世界で最初・最速で迎えているわが国の「本格的な高齢社会」。これからの姿を構想し、提案として国民に訴えて合意を形成しながら達成することができるのは、政治リーダー(+官僚)、学者、ジャーナリスト、それに一部の経済人を置いてありません。それぞれの立場で構想を提案し、国民の理解をうることをめざして綿密な議論を重ねることになります。
わたしは一介のジャーナリストですが、10年をかけてこの国の高齢化の推移を仔細に観察して、一歩先に得た構想を「新著」に掲げました。ここでは国の将来を政策によって創出できるお立場にある政治リーダーのお一人おひとりに訴えています。
わたしの「警世の叫び」がお耳に届くかどうか。
堀内正範(朝日新聞社社友・元『知恵蔵』編集長)
新著『丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』
「地域力」の違いが際立つとき
いまわが国の課題は外交とは逆に内政(地域)なのに、国会は「尖閣」問題で紛糾していて、その間も国民の暮らしへの不安は増すばかり。地域での「少子化・高齢化」は、日また一日、目に見えて進んでいるのに「子育て手当」と「社会保障」では、総体的かつ根元からの解決にはなりません。したがって住民の将来への安心へとつながりません。
来たるべき「統一地方選」。
そこに向かって、それぞれの地域が競い合うことで、「地域力」の違いが際立つことは必至の情勢です。
その際立ちの中心になるのは、これまで沈黙してきた3900万人(票)の60歳以上の高齢者。長年かけて蓄積してきた知識と技術とほどほどの資産をもつ60歳代・70歳代のみなさんが、みずからのためにその存在感を明らかにすること(意思表示)によって、わが国のこれまでの時流であった「途上国型若年社会」から国際的潮流である「先進国型高齢社会」への転機を迎えることになります。
その潮流を呼び起こすのは、地域の代表であるお一人おひとりの政治リーダーの活動であり、それを伝えるのがジャーナリズムの役割と信じます。
社会的に軽視されてきた60歳以上の高齢者層
声高に世代交代がいわれる一方で、60歳以上の高齢者層の存在が社会的に軽視されてきました。30歳代・40歳代を主としたコミュニティによってこの国が支えられるのでしょうか(コミュニティ=パイが小さくなるばかり)。とくに「地域再生」となれば、長年かけて培ってきたさまざまな能力をもつ60歳代・70歳代のみなさんの参画なくしてありえないことはだれもが感づいているところです。問題はだれがどうするかです。
すでに1971年にわが国は「高齢化社会」(65歳以上の人口比率が7%以上という国際基準)に達していました。その後も比率を増やしつづけて40年、いまや23%を超える「超高齢社会」(本格的な高齢社会)になっています。そのうちの2割ほどが医療・介護など「社会保障」の対象になる高齢弱者ですが、7割以上のみなさんは何らかの形で社会参加をしたいと望んでいる健丈な高齢者です。知識も技術も高く、ほどほどの資産をもつ60歳代・70歳代のみなさんの参画を得ないままで、どうやって地域の活力を発揮できるのでしょうか。特性を活かして地域を活性化させずに「国難」を乗り切ることもまた困難です。
「地域再生」のために「強い高齢社会」を形成
「地域主権」を強める方向での速やかな財政投入(移譲)は、財政の即効性を期待するキーワードとなっていますが、地域住民の強い関心と参画意欲なしには実効を持たないことは明らかです。菅内閣は「強い社会保障」での「雇用創出」と安心感の醸成を掲げていますが、地域再生をめざした多くの健丈な高齢者の参画による「強い地域高齢社会」の形成までは視野になく、当事者である地元に任されています。
それを知る政治リーダーであるお一人おひとりが、来たる「統一地方選」に向けて先頭に立って活動し、この国の「地域力」をよみがえらせる(国難を救う)ための強力な布石となり種火となることを願ってやみません。
各地域代表の政治リーダ-が、「地方再生」のために健丈な高齢者層の社会参画を呼び掛けることによって、財政規模をはるかに超えた効果を生ずるものと想定されます。政治リーダーがみずから旗手となって「地域高齢社会」の創出を呼び掛け、全国3900万人(票)の高齢者層が呼応して内在する「地域力」を燃え立たせることによって、特性のある地域を現出することになります。具体的に何をどう訴えるかについては拙著のなかに仔細に提案していますが、地域特性に応じた「地域構想」を作成して訴えることで、具体的に地域特性を活かした「地域力」を醸成することができます。時代を動かす起爆力をもつ「強い地域高齢社会」への方向が示されるとき、住民ははじめて将来への安心を得るものと確信いたします。
お一人おひとりの政治リーダーの方に、ひとりのジャーナリストとして衷心よりふたたび訴えます。みんなが安心して高年期を迎え、敬愛されて暮らせるようなこの国にふさわしい地域の姿、ほんとうの「日本型高齢社会」を、ともに力を尽くしてつくりましょう。
堀内正範(朝日新聞社社友。元「知恵蔵」編集長)
新著『丈人のススメ 日本型高齢社会「平和団塊」が国難を救う』
堀内正範 ほりうち・まさのり略歴:1938年11月1日、東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、朝日新聞社に入社。『知恵蔵』編集長などを努める。1994年に早期退社して中国洛陽市へ。洛陽外国語学院外籍教授を経て同学院日本学研究中心研究員。国際龍門石窟研究保護学会本部顧問。
〒299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
TEL & FAX 0475-42-5673
E-MAIL mhori888@ybb.ne.jp
公式ホームページ https://jojin.jp
著書:『洛陽発「中原歴史文物」案内』(新評論)、『中国名言紀行・中原の大地と人語』(文春新書)、『人生を豊かにする四字熟語』(武田ランダムハウスジャパン)
新著『丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』(武田ランダムハウスジャパン 2010・7・1刊 1500円・税別)
<注>
「丈人」とは・・
古典には「四体勤め、五穀分かつ」(身体を使って労働をし、五穀を収穫する)ことをよしとする健丈な老者として現れる(『論語「微子」』)。ここでは古語の意味合いを援用して、いまそれぞれの活動によって、わが国の「高齢社会」を引き受けつつあるみなさんを励ますことばとして、「老人」に対比して「丈人」と呼ぶことに納得がえられるように思える。これまで積み上げてきた知識や技術やさまざまな能力をどこまでも発展・熟達・深化させようとして働く力、ふつふつと涌いて出る強い生活力あるいは生命力を、本稿では「丈人力」(joujin-ryoku)と呼んでいる。(本書オビより)
「平和団塊」とは・・
先の大戦後に生まれた昭和22年~24年の約700万人の人びとを、「団塊世代」(堺屋太一さんの同名書から)と呼び、教育や就職や商品開発・販売などの場での社会的影響が語られてきました。
ここではあの戦争の惨禍のあと、ご両親によって平和裏に生きることを託されて育てられた戦後生まれのみなさんを「平和団塊」(昭和21年~25年生まれ。約1000万人)の人びとと呼ぶことで、平和期がつづいたわが国の「高齢社会」の体現者として歴史的位置づけをしています。それは先人が願いとした「憲法」の平和主義とともにふたつながら平和の証であり、百年の計として今世紀の日本を輝かせる歴史的モニュメントであるからです。前人未到の「日本型高齢社会」の形成は、そのプロセスを含めて国際的にも注目され達成が期待されており、その中核を担う人びとです。
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