四字熟語「経国大業」 

経国大業 けいこくたいぎょう 

「経国大業」といっても国を経営するために業を興すことではなく、国家のリーダーは優れた文人であらねばならないという中国の伝統を明らかに宣したことばなのである。書も巧みだし、弁も文も際立つこと。

「文章は経国の大業にして不朽の盛事なり」といったのは、曹操の長子で三国時代魏の皇帝となった曹丕である。父の曹操も文人であり、丕の弟の植と合わせて「三曹」といわれた。当時、曹氏のまわりには文人層が集まっていたのだろうが、曹操なきあと三国争覇の軍を統率していたのは司馬懿である。こちらは息子の師、昭の三人が軍議をこらす姿を「三馬同槽」といわれた。そんな司馬氏に対する牽制の意味合いもうかがえる。みずから最高の文人を称えた曹丕だが、文才では弟の曹植の方が勝るというのが衆目のみるところだったようである。

いずれにせよ、国を動かすほどの人物は優れた文章力、表現力を鍛えあげてこそ事業もまた不朽でありうるというのである。

曹丕『典論「論文」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・7・25号
堀内正範 ジャーナリスト

丈人論―「強い高齢社会」へのしくみづくり<5>―

◎水玉模様の重なりのような「参画の形
 平和裏に半世紀をかけて築いてきたすべてを、一瞬にして瓦礫にしてしまった「大天災」に襲われて再確認したことがあります。それは、わが国の地域の暮らしを支えている活力は、四季折り折りに変化する風物との出会いがもたらしてくれる自然の恩恵「天恵」なのだということでした。
 繰り返される季節との出会い――春には桜前線が北上し、秋には紅葉前線が南下する。南からは春一番が吹き寄せ、北からは木枯らしが吹き抜ける。八十八夜の晩霜を気にかけ、二百十日の無風を祈る。南の海に大漁を伝えていわし雲が湧き、北の海にぶり起こしの雷鳴が轟く・・。
 わが国の自然は、四季の変化に調和がとれていて、それはまた海の幸・野の幸・山の幸を豊富にもたらしてくれます。この「天恵」を等しく分け合い、奪うよりは譲り合い、見捨てるよりは助け合う、といった「国民性としての和の心」(穏和、調和、親和、平和・・)が、自然のうちに育まれていると、これは海外の日本研究者が等しく指摘するところです。
 萎えた心を励まし、痛んだ身を癒してくれる風土・風物。それとともに先人が貯えてくれた歴史・伝統遺産。さまざまな知識や技術が人から人へと受け継がれ磨きあげられて、暮らしを豊かにしてきた「地場産業」や「お国ぶり」。
 青少年期・中年期を過ごしおえて、「人生の第三期」である高年期を迎えている人びとが、もうひとつ上のうるおいのある暮らしを求めて、四季折り折りの暮らしにかかわる「高年者(自分)のためのモノと場としくみ」を新たに形づくること。それが「社会の高年化」であり、いっそう多種多彩にしていくのが「高齢社会」であり、そうして日々刻々と変容してゆく「家庭・地域・職域」の姿を総体としてみる場合が「日本高齢社会」なのです。地域からの改革です。
 太陽光にせよ風力にせよ、「自然エネルギー」の活用も、地域の基本的な「四季変化のエネルギー」を考慮することによって有効性が増すことになります。やや大胆にいえば、震災地以外の地域の再生も、1980年代までさかのぼって、その間に失われていった「地域の四季の特性」を回復することを試みる時期にあり、それが可能なのは経緯をよく知る高齢者が健在であるからです。「しくみの再生」の基本にその活力の参画は必須の要件です。
 といって参画のしかたは、サッカーのサポーターのようにブルー一色の囲いの中でまとまっていきり立つことではないでしょう。そんなことはお互いに自立・自尊意識の強い高齢者にできっこありません。一人ひとりが孤立した「余生」ではなく、これまでなかった「日本高齢社会」の形成に、志をあわせて参画しているのだと意識して暮らしていることが実感できればいい。城というより大小の水玉模様がいくつも重なって広がっているような情景のほうがわかりやすいかもしれません。小さくともみんなそれぞれにいくつかの水玉模様をもっているというふうに。それでいいと思います。(次は8月15日)
「S65+」ジャーナル 2011・8・5
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 

  

丈人論-「強い高齢社会」へのしくみづくり<4>-

                     
◎企業は「高齢社員」温存の再リストラ 
20世紀のアジアで、半世紀をかけて「一国先進化」を成し遂げて、国民の9割までが「中流と感じる社会」を実現した日本。その原動力となった企業は、21世紀の初頭にはアジア地域の近代化のために、資金、施設、ノウハウ、人材を提供し、現地でその活動を支援してきた。「アジアの共生」のために一時期、「途上諸国の日本化、日本の途上国化」を必要としたということができる。 
ただしこれは歴史的な事実(学者の記述)であって、すみやかで仔細な「途上国対応」という国家政策が不在でしたから、企業は生き残りをかけて海外進出をし、施設を整え、現地社員に技術を教え、製品の品質を上げ、苦闘したものの収益を出すまでにはいたらずに撤収したものも数多くあります。
国内では多くの企業が「列島総不況」のもとでリストラを実施しました。正社員をまかなえず、高年社員をカットし、アルバイト、派遣社員などの導入によって途上国対応を余儀なくされました。国民は「百均商品」によって、家庭内の途上国化をおこない、収入減を補ってきたのは実感するところです。
 一方、高齢者が増えつづけて「超高齢社会」を迎えているにもかかわらず、ゆるやかで仔細な「高齢化対応」の国家政策が不在でしたから、高齢者は保持してきた知識と技術を渋滞させたまま定年を迎え、以後は黙止されてきました。
70%の人が定年を過ぎても働きつづけたいと希望し、そのうち35%が働けるうちはずっと、65歳までが26%、70歳までが24%と答えています。どこで?の問いには、今の会社やその関係48%、別の会社19%、自営・フリー12%などとなっています。(『朝日新聞』2011・7・23) 
こういう国民の意識は、いまある社会にみんなが親しみを持ち、たいせつに思い、なお良くしようと考えているからにほかなりません。この希望をどうやって実現するかが課題です。本稿では企業が「高年社員の温存」という再リストラをおこなって対応するであろうと観測しています。
途上国製品が安定して現地での日本企業の優位性がなくなったあと、企業は次のあらたな展開の時期を迎えます。「やや高だけれども良質で安心」というmade in Japan の商品が、生活感性の高いわが国の高齢者の暮らしを豊かにするために製品化されることになります。働き手は踊り場で足踏みをしていた高年技術者のみなさんです。それらはいずれ、遅れて高齢社会をむかえる途上国の高齢者が必要とする日本製品として輸出品となるものです。(次は8月5日)
「s65+」ジャーナル 2011・7・25
堀内正範 カンファレンス・スーパーバイザー

「オヤノコト.エキスポ」のこと

 内閣府と高連協共催による「平成23年度高齢社会フォーラム・イン・東京」が、ことしは7月17日(日)、東京国際フォーラムで開かれた。(別稿)
 下の展示ホールで、第4回になる「オヤノコト・エキスポ2011」が開かれていて覗いてみた。高齢の親をもつ子ども世代の「親孝行」を応援するというコンセプトで、70社ほどの企業が出展。「暮らしのゾーン」「おでかけのゾーン」「健康・食のゾーン」「生活設計のゾーン」「聴こえのゾーン」「介護・車イスのゾーン」「エンディングのゾーン」の7つのゾーンにわけて、「親のこと」に役立つ商品や情報を提供していた。

 40歳あたりが来場者の中心で、オヤの姿は少ない。隣のホールがウエディングの展示会だったせいもあるのだろう。「高齢社会フォーラム」に出て、高齢期をどう暮らすかを「自分のこと」として議論した当事者からすれば、「オヤノコト」をテーマにする展示会は、コンセプトが違う。あってもいいが、やはり11月幕張メッセで開かれる「s65+」(スーパー65プラス)が、「高齢社会」を自分で考える立場からは本筋に思える。

四字熟語「好好先生」

好好先生 ハオハオせんせい

中国の友人たちの快い「好(ハオ)」という応諾の声が耳に残る。しごとがスムーズに進むことになる。 

劉備に諸葛亮を薦めた司馬徽(号は水鏡)は人の短所を談ずるのをよしとせず、善にも悪にも、美にも醜にも「好好」(ハオハオ)といって応じたという。
わが子の死を悲しんで伝える人に対してまで「大好(ダーハオ)」と応じた時には妻がたしなめた。徽はすかさず、あなたの言うことは「大好だ」と妻を誉めてかわしたという。司馬徽が「好好(ハオハオ)先生」として納得されたのは、「好(ハオ)」が逆の「不好(プーハオ)」まで伝えるニュアンスを兼ね備えていたからだろう。
わが国では田中角栄首相だろうか。田中さんの「よっしゃ、よっしゃ」には、清濁あわせて時代を動かす宰相の迫力と魅力があった。

襄樊市の玉渓山中に、司馬徽を記念する「漢水鏡棲隠處」があって、劉備・諸葛亮の出会い「三顧草廬」にちなむ古隆中とともに観光名所となっている。 

『世説新語「言語」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・7・15号
堀内正範 ジャーナリスト

丈人論―「強い高齢社会」へのしくみづくり<3>―   

◎新自治体に「地域大学校」を(2) 
「地域大学校」は全国の県・市でさまざまに試みられていますが、みなさんの自治体ではいかがですか。どこでも横並びで「生涯学習(生きがいづくり)」の充実はめざしていますが、高齢者がもつ知識や技術を活かした「まちづくり・ものづくり」の人材養成をおこなう場としての「地域大学校」となると、取り組みに差があるのが実情です。
ここでは全国に先駆けて1969(昭和44)年に兵庫県が開設した「いなみ野学園」の現状をみながら、他の事例を合わせて標準的な姿を垣間見ておこうと思います。「いなみ野学園」は、1999年の「国際高齢者年」に「いなみ野宣言」を出している先駆的で由緒ある高齢者大学校です。
「高齢者大学講座」(4年制)が中心で、「大学院」(2年制)と「地域活動指導者養成講座」(2年制)があり、約2300人が学んでいます。教養をより高め、仲間づくりの輪をひろげ、新しい生き方を創造し、社会の発展に寄与できるよう総合的、体系的な学習機会を提供するというのが趣旨。資格は60歳以上の県在住者。登校は週1日、年間30回。専門学科は「園芸」「健康づくり」「文化」「陶芸」の4学科。専門講座と高齢期に必要な教養講座を履修します。
クラブ活動が週1回。囲碁、将棋、華道、茶道、書道、俳句、川柳、ゲートボール、コーラス、探訪、詩吟、ダンス、能面、舞踊、民謡、盆栽、謡曲、歌謡曲、表装、手描き友禅、インターネット、ゴルフ、太極拳など30種余。
専門学科の4コース(6月5日に記した「3つのカテゴリー」に見合う)には以下のような特徴があります。
・健康づくり学科―高齢期を健康ですごしたいという個人の願いと地域の福祉活動を教科に組み込むことで、卒業生は健常者として体の弱い人との交流、ボランテイア活動に参加。高齢者が元気なことが自治体の負担を少なくする。
・文化学科―知識を深め味わう文化教科を学びながら、郷土の風土と歴史、伝統行事を知る。卒業生がそれぞれの地元の伝統や暮らし方を研究し守っていくことで、まちの暮らしや年中行事が安定して遂行されることになる。
・園芸学科と陶芸学科―自分の庭の草花、菜園、果樹について学ぶ。自家に始まり、「緑のまちづくり」に繋がっていく。卒業生が多くなるほど街の緑が豊かになり、自然が大事にされるようになる。陶芸を中心にして、手作り技術が得意な人たちによる技芸のつながりを形成する。新たな地産品への契機となる。
「地域大学校」(2~3年が主)は、個人には豊かな人生と生涯の友人を得る機会となり、自治体は卒業生が多くなるほど「まちづくり・ものづくり」の人材が豊かになります。講座の講師も地元でまかなえるようになれば、旧来の老人クラブや生涯学習にはない求心力によって、それぞれの地域特性をつくることになり、将来のまちの構想も描けるようになります。「地域大学校」設立の遅速は暮らしやすいまちの差となるでしょう。(次は7月25日)
「S65+」ジャーナル 2011・7・15
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 
                      

 

四字熟語「力排衆議」

力排衆議 りきはいしゅうぎ

ふつうには権威や権力によって多数意見を強引に抑え込むことにいうが、複数の人のそれぞれの主張を聞き、ひとつひとつ論破して自分の意見に同調させることを「力排衆議」(力して衆議を排す)という。

後者の論法をやってのけたのが、三国時代・蜀の諸葛孔明である。強力な魏の曹操との和睦に向かおうと決めていた呉の孫権幕下の文武の者たちに対して、単身で乗り込んだ孔明は舌戦によって張昭以下を次々に黙らせた。その結果、魯粛の裁断によって劉備と孫権による長江連合が成立する。衆議にきわだつ先見性と実行の手段と論戦に確信がなければほんとうの「力排衆議」にはならない。歴史は苦難のときに、こうした力を持つ「非常之人」を登場させて、新たな局面をつくりだしてきた。

次の首相選びでは「大震災復興」をテーマに自薦他薦の候補を一堂に集めて舌戦を展開する。国民の前で衆議を尽くした末に「力排衆議」をなしえた人物に大任を託せればいいのだが。

『三国演義「四三回」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・7・5号
堀内正範 ジャーナリスト  

シマネスクくにびき学園(島根県高齢大学校)

 
◎シマネスクくにびき学園(島根県高齢大学校)(2年制)
○運営 島根県社会福祉協議会シマネスクくにびき学園
○所在地 273-8501 松江市東津田町1741番地3 いきいきプラザ島根
○連絡先 tel 047―460-6311 fax 047-460-6312
○創立 1983年、老人大学校を開校。2004年、ふなばし市民大学校として開校
○入学資格 満60歳以上の島根県在住者
○経費 入学金10,000円。授業料 18,000円。
○講座内容 4学科 東校・西校
社会文化科(東部25・西部20人)、園芸科(東部25・西部20人)、陶芸科(東部25・西部20人)、健康福祉科(東部25・西部20人)、合計東部校100人、西部80人。
○総合講座 地域活動、健康づくり、レクリエーション、介護予防、地域の身近な話題(県政、時事問題等)、学生親睦交流など。
○専門講座 社会文化科 身近な出雲・石見地方の歴史、民俗、文化、芸術、宗教等について講義だけでなく現地見学も交えて学ぶ。 園芸科 草花、野菜、果樹、庭の手入れ等についての基礎的な知識や技術を実習を交えて学ぶ。 陶芸科 陶芸についての基礎的な知識や技術を実習により様々な陶器を作製することにより学ぶ。 健康福祉科 ニュースポーツやレクリエーションなどの実習を交えて健康、介護、地域福祉、ボランティア等について学ぶ。
○クラブ活動(同好会活動)  うたごえ・水墨画・囲碁・卓球・書道・庭園探訪。
○学友会活動 学園生活をより豊かに、交流を深めるため、全学生をもって、学友会を組織し、修学旅行・研修旅行・学園祭・スポーツ大会等の自治活動を展開。
○卒業後のようす 約3100人。
○特徴・評価(堀内) 「日本一の田舎づくり」をめざす島根県にとって高齢者大学校の卒業生は貴重な人材である。豊富な経験と技術を持つ高齢者が、4学科それぞれの幅広い知識や新たな仲間を得ることにより、生きがいのある生活を営むとともに、地域活動の担い手となる。4学科のバランスもよく、個人の知識や能力を向上させて地域社会の発展に寄与する人材の養成に応えている。

明石市立高齢者大学校あかねが丘学園

◎明石市立高齢者大学校あかねが丘学園(3年制)
○運営 明石市立高齢者大学校あかねが丘学園
○所在地 673-0962 兵庫県明石市松が丘5-7-1
○連絡先 tel 078―918-5415 fax 
○創立 1981年、2年制として開校。1983年、4年制に。2000年、小学校(廃校)に移転。2002年から3年制。2009年、西分校(二見町東二見)開校。
○入学資格 60歳以上の市内在住者。
○経費 年額15,000円。ほかに実習費、障害保険代、学生自治、クラブ会費。 
○課目・学科 週1回35日以内。
本校 景観園芸30 生活福祉30 ふるさとコミュニティ40 音楽交流25、健康スポーツ交流50 (5コース165人。修業3年) 西分校 健康科学35 陶芸文化16 (2コース51人。修業2年)
○専門講座 
<本校> 景観園芸コース 園芸の基礎知識と技能の習得、景観デザイン、自然環境の保護などについて学び、園芸を通した世代間交流や地域交流、まちづくりへの参加参画の体験・実践。<地域活動実践例>幼稚園や小学校、施設の花壇作りを通した交流、自然観察会の開催。
生活ふくしコース 福祉に関わる理念、衣食住や環境など生活の諸問題、障害の理解と支援などを学び、生活文化の質の向上や福祉のまちづくりに取り組む。<地域活動実践例>子育て支援活動、高齢者施設利用者との交流、環境保護活動。
ふるさとコミュニティコース 明石の人物、歴史、地理、文化、自然環境などを学び、地域資源として活用。また地域課題を研究し、地域、関係機関とネットワークを結び、コミュニティを育てる方法を学ぶ。<地域活動実践例>遊びや文化の伝承を中心にした世代間交流、史跡ガイド、明石の環境調査、地域の安全パトロール。
音楽交流コース 音楽の基礎知識、リズム練習、声楽、器楽など、技術の習得を行ないながら、音楽を通した世代間交流、地域交流を企画実践する力を養う。楽器はリコーダーとキーボードを中心に学び、合奏では各自の得意な楽器を担当。<地域活動実践例>幼稚園、小学校や福祉施設で歌や楽器演奏を中心にした交流、地域イベントの主催または出演。
健康スポーツ交流コース  健康づくりの基礎理論、運動やゲームのしかたと指導法、イベントの運営方法などを講義と実習を合わせて学ぶ。周囲の人達や地域の健康づくりに指導的役割を果たし、地域交流・世代間交流の輪を広げる。<地域活動実践例>軽スポーツやゲーム、遊びなどを通した交流会の開催、健康づくりのスポーツや知識を普及・指導。
<西分校> 健康科学コース 健康づくりのための基礎理論と、体操やニュースポーツの実習、地域交流などに役立つゲームなどを学ぶ。さらにこれらを応用したイベントの運営や指導法を身につける。<地域活動実践例>軽スポーツやゲーム、遊びなどを通した交流会の開催、健康づくりのスポーツや知識を普及・指導。
陶芸文化コース 陶芸技術を習得するとともに、陶芸に関連する地域の歴史や文化など社会的なつながりを考察。また、これらを地域に発信するための手法を学ぶ。<地域活動実践例>市民、親子などを対象にした陶芸教室、視覚障害者作陶補助、チャリティバザールの開催。 
あかねが丘学園ボランティア会 社会福祉協議会や学校、福祉施設など、関係機関からの要望に応じて、ふれあい活動、イベント開催の支援、伝承活動、クリーン活動などをするほか、常設の6グループが、定期的に市内の福祉施設、病院、総合福祉センターなどで活動している。
○卒業後のようす あかねが丘OBボランティア協議会 卒業生の約80のボランティアグループが活動している。卒業後は地域社会でネットワークを広げながら、さらに実践力をのばせるよう活動の継続支援を行う。卒業生は学んだことを活かし地域の中で活躍しており、それが学園の誇りとなっている。卒業生は約3000人。
○特徴・評価(堀内) ボランティア活動、地域交流や世代間交流、自治会活動など、地域づくりに活躍する人材の育成を目標に学習を行う。これまでの長年の経験と知識にさらに磨きをかけ、気の合う仲間を見つけ、一緒に学んだ仲間と「地域デビュー」をめざすというのが目標。1・2学年では知識・技能の習得と仲間づくりに重点を置き、3学年で各自が選んだテーマでグループをつくり、卒業とともに地域活動を実践している。上記したように、在学中から社会活動の実践が組み込まれており、「まちづくり」のための大学校としての成果は際立っている。

「強い高齢社会」へのしくみづくり<2>

◎新自治体に「地域大学校」を(1)
 市町村合併を終えた新自治体のなかには、なお新住民の一体感の醸成に苦慮しているところもあると聞きます。これまでの合併の折りに、新自治体の一体感の醸成に寄与してきたのは教育機関・学校でした。
 「明治の大合併」のときには、村立の「尋常小学校」が合併のシンボルとされ、創立以来100年を越えて子どもたちに郷土への親愛の思いと多くの夢を与えてきました(明治21=1888年~明治22=1889年。300~500戸の村に1校。7万1314町村が39市1万5820町村に)。
「昭和の大合併」のときには、町立の「新制中学校」が合併のシンボルとされて、子どもたちは卒業すると、地元に残るもののほかは都会へ出ていって高度成長の担い手となりました。(昭和28=1953~昭和31=1956年。約8000人の町に1校。9868市町村が3975市町村に)
 さて「平成の大合併」で、新しい自治体は何を教育のシンボルにしようとしたでしょうか。財政難のもとでの合併協議の課題は、「地方分権」「生活圏の広域化」「少子・高齢化」でしたし、合併のステップからいうと人材教育については市立の「地域大学校」が推測されました。ただし「少子・高齢化」時代の教育対象としては、青少年ではなしに長い高齢期を地域で暮らす高年齢者であることも予測されました。すでに先進的な「高齢者大学校」の事例(兵庫県立の「いなみ野学園」など)がありましたから、将来の地域発展(再生・創生)のために活躍する人材を養成するために、地域性を加味したカリキュラムで構成する「地域大学校」が協議のなかで検討されても不思議ではなかったはずです。
 が、「少子・高齢化」については、将来の「社会保障」サービスの低下への危惧が指摘され、生涯学習の充実とシルバー人材センターの拡充が当面の対応とされましたが、「まちづくり」のための高齢者の知識・技能養成機関の検討がなされた例を聞きません。総務省主導とはいえ、かつてのように文科省が参画しなかったゆえの「世紀最大の失政」と歴史家が指摘することになるでしょう。
「平成の大合併」といわれた全国規模の市町村合併協議は、平成18(2006)年3月に一段落しました。平成11(1999)年3月にあった3232の市(670)町(1994)村(568)は、平成18(2006)年3月には1821の市(777)町(846)村(198)になりました。合併特例法(新法)による県主導の第2ステージがその後も続いていますが、全国的な関心は遠のいていきました。
 旧来の老人クラブと生涯学習ではとても求心力をつくれず、将来の姿も想像できませんし、潜在力のある高齢者のみなさんが、「まちづくり」のために新たな能力の発揮のしようもないのです。どうすべきであったか、あるべきかは、回を改めて論じます。
「s65+」ジャーナル 2011・7・5
堀内正範