安倍総理の所信表明演説を「高齢者不在」で読む 2
(演説は2013年1月28日。代表質問は 1月30日~2月1日)
堀内正範 「月刊丈風」編集人
総理が民主党野田佳彦さん(55歳)から自民党安倍晋三さん(58歳)に変わりましたが、残念ながら58歳の為政者の意識に、「高齢者参加による社会改革」構想は不在です。衆参の代表質問を終えましたが、「日本長寿社会」(超高齢社会・三世代多重型社会)構想を本格的に取り上げた議員はいませんでした。
金融と財政によるアベノミクスの効果は一過性であり、その反動を食い止めて経済成長を持続させるには、国民の持続的活力が必要です。その潜在力は、若者による「成長」活力(これまでの社会)ばかりでなく、年々増えつづけて3000万人に達した高齢者(65歳以上・23・3%)のみなさんによる「成熟・継承」の活力(史上に新たな「高齢社会」の形成)があります。
史上に新たな「日本長寿社会」(超高齢社会・三世代多重型社会)をつくる地域・職域での参画が不可避な時期を迎えています。旧来の「人生65年時代」の「支えられる高齢者」として年金と貯蓄で余生を送るのでは、もはやわが国は社会的にも財政的にも安定した姿を保てない段階になっているのです。
昨年9月に野田内閣が閣議決定した新「高齢社会対策大綱」はその課題解決の要件として、「人生90年時代」の「支える側の高齢者」(現役シニア)層の登場を指摘しましたが、国会からはその呼びかけが聞こえません。安倍人気と施政は先細りとなり、自力での浮揚はいよいよむずかしくなります。参議院選までに、国際的に注目されている日本の自力再生のために、戦後をつくった高齢者層がもつ現役シニアとしての潜在力をどう呼び起こすかに成否がかかっています。
以下は高齢者参加の視点による安倍演説の読み込みです。こういう意識が表明されてはじめて高齢者への呼びかけとなり、支える側の意欲が生まれるのです。(2013・2・2記)
・(増えつづける高齢者が参画した)持続的な経済成長を通じて(新たな)富を生み出すことができなければ「経済全体のパイ」は縮んでいってしまいます。
・(高齢者層のみなさんの参画をえて)これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージ(成長・成熟・継承)を提示します。
・大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして(とくに高齢者層による新たな)民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」
・「(すべての世代の)暮らしの安心・(高齢者のもつ技術・知識・資産の参画による)地域活性化」
・(とくに高齢者層による新たな)民間の投資と(優れた国産製品とサービスによる)消費が(増えつづける高齢者層によって)持続的に拡大する成長戦略
・「(生まれたばかりの子ども・育つ世代、生み育てる世代、生をいとおしむ世代のすべての国民が)健康で長生きできる社会」
・(これまでの歴史になかった)新たな富と雇用も生み出します。
・「(ライフ・)イノベーション」(<生から死までの人間存在にかかわる>技術革新)と(三世代多重型社会への)制度改革
・(「人生90年時代」の)未知の領域に果敢に挑戦をしていく精神
・今こそ、(国際的に先行する「高齢社会」形成で)世界一を目指していこう
◎若者もお年寄り(注:ここだけ。弱者の視点で)も、年齢や障害の有無にかかわらず、全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。
・「(一人ひとりが生涯にわたって)自らの力で成長(成熟・継承)していこう」という気慨を失ってしまっては、個人も、国家も、明るい将来を切り開くことはできません。
・(高齢者が)自らの中に眠っている新しい力を見いだして、これからも成長(成熟・継承)していくこと。
・「強い日本」を創るのは、他の誰でもありません。私たち自身(3000万人高齢者の参加)です。