増加 52
図1 - 2 - 6 - 12 生きがいの程度 52
図1 - 2 - 6 - 13 生活を充実させて楽しむことを重視する人の割合 52
ウ 一人暮らしの男性に、人との交流が少ない人や頼れる人がいない人が多い 53
図1 - 2 - 6 - 14 会話の頻度(電話やE メールを含む) 53
図1 - 2 - 6 - 15 近所づきあいの程度 53
エ 孤立死と考えられる事例が多数発生している 54
オ 孤立死(孤独死)を身近な問題と感じる人は4割を超える 54

誰にも看取られることなく、亡くなったあと発見されるような孤立死(孤独死)を身近な問題だと感じる(「非常に感じる」と「まあまあ感じる」の合計)人の割合は、60 歳以上の高齢者の4割を超え、単身世帯では6割を超えている。<注:親族・学友・同僚だけではなく、元気なうちから地域での複数のコミュニティに参加すること>

(6)高齢者の自殺 54
図1 - 2 - 6 - 16 困ったときに頼れる人がいない人の割合 54
(7)東日本大震災における高齢者の被害状況 55
図1 - 2 - 6 - 17 東京23 区内で自宅で死亡した65 歳以上一人暮らしの者 55
図1 - 2 - 6 - 18 単身居住者で死亡から相当期間経過後に発見された件数 55
図1 - 2 - 6 - 19 孤独死を身近な問題と感じる者の割合 55
図1 - 2 - 6 - 20 高齢者(60 歳以上)の自殺者数の推移 56
図1 - 2 - 6 - 21 年齢階級別死亡者数 56

第3 節 「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書

~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」について 61

1 超高齢社会における課題 61

平成23(2011)年10月11日に総理を会長とする「高齢社会対策会議」が開催され、新しい高齢社会対策大綱の検討を開始する方針が示された。本方針に基づき、23(2011)年10 月21 日から24(2012)年2 月23日にかけて5回にわたり開催された「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」(座長;清家篤慶應義塾長)で報告書(「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」)がとりまとめられた。本報告書では、これまでの「人生65年時代」を前提とした高齢者の捉え方についての意識改革をはじめ、働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境の在り方、高齢期に向けた備え等を「人生90年時代」を前提としたものへ転換させ、全世代が参画した、豊かな人生を享受できる超高齢社会の実現を目指す必要があるとの認識が示された。<注:「大綱」が「支える高齢者」層を「人生90年時代」の主体者として明確にとらえたことは画期的>

(1)「高齢者」の実態と捉え方の乖離 61
(2)世代間格差・世代内格差の存在 61
(3)高齢者の満たされない活躍意欲 62
(4)地域力・仲間力の弱さと高齢者等の孤立化 ・62
(5)不便や不安を感じる高齢者の生活環境 62
(6)これまでの「人生65年時代」のままの仕組や対応の限界 62

2 今後の超高齢社会に向けた基本的な考え方 63

(1)「高齢者」の捉え方の意識改革 ~65歳は高齢者か~ 63

「高齢者」は、支えが必要であるとする考え方や社会の在り様は、意欲と能力のある現役の65歳以上の者の実態から乖離しており、高齢者の意欲と能力を活用する上で阻害要因ともなっている。また、65歳以上であっても社会の重要な支え手、担い手として活躍している人もいるなかで、これらの人を年齢によって一律に「支えられる人」と捉えることは、活躍している人や活躍したいと思っている人の誇りや尊厳を傷つけることにもなりかねない。<注:「支える側の高齢者」という実態をもっと鮮明に打ち出していいのだが、なお説得調>

(2)老後の安心を確保するための社会保障制度の確立 ~支え支えられる安心社会~ 63
(3)高齢者パワーへの期待 ~社会を支える頼もしい現役シニア~ 64

意欲と能力のある65 歳以上の現役であるシニアが、本人の希望に応じて働き続けることができる生涯現役社会を実現することは、それらの現役シニアの生活基盤となる所得はもとより、生きがいや健康をもたらす。・・また、高齢者の意欲を最大限に活かすことによって、企業の活力維持に不可欠である若い世代への円滑な技能伝承の実現が期待でき、若い世代の能力の向上も達成される。<注:ここでは生活者としての高齢者がみえない。“現役シニア”は生活者なのである。後人への貢献はむろん重要だが、自らと仲間たちとの暮らしの現場「モノと場としくみ」の形成への働きかけを強調すべき>

また、高齢者のニーズを踏まえたサービスや商品開発の促進により、高齢者の消費を活性化し、高齢化に対応した産業や雇用の拡大を支援すべきである。<注:だれが?ここでも高齢者自身の役割が明示されていない>

(4)地域力の強化と安定的な地域社会の実現 ~「互助」が活きるコミュニティ~ 64

地域の人々、友人、世代を超えた人々との間の「顔の見える」助け合いにより行われる「互助」を再構築する必要がある。<自助・共助・公助のうち、顔の見える関係を「互助」として加えたところに孤立化する高齢者の姿と身近なコミュニティ崩壊の危機を指摘している>

(5)安全・安心な生活環境の実現 ~高齢者に優しい社会はみんなに優しい~ 65

高齢者をはじめ、多様な人々が利用しやすいよう、住宅や都市、生活環境のデザインをより拡張するという、ユニバーサルデザインの考え方を一層推進する必要がある。このような全世代型で多様な人々が安心して暮らせるまちづくり、自立した生活ができる環境づくりを実現することが重要である。<注:バリアフリーやユニバーサルデザインの必要はいうまでもないのだが、“全世代型”であってはなるまい。このすべてを弱者にそろえる“ユニバーサル的な善意”は全体の力を削ぐことになるからだ。格差や差別でない差異(ちがい)は活かされなければ>

(6)若年期からの「人生90年時代」への備えと世代循環の実現 ~ワーク・ライフ・バランスと次世代へ承継する資産~ 66

第4節 高齢者が活躍できる環境づくり 67
1 高齢者の就労 67
図1 - 4 - 1 - 1 年齢階層別 就業率 67
図1 - 4 - 1 - 2 65 歳以降(65~69 歳)における就業意向 68
図1 - 4 - 1 - 3 いつまで働きたいか 68

高齢者の就業に対する意向をみてみると、厚生労働省「中高年者縦断調査」(平成22年)によれば、「団塊の世代」を含む60~64 歳では、仕事をしている人のうち56.7%が65 歳以降も「仕事をしたい」と考えており、「仕事をしたくない」人(16.6%)を大きく上回って「仕事をしたい」人は44.0%で、「仕事をしたくない」人(31.4%)を上回っており、現在の65~69 歳の就業率(36.3%)と比べても高い割合となっている。また、内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20 年)で高齢者の退職希望年齢をみると、65 歳までに退職したい人は3割に満たず、残りの約7割の人は「70歳以降まで」または「働けるうちはいつまでも」働きたいと考えている。このように、我が国においては、高齢者の高い就業継続意欲が必ずしも実際の就業に結びついていないと言えるだろう。<注:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)はこの文脈で生きる視点である。長寿をえている高齢者は生活者として新たな暮らしの場をつくらねばならず、そのための新たな「モノ・場・しくみ」を要請する。それが新たなしごとをうむことになるからだ。暮らしへの意欲と就業の意欲をともに活かすことが「高齢者」の対応なのである>

2 高齢者の社会的な活動(ボランティア活動) 69
図1 - 4 - 1 - 4 仕事を選ぶ際に最も重視すること 69
図1 - 4 - 2 - 1 過去1 年間における地域活動・ボランティア活動の参加状況 70
図1 - 4 - 2 - 2 地域活動・ボランティア活動の活動内容別参加状況(複数回答) 70
図1 - 4 - 2 - 3 地域活動・ボランティア活動の参加状況と参加希望 ・71

3 高齢者による被災地支援 73

図1 - 4 - 2 - 4 地域活動、ボランティア活動に参加する条件(複数回答) 72
図1 - 4 - 2 - 5 ボランティア活動への参加意向がある人の割合(収入別) 72
図1 - 4 - 2 - 6 市民活動団体のスタッフの構成 ・73
図1 - 4 - 3 - 1 東日本大震災被災地支援の取組状況(複数回答) 74
表1 - 4 - 3 - 2 東日本大震災被災地支援の年齢階級別取組状況(複数回答) 74

活動やボランティア活動の参加状況をみてみると、内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」(平成23年)によれば、60歳以上の高齢者のうち過去1年間に何らかの活動に参加した人の割合は47.0%(男性51.5%、女性43.0%)となっている。活動内容別に見ると、男女とも「自治会等の役員・事務局活動」(自治会・町内会・老人クラブ・NPO団体等の役員・事務局活動)が最ており、男性は9.9%から20.7%へと倍増している。これを60 歳から74 歳まで年齢階級別にみてみると、60~64 歳では「収入(賃金)」が25.7%となり、「経験が生かせること」(24.3%)を上回っている。その他の年齢階級でも、「収入(賃金)」を最も重視する人が大きく増加している。このように、高齢者は自分の経験を生かせる仕事をしたいと考える人が多いが、60 歳代前半のみならず、65 歳以上の人でも収入を重視する人が増えている。<注:ボランティアは「善意の無償の行為」であることへの意識は深く広い。少額の有償がもつ有意性は“意欲”にどうかかわるのか。地方自治体は、高齢者住民が保持している知識・技術・経験・資産そして生きる意欲を、「善意の無償の行為」として行政にどう取り込むのか。地域活性化のカギである・・>

4 事例紹介 75
(1)高齢者の就労を促進している事例 75
「70歳まで働ける企業」の実現に向けた取組 75
東京都しごとセンター 75
(2)高齢者の地域活動、ボランティア活動を促進している事例 76
子育てを地域で支援する「ファミリー・サポート・センター」 76
認知症高齢者を支える市民後見の取組 76
(3)高齢者による被災地支援の事例 77
高齢者のまごころをこめた「元気袋」 77
仮設住宅における「パラソル喫茶」の取組 77
「福島原発行動隊」の取組 78

第2 章 高齢社会対策の実施の状況 ここからは未

第1節 高齢社会対策の基本的枠組み

1 高齢社会対策基本法86
(1)高齢社会対策基本法の成立86
(2)高齢社会対策基本法の概要86

2 高齢社会対策会議 86

3 高齢社会対策大綱 86

(1)高齢社会対策大綱の策定 86
(2)大綱策定の目的 87
(3)基本姿勢 87
(4)横断的に取り組む課題 87
(5)分野別の基本的施策 88
(6)推進体制等 88
(7)大綱のフォローアップ 89

4 高齢社会対策関係予算 89

表2 - 1 - 1 高齢社会対策関係予算(一般会計)89
第2節 高齢社会対策の総合的な推進のための取組 90
第3節 分野別の施策の実施の状況 91

1 就業・所得 91

(1)高齢者の雇用・就業の機会の確保 91
ア 知識、経験を活用した65歳までの雇用の確保 ・91
イ 中高年齢者の再就職の援助・促進 92
ウ 多様な形態による雇用・就業機会の確保 92
表2 - 3 - 1 高齢者雇用関係助成金制度の概要 92
エ 起業の支援 93
オ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組 93
(2)勤労者の生涯を通じた能力の発揮 93
ア ゆとりある職業生活の実現等 93
イ 雇用・就業における女性の能力発揮 94
ウ 職業生活と家庭生活との両立支援対策の推進 94
(ア)改正育児・介護休業法の円滑な施行 ・94
(イ)仕事と家庭を両立しやすい職場環境整備 94
エ 多様な勤務形態の環境整備 95
(ア)多様な働き方を選択できる環境の整備 95
(イ)情報通信を活用した遠隔型勤務形態の開発・普及 95
(3)公的年金制度の安定的運営 95
ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立 95
イ 個人のライフスタイルの選択に中立的な公的年金制度の構築 96
ウ 公的年金制度の一元化の推進 96
エ 日本年金機構による適切な運営と年金記録問題への対応 96
(4)自助努力による高齢期の所得確保への支援 97
ア 企業年金制度等の整備 97
イ 退職金制度の改善 97
ウ 高齢期に備える資産形成等の促進 97

2 健康・福祉 97

(1)健康づくりの総合的推進 98
ア 生涯にわたる健康づくりの推進 98
イ 健康づくり施設の整備等 98
表2 - 3 - 2 成年後見制度の概要 98
ウ 介護予防の推進 99
図2 - 3 - 3 「健康日本21」最終評価 99
表2 - 3 - 4 健康増進事業の一覧 100
(2)介護保険制度の着実な実施 101
(3)介護サービスの充実 101
ア 必要な介護サービスの確保 101
表2 - 3 - 5 介護サービス利用者と介護給付費の推移 101
イ 介護サービスの質の向上 102
図2 - 3 - 6 介護の日ポスター 103
ウ 認知症高齢者支援施策の推進 103
エ 介護に関する普及啓発 103
(4)地域の支え合いによる生活支援の推進 103
(5)高齢者医療制度の改革 104
ア 高齢者医療制度の見直し 104
イ 特定健診・特定保健指導 104
ウ 公的保険に依存しない多様な医療・介護周辺サービスの創出 104
エ 地域における包括的かつ継続的な在宅医療の提供 104
オ 老人医療費の動向 104
(6)子育て支援施策の総合的推進 105
図2 - 3 - 7 医療費の動向 105
図2 - 3 - 8 後期高齢者医療費の特性 106
図2 - 3 - 9 1 人当たり医療費の診療種別内訳(全国平均との差)~平成21 年度~ 106

(7)地域福祉計画の策定の支援 107
3 学習・社会参加 107

(1)生涯学習社会の形成 108
ア 生涯学習の推進体制と基盤の整備 108
(ア)生涯学習の基盤の整備 108
(イ)学習成果の適切な評価の促進 108
イ 学校における多様な学習機会の確保 108
(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保 108
(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供 109
(ウ)学校機能・施設の地域への開放 109
ウ 多様な学習機会の提供 109
(ア)社会教育の振興 109
図2 - 3 - 10 大学院の社会人学生数の推移 109
(イ)文化活動の振興 110
(ウ)スポーツ活動の振興 110
(エ)自然とのふれあい 110
エ 勤労者の学習活動の支援 110
(2)社会参加活動の促進 110
ア 「新しい公共」に係る取組 110
図2 - 3 - 11 放送大学在学者の年齢・職業 110
(ア)寄附税制の拡充 111
(イ)新しい公共支援事業 111
(ウ)「新しい公共」推進会議 111
イ 高齢者の社会参加活動の促進 111
(ア)高齢者の社会参加と生きがいづくり 111
(イ)高齢者の海外支援活動 112
図2 - 3 - 12 老人クラブ数と会員数の推移 112
図2 - 3 - 13 地域別・分野別 シニア海外ボランティアの派遣者数 112
(ウ)高齢者の余暇時間等の充実 113
ウ NPO等の活動基盤の整備 113
表2 - 3 - 14 特定非営利活動法人の認証数 114

4 生活環境 115

(1)安定したゆとりある住生活の確保 115
ア 良質な住宅の供給促進 115
(ア) 持家の計画的な取得・改善努力への援助等の推進 115
(イ)良質な民間賃貸住宅の供給促進 115
(ウ)公共賃貸住宅の適切な供給 116
表2 - 3 - 15 「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)における高齢社会対策に関する目標、成果指標及び基本的な施策 116
(エ)住宅市場の環境整備 117
イ 多様な居住形態への対応 117
(ア)高齢者の持家ニーズへの対応 117
(イ)高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化 117
(ウ)高齢者のニーズに対応した公共賃貸住宅の供給 117
(エ)高齢者の高齢期に適した住宅への住み替え支援 117
(オ)高齢者向けの先導的な住まいづくり等への支援 118
ウ 自立や介護に配慮した住宅の整備 118
(ア)高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設及び改造の促進 ・118
表2 - 3 - 16 公営住宅等の高齢者向け住宅建設戸数 118
(イ)公共賃貸住宅 119
(ウ)住宅と福祉の施策の連携強化 119
(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進 119
表2 - 3 - 17 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の概要 119
ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進 120
イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備 120
(ア)バリアフリー法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進 120
図2 - 3 - 18 シルバーハウジング・プロジェクトの概念図 120
(イ)ガイドライン等の策定 121
(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援 ・121
(エ)歩行空間の形成 121
(オ)道路交通環境の整備 122
(カ)バリアフリーのためのソフト面の取組 122
表2 - 3 - 19 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況 122
図2 - 3 - 20 バリアフリー化された建築物のイメージ 123
ウ 建築物・公共施設等の改善 123
エ 福祉施策との連携 124
(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護 124
ア 交通安全の確保 124
図2 - 3 - 21 バリアフリー法に基づく認定実績 124
イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護 125
ウ 防災施策の推進 126
エ 東日本大震災への対応 126
(4)快適で活力に満ちた生活環境の形成 127
ア 快適な都市環境の形成 127
イ 活力ある農山漁村の形成 127
5 調査研究等の推進 128
(1)各種の調査研究等の推進 128
ア 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等 128
イ 福祉用具等の研究開発 129
ウ 情報通信の活用等に関する研究開発 129
表2 - 3 - 22 主な研究開発助成福祉用具の事例 130
エ 高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究 131
(ア)高齢者の居場所と出番に関する事例調査 131

(イ)高齢者の経済生活に関する意識調査 131(2)調査研究等の基盤の整備 131
ア 研究推進体制等の整備 131
イ 人材の養成等 131
第4節 高齢社会対策に対する評価について 132
図2 - 4 - 1 政府に対する要望(複数回答) 132
図2 - 4 - 2 満足している高齢者施策(複数回答) 133
図2 - 4 - 3 特に力を入れてほしい高齢者施策(3 つまで選択可)133

[コラム]
コラム1 被災地の連携 ~神戸市から東日本大震災被災地に向けて~ 57
コラム2 シニアのICT(情報通信技術)利用促進の取組 59
コラム3 地域における雪害対策 60
コラム4 高年齢者と若年者の雇用について 79
コラム5 地域包括ケアシステムの推進について 81
コラム6 アメリカにおける高齢者コミュニティ 82
コラム7 地域をつなぐ「くるくるバス」 84
コラム8 高齢者の居場所と出番に関する事例調査 85 

[資料]
表と図はそれぞれの分野(ページ)に挿入した。
(2012・9・1 堀内正範)

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2012・8・15