「政権交代」の衆院選をおえて

先の衆院選(2009・8・30)では
官僚主導から政治(国民)主導による
「政権交代」
を訴えた民主党が大勝利した。
それにより際立つことになったのは、30~40歳代の
新人議員の動きであり、政治家の若手しろうと化でもある。
しかし成立した鳩山内閣は平均年齢が60歳を越えていて
麻生内閣より高年であるとともに安定した布陣が評価され、
それをとやかくいう若がえり推進派はいないようだ。
歴史的な大敗北をした自民党でも新総裁選出にあたって
若手筋から派閥領袖の主導を排する「世代交代」が声高に叫ばれ
「政界の若年化」がいっそうすすむ気配が濃厚になっている。
しかし高年層の支持を受けた谷垣さんが選ばれることに落ち着くだろう。
繰り返すが、重要なのは年齢ではない。
長い経験と思索によって練り上げた独自の将来像をもち
それをみんなが共有する姿にできるような独自の表現力のある人物を
地域や分野の代表として政界に送り込むべきなのだ。
「たなぼた」といわれるような拙速な手法で候補者を出す政党に
この国の将来が左右されるのはいいとはいえない。
次の国政選挙である来年の参議院選を選挙民として注目しよう。
とくに自民党陣営は優れた人物が落選議員や二世のなかにもいるだろうが、
新たに広く求めて選挙民が地域の代表としてふさわしい人材の
発掘に力をつくして来年の参議院選挙に臨むべきであろう。
すでに候補ありきという姿勢では勝てないし、
なにより時代を動かす力にはなりえないからだ。
そんな野党なら不要であり、再興はむずかしい。

後期高齢者の医療費

なお高齢化が進むから当然、
後期高齢者(75歳~)の医療費は増大する。
その費用をだれが負担するのか。
「高年化社会」で国民全体の理解が得られるしくみは、
最後まで国が負担するというものだろう。
安心して長寿をまっとうできること。
けっしてその逆であってはならない。
75歳を過ぎて複数の病気にかかったり、
治療が長期にわたってしまうようなら、
早期の死を覚悟せよというのが、
新たに創設された国の医療制度の方向である。
75歳以上を対象とした
独立の 「後期高齢者医療制度」がそれ。
平成20年4月から実施されることになった。
どう言いつくろってみても、
国庫負担(5割)と現役世代支援(4割)の負担をいい
長寿を求めるなら、住んでいる家を担保にし、
個人資産を売り払ってせよというものなのである。
それがあるならいいが、
国のために尽くし、身銭を切って社会貢献をしてきた
75歳以上の善良な高年者には、
いささかつらすぎる方向なのである。

エイジレス・ライフ

高年期のありようとして、
「エイジレス・ライフ」
(年齢にとらわれない生き方)
という主張には注意しよう。
高年者が若年世代のための第二軍に
組み込まれてしまうからだ。
高年になればなるほど、
年齢は意識しなければならない。
「高年者」の「高年期」を意識した活動が、
そのまま新たな「高年化社会」の形成になる。
本稿がなんども記してきたところだ。
ところが内閣府は、「すでに高齢期を迎え、又は
これから迎えようとする世代の
高齢期における生活の参考としてもらう」ために、
エイジレスな生き方の例を募集している。
「若年世代」や「子育て世代」や「高齢世代」自身を
支えている高齢者(65歳以上)のいい事例を、
「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」
において紹介するというのだが。
われわれ丈人の会としては、
「高年期」を意識した「高年者」の活動が、
そのまま新たな「高年化社会」の形成になる
といういい事例として応募して、
内側から改革を迫らねばなるまい。

YAHOOのウエブサイト

YAHOOのウエブサイトで
検索すると、「茶王樹」はもちろん、
「高年者年表」や 「丈人力」「多重標準」
からでも本稿にたどり着くことができる。
どこでどなたが確認をしているのか知らないが、
海岸の砂のような情報の粒々のなかから、
苦労してつくりあげたラウンジ・茶王樹蔭・用の
「高年者年表」と、
7年ががりで積み上げて高年化社会の
グランドデザインを提示した
『多重標準の時代 昭和生まれの丈人力』
を拾い上げてくれたことに感謝しよう。
それでも砂浜の粒のひとつであることにかわりはないが。
制作者としてはキラリと輝く粒子として、
どこかのだれかの目に触れることに希望をもてる。
「・茶王樹蔭・」とともに
「高年者年表」「多重標準の時代 昭和生まれの丈人力」でも
本稿に出会えるようになって、
あらたな仲間が集まって 「丈風」という文字を
浮き立たせることができたなら、
あらたな時代を登場させることができるだろう。
年初に当たって書初めをしよう。
「高年社会 平和之証」

成田市生涯大学院

もうひとつ、
首都圏の高年者大学の例として、
千葉県成田市の
「成田市生涯大学院」を紹介しよう。
年々講座の充実につとめながら
着実な成果を生んでいる。
入学資格は市内に住む60歳以上の人。
3年制で、受講費用は無料。さすが成田市である。
高齢者が大切な社会の担い手として、
その豊かな能力を地域社会の向上のために
活かすことによる新たな生きがいの創造をめざす。
教養講座(10:00~12:00)と専門講座(13:30~15:30)
の両方を受講するが、カリキュラムをみると、
新たな高年化社会の担い手を育成する意気込みがみられる。
専門講座は、書道・陶芸・園芸から1つを選択。
学習表をみてみよう。
新勝寺と成田 地球環境の現在
ガンの予防と早期発見 救急講習 薬の副作用 高齢者の病気
医療保険と介護保険 健康を作る食生活 心と身体のかけはし
パソコン研修 相続税について 俳句の作り方
自分史の書き方・・
高年者なら聴講してみたいものが多い。

姫路市立好古学園大学校

もうひとつ、兵庫県の
市立高齢者大学校には、
「姫路市立好古学園大学校」がある、
昭和45(1970)年の設立。
60歳以上の人で市外の人にも門戸を開いている。
キャッチフレーズは
「生きがいの創造 生涯学習の機会と場の提供
地域社会活動への参加」
で、学園の経緯を感じさせる。
4年制、2年制、大学院がある。
学科は「園芸科」「陶芸科」「書道科」「史学科」
「美術科(洋画・木彫)」「手芸科」「音楽科」(4年制)
で定員は600人。年額6000円。

明石市あかねが丘学園

兵庫県には市レベルでは、
「明石市あかねが丘学園」(高齢者大学校)と
「姫路市立好古学園大学校」がある。
「明石市あかねが丘学園」は、
昭和56(1981)年の設立。
市内に住む60歳以上が資格。
専攻コースは「景観園芸」「生活ふくし」
「ふるさとコミュニティ」「音楽交流」「健康スポーツ交流」で
定員はコースごとで30~40人。
3年制で授業は週1回、年間35日程度。
別にクラブ活動の日がある。年額1万5000円。
2000人を超える卒業生がおり、
OBボランティアは、社会福祉協議会や学校、福祉施設
などからの要望に応じて、ふれあい活動、イベント手伝い、
伝承活動、クリーン活動などをするほか、
常設のグループが、定期的に市内の高齢者施設、
障害者施設、病院、総合福祉センターなどで
活動している。
「姫路市立好古学園大学校」は、次回に紹介する。

高齢者大学「いなみ野学園」

兵庫県の 「いなみ野学園」の
「高齢者大学講座」(4年制)は、
生涯学習を通じて仲間づくりをするとともに、
新しい生き方を創造し、
地域社会の発展に寄与できるよう
総合的、体系的な学習機会を提供する。
資格は60歳以上。入学金6000円、年額2万4000円。
登校日は週1日、年間30回で120時間。
学科は「園芸」「健康福祉」「文化」「陶芸」の4学科。
学科別学習と教養講座を履修する。
「大学院」(2年制)は専門性の高い実践的な学習を通じて、
地域社会の課題の解決を支えるリーダーとしての人材を養成する。
県立高齢者大学を修了または卒業した者が資格。
週1日、年間30回程度。
「地域づくり研究科」、「生きがい創造研究科」を設置している。
学園の昼の食堂周辺は人生論に花が咲く。
週1回(水曜)はクラブ活動の日。

高齢者大学の現状

兵庫県が全国に先駆けて
昭和44(1969)年に開設した
高齢者大学が 「いなみ野学園」。
2年制の「地域活動指導者養成講座」と
4年制の「高齢者大学講座」、
それに2年制の「大学院」があり、
2300余人の高齢大学生が学んでいる。
「地域活動指導者養成講座」(2年制)は、
健康・福祉、地域教育活動などの
指導者を養成するため。
県内の市長・町長と
団体(自治会、老人クラブ、婦人会など)の長
から推薦された人びとが学習している。
年齢はおおむね56歳以上。
登校日は週1日、年間33回で
約132時間の講義と演習。
「健康福祉」系、「地域環境」系の2系群の
専門科目と教養科目を学習する。
「高齢者大学講座」と「大学院」は
次回に紹介しよう。

「シニアタウン」

一般の都市が
若年・中年者を中心に
形成されているのに対して、
高年者の要望を機能の中心に据えて
新たに形成される町が
シニアタウンである。
テニスコート、ゴルフ場、
公園、集会場といった
文化・スポーツ・健康施設や病院など
高齢者向け施設の充実がはかられる。
コミュニティのメンバーが
同世代という安心感がある。
アメリカでは「退職者の村」として知られる。
「日本初のシニアタウン」というのは、
1996年に福岡県朝倉市(旧甘木)にできた
「美奈宜(みなぎ)の杜」。
健康と生きがいのまちづくりがテーマ。
福岡市からも近く、
温泉のある田舎暮らしができることが魅力で、
平均年齢が63歳という高年者の町が成立している。