丈人論-「強い高齢社会」へのしくみづくり<4>-

                     
◎企業は「高齢社員」温存の再リストラ 
20世紀のアジアで、半世紀をかけて「一国先進化」を成し遂げて、国民の9割までが「中流と感じる社会」を実現した日本。その原動力となった企業は、21世紀の初頭にはアジア地域の近代化のために、資金、施設、ノウハウ、人材を提供し、現地でその活動を支援してきた。「アジアの共生」のために一時期、「途上諸国の日本化、日本の途上国化」を必要としたということができる。 
ただしこれは歴史的な事実(学者の記述)であって、すみやかで仔細な「途上国対応」という国家政策が不在でしたから、企業は生き残りをかけて海外進出をし、施設を整え、現地社員に技術を教え、製品の品質を上げ、苦闘したものの収益を出すまでにはいたらずに撤収したものも数多くあります。
国内では多くの企業が「列島総不況」のもとでリストラを実施しました。正社員をまかなえず、高年社員をカットし、アルバイト、派遣社員などの導入によって途上国対応を余儀なくされました。国民は「百均商品」によって、家庭内の途上国化をおこない、収入減を補ってきたのは実感するところです。
 一方、高齢者が増えつづけて「超高齢社会」を迎えているにもかかわらず、ゆるやかで仔細な「高齢化対応」の国家政策が不在でしたから、高齢者は保持してきた知識と技術を渋滞させたまま定年を迎え、以後は黙止されてきました。
70%の人が定年を過ぎても働きつづけたいと希望し、そのうち35%が働けるうちはずっと、65歳までが26%、70歳までが24%と答えています。どこで?の問いには、今の会社やその関係48%、別の会社19%、自営・フリー12%などとなっています。(『朝日新聞』2011・7・23) 
こういう国民の意識は、いまある社会にみんなが親しみを持ち、たいせつに思い、なお良くしようと考えているからにほかなりません。この希望をどうやって実現するかが課題です。本稿では企業が「高年社員の温存」という再リストラをおこなって対応するであろうと観測しています。
途上国製品が安定して現地での日本企業の優位性がなくなったあと、企業は次のあらたな展開の時期を迎えます。「やや高だけれども良質で安心」というmade in Japan の商品が、生活感性の高いわが国の高齢者の暮らしを豊かにするために製品化されることになります。働き手は踊り場で足踏みをしていた高年技術者のみなさんです。それらはいずれ、遅れて高齢社会をむかえる途上国の高齢者が必要とする日本製品として輸出品となるものです。(次は8月5日)
「s65+」ジャーナル 2011・7・25
堀内正範 カンファレンス・スーパーバイザー