「月刊丈風・寄稿」人生2回時代におけるキャリア形成の標準モデル

人生2回時代におけるキャリア形成の標準モデル        
岡本憲之
特定非営利活動法人 日本シンクタンク・アカデミー理事長  
「平均寿命65歳」から「平均寿命90歳」時代へ
「平均寿命65歳」の時代には、いわゆる高齢者は介護や医療を必要とする虚弱者のイメージが強かった。また高齢期の人生についても、余生とか老後といったように否定的に捉えられがちであった。しかし「平均寿命90歳」も夢ではなくなった今、65歳以上を虚弱な高齢者として扱うことに多くの人が疑問を感じている。
実際、高齢者が虚弱である期間は比較的短く、高齢期の大部分の期間はほぼ健常である。しかも高齢期がここまで長くなってくると、もはやそれを余生とは呼べず、「2回目の人生」と呼ぶべきである。
ところで「2回目の人生」とはどのような人生なのか。それは単に定年延長によって従来の会社人生を引き伸ばす。あるいはより長い余生を送ることではない。新たにもう1回の人生を用意するのだ。高齢期の身体や精神の特性に適合し、今まで蓄積してきた知識や経験を活かせる活動を行うことである。社会を支えるための何らかの役割を持ち、生きがいのある新たな人生を始めてこそ2回目の人生といえる。
そのために必要なのは、高齢期の健康や能力の特性を把握し、若いうちから健康長寿を目指すことである。それらを踏まえ、高齢期の新たな職域開発、あるいは学習やキャリア形成はどうあるべきかなど、考えるべき課題は多い。これからの高齢社会では、若者にとっても、将来の「2回目の人生」に向けた人生設計の夢と希望が膨らむ。
「支える側の高齢者」としての人生設計
わが国では少子高齢化が進み、社会の人口構成も「平均寿命65歳」の時代から大きく変わってきた。そんな高齢社会を持続可能なものにしていくためにも、これまでのように高齢者を一律に「支えられる側」として捉えるのではなく、元気な高齢者には社会を「支える側」に回ってもらうことが望まれる。そのため人生設計の標準モデルも、高齢期に活躍することを前提としたものに変えていかなければならない。そして教育学習を通じたキャリア形成のあり方についても、従来の「1度きりの人生」時代の標準モデルではなく、「人生2回」時代の新たな標準モデルを考えていく必要がある(下図)。

教育学習・キャリア形成から見た人生設計の標準モデル 

「1度きりの人生」時代の標準モデル(左)
「人生2回」時代の標準モデル(右) 

・年齢別人口構成    ・キャリア形成
・1度きりの教育学習機会(左)  ・2回の教育学習機会(右)

(JTTA「毎月コラム」2012年5月から)

 
 
 
 
 
 

 

月刊「丈風」2012年5月号(創刊)


!!月刊 「丈風」2012年5月号a 
編集人・堀 亜起良(堀内正範) 日本丈人の会代表 朝日新聞社社友
e-mail  mhori888@ybb.ne.jp  tel & fax  0475-42-5673  keitai  090-4136-7811
〒 299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
本誌最新号は「月刊丈風」201*年*月号 をご覧ください。
月刊 丈風 2012年5月号(創刊)
国会で「社会保障・税一体改革」の法案審議が始まりました。「増税」先行で論じられています。とともに(より前に) 「増収」をはかる経済成長の方途をこそ論議、提案すべきでしょう。
「緊急提案」(請願)「”消費税増税”議論とともに”日本長寿社会”構想を!」(1ページ)を、政治家・官僚・学者・ジャーナリスト・活動者のみなさんにお送りしています。さらに構想として掲げていただきたいお立場の人には、1月~3月を費やした小論「まったなし”日本長寿社会”への展開」(9ページ)を合わせてお届けしています。
目次
緊急提案(請願)緊急提案」(請願)「”消費税”増税とともに””日本長寿社会”構想を!」https://jojin.jp/465
小論「まったなし“日本高齢社会”への展開」 https://jojin.jp/429
◎現代シニア用語事典 https://jojin.jp/412
◎昭和シニア人名録(賀寿期5歳層別) https://jojin.jp/438
◎高齢者(60歳以上)生年別人口・流行歌・流行語 https://jojin.jp/437
◎日本地域大学校名簿 https://jojin.jp/19
◎人生を豊かにする四字熟語 https://jojin.jpcategory/
関連著書 『丈人のススメ 日本型高齢社会 -「平和団塊」が国難を救う-』
256ページ 1500円(税別) 2010・7・1発刊 武田ランダムハウスジャパン
 
 

セミナー資料 「丈人のススメ 高齢期の生き方」

地域シニア大学校 セミナー資料
「丈人のススメ 高齢期の生き方」

  長い高齢期を安心して
  充実して暮らすために

講師 堀内正範 ほりうちまさのり
ジャーナリスト・朝日新聞社社友
セミナー成田丈人力のススメpdf
セミナー八重洲20120725pdf
◎1 わたしのこと。本のこと。セミナーのこと。
・自己紹介   ・丈人の拍手(持てるもの)   ・大丈夫(丈人の気慨)
・丈人力と老人力   ・長寿社会と高齢社会   ・平和団塊の世代
『丈人力のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』
(武田ランダムハウスジャパン 2010・7・1 1500円税別)
◎2 高年期をどう生きる
・超高齢社会   ・高年期ライフサイクル(別掲)   ・賀寿期5歳層ステージ(別掲)
・年次別人口・流行語・流行歌(別掲)
◎3 個人と家庭(くらし)
・シニア文化圏   ・マイホーム・マイチェア   ・家庭内高年化自己認定
・三世代同等同居(住宅)
◎4 ものと企業(しごと)
・途上国の日本化と日本の途上国化   ・百均商品   ・派遣社員
・やや高安心の国産優良品    ・高年社員(技術者)温存   ・日本企業再リストラ
・高齢商品展示会    ・高齢商品経済圏
◎5 四季のあるくらし
・双暦   ・百季人生(百季丈人)   ・季節小物   ・床の間春秋
・四季カレンダー  ・自作五句   ・八方時刻   ・祭事・歳事・催事
◎6 地方特性
・均衡ある発展と地域特性    ・地産品    ・土中の地(知)   ・三世代会議
・四季型中心街   ・シニア生活圏
◎7 自治体・国家(人民・市民・国民として)
・被扶養者   ・福祉・医療・介護   ・平成市町村合併   ・自治体高齢社会憲章
・地域大学校   ・高齢社会政策担当大臣(専任)   ・1999年国際高齢者年
・国蓮高齢者5原則(・自立・社会参加・ケア・自己実現・尊厳)   ・高齢者用品
・日本型高齢社会   ・平和憲法100年
◎8 高年期はこう生きる
・健康(・からだ・食・睡眠 )   ・知識(・こころざし・こころ・自分史・考えること )
・技術(ふるまい・自作用品・散歩・話すこと )   ・賀寿期の友人
・多重型三世代同等社会(つりがね型)   ・白寿期をめざして
自己紹介(わたしの課題=アジアの共生・日本型高齢社会)
堀内正範 ほりうちまさのり
千葉県長生郡一宮町在住。1938年11月1日、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学文学部卒業。朝日新聞社社友。元『知恵蔵』編集長。55歳で早期退社して古都洛陽市へ。洛陽外国語学院外籍教授を経て同学院日本学研究中心研究員。国際龍門石窟研究保護学会本部顧問。高連協オピニオン会員。著書:『洛陽発「中原歴史文物」案内』(新評論)、『中国名言紀行・中原の大地と人語』(文春新書)、『人生を豊かにする四字熟語』(武田ランダムハウスジャパン)など。日中友好協会『日本と中国』に「四字熟語ものがたり」(2011年~)を連載中。地元の九十九里浜の自然を守る住民活動にも参加。
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「丈人」「丈人力」とは・・

「丈人」は、日ごろ自らを励ます「大丈夫!」ということばに含まれる。自己力古典には、「四体勤め、五穀分かつ」(身体を使って労働をし、五穀を収穫する)ことをよしとする健丈な老者として現れる(『論語「微子篇」』)。ここでは、古語の意味合いを援用して、いまそれぞれの活動によってわが国の「高齢社会」を引き受けつつあるみなさんを「老人」よりも丈人と呼ぶことに納得がえられるように思える。これまで積み上げてきた知識や技術やさまざまな能力をどこまでも発展・熟成・深化させようとして働く力、ふつふつと涌いて出る強い生活力あるいは生命力を、本稿では丈人力(joujin-ryoku)と呼んでいる。青少年や中年層からも敬愛される昭和生まれの高年者「昭和丈人」層によって「日本長寿社会(高齢社会)が達成される。

・高年期のライフ・サイクル
青少年期    ~二四歳  自己形成期
(二五歳~二九歳  バトンゾーン)
中年期  三〇歳~五四歳  社会参加期
(五五歳~五九歳  バトンゾーン)
高年前期 六〇歳~七四歳  社会参加とともに自己実現期
高年後期 七五歳~八四歳  自己実現期 (三世代同等社会)
長命期  八五歳~     自己実現期 (無為自化期)
・高年期5歳層(賀寿期)ステージ 
還暦期  六〇歳~六九歳  昭和二六年~昭和一七年
古希期  七〇歳~七四歳  昭和一六年~昭和一二年
喜寿期  七五歳~七九歳  昭和一一年~昭和 七年
傘寿期  八〇歳~八四歳  昭和 六年~昭和 二年
米寿期  八五歳~八九歳  昭和 元年~大正一一年
卆寿期  九〇歳~九四歳  大正一〇年~大正 六年
白寿期  九五歳~九九歳  大正 五年~大正 元年
百寿期  一〇〇歳以上   明治四四年以前
・体志行の3つのカテゴリー
・体=からだ(・健康・食・スポーツ・睡眠 )
・志=こころ・こころざし(・知識・自分史・考えること )
・行=ふるまい(・技術・自作用品・散歩・話すこと )
・生年別の60歳以上の人口(男女)、流行語、流行歌
「高年期(還暦期)」(六〇~六九歳) 人口は平成21=2010年10月1日推計。総務省統計局
生年      干支 年齢   人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九五二 昭和二七 壬辰 六〇還暦89・6 91・6 黄変米。ワンマン。「芸者ワルツ」
一九五一 昭和二六 辛卯 六一   94・9  97・3 逆コース。「高原の駅よさようなら」
一九五〇 昭和二五 庚寅 六二 101・8 105・0  特需。金へん糸へん。「白い花の咲く頃」
一九四九 昭和二四 己丑 六三 111・5 115・1  ニコヨン。「青い山脈」「長崎の鐘」
一九四八  昭和二三 戊子 六四 110・3 114・4 斜陽族。ノルマ。「湯の町エレジー」「異国の丘」
一九四七  昭和二二 丁亥 六五 104・4 108・7  不逞の輩。ゼネスト。「鐘の鳴る丘」
一九四六  昭和二一 丙戌 六六   65・0   68・5  象徴。タケノコ生活。「東京の花売娘」
一九四五  昭和二○ 乙酉 六七   69・2   74・2  敗戦。ピカドン。一億総ざんげ。「リンゴの唄」
一九四四  昭和一九 甲申 六八   83・9   90・8 鬼畜米英。学童疎開。「同期の桜」「お山の杉の子」
一九四三  昭和一八 癸未 六九   81・3  88・2  撃ちてし止まん。学徒出陣。「若鷲のうた」
「高年期(古希期)」(七〇~七四歳)
生年     干支 年齢    人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九四二  昭和一七 壬午 七〇古希82・9  90・6  欲しがりません勝つまでは。「南から南から」
一九四一  昭和一六 辛巳 七一  80・1 88・1  八紘一宇。国民学校。「めんこい仔馬」「里の秋」
一九四〇  昭和一五 庚辰 七二    72・3  80・3  月月火水木金金。「暁に祈る」「紀元二千六百年」
一九三九  昭和一四 己卯 七三    62・2 69・8  複雑怪奇。靖国の母。「上海の花売り娘」
一九三八  昭和一三 戊寅 七四    65・3 74・8 相手とせず。大陸の花嫁。「麦と兵隊」「支那の夜」
「高年期(喜寿期)」(七五~七九歳)
生年      干支 年齢   人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九三七  昭和一二 丁丑 七五   66・3  76・6  国民精神総動員。「別れのブルース」「海ゆかば」
一九三六  昭和一一 丙子 七六   65・1  76・6  今からでも遅くない。「ああそれなのに」
一九三五  昭和一○ 乙亥 七七喜寿60・9  73・4 人民戦線。暁の超特急。「二人は若い」「野崎小唄」
一九三四  昭和 九 甲戌 七八  56・0  69・2  明鏡止水。「赤城の子守唄」「国境の町」
一九三三  昭和 八 癸酉 七九   54・3  68・9  転向。ファシスト。「東京音頭」「島の娘」
「高年期(傘寿期)」(八〇~八四歳)
生年          干支 年齢   人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九三二  昭和 七 壬申八〇傘寿51・4   66・7  話せば判る。欠食児童。「影を慕いて」
一九三一  昭和 六 辛未 八一  47・7   63・8  生命線。酒は泪か溜息か。「サムライニッポン」
一九三〇  昭和 五 庚午 八二   43・3   59・9 エロ・グロ・ナンセンス。「祇園小唄」「酋長の娘」
一九二九  昭和 四 己巳 八三   40・2  57・6  大恐慌。大学は出たけれど。「東京行進曲」
一九二八  昭和 三 戊辰 八四   36・8   54・6 狭いながらも楽しい我が家。「波浮の港」「君恋し」
「長命期(米寿期)」(八五~八九歳)
生年          干支 年齢   人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九二七  昭和 二 丁卯 八五   33・2  51・5  何が彼女をさうさせたか。「ちゃっきり節」
一九二六  昭和 一 丙寅 八六   30・0  49・4 文化住宅。モガ・モボ。「ヨサホイ節」「この道」
一九二五  大正一四 乙丑 八七   25・4  45・0  軍教。ラジオ放送。円タク。「あの町この町」
一九二四  大正一三 甲子 八八米寿20・4  39・4  憲政の常道。メートルデー。「からたちの花」
一九二三  大正一二 癸亥 八九   16・2  36・0  大震災。流言蜚語。「船頭小唄」「復興節」
「長命期(卒寿期)」(九〇~九四歳) 人口は平成21=2010年10月1日推計。総務省統計局
生年          干支 年齢   人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九二二  大正一一 壬戌 九〇卆寿13・4 32・3 恋愛の自由。民衆芸術。赤化。「馬賊の唄」「砂山」
一九二一  大正一○ 辛酉 九一   11・0   28・3  悪家主。プロレタリア。「七つの子」「赤とんぼ」
一九二〇  大正 九 庚申 九二    9・8  26・4 国調。示威運動。「聞け万国の労働者」「叱られて」
一九一九  大正 八 己未 九三   6・7  18・8  デモクラシー。サボ。「背くらべ」「靴が鳴る」
一九一八  大正 七 戊午 九四   5・8  17・0 平民宰相。米騒動。赤い鳥。「浜辺の歌」「宵待草」
「長命期(白寿期)」(九五~九九歳)
生年         干支 年齢  人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九一七  大正 六 丁巳 九五    4・7  14・6  きょうは帝劇、あすは三越。「さすらひの唄」
一九一六  大正 五 丙辰 九六   3・8  12・5 民本主義。是々非々。「サンタルチア」
一九一五  大正 四 乙卯 九七  2・9  10・1 御大典。ナッチョラン。「恋はやさし」「乾杯の唄」
一九一四  大正 三 甲寅 九八  2・2   8・4  大正琴。「カチューシャの歌」「朧月夜」
一九一三  大正 二 癸丑 九九白寿1・6   6・4  薩閥。新しい女。「鯉のぼり」「海」「早春譜」
これより「百寿期」
生年         干支 年齢  人口(男・女)万人       流行語・流行歌
一九一二  大正 一 壬子一〇〇  1・1   4・8  大正維新。閥族打倒。「都ぞ弥生」「春の小川」
一九一一  明治四四 辛亥一〇一   0・7   3・3  元始、女性は実に太陽であった。「二宮金次郎」
一九一〇  明治四三 庚戌一〇二   0・5   2・4  主義者。小学唱歌。「春が来た」「われは海の子」
一〇〇歳以上   0・7   4・1 4・8万人
一九〇九 明治四二 己酉一〇三     ―     ―  馬鹿な奴じゃ。マラソン。「ローレライ」「菩提樹」
一九〇八 明治四一 戊申一〇四     ―     ―  浮華軽佻。耽美派。「人を恋うる歌」「ハイカラ節」
一九〇七 明治四○ 丁未一〇五     ―     ―    自然主義。美顔術。キリン。「旅愁」「故郷の廃家」
一九〇六 明治三九 丙午一〇六       ―     ―    黄禍論。成り金。無政府主義。「青葉の笛」
一九〇五 明治三八 乙巳一〇七       ―     ―    天気晴朗なれど波高し。二○三高地。「戦友」
一九〇四 明治三七 甲辰一〇八       ―     ―    軍神。君死にたまふことなかれ。「日本陸軍」
一九〇三 明治三六 癸卯一〇九     ―     ―    アジアは一つなり。人生不可解。魔風恋風。
・   改元 明治45=大正元 1912. 7.30  大正15=昭和元 1926.12.25  昭和64=平成元 1989. 1. 8
 
 
 

・茶王樹・南九十九里から

・茶王樹・南九十九里から  茶王樹は雲南に実在がいわれますが、ここは天をも摩する想像上の大樹です。その樹下で、お茶を喫しながら語ること。
ですから話題はなんでもいいのですが、やはり「高齢期の人生」と「日中交流」にかかわるテーマが中心になるように思います。
高齢社会のほうは「日本丈人の会」で扱っていますので、ここでは日中交流にかんする活動や東洋哲学者(志向)の立場から関心のあるさまざまな事象に触れたいと思います。
堀内正範・堀亜紀良(筆名)

 

四字熟語-声振林木 

せいしんりんぼく

「声は林木を振るわす」というのは、歌声があたりに響くと同時に聴く者の心を振るわせるようすをいう。現代の「声振林木」といえば、暮歳の夜の街の並木の梢を飾る電飾を振るわす聖歌が、行く年を元気づけ、来る年に期待する光景といったところだろうか。

秦の声楽家であった薛譚は、歌を秦青に学んだ。まだ師の技能を窮めなかったのにすでに学び尽くしたと思い、辞し去ることを申し出た。秦青はことばで止めず、街外れまで送って、手拍子をうち悲しみの心をこめて別れの歌を歌った。
声は林木を振るわせ、響きは行く雲をとどめたという。類まれな絶唱である。薛譚はあやまちを知り、謝して留まることを求め、その後は終身去ることを口にしなかったという。

人の心を深く打つ歌の力を伝えることばである。歌は子守唄から屋外のライブまでいつでもどこでも人生に力を与えてくれる。欧米で人気の由紀さおりさんのスキャットも林木を振るわせる美しい音色である。 

『列子・湯問』から

四字熟語-各有千秋

かくゆうせんしゅう

「千秋」は千年のこと。「各(おのおの)に千秋有り」というのは、ひとつひとつの物事あるいはひとりひとりの人生にはそれぞれ久遠の流伝があると理解すること。なにごとも探っていくと遠い淵源にたどりつく。

漢の李陵の「与蘇武三首」には、それぞれ天の一隅にあってもはや友人として再び遇えない「三載(三年)は千秋となる」と、重い「千秋」が詠われている。李白や杜甫の「千古絶唱」というべき詩などは時代が明解で、「名流各有千秋あり」ということになる。無名であるわたしたちの人生も、それぞれ千年の来歴をたどりながら現在がある。
三国時代の英傑、曹操・劉備・孫権の違いを「各有千秋」というなどは語感として素直に理解できる。

 しかし現代漢語としては「各有千秋」の意味は軽い。存在価値の違いあるいは特徴や特色ほどの意味合いで軽く広く使われている。こそどろの手法の違いや中年女性の短髪の特徴、車の外観の特色なども「各有千秋」なのである。

趙翼「瓯北誌鈔・絶句」など

本の出版 警世の書 現代の「立正安国論」として 『丈人のススメ 日本型高齢社会 -「平和団塊」が国難を救う-』

堀内正範による新著

丈人のススメ 日本型高齢社会 -「平和団塊」が国難を救う-
256ページ  1500円(税別)  2010・7・1発行
武田ランダムハウスジャパン 03-5256-5691
堀内正範による新著 『丈人のススメ 日本型高齢社会 -「平和団塊」が国難を救う-』
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ここには直接「日蓮」の教えを説いてはいない。
終章「高齢社会」ではこう生きたらどうだろう の文中で、
「人ことごとく悪に帰す」という 『立正安国論』 の時代認識を借りて、
750年後の現代日本の世相を考証している。
街談巷議の関心が「シラジラしい善意よりもドスグロい悪意にある」
(売れるが勝ち)として、悪意、悲惨、狂気に満ちた情報を追いかけている
マスコミへの批判を込めた文脈で援用している。
そのうえ襲った3・11大震災と放射能汚染。
この「天災人禍」を合わせた国難を克服するには
日蓮の国難救済への信念に学ばねばという 覚悟から、
[ 現代の「立正安国論」として ] という旗幟を掲げた。
目次
はじめに
* 健丈な高齢者を重視する社会へ
世代交代が声高に叫ばれて
元気なら「みずから生きよ」が国の政策
「国際高齢者年十周年」の成果不在
序章 「高齢社会」ではどう生きたらいいのだろう
* 「高齢化率」二二%は世界最速・最高
「超高齢社会」がふつうの社会
「高齢社会」をみずからの問題として
「社会の高年化」を体現する
* 高年化時代の五つのステージ
「いさぎよい隠退」への異議
高年期のライフ・サイクル
「五つステージ」が人生の舞台
第一章Ⅰ まずは「家庭内の高年化」からはじめねば
* 「マイホーム中心」の時代
マイホームに「マイ」がない
「ツカエナイ親!」とはなんだ
「貯蓄ゼロの日」へのカウント・ダウン
* 専用品をつなぐ暮らしの動線
「マイ・チェア」即座の効用
「高年化コア(核)用品」の候補たち
家庭内の高年化」自己認定
* 近居より「三世代同等同居」が未来型
娘世帯が「実家」へUターン
「暮らしの知恵」を孫に伝える
「三世代同等同居型」住宅をつくる
*  熟成期を共有する「シニア文化圏」
「シニア文化圏」というのは
「語られるシニア文化」の内容
多種多彩な「シニア文化圏」
第一章Ⅱ 暮らしにうるおいをもたらす国産優良品
* 家庭用品の「途上国化」
暮らしの「途上国化」が一気にすすむ
アジア諸国の「日本化」と日本の「途上国化」
「国産優良品」の持つうるおい
* 「足踏み」して待つ熟練高年技術者
生涯現役の跡継ぎ二世の苦悩
「ほどほどの赤字人生」が男子の美学
「待ち受け状況」(閉塞状況)に耐える
* 「高年化国産優良品」の開発に活路
「国産品モニター」としての高年者
「高年化製品経済圏」が日本経済を上支え
「人生の夢、日本の夢」
*  「造る者」と「使う者」の出会い
「シニア用品展示会」の開催
「(仮)日本シニア用品展示会」構想
「(仮)地方シニア用品展示会」への展開
第二章 社員・社友はどこまで企業を守れるのだろう
*  九割中流社会の実現と崩壊
「維新期」「戦後期」「新世紀」の三つの変革期
九割が「中流と感じる社会」を実現
「日本経済の萎縮」をもたらす要因
* 「日本型企業」の特徴と見直し
「日本型企業」の特徴と優越性
「アメリカ型マネジメント」の旋風
持続可能な企業形態につくり直す
* 高年技術者の社内温存
社内に「モラル・ハザード」が広がる
「パラレル・キャリア指向」の有用性
「熟年高年社員・社友」の社内温存
* わが社が誇る「高年化優良品」
「わが社製品の高年化」を試みる
「職場の高年化」が「高年化製品」の基礎
「泉眼型の中小企業」に期待
* 世紀初頭に「第三の立国開化」
「社内ミドル化」と「社内シニア化」を両立
「SWIT型会議」が新・日本型マネジメント
「和の絆」(愛社意識)を組み込む
第三章Ⅰ 日本再生のヒントは「地域の四季」にある
* 地域特性と季節感
「双暦」に慣れる暮らし
高年期は「二五年・百季人生」に
「季節小物」の季節替え
* 「一年」とともに「四季」を折節の基本に
「自作五句」を自己選定
「八方時刻」を使いならす
「祭事・歳事・催事」に参加する
*  時節の変化を楽しむ暮らしの知恵
「倉持家の蔵の中」を覗く
「季節和装」が衣の趣向
「旬菜料理」と「口楽文化」
* 「四季型(通風)住宅」への回帰
「常春型(エアコン)」より「四季型(通風)」へ
「地域の四季」を演出する庭づくり
「外向的街並み」を実現する
第三章Ⅱ 「地域特性のあるまち」に住まう
* わがまちの「高年化地産品」
「日本的よき均等性」の成果
わがまちの「地域特性」を掘り起こす
熟練の手ざわり「高年化地産品」
* ふるさとを代表する「地域シニア会議」
「地域特性のあるまち」にするために
ふるさとの大地を踏み鳴らす
「地域シニア会議」と「地域三世代会議」
* 中心街は「モノと暮らしの情報源」
地域の中心街がシャッター通りに
失われる「地域の顔」
特性を際立たせる活性化
* 買い物と遊歩を楽しむ「四季型中心街」
歩行生活圏の中心に「買い物+遊歩空間」
「地域の四季」を組み込む演出
「三世代四季型中心街」をつくる
第四章  「官僚主導」で軽視されてきた健丈高齢者
* 高齢者は「社会の被扶養者」でいいのか
高齢者を「社会の被扶養者」と位置づける
「高齢化特任大臣」を置けない内閣府
「ユニバーサル・デザイン型」人生への異議
* 「次世代育成支援」に祖父母は不要なのか
「総人口減少」がはじまる
家族総出の子育てが基本
子育て支援の「都市型」と「地方型」
* 「合併新市」はシニア住民の参画を得たか
「平成の大合併」は終わりが始まり
生活圏の広域化と地域化
シニア住民が参画する場所
* 地域の人材養成は「(仮)地域シニア大学校」で
合併の大義は「地域を愛する人材」の養成
「新市の求心力」をどうつくるか
公立の「(仮)地域シニア大学校」
第五章 日本シニアだからできる国際貢献
* 「国際高齢者年十周年」の日本
二〇〇九年は「国際高齢者年十周年」
「高齢者のための国連五原則」
先駆的自治体の「高齢者憲章」
* 平和の証としての「日本国憲法」と「日本高齢社会」
平和と非暴力による「文明間の対話」
世界に誇れる「ふたつの平和の証」
国際平和の下で「憲法施行一〇〇周年」を祝う
終章 「高齢社会」ではこう生きたらどうだろう
* いらない高齢者にならないために
高年化活動への三つの契機
「高年者意識」を立てること
「職域と地域の高年化」の活動
* 高年期の人生を支える力
「日本列島総不況」と「老人力」
「日本高齢社会」と「丈人力」
「老化モデル」と「丈人モデル」
* 「三世代同等型」社会を意識する
「青少年期」(~二四歳)には国際力を養う
「中年期」(二五~四九歳)には「八面六臂」の活躍
「高年前期」(五〇歳代)は「パラレル・ライフ」
* 「時めき人生」と「意のまま人生」
「六〇歳~」は「時めき人生」
「高年後期」(七五歳~)は「意のまま人生」
全人標準としての「日本高齢社会」
おわりに
* 二〇〇〇年遡行の旅
「初志」というよりは「夢」として
日中交流の原点に立って
近・現代の日中交流
* 年たけてまた越ゆべきもの
綺羅星のごとき人びと
年たけてまた越ゆべきもの
本書目次止  本文254ページ
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2010年8月15日のメッセージ
増税(消費税)より前に、社会参画(高齢社会)構想を!!
高齢期を迎えているみなさん、この国は高齢者が暮らしやすい『日本型高齢社会』へ向かっていますか?

ごあいさつ

「平和憲法」と「高齢社会」
2010年8月15日、65回目の終戦記念日を迎えました。前世紀に全世界を巻き込んだ戦争の記憶を、「恐怖の体験」として持つ人びとは65歳より上になりました。「戴白の老も干戈をみず」(髪の白くなった老人も戦争を知らない)という長い平和の時期が、先人の受けた戦禍によってもたらされたことを知らなくては、平和の意味は見失われます。「平和国家」の達成は、大戦の終結とともに国民が選び、世界に誓った「百年の大計」です。
その証は、旗幟のように掲げる「平和憲法」と、日また一日の事実として平和裏に形成する「高齢社会」です。高齢者が安心して暮らすことができ、後人から敬愛を受け、「尊厳」を持って人生を生き抜くことができる社会が、国際的に誇れる「平和の証」の姿です。先人(両親)から託されたこのふたつを輝かせつづけるのは、65年目の今を生きるわれわれのほかにありません。

世界最初の「本格的な高齢社会」を迎えて

ご承知のように、わが国は「世界最速」で高齢化が進んで、世界最初の「本格的な高齢社会」(国際基準・65歳以上の高齢者が21%を超える)を迎えています。にもかかわらず、高齢者(ここでは50歳以上の約5000万人)の存在感が乏しいのはなぜなのでしょうか。理由は、われわれが体現者としての意識をもって高齢期を暮らしやすい「本格的な高齢社会」の創出へと向かっていないからですが、何よりその前提となるはずの政治リーダーによる将来構想がなく、論を張る学者の声は弱く、ジャーナリズムの警鐘も鳴らないのでは、高齢者層から世論の湧きようがありません。

「政不在」ゆえの「官主導」

「官僚主導から政治(国民)主導へ」を掲げて政権党となった民主党に期待があつまっていますが、官僚を攻めたてて事業仕分けをする前に、「政治不在」ゆえの「官僚主導」であったことをまず自省すべきでしょう。政治リーダーに「高齢社会構想」がなかったゆえに、官僚による高齢化対策は、財政難のなかでは「社会保障」が精一杯でした。増えつづける健丈な高齢者に対しては、単純化していえば「元気ならみずから生きよ」として軽視・黙止してきたというのが経緯としての事実です。
その証として、内閣府は「少子化」には「少子化担当特命大臣」を置いて対処しても、「高齢化」に対しては専任の「高齢化担当特命大臣」を置くことができないでいます。これでは「本格的な高齢社会」対策の打ちようがありません。

「二世代+α型」から「三世代同等型」社会へ

国の将来にかかわるテーマで論議をつくすべき参院選後の国会でも、「消費税」と「政治とカネ」が中心で、基本となる「少子・高齢化社会」を論じることはありませんでした。政権党となった民主党の「マニフェスト」には「本格的な高齢社会」についての構想がなく、高齢化政策はいぜんとして医療、介護、福祉といった「社会保障」の範囲にとどまっています。菅首相が掲げる「強い社会保障」も2割ほどの高齢弱者を対象とする「二世代+α型」の施策であり、「青少年」「中年」「高年」が等しく参画する「三世代同等型」社会への視点を欠いています。この「政治不在」が問題です。
5000万人の高齢者層が参画することで達成する「日本型高齢社会」が経済・財政再建の契機であり、「三世代同等型」社会にむかう将来構想を示すことが、誰より国を憂慮する政治リーダーの役目でしょう。各政党に対して、「少子・高齢化社会」構想を提案し、国民の前で議論することを要請しましょう。

「平和団塊」の人びとの参画に期待

いまや先の世界大戦のあと1946~50年に生まれた「平和団塊の世代」(約1000万人)の人びとが還暦・定年の時期を迎えて、「高齢社会」形成の側に加わりつつあります。しごとを続けるにせよ、引退ぐらしをするにせよ、保持している知力、技術力、気力、資力を渋滞させず、萎えさせずに暮らすこと。これは当事者である「国民」の側にとっての問題です。
いま全国に水玉模様のように広がっている「高齢化活動」の力を集積する牙城のひとつとして、ここに「日本丈人の会」(個人参加)と「日本丈風の会」(団体参加)を立ち上げます。ぜひご参加ください。
黙してひっぺがされる(消費税)より、まず動いて参画(高齢化活動)です。
2010・8・15 記  堀内正範   南九十九里にて

四字熟語-胸有成竹

きょうゆうせいちく

竹は竹かんむりの字が多いことからも、さまざまな用途をもった植物として親しまれてきたことがわかる。まず筆がそうだし、竿、箒、箸、箱、籠、笛、笠、節や筋もそうである。また竹はそのたたずまいを愛されて、詩画としても数多くの名品が残されている。

北宋時代の四川に文与可という竹の画に秀でた人がいた。ことのほか窓外の竹を愛でて、春秋、朝夕、晴雨といった自然の変化の中での竹を仔細に観察して描いた。同時代の文学者晁補之は「胸中に成竹あり」と称賛している。描く前に画が胸中に完成しているのだから上手なはずである。

ことをなす前にすでに胸中にしっかりした結果が見えている(成算がある)例として用いられる。
折りしもTPPへの加入問題に対する野田首相の態度について、「人民網」は「賭博かそれとも胸有成竹?」の見出しを付けた。賭博ということはないだろうが、といって国民を納得させる「成竹」が胸中に描けているのかどうか。 

晁補之『鶏肋集・八』から

四字熟語-邯鄲学歩

かんたんがくほ

いま若者は都ぶりをどこで学ぶのだろう。原宿か青山あたりだろうか。

ひとりの若者が都ぶりの歩き方を学ぼうとして、北国燕のいなかから趙の都邯鄲にやってきた。「邯鄲に歩を学ぶ」である。しばらく努めてはみたもののサマにならない。あきらめて故郷へ帰ろうとしたが、元の歩き方を忘れてしまって歩けない。そこで這って帰るしかなかった‥。

あこがれて都会へ出たものの挫折して故郷に帰る。しかし故郷でも受け入れられなくなる例もある。
古くから中原の古都であった邯鄲市にちなむ成語は一五〇〇余もあって「成語典故の郷」と称している。市内に「趙台」や「成語典故苑」を設けて彫像や碑文に託して展覧している。よく知られるものに「刎頸之交」「完璧帰趙」「奇貨可居」「背水一戦」「黄粱一睡(邯鄲之夢)」それにこの「邯鄲学歩」も。いまも明代の遺構を伝える石づくりの「学歩橋」が沁河に架かっている。蘭陵王入陣曲は日本から邯鄲に「秘曲帰趙」した。

『荘子「秋水篇」』など

 

 

四字熟語-天下為公

てんかいこう

世界各地で「辛亥革命一〇〇年」を記念する行事が行われている。立場によって評価は多様だが、中国史に二〇〇〇年余も続いた封建制(一家族が代々権力を引き継ぐ)を打破した民主革命であったことに異議はない。あとは優れた将相名賢をどう選び出して「天下を公と為す」かにある。

 「大道の行われるや、天下を公と為し、賢を選び能を与し・・故に外戸をして閉じず、是を大同と謂う」
外戸を閉じないですむ大同の社会は、政治を志す者の目標とされる。門戸を閉ざすことのない世の中なら長くはなかったが経験してきたような気がする。
この「天下為公」を孫文はよく揮毫した。有名なのは南京・中山陵正門の雄渾な筆遣いのもの。この原筆は台湾の故宮博物院に所蔵されていて、その博物院正面にも掲げられている。

日本では神戸・孫文記念館にある直筆の碑が有名。麻生太郎元首相は「為公会」を結成して公のための政治を唱えたが、政権は短命に終わってしまった。 

『礼記「礼運」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」2011・10・15号
堀内正範 ジャーナリスト