[和風街着]の復活

全国各地に展開した
前世紀の街空間は、
専門店が並ぶ商店街があって、
その中心に「銀座通り」があって、
地域住民に流行の新商品を提供した。
とくに若い女性たちの洋風ファッションは
各地の「銀座通り」を華やかな舞台にした。
さて、新たな世紀の街着はどうなるのだろう。
愉快な情景として想定されるのは、
地域の素材と意匠をいかした
四季折り折りの街着の復活と新製品。
日常着として楽しめる「和装街着」である。
街を風靡してきた女性ファッションに重ねて、
新たな世紀での「和装街着」を演出するのは、
新たな人生を模索する高年期の男たちだ。
着心地のよい 「和装男性街着」 が各地に定着し、
季節ごとに競われて話題になる。
隣家のジージが「春の街着ベスト・ドレッサー」なんて
あっていい情景である。
とくに洋風では過ごしずらい夏季シーズンには、
新たに個性的な地域衣装をつくり出し、
地域の街並みに似合う
ローカル・ファッションを楽しむ。
街着は和風洋風(欧風)折半ほどほどがいい。

「男子必厨」と「長寿料理」

日々の食事は
けっこういける
コンビニ食品に頼って、
誰かが作ったみんなのための<
与えられた味覚に慣らされてきた。
高年期の暮らしともなると、
似つかわしくもないし、
それで終わってはなるまい。
時節とともに店先に現れる
新鮮な旬の食材を求めて調理した
自作料理による自家味覚の創出をめざす。
「男子必厨」丈人 として
みずから包丁をとって調理に立ち、
素材を吟味して 「自作長寿料理」 を考案する。
寿命の男女差7歳は少しは縮まるだろう。
時には自宅に朋友を招いて、
できたての旬菜を前に並べて
「しずかに新酒の数盞を嘗め、酔って旧詩の一篇を吟じる」
(白楽天の詩から)のもいいではないか。
季節の恵みによるこれぞ贅をつくした
わが家の食のシーンである。
味覚は生涯にわたって成長する
右片あがりの能力である。

国産の高年者用品

「高年化社会」を支える
モノと場の創出に乗り出す
健丈な高年層の人びと。
「昭和丈人層」の姿が
なお見えにくいが、
しかし優れた生活感性を持っている
この国の高年層の人びとが、
このまま途上国製品(百均商品)に
埋もれてしまうことはないだろう。
すぐれたノウハウと技術を蓄積している
活力のある「日本中小企業」が、
社員・社友をふくめた成員全員の力を結集して、
「やや高くとも、丈夫で長持ち」する
良質な 「高年者向け(超人生)用品」 を製作する。
丈夫で長持ちする手作りの製品は、
50歳代から使うとしての一生ものだから、
およそ30~40年の利用が目安だ。
ものによっては遺産となるような耐久性をもつもの。
引退した社友も現役社員も、みんなで資産としての
製品と会社を愛着をもって支えあい、
社会と会社をともに成熟させていくことで、
高年者が暮らしやすい社会が形成されていく・・。

百季人生

福祉・介護
の方面では
75歳以上を後期高齢者
と呼んでいるが、
ここでは50歳以上を二分して、
高年前期(50~74歳)
高年中期(60~84歳)
高年後期(75~99歳)
とし、それぞれの25年に属する
春夏秋冬の100季を、
暮らしの基準にすえている。
ひとつひとつの季節を ていねいに迎えては送る人生。
さまざまに季節小物を配して、 わが 「百季人生」 の日また一日を、
繊細に個性的に過ごすのは、 いささかささやかともいえる目標であるが、
人生の味わいはおおいに深まるだろう。
密室でぶんぶんクーラーを回して過ごす 無季節無機質な「常温」指向にかわって
「地域の四季」を家庭内にふんだんに取り込むこと。
忘れ去られていた床の間を折り折りの「四季花軸」が飾り、
しゃれたデザインの「四季カレンダー」が季節を伝える。
和洋折衷の住空間に、 豊饒な「わが百季人生」が刻まれる。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

高齢者のための国連五原則

二〇世紀末の
一九九九年は、
「国際高齢者年」だった。
その年の一〇月一日が 「国際高齢者の日」。
いま高年期を迎えている人びとのうち、
どれほどの人がみずからが参加する機会として
理解していただろうか。
国際活動は「国連中心」でといいながら
ここにも「分担金は多く実践は少なく」の姿がある。
国連は、21世紀に先進国から迎える「高齢化社会」への
熱い願いを込めて、
自立・・・・・(independence)
参加・・・・・(participation)
ケア・・・・・・・・・(care)
自己実現・・(self-fulfilment)
尊厳・・・・・・・・(dignity)
という「高齢者のための国連五原則」を
新世紀を前に採択して、(九一年)
毎年一〇月一日を「国際高齢者の日」と定めたのである。
「高年化」の成果を、この日に国際発信するのも、
高齢化先進国として期待されるわが国の 高年者の役割なのである。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

「三世代同等同居型」住宅

「実現目標
2020 +
世紀の夢2100」
のひとつ。
そう遠くない2020年を
当面の目標時点としながら、
さらに世紀へむかっての生活空間。
高年世代からみて「隠居型同居」住宅ではなく、
三世代が同等にプライベートな空間を持ち、
三世代が同等に共有空間を利用して暮らせるのが
「三世代同等同居型」 住宅。
時代の変容のなかでそれぞれに身につけた
ライフ・スタイルの異なる三世代が、
青少年期、中年期、高年期をそれぞれに
お互いに工夫して住みなして、
「わが家三代の暮らしの知恵」 を共有し享受し継承していく。
そんなどっしりと安定した住宅が、 「日本標準住宅」として実現される。
家族の態様や経年変化に応じた改造を、 同居するみんなで相談して加えながら
「わが家」の姿を形成していく。
やがては家並みも町並みも次第にどっしりと 安定した姿になっていくだろう。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

「マイ・ちえあ」

まずは
みんなが
その気になるだけで
実現可能なものから。
それでいて世紀を貫く夢のひとつ。
この国の高年者みんなが、
高年期のためにそれぞれに、
座り心地がよい特選のイスをわが家に据える。
自作できればなお素晴らしい。
家庭内の「わたしのモノと場」の拠点として、
存在感のある 「マイ・ちえあ」 である。
どうだろう、家の内と外、国中どこにでも
座り心地のよいイスが据えられていたら、
立ち疲れることもないし、
優先されない優先席などいらない。
各地にチェア工房が形成され、毎年の「ちえあ・コンペ」には、
各国からも腕よりの職人がやってきて技を競いあう。
高齢化先進国の姿として、
この国はそのまま 「ちえあ博物館」となる。
先々代、先代が使い込んだ「マイ・ちえあ」に腰を据えて、
愉快な座談が楽しめれば、 21世紀末の高年者たちは
「昭和丈人」の夢に 何よりも感謝するだろう。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

古希の祝いに[古希杖]を贈る

七〇歳が
稀でなくなった稀な時代。
七〇歳を「古希」と呼んできたのは、
唐代に詩人杜甫が詠んだ、
「人生七十古来稀なり」という詩句からとされている。
四七歳の時にこう詠った杜甫だったが、
本人は「古希」にはほど遠い五九歳で、
旅先で、貧窮のうちに、
長安へ帰る日を思いながら死を迎えている。
奇しくも同じ七七〇年に異郷の長安で、
「三笠の山に出でし月」を思いながら
阿倍仲麻呂が生涯を終えた。
仲麻呂は七〇歳を迎えていたから、
稀な長寿をまっとうしたことになる。
七〇歳のことを「杖国」というのは、
国事に当たる大夫が七〇歳になって、
国中どこででも使える杖を賜ったことからいわれる。
さて、唐の長安で七〇歳を迎えた仲麻呂は、
どんな杖を賜ったのだろう。
だれもが杖を贈られて「七十古希」を祝うえる現代こそが
「古来稀なり」なのであり、それ故に「丈人」ということばが、
装い新たに登場することになる。
「丈人」であるために持つのが杖。
いつまでもお元気でという思いをこめて、
お祝いに 「古希杖」 を贈るのもいい。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

老人力と丈人力

人生の晩期を、
巧みにクールダウンしてゆく
自己認識の能力を「老人力」という。
先の大戦後,働きづめにきた高年者を
癒してくれることばとして、
世紀末の列島不況時に納得された。
それに対して 「丈人力」 というのは、
人生の高年期の日また一日を、
目標を定め到達をめざして暮らしている
高年者の内側から、どこまでも発展・熟達・深化させる力、
ふつふつと涌いて出る強い生活力あるいは生命力をいう。
ここでは人生の「青少年期」「中年期」をすごしてきて、
個人的には「人生の第三期」である「高年期」を迎えて、
後半生を充足させる自己目標をめざして暮らす人びとであり、
社会的には存在感のある「高年化社会」を現役として担う人びと。
五〇歳~の健丈な高年者を「丈人」と呼んでいる。
個人の内面的なプロセスとして、
「老人モード」(もう歳だなあといった)か
「丈人モード」(まだやれるなといった)かが、
交互にか混在して実感されるときに、
「丈人」に意識的であることによって、
外面的には「丈人タイプ」の行動として
表現されることになるだろう。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範

[丈人]について

「丈人」
ということばを
ご存知でしたか。
「尊老」という意味合いの
レッキとした古語なのです。
同じ高年齢者をいう「老人」とは
異なるニュアンスをもっています。
個人の胸の中では「丈人」と「老人」は
同時に同居しています。
高年齢者であることを認めつつ、
「老人」と呼びたくない、呼ばれたくない場面で
「丈人」と呼んでみてください。
「大丈夫!」といってみてください。
知って胸の中に暖めておいたことばが、
時に心をなごませ、時には生きる意欲だって
沸き立たせてくれます。
街なかを歩いているときに、
「いよう丈人!」 と大向こうから声がかかるような
高年者でありたいと願っています。
みんなが「高年者=丈人」として
尊厳をもって暮らすことで、
「丈人の時代」が見えてくるのが楽しみです。
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らうんじ・茶王樹・南九十九里から
主人・堀内正範