花花世界
はなばなせかい
春の野に見渡すかぎり一面に咲き誇る花々の世界。梅のあと杏、桃、櫻と季を追って各地に展開する。中国で「最も美しい郷村」と称しているのは江西省婺源で、金黄の菜の花と紅い桃と白い梨の花が特徴のある黒い屋根、白壁の建物を包んでひとしきり別世界を現出する。櫻だと鎮海(韓国)、吉野(日本)、無錫(中国)といったところ。
かつて「花花世界」といえば、宋代に都を追われて南遷した人びとが奪回しようとしてはたせず、夢にみた北方の東京(開封)や西京(洛陽)のことで、「中原花花世界」と呼んで慕った。
繁華な都市の爛熟する文化が生みだす戯れの花が「花花公子」(プレイボーイ)である。富家の出で正業に就かず、着飾って酒を飲み遊びに時を費やした若者たち。新中国には無縁だろうが、「花花公子」(アメリカの雑誌『PLYBOY』の中国名)は北京や上海の若者にも人気があり、性感美女の卡卡(ガガ)から捷豹(ジャガー)まで、現代都市を彩る花々は魅惑的である。
『説岳全伝「一五回」』など