千葉県生涯大学校(2年制)

◎千葉県生涯大学校(2年制)
○運営 千葉県生涯大学校事務局
○所在地 〒260-0801 千葉市中央区仁戸名町666-2
○連絡先 tel 043-266-4705  fax 043-266-4943
○創立 1975年。
○入学資格 60歳以上の県内在住者。社会参加意欲のある人。一般課程330人。通信課程550人もある。千葉市の「京葉学園」のほかに東葛飾学園、東総学園、外房学園、南房学園がある。5学園6校舎。
○経費 受講料18,000円(教材費は学生負担) 
○課目・学科 4
週1回 年間37日 
○専門学科4  福祉科70 生活科A35・B35 園芸科70 陶芸科A25・B25人。 
共通科目60時間。専門科目それぞれ88時間。 
○クラブ活動 詩吟、書道、俳句、短歌、絵画、ダンス、皮革工芸、写真、囲碁など。
○卒業後のようす 3万人を超える卒業生がいる。卒業後も共に学んだ学生同士のつながりを維持するとともに、卒業生による広域的な組織の下で、各地域において多様な活動を展開している。
○特徴・評価(堀内) 本格的な少子高齢化社会の進展にともない、高齢者が社会環境の変化に順応する能力を再開発し、心豊かで生きがいのある生活を営むための環境づくりは、高齢者福祉の大きな課題となっています。生涯大学校は、60歳以上の方々が、新しい知識を身につけ、広く仲間づくりを図るとともに、学習の成果を地域活動に役立てるなど社会参加による生きがいの高揚に資することを目的としています。(設置の趣旨)
 福祉科は、社会福祉活動に必要な知識等の習得。生活科は、新しい時代の中で健康的・合理的な社会生活を営むための知識等の習得。 園芸科は、園芸に関する基礎的な知識・技術の習得及び実習。 陶芸科は、陶芸に関する基礎的な知識・技術の習得及び実習など。
 開校以来35年、高齢者の生きがいづくりに先導的な役割を果たしてきたが、高齢者及び高齢者を取り巻く環境は大きく変化しており、生涯大学校の役割も県民ニーズに適合したものとすることが求められている。このような状況の中で、2008年5月に「千葉県生涯大学校のあり方」について千葉県知事から諮問を受けた千葉県社会福祉審議会老人福祉専門分科会が検討を行い、2011年1月に答申をおこなっている。
長い歴史をもち、卒業生も多く、先駆的な学園(大学校)として個人の生きがいづくりには貢献してきたが、地域づくりへの科目には整合性がなく、また卒業生のなかに精神的な絆を形成する歴史・文化や風土への仔細なアプローチができていない。そのために学園に蓄積がなされていない。専門学科の修正が急務であろう。

沖縄県かりゆし長寿大学校(1年制)

◎沖縄県かりゆし長寿大学校(1年制)

○運営 沖縄県社会福祉協議会 沖縄県いきいき長寿センター
○所在地 沖縄県総合福祉センター東棟5階 那覇市首里石峰町4-373-1
○連絡先 tel 098-887-1344  fax  098-887-1349
○創立 1991年。
○入学資格 60歳以上の県内在住者
○経費 受講料15,000円(教材費は受講者負担) 
○課目・学科 3 週1回4時間 火曜・水曜コース(定員180人)
○専門講座3 地域文化学科60 健康福祉学科60 生活環境学科60  
○クラブ活動 年16回1時間30分
○卒業後のようす 20期まで各期会の交流を密にしている。クリーン作戦も。
○特徴・評価(堀内) 男女比を同じにしている。大運動会も家族総出でおこなう。各科共通して「地域活動」や「ボランティア」のありかたを知り、口腔ケア・転倒予防・栄養改善といった「介護予防」を学ぶ。「郷土の歴史と文化」「沖縄の冠婚葬祭」「生活と環境問題」「くらしの法律」も共通。あとは「地域文化学科」なら民話や伝承、県内の史跡や埋蔵文化、伝統工芸など、「健康福祉学科」なら介護実習、救急法、認知症サポーター講座、体力測定など、そして「生活環境学科」なら住環境、リサイクル・エコの実践、リサイクル施設見学、生ごみを利用した土づくりも。個人の生活でのメリットとともに地域活動への関心のひろがりが養成できるよう工夫している。

丈人論-「強い社会保障」とともに「強い高齢社会」を<3>-

◎人生を支える三つのカテゴリー
 高齢期の人生が、先行き不明な「余生一途」ではなく、5歳きざみの年齢階層としてだれもが迎える「賀寿期(5歳層)」として、「古希期」や「喜寿期」や「傘寿期」を(女性はさらに「米寿期」が加わる)意識して、先行き愉快にすごせる「場所」や利用しやすい「モノ」の形成があっていいのです。
 そういう高齢健丈者の人生を支えるのは、「からだ、こころ(ざし)、ふるまい」という三つのカテゴリーでの活動です。「強い高齢社会」というのは、この三つそれぞれの領域で活動する高齢者が、自在に参画できる「場やしくみ」や利用しやすい「モノ」を新しく形成していくプロセスでもあります。 
1 「からだ=体・身」に関して。
 健康な「からだ」の保持はだれにとっても生涯にわたる最大の関心事です。高齢者仲間の会話は、お互いの支障(持病)の問い合いからはじまります。目や耳や歯の機能保全のことから心臓、肝臓、胃腸といった臓器の症候、各部位のがんに関する最新情報。そして薬、予防法、健康体操、ウオーキングまで、「からだ」に関する話題はつきません。食生活・衛生・医療・介護の分野の進歩と充実は、「強い社会保障」と「強い高齢社会」の基盤となっています。
2 「こころ=心・志」に関して。
 「こころ」のありよう、生きがいは人生を大きく左右します。「こころざし」として強く意識するものとそうでないものとがありますが、だれもが心の拠りどころとしての目標を持って暮らしています。人間(自己と他者)への理解の深化、蓄えてきた知識による正確でバランスよい判断や洞察、そして歴史や伝統への関心の広がり、さまざまな文化活動など、内面的な充実は人生の大きな喜びであり、「こころ」の交流の豊かさが人生の成果ともいえます。
3 「ふるまい=技・行為」に関して。
 生涯を通じてどこまでも進化する能力は、個人的には「ふるまい」として表現されます。工芸技術の練磨、芸能芸術の巧みな表現などからは、ひとつひとつ到達した「ものづくり」技術の高みや磨きあげられた「所作」の粋を知ることができます。暮らしに身近かな家庭用日用品からは、「モノ」に込められた親わしさが伝わってきます。熟達した技術が形になったさまざまな制作品は触れて快く、年を重ねて洗練された挙措ふるまいは見て美しいものです。
この三つのカテゴリーへの関心の度合いは個人によって異なりますが、「だれもが安心して暮らせる日本高齢社会」を創出するためには、この三つのカテゴリーで個性的で実現可能な目標をもちながら「素敵な高齢者」として日々を過ごす健丈な高齢者(本稿では丈人層)の存在が基本となります。そしてその総和が「日本高齢社会」の豊かさの表現となるのです。2011・6・5   s65+ジャーナル<7>

丈人論-「強い社会保障」とともに「強い高齢社会」を<2>-

◎「賀寿期」を生きる
 「強い社会保障」は現政府の主要政策ですから、大震災の影響があってもそう大きく後退することはないでしょう。それに応じて「強い高齢社会」を体現していく高齢健丈者としては、「日本高齢社会」はみずからの手で達成するという自覚を共有したうえで、存在感を明らかにしていく必要があります。
 なぜといって、アジア地域で最初の先進的な「高齢社会モデル」(モノ・場・しくみ)の創出が期待されており、自まえの経済・文化・伝統のもとで独自の手法を案出しながら形成にむかうからです。欧米の経験からえた外国モデルをもちこむような後進国的手法をとらないでいくことにしたい。
 そこで、「日本高齢社会」の体現者であることを意識するために、高齢者個人の長寿を祝う「賀寿」の慣習を、「賀寿期(5歳層)」の人生としてしつらえ直す提案をここに記しておきたいと思います。
2011年の「賀寿期(5歳層)」 
百寿期(100歳以上)  明治44年より以前   (100歳を超える)
白寿期(95歳~99歳) 大正5年~大正元年  (99歳=白寿を含む)
卆寿期(90歳~94歳) 大正10年~大正6年 (90歳=卆寿を含む)
米寿期(85歳~89歳) 昭和元年~大正11年 (88歳=米寿を含む)
傘寿期(80歳~84歳) 昭和6年~昭和2年  (80歳=傘寿を含む)
喜寿期(75歳~79歳) 昭和11年~昭和7年 (77歳=喜寿を含む)
古希期(70歳~74歳) 昭和16年~昭和12年(70歳=古希を含む)
還暦期(60歳~69歳) 昭和26年~昭和17年(60歳=還暦を含む)
・平成23年は大正100年、昭和86年に当たります。 
・戦後生まれ(昭和21年~25年。平和団塊)の人びとが還暦期に加わりました。
「賀寿」というのは、高齢期を過ごす人にとっては長寿へのステップ(一里塚)です。かつて幼いころに小学校に入り、中学校、高等学校と過ごして、大学で「社会人」としての準備を終えるという成長期の階層を刻んだように、「賀寿期」を5年ごとの階層として、日本伝来の慣習を熟年期を過ごす人生に活かそうという呼びかけなのです。
「老成一途」(余生)に漫然とすごす「老人」ではなく、日また一日を先方を見据えて「高齢社会」を築いている人びと(本稿では漢字表現として納得できる古語を援用して「丈人」と呼んでいます)。偉丈夫あるいは大丈夫といった高齢健丈者の姿は、TV画面や街なかや農村や漁港の海辺などでもよく見かけます。地方自治体の市町村長にも「老人」というより「丈人」と呼ぶにふさわしい頼り甲斐のある人が多く、被災地の町長さんや村長さんにも好例の方を見受けます。 2011・5・25

江戸川総合人生大学(2年制)

江戸川総合人生大学(2年制)
○運営 江戸川区文化共育部文化課 江戸川総合人生大学 北野大・学長
○所在地 〒133-0061 江戸川区篠崎町7-20-19 篠崎文化プラザ
○連絡先 tel 03-3676-9075 
○創立 2004(平成16)年10月
○入学資格 年齢制限なし。外国人も可
○経費 30,000円 
○課目・学科 2学部4学科 年間30回 
○専門講座2 地域デザイン学部(江戸川まちづくり学科 国際コミュニティ学科) 人生科学部(子ども支援学科 介護・福祉学科) 各学科25人程度。
○卒業後のようす 一期生からの修了生が学んだ成果を活かして社会参加している。江戸川区にはインド人居住者が多い。国際コミュニティ学科も国際交流で活躍している。
○特徴・評価(堀内) 区民が地域の課題を発見・認識し、その解決に向けて互いに知恵を出し合い、社会貢献へとつなげられる学びのシステムをつくり、「共育」「協働」の社会をめざす(基本理念)。「下町の心豊かであたたかい地域社会」を守り育てていきたい(学長北野大さん)。NHK解説委員だった村田幸子さんも介護・福祉学科長を務める。江戸川区は、高齢者を老人と呼ばずに熟年と呼び、福祉部に「すこやか塾年課」がある。60歳から参加する「くすのきクラブ」(1958年設立、207クラブ)と「リズム運動」(1980年開始、204団体)が高齢者の生涯学習やボランティア活動や健康づくり、仲間づくりに貢献している。修学生は高年者が多い。

房総沖地震の規模と確率を見直し

 3月11日からひと月めの4月11日、政府の「地震調査委員会」(阿部勝征委員長)は、三陸沖から房総沖(8領域)で将来発生する地震の規模や確率を予測する「長期評価」を見直すと発表しました。今回の「震源域(6領域にわたる)以外の房総沖などの海域でもM7~8の地震が誘発される可能性がある」とし、30年に20%という確率も見直すということになりました。

 この発表の日から九十九里海岸にほど近いわが家の安全性は失われました。同じ太平洋プレートに位置するかぎり、同じレベルの大地震と津波が襲うという覚悟をするしかない立場で、見直しを待つしかありません。6月9日の「地震調査委員会」は多くの内陸活断層にふれましたが、房総沖地震の見直しについては秋ころを目途にするといいます。それまでは発生しないという勝手な理解で安心していましょう。また学者のみなさんが「間に合わなかった」ということはないと信じて。

世田谷区生涯大学(2年制)

シニア・カレッジ 世田谷区生涯大学(2年制)
○担当課 世田谷区生涯現役推進課 03-5432-1111
○運営 世田谷区社会福祉協議会 
○所在地 世田谷区立老人会館内 生涯大学事務局 03-3419-2341
○創立 1977年6月。(30周年の2007年に世田谷区老人大学より改称)
○入学資格 60歳以上の区内在住者
○経費 入学金なし 年額12000円 ほかに学習費・教材費
○課目・学科 5 年間30日・週1回木曜日 
・専門講座(コース)5 社会と歴史 読・書再体験 福祉学習・体験・利用 生活文化 東京と世田谷の歴史 各30人 学習の日にかならず「健康体育」(1時間)をおこなう。
・自主研究会 修了後に合同でさらに2年間学習する。講義内容・日程は自主的におこなう。
○卒業後 4000人を超える修了者。同窓会に加入。講演会、見学会、幅広く活動。
○特徴・評価(堀内) 還暦後の長い「第三の人生」を、より健やかに豊かにするために設立された。「見知らぬ自分」の発見と自己啓発を通して、それぞれが新しい人生(ライフスタイル)を創造するとともに、習得した知識と経験を活用してコミュニティづくりに参加する。新しい高齢者文化の創造と発信の基地。新しい人間関係を築き、交流と連帯を生みだす場として、さらにシニア世代の自主的な社会活動の一つの拠点となる(設立の趣旨から)。公開文化講演会、学園祭、いきいきせたがや文化祭(高齢者クラブ・シルバー人材センター・生涯大学の3団体で)など学外にも接点がある。コース割に安定感を欠くが、先進事例として注目。

菅首相発言(6月2日)は「二重失格」です

  管直人首相は、「一定のめどがついた段階で若い世代のみなさんに責任を引き継いでいただきたい」といい、辞任後には「お遍路」をとまでいった(6月2日、「菅内閣不信任決議案」の採決直前の民主党代議士会)。高齢者のみなさんはあきれたにちがいありません。

 首相として何よりの資質の欠落は、現場で何かを成し遂げえなかったことではなく、震災後すみやかに政界あげて国難に当たる体制をつくれなかったことにあります。そして合わせて同世代の60歳代の仲間の力を期待しなかったことにあります。
 菅氏は昭和21(1946)年10月10日生まれですから、堺屋太一さんの同名の本から話題にされた「団塊の世代」(昭和22~24年生まれ、約700万人)にははいっていませんが、しかし戦後生まれ(本欄では昭和21~25年生まれを「平和団塊」と呼ぶ。約1000万人)を代表する政治家のひとりです。昭和22年には鳩山由起夫、23年には舛添要一、24年には海江田万里、25年には塩崎恭久氏などがいます。

 この戦後生まれ(平和団塊)世代を差し置いて、なぜ若い世代に引き継がせようとするのでしょう。同世代の仲間や先輩に謝罪して退くならまだしも、政界若年化を推し進めるようでは「日本(高齢)社会」の実態をまるで理解していないことの証です。こういう発言は、国際的に注視されている「超高齢社会・日本」の首相としては無責任きわまりないものなのです。
 そのうえでさらに「お遍路」にとは、あきれます。首相という責任ある立場からなら、「身軽になったらまず被災地にとんでいく」というのが指導者の本音であって当然でしょう。
 菅首相発言は「二重の失格」です。(6月5日記)

 そういう話をしたところ、知人のご僧侶が、「お遍路というのは人にいってするものではありません」といわれた。そのとおりで、菅さんの発言はさらに失点を重ねたことになる。将相のことばは「一言九鼎」といわれる。国のシンボルとされる鼎の重さに匹敵するという。日本の首相として、あまりに軽すぎる。(6月8日記)

丈人論 ―「強い社会保障」とともに「強い高齢社会」を<1>―

 2011・5・15 
◎高年期のライフサイクル 
 現代のわれわれからみても、「われ十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲するところに従って矩(のり)を踰(こ)えず」(『論語「為政篇」』から)と、みずからの人生を顧みた孔子のライフサイクルは、2500年後の今日でもおよそのところ納得されています。
 現代風にわかりやすく表現すると、「志(目標)をもって学んで三十歳で社会参加・労働参加し、五十歳代で成果を確かめて、六十歳でお互いの生き方の相違を認めつつ七十歳代で自己実現を図る」ということであり、「余生」とは遠い前向きな姿勢で顧みています。孔子は73歳で亡くなりましたから80歳、90歳がないのは残念ですが。
「強い地域高齢社会」を達成するためには、数多くの強い高齢者がそれも全国各地に広く等しく「高年期」を意識して暮らしていることが必要な条件になります。そのためにはこれまでの発達心理学による若年層に手厚い分類とは異なる「日本高齢社会」に見合った「高年期のライフサイクル」が共有され、日々の活動を支えていることがたいせつです。
「青少年期」    ~24歳 自己形成期 第1ステージ 2977万人
       (25歳~29歳 次期へのバトンゾーン)    743万人
「中年期」  30歳~54歳 社会参加期 第2ステージ 4252万人
       (55歳~59歳 次期へのバトンゾーン)   864万人
「高年期」  60歳~84歳 社会参加と自己実現期 第3ステージ  3574万人 
「長命期」  85歳~    自己実現期          394万人
         (平成22年11月1日現在確定値。総務省「人口推計」から)
 とくにこの「第3ステージ」を意識した高年者層が「高齢社会」を担う主体者として姿が明確にすることで、高齢弱者を支える「二世代+α型」の「強い社会保障」とともに多重標準としての「三世代同等型」の「強い高齢社会」が合わせて形成されていきます。各地にさまざまな「高年者コミュニティー」が創出され、活動が広がり、優れた技術による「高年者用品」が熟練技術者によって案出されることになります。生活意識の高いこの国の高齢者がいつまでも途上国製の「百均商品」に埋もれて暮らすとは考えられません。
これが内需の要であり、若手政治リーダーが「内需はもうだめだから」などと発言するのはもってのほかのことなのです。(次回5月25日)

ごあいさつ(2011年5月)

ごあいさつ
いかがお過ごしでしょうか。
 3月11日の「東日本大震災」の折には、どこにいてどんな体験をされたのでしょう。
同じ太平洋プレート震源につらなる南九十九里のわが家には実害がなかったものの、実際には呆然自失(判断の停止・活動の休止)という状態に陥りました。
 壮絶なTV映像。
 大戦後の半世紀余をかけて粒粒辛苦して築いた町、家、そして家族を、瞬時のうちに奪い去った大津波の情景は、いくら「想定外の天災」と言い重ねても胸の中に収まってくれません。福島原発の事後対処を見るにおよんで、自然への畏敬の念を没却してきた現代日本への警鐘ではないのかという疑念を断つことができないのです。
 この国の「人禍」(戦禍)のあとの長い平和の日々は、大規模な「天災」(地震・津波)の不発によって保たれていたということになります。 

 2カ月を経て、「天災」とともに「天恵」に深く思いをいたしました。この国の自然への対応は、古来その両面の理解の上に成り立っています。当然のことなのですが、大きな「天災」によって「天恵」に思いいたったということでしょうか。
 農業にせよ漁業にせよ、まちづくりや観光にせよ、「高齢社会」の形成もまた、この国の四季のめぐりの恩恵なしには語れません。拙著『日本型高齢社会』では一章をもうけて、80年代以降に急速に失ってしまった「地域の四季」「地域の特性」の再生を高齢者のみなさんに強く要請したのでした。 
 ここで課題はいっそう重くなったのですが、「日本高齢社会」の形成と「東日本大震災」の復興とを結んだ場所から、小さくとも具体的な活動をはじめることといたしました。
 わたしは一介のジャーナリストにすぎませんが、生涯現役の観察者としての立場から「警世(警醒)の言」を発する役割をつづけなければと考えています。
このたびの活動は、15年間の個人ボランティアを越える覚悟のもとで、終生にわたっての務めになりますので、活動の面でも資金の面でも厚いご支援をお願いいたします。
「唐突に失礼な」とお思いになる方もおいでかと存じますが、来し方のどこかでお会いして、何かとお世話になった方々みなさんに訴えています。
2011・5・20
南九十九里にて 堀内正範