丈人論―「強い高齢社会」へのイベントづくり<3>―

◎素敵なシニアライフを語り合う広場
「エキスポS65+」の三つのイベントのうち、スポーツイベント「未来都市MAKUHARIウオーク」については前回触れましたので、今回は内容がほぼ固まった交流イベント「素敵なシニアライフを語り合う広場」について、そして次回には9月13日に「出店社説明会」(東京フォーラム)をおこなった「総合展示会」についてお伝えすることといたします。
「語り合う広場」については、こう考えていただけたらと思います。だれもが激動の戦後昭和期を含む65年+を無事に過ごしてきて、いまはその間に得た友人や親族とそれとなく付き合っている。が、長年培ってきた知識や技術を活かせる場があればそうしたい。そういう社会参加を願っている多くのみなさんが集まって、長寿社会が直面している課題について自在に語り合う。そのためにさまざまなテーマの30余ステージが用意されています。(詳細は素敵なシニアライフを語り合う広場欄に。3日間通しで入場割引1000円)
一日目は、著名キャスター鳥越(俊太郎)さんの基調講演「歳には、勝てる」、『女性の品格』の著作もある坂東(真理子)さんの「さびない人生」、そして日本の先をゆく「元気な上海の高齢者」の暮らしぶりを馬(利中)さんが報告します。談論の場としては、「地域で支え合うシニア」では地域実践者のみなさんが問題を提起、「長寿社会のパイオニア」では元気な女性代表の樋口(恵子)さん、堂本(暁子)さん、渥美(雅子)さんが鼎談。ほかに「年金」や「ライフプラン」を考えたり、「健康食品」の選び方、「健康体操」の実技指導、きものを仕立てなおしたファッションショー「いよよ華やぐ」など。
二日目は、「じょうずな孫の撮り方」(沼田早苗さん)、「福祉用具の使い方」「デジタル機器の使いこなし」など実用のステージも。談論の場としては「生涯学習を楽しむ」「定年後の生き方」「NPOの今後」そしてフォーラム最大の「シニアの公開討論会」(堀田力さんほか)とつづきます。「食のトークステージ」(服部幸應さん)や「昭和とはどういう時代だったか」(半藤一利さん)も聴きのがせません。
 三日目は「三世代交流」にも配慮して、「次世代を育てる」では王選手を育てた荒川(博)さんが登場、「おもちゃの世界」「いけばなの実演・技芸ひとすじ」、「伝統がはぐくむ小江戸さわら」「住みよい街―江戸川区」からの報告、「70歳のワークライフバランス」「シニア世代のための住宅」、そして「フラ・フェスティバル」を楽しみながらのフィナーレに。
 語り合いの場は、ステージばかりではありません。あちらこちらに設けられた休憩所ではもちろん、さわれる・えらべる・つながれるがテーマの展示ブースでは、さまざまな談論の輪が繰り広げられることでしょう。だれもが昭和時代の哀楽をともにしてきた仲間ですから、分け隔てない会話が展開されるにちがいありません。そこからあすの「素敵なシニアライフ」の糧をつかむことができる。そういう愉快な予感がしています。(次は9月25日)
「S65+」ジャーナル 
堀内正範(本社カンファレンス・スーパーバイザー) 

丈人論―「強い高齢社会」へのイベントづくり<2>―

◎未来都市MAKUHARIウオーク
この秋11月15日・16日・17日に幕張メッセでおこなわれる「スーパー65プラス」は、3つのイベント構成の総合的な催しです。メッセで初めてであり、高齢先進国のフロント・ランナーである日本で初めてということは、世界で初の催しでもあります。何が初めてか。
65歳以上の元気な高齢者が対象であること。そして、
シニアの暮らしを支えるモノとサービスの展示会(3日間)
多彩な課題でシニアライフを語り合うフォーラム(3日間)
「元気に歩こう!」未来都市MAKUHARIウオーク(16・17日)
によって、すべての高齢者にそれぞれ関心のあるさまざまな出会いの場を提供していることにあります。参加者は歩いて、語り合って、展示を見て触れて、あすの素敵なシニアライフの糧を得ることになります。
ここでは9月1日にプレスリリースをおこなった「元気に歩こう!未来都市MAKUHARIウオーク」について見てみます。仔細には「s65+ホームページ・ウオーキング欄」をご覧ください。長い高齢期を元気で健康に過ごすためには、まず日常生活の動作が軽快であることが基本です。クルマ社会になってドア・ツー・ドアで“車行する人”は、気づかないうちに歩行をおろそかにして暮らしています。「開催概要」にあるように、手軽にいつでもできるウオーキングをおこなうことによって、日常の動作が改善されるだけでなく、高齢者に特有の生活習慣病や老年病の予防にも有効であることが実感されるようになります。
「未来都市MAKUHARIウオーク」は、幕張メッセをスタート・ゴール地点にして、参加者の体力と体調に応じたコースを歩いて、自分の健康を確かめると同時に、ウオーキング参加者でイベント会場を盛り上げようという試みでもあります。千葉県ウオーキング協会が全面的にバックアップしており、秋のウオーキング大会のひとつとして存在感をアピールする場となるでしょう。
日程とコースは、11月16日(水)の第一日目が東ルート(稲毛海岸方面)にAコース(22㎞)とBコース(17㎞)とCコース(7㎞)の3コース、11月17日(木)の第二日目が西ルート(谷津干潟方面)にDコース(20㎞)とEコース(15㎞)とFコース(8㎞)の3コースがそれぞれ設けられています。その中から一つを選んで気軽に参加することができます。今回は日本オリンピアンズ協会が特別協力していますから、知名のメダリストといっしょにゴールをめざすこともありそうです。
事前の参加登録費は1,500円(当日は2,000円)。そのうち500円が東日本大震災被災地の復興支援のため、日本赤十字社を通じて義捐金として届けられます。ウオーク終了後、そのまま展示やフォーラムの会場に入場できます。 
「S65+」ジャーナル 9月5日号
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 

丈人論―「強い高齢社会」へのイベントづくり<1>―

◎総合イベント「S65+」のコンセプト
8月25日、東京築地・高連協事務局会議室で、「s65+フォーラム」の企画運営委員会がおこなわれました。次に引用する呼びかけは、そこで検討された「参加ご案内」の冒頭の一節です。
21世紀の日本は世界にさきがけて「長寿時代」を迎えています。その体現者である元気なシニアのみなさんが、ことし11月、「幕張メッセシニアの祭典」に集います。前例のない長寿社会で暮らす者同士として、安心してシニアライフを過ごすために、3日間にわたって、さまざまなふれあいのシーンを繰り広げます。来場されるみなさんが初めて体験する画期的な催しです。
前例のない長寿社会で暮らす者にとって、心躍る呼びかけです。「エキスポ スーパー65プラス」が画期的な催しであるのは、高齢期のくらしを支えるモノとサービスの展示会 新製品エグジビション を中心にして、メッセをスタート・ゴール地点とした「元気に歩こう日本!」 未来都市MAKUHARIウオーク 、そして高齢者が直面しているさまざまな課題をみんなで語り合う 素敵なシニアライフを語り合う広場 の三つを総合イベントとして同時に開催することにあります。
本稿はすでに「人生を支える三つのカテゴリー」で、高齢期の人生が先行き不明な「余生一途」になることなく、先行きを見通してみんなが安心して過ごせるための「場」や、利用しやすい「モノ」や新たな「しくみ」の創出を呼びかけています。「強い高齢者」の活動なくして「強い高齢社会」が形成されることはありえないからです。
健丈な高齢期の人生を支えるのは、「からだ、こころ(ざし)、ふるまい」という三つのカテゴリーでの経験です。これ以外にはありません。「健康」「専門知識」「専門技術」といいかえるとわかりやすいでしょう。「強い高齢社会」というのは、この三つそれぞれの領域で、高齢者のみなさんがそれぞれの経験を活かして自在に参画して、暮らしやすい「モノ」や「場」や「しくみ」を新たに創出していくプロセスでもあります。 
元気なシニアのみなさんが、前例のない長寿社会で暮らす者同士として、「エグジビション」「ウオーク」「語り合う広場(フォーラム)」に、それぞれの関心で集うこと。これからの「素敵なシニアライフ」を、さまざまなふれあいのなかから見出すこと。
そのために、エグジビションにはどんな企業・団体が先駆的・先導的なモノやサービスを構想し制作し出店するのか、ウオーキングにはどんな形で参加できるのか、語り合う広場(フォーラム)にはどんなテーマの「談論する場」が用意されるのか。これから発表される内容に注目です。11月、「s65+ 幕張メッセ シニアの祭典」が待たれます。
「S65+」ジャーナル 8月25日
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー)

「日本丈人の会」とは・・

日本丈人の会」とは・・
 高年期を内向的 余生型にすごす「老人」であるよりも、地域社会や地域産業の高齢化に対応し、また「自分がその木陰で憩うことがない樹を植える」といった次世代(三世代)への配慮もする高齢者(丈人=別項あり・「ご案内」など)として、自主参加するのが「日本丈人の会」です。
 みずからの人生をたいせつに豊かに過ごすとともに、国際基準のひとつとなる「日本型高齢社会」の体現者であることを自覚して暮らすみんなが集う場です。
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こんなふうに高年期を暮らしたらどうでしょう。
*提案1
「高年期のライフサイクル」を共有する
日また一日がたいせつですから、あまりくわしい期分けはいりませんが、60歳代~80歳代のみんなが「高年期のライフサイクル」を共有して「日本高齢社会」を支えていくこと。
「青少年期」    ~24歳  自己形成期  第1ステージ  2977万人
       (25歳~29歳  次期へのバトンゾーン)        743万人
「中年期」  30歳~54歳  社会参加期  第2ステージ  4252万人
       (55歳~59歳  次期へのバトンゾーン)       864万人
「高年期」  60歳~84歳       社会参加と自己実現期
                           第3ステージ    3574万人 
「長命期」  85歳~      自己実現期                        394万人
     (平成22年11月1日現在確定値。総務省「人口推計」から)
 とくに「高年期」を意識したみなさんが史上にまれな「超高齢社会」を担う主体者(丈人)として活動することで、これまでの「二世代+α型」社会にかわって、史上にあらたな「三世代同等型」社会を形成していくことになります。
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提案2
先方を見据えながらひとつひとつの「賀寿期(5歳層)」を過ごす。
老成一途の「高齢期」(余生・第二の人生)を漫然と過ごすのも人生ですが、先方を見据えながらひとつひとつの「賀寿期(5歳層)」を着実に迎えて暮らしていくこと。
                2011年では、      
百寿期(100歳以上)   明治44年以前       百寿100歳を超えて   
白寿期(95歳~99歳)  大正5年~大正元年     白寿99歳を含む
卆寿期(90歳~94歳)  大正10年~大正6年    卆寿90歳を含む
米寿期(85歳~89歳)  昭和元年~大正11年     米寿88歳を含む
傘寿期(80歳~84歳)  昭和6年~昭和2年     傘寿80歳を含む
喜寿期(75歳~79歳)  昭和11年~昭和7年   喜寿77歳を含む
古希期(70歳~74歳)  昭和16年~昭和12年  古希70歳を含む
還暦期(60歳~69歳)  昭和26年~昭和17年  還暦60歳を含む
<注>わたしの場合は昭和13(1938)年生まれなので、いま「古希期」の半ばにいます。平成23年は大正100年、昭和86年に当たります。
これまでも「賀寿」は個人的な長寿の祝いとされてきましたが、「高齢社会」では社会の構成メンバー(丈人)として年齢階層を意識することで、「歳を知り、歳に克つ」暮らしが可能になります。
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提案3
人生を支える三つのカテゴリーを意識する
「丈人」(高齢健丈者)の人生を支えるのは、「からだ、こころ(ざし)、ふるまい」という三つのカテゴリーでの活動です。これ以外にはありません。「高齢社会」の形成というのは、この三つそれぞれの領域で活動する高齢者が、自在に参画できる「場やしくみ」や利用しやすい「モノ」を新しく形成していくプロセスでもあります。 
1 「からだ=体・身」に関して。
健康な「からだ」の保持はだれにとっても生涯にわたる最大の関心事です。
高齢者仲間の会話は、お互いの支障(持病)の問い合いからはじまります。目や耳や歯の機能保全のことから心臓、肝臓、胃腸といった臓器の症候、各部位のがんに関する最新情報。そして薬、サプリメント、予防法、健康体操、ウオーキングまで、「からだ」に関する話題はつきません。食生活・衛生・医療・介護の分野の進歩と充実は、「強い社会保障」と「強い高齢社会」の基盤となっています。
2 「こころ=心・志」に関して。
「こころ」のありよう、生きがいは人生を大きく左右します。
「こころざし」として強く意識するものとそうでないものとがありますが、だれもが心の拠りどころとしての目標を持って暮らしています。人間(自己と他者)への理解の深化、蓄えてきた知識による正確でバランスよい判断や洞察、そして歴史や伝統への関心の広がり、さまざまな文化活動など、内面的な充実は人生の大きな喜びであり、「こころ」の交流の豊かさが人生の成果ともいえます。
3 「ふるまい=技・行為」に関して。
生涯を通じてどこまでも進化する能力は、個人的には「ふるまい」として表現されます。
工芸技術の練磨、芸能芸術の巧みな表現などからは、ひとつひとつ到達した「ものづくり」技術の高みや磨きあげられた「所作」の粋を知ることができます。暮らしに身近かな家庭用日用品からは、「モノ」に込められた親わしさが伝わってきます。熟達した技術が形になったさまざまな制作品は触れて快く、年を重ねて洗練された挙措ふるまいは見て美しいものです。
 この三つのカテゴリーへの関心の度合いは個人によって異なりますが、「だれもが安心して暮らせる日本高齢社会」を創出するためには、この三つのカテゴリーで個性的で実現可能な目標をもちながら「素敵なシニアライフ」の日々を過ごす「丈人層」の存在が基本となります。そしてその総和が「日本高齢社会」の豊かさの表現となるのです。
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◎わたしたちが当面する四つの活動
それぞれができる範囲で。
〇余生型の「老人」としてではなく、社会参加型の「丈人」を意識してすごす。
〇力を合わせて「地域高齢者(シニア)生活圏」や「地域高齢者(シニア)文化圏」を形成する。
〇自治体に公立(官民協働)の「地域生涯(シニア)大学校」を設置する。
〇内閣府に「高齢政策担当特命大臣(専任)」を置くよう要請する。
日本丈人の会事務局
堀内正範
-mail  mhori888@ybb.ne.jp
tel&fax 0475-42-5673
299-4301  千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
ブログ:らうんじ・茶王樹 南九十九里から

四字熟語「半部論語」

半部論語  はんぶのろんご  

『論語』のうち量の半分あるいは内容の半分の理解でよいというもので、『論語』を国学経典として敬う立場からは論外とされる。

この読み方でもっとも有名なのが北宋草創期の宰相趙普で、彼は『論語』しか読まない人物といわれ、政治家として学問の狭さを指摘されていた。そこで太宗(趙匡義)が彼に理由を問う。趙普は「むかしその半を以って太祖(趙匡胤)を輔けて天下を定め、いまその半を以って陛下を輔けて太平を致さんと欲す」と答えた。以後、「半部論語治天下」として用いられる。

近代日本でこの読み方に徹したのが渋沢栄一で、実業に就くことを嘆く友人に、その公益性を「半部の論語」(『論語と算盤』)の読み方で説得した。これまでに孔子学院は世界一〇二カ国・地域に四三九校(七月現在)が開設され中国語・中国文化への国際的関心は高い。が、現政権下ではなお「さまよえる孔子」であり、その間、実業家の理念を支える「半部論語」読みが底流することになる。 

羅大経『鶴林玉露乙編『』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」2011・8・15号
堀内正範 ジャーナリスト

次の首相になる資格

次の首相になる資格。

菅さんは震災後の首相として4つの過ちをおかしました。もちろん、本人は気づいておりませんが。
①福島原発へ飛んだこと、②若い人に後を託したこと、③遍路に出るといったこと。
宰相たるものは、大災難に遭遇したらみずからは現場へ動かず、対応の構想を示して現場は最良の人物に任せること。その人の成果とすべきです。超高齢社会での自分と60歳代の同世代に責任をもつこと、力不足をわびて、身近なすぐれた仲間に引き継ぐところです。そしてやめたらすぐに福島にゆくこと。
最大のあやまちは、④ぐずぐずしたために国民が求めていた政界あげての救国内閣ができなくなってしまったこと。

菅さんの要請発言はあったものの、50歳以下の人たちは誰であれ今回は出る幕ではありません。すぐれた先輩を支える側にまわるべきときです。そう発言して待つこと。それが見識です。

この国の首相は国会議員からしか選べません、それを旨として、まず20世紀後半に活躍し「9割中流」の社会をつくった各界の先輩に支援を求めること。政界の中での騒ぎから遠い賢人の声を聞くこと。そこから震災復興の救国内閣へのステップを踏み出すこと。歴史的視点からみて、そういう人が現れるときであり、本筋をはずしていないその人に注目です。

丈人論―「強い高齢社会」へのしくみづくり<6>―

◎「三世代同等型社会」をめざして 
8月15日は戦後66回目の「終戦記念日」です。ということは平和になった最初の年1946年に生まれた「平和の世代」が、65歳の高齢期を迎えたということになります。戦争のない平和の時代に生きることを両親から託された1946年生まれの人びとのなかには、仙谷由人、鳳蘭、宇崎竜童、吉田拓郎、北山修、柏木博、岡林信康、市川団十郎、田淵幸一、堺正章、坂東真理子、大島理森、菅直人、猪瀬直樹、藤森照信、倍賞美津子といった知名の人びとがいます。その後につづく1947~49年生まれのベビーブーマーである「団塊」(本稿では「平和団塊」)の人びとも60歳代になりました。 
戦後5年間(1946~50年)に生まれた1000万人を超えるみなさん(「平和団塊」の人びと)が、労苦して積み重ねてきた知力、技術力を萎えさせず、保持する資力を駆使して「自己実現」への人生を歩むこと。それが理念である「日本国憲法」とともに具体的な平和の証である「日本高齢社会」形成の道筋であるということはすでに述べたところです(6月5日・6月15日)。
心・技・体ともに充実して活動に実が入る「時めき人生」のまっただ中にあるみなさんの能力を温存できない企業、本来の「日本高齢社会」創成への道程を提案する政治リーダーの不在は、この国の不幸な現実です。現政権もなお「強い社会保障」に固執して、高負担(毎年約1兆円増)のそれを増税でまかなおうとしています。この高齢者を社会の「α(アルファ)」とする旧来の「二世代+α型」社会ではなく、高齢者が「自立」し、みずからを「ケア」しつつ「社会参加」することによる「三世代同等型」社会の形成が、平和裏に達成する「本格的な高齢社会」への道であることを、8月15日を機に改めて確認せねばなりません。
それによってはじめて高齢者が「尊厳」をもって長寿を喜んで生き、納得して次世代に後を託して生涯を終えることができるからです。8月15日、近代化のきびしい経緯を担い、戦禍に斃れた300万余の先人の霊に祷るのは、その悲痛な人生によってあがなわれた「平和の時代」であることを再確認するとともに、平和であるゆえに得た長寿をたいせつに生きること、高齢期を敬愛されて安心して暮らせる社会をつくること。
「東日本大震災」からの復興が世界の注目となるなかで、後に来る世界の途上国の人びとにとって「標準的モデル」となる高齢社会形成のフロントランナーであるわれわれは、国際的願いである「高齢者のための国連原則」(上の五つ。国連五原則。1991年採択)を胸に刻んで、60歳代~70歳代の高齢健丈者が中心となって新たな穏やかな生活圏である「三世代同等型社会」(本格的な高齢社会)のすみやかな達成をめざすことを、もう一度しっかりと誓えればいいと思います。(次は8月25日)
「S65+」ジャーナル 8月15日
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー)                  

丈人論―「強い高齢社会」へのしくみづくり<5>―

 
◎水玉模様の重なりのような「参画の形
平和裏に半世紀をかけて築いてきたすべてを、一瞬にして瓦礫にしてしまった「大天災」に襲われて再確認したことがあります。それは、わが国の地域の暮らしを支えている活力は、四季折り折りに変化する風物との出会いがもたらしてくれる自然の恩恵「天恵」なのだということでした。
繰り返される季節との出会い――春には桜前線が北上し、秋には紅葉前線が南下する。南からは春一番が吹き寄せ、北からは木枯らしが吹き抜ける。八十八夜の晩霜を気にかけ、二百十日の無風を祈る。南の海に大漁を伝えていわし雲が湧き、北の海にぶり起こしの雷鳴が轟く・・。
 わが国の自然は、四季の変化に調和がとれていて、それはまた海の幸・野の幸・山の幸を豊富にもたらしてくれます。この「天恵」を等しく分け合い、奪うよりは譲り合い、見捨てるよりは助け合う、といった「国民性としての和の心」(穏和、調和、親和、平和・・)が、自然のうちに育まれていると、これは海外の日本研究者が等しく指摘するところです。
萎えた心を励まし、痛んだ身を癒してくれる風土・風物。それとともに先人が貯えてくれた歴史・伝統遺産。さまざまな知識や技術が人から人へと受け継がれ磨きあげられて、暮らしを豊かにしてきた「地場産業」や「お国ぶり」。
青少年期・中年期を過ごしおえて、「人生の第三期」である高年期を迎えている人びとが、もうひとつ上のうるおいのある暮らしを求めて、四季折り折りの暮らしにかかわる「高年者(自分)のためのモノと場としくみ」を新たに形づくること。それが「社会の高年化」であり、いっそう多種多彩にしていくのが「高齢社会」であり、そうして日々刻々と変容してゆく「家庭・地域・職域」の姿を総体としてみる場合が「日本高齢社会」なのです。地域からの改革です。
太陽光にせよ風力にせよ、「自然エネルギー」の活用も、地域の基本的な「四季変化のエネルギー」を考慮することによって有効性が増すことになります。
やや大胆にいえば、震災地以外の地域の再生も、1980年代までさかのぼって、その間に失われていった「地域の四季の特性」を回復することを試みる時期にあり、それが可能なのは経緯をよく知る高齢者が健在であるからです。「しくみの再生」の基本にその活力の参画は必須の要件です。
といって参画のしかたは、サッカーのサポーターのようにブルー一色の囲いの中でまとまっていきり立つことではないでしょう。そんなことはお互いに自立・自尊意識の強い高齢者にできっこありません。一人ひとりが孤立した「余生」ではなく、これまでなかった「日本高齢社会」の形成に、志をあわせて参画しているのだと意識して暮らしていることが実感できればいい。城というより大小の水玉模様がいくつも重なって広がっているような情景のほうがわかりやすいかもしれません。小さくともみんなそれぞれにいくつかの水玉模様をもっているというふうに。それでいいと思います。(次は8月15日)
「S65+」ジャーナル 8月5日
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 

 
 

 

四字熟語「半部論語」

 半部論語 はんぶのろんご  

『論語』のうち量の半分あるいは内容の半分の理解でよいというもので、『論語』を国学経典として敬う立場からは論外とされる。

この読み方でもっとも有名なのが北宋草創期の宰相趙普で、彼は『論語』しか読まない人物といわれ、政治家として学問の狭さを指摘されていた。そこで太宗(趙匡義)が彼に理由を問う。趙普は「むかしその半を以って太祖(趙匡胤)を輔けて天下を定め、いまその半を以って陛下を輔けて太平を致さんと欲す」と答えた。以後、「半部論語治天下」として用いられる。

近代日本でこの読み方に徹したのが渋沢栄一で、実業に就くことを嘆く友人に、その公益性を「半部の論語」(『論語と算盤』)の読み方で説得した。これまでに孔子学院は世界一〇二カ国・地域に四三九校(七月現在)が開設され中国語・中国文化への国際的関心は高い。が、現政権下ではなお「さまよえる孔子」であり、その間、実業家の理念を支える「半部論語」読みが底流することになる。 

羅大経『鶴林玉露乙編』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・8・15号
堀内正範 ジャーナリスト

四字熟語「七月流火」

七月流火 しちがつりゅうか

盛夏の七月をむかえて、暑気炎熱いよいよ激しい時節の形容として一般的に使われていた「七月流火」に対して、本来の意味合いは「向熱」ではなく「転涼」であるとして誤用を指摘したのは天文にかかわる人たちだった。 

この「火」は、さそり座のα星アンタレスで、旧暦(農暦)六月の南天に赤く輝いて現れるが、七月になると西空に傾いて沈んでいく。これが「流火」であって、「七月流火、九月授衣」とつないで、秋涼を指すのが原典の意だという。

旧来の原義はそれとして、現実の生活感に親しい意味合いでの使用を誤用というなら「八月流火」を使おうではないかというのが「現代漢語」派の意見である。ことばは時代の波にもまれて意味を変えて定着する(約定俗成)。

定着してはいても誤用の代表のように騒がれるとさすがにメディアでは扱いづらいらしい。日本で用いられないのは緯度が高いために「流火」の鮮やかさに欠けるからだろう。

『詩経「豳風七月」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・8・5号
堀内正範 ジャーナリスト