友好都市・歴史が絆-世界歴史都市への視座

世界歴史都市への視座

京都市と西安市(陝西省) 

 奈良市―西安市に三カ月遅れて、京都市―西安市の友好提携は一九七四年五月におこなわれた。京都市の船橋求己市長を団長とする京都市友好訪中代表団が西安市を訪れ、五月一〇日、孫長興市革命委員会主任(市長)と船橋求己市長が友好都市結成の宣言式をおこなったのだった。西安市各界市民の熱い歓迎ぶりには、交流の将来への期待が強く込められたものであった。

孫長興市革命委員会主任(市長)は、
「西安と京都はともに悠久の歴史を持つ古都である。すでに一千年余りの友好往来があり、正式に友好都市になったこれからは、西安市民は京都市民と固く手を取り合って、両国の友好善隣を発展させたい」
と述べ、船橋求己市長も、
「二千年の交流の歴史を通じて、日本は中国から多くのものを学んでまいりました。なかでも京都は、唐時代の長安から数えきれぬ影響を受けました。京都と西安は、長い歴史の過程を通じて、日中両国の友好往来の中心地でありました」
と応じて、両市の世々代々の友好を熱望した。

両国を代表する歴史古都である奈良市・京都市と西安市が他に先がけて友好都市の提携をしたことになる。千年を越える往来の中心地同士が、新たな発展をめざして「世々代々」に繋ぐことを宣言する。それは両都市の市民をはるかに越えて、両国国民の熱い願いを代表するものでもあった。

京都市は、「国際文化観光都市の市民」であることを市民憲章にうたい、年間観光客五〇〇〇万人をめざしている。
一九九四年には一七の社寺などからなる「古都京都の文化財」が世界文化遺産に登録された。日本全国の五分の一にあたる国宝二一一点を保有している。京都市と友好・姉妹都市を結んでいる都市には、西安市をはじめパリ、フィレンツェ、ケルン、プラハ、ザグレブ、キエフ、ボストン、グアダラハラといった世界の歴史都市が名を連ねている。人口は約一四六万人。四万人余の外国人が住んでいる。

西安市は、中国屈指の国際文化観光都市でありながら西北地区の産業基地でもあり、歴史的市街地の景観保存には苦慮している。市内の名所としては、一級の展示品を誇る「陝西歴史博物館」(収蔵品三七万点、常時展示約六〇〇〇点)、二三〇〇点余の石碑・石刻が並ぶ「碑林」、玄奘三蔵の訳経にちなむ大雁塔と小雁塔、明代の城壁(一三・七キロ)、そして空海が学んだ「青龍寺」や日中協力による「唐朝芸術博物館」など。市内・郊外の旧跡は記す余地がないほどである。 

「歴史都市としての経験を活かして、新しいものの創造・蓄積・継承を」という京都市のリーダーシップは、八七年に始まった「世界歴史都市会議」(二六都市が参加)にいかんなく発揮されている。九四年の第四回会議を主宰して発展的に改組し、「世界歴史都市連盟」を設立した。事務局は京都市に置かれ、会長は京都市長が務める。七六都市が参加(〇八年六月)。第一二回の二〇一〇年には奈良市でおこなわれる。歴史都市が直面している課題の解決にむけての情報交換や共同研究をおこなうもので、日本は奈良と京都、中国は西安、成都、南京、鄭州が参加している。これまでの会議は西安のほかにフィレンツェ、バルセロナ、クラクフ、モンペリエ、モントリオールなどでも開かれている。

 提携三〇年にあたる二〇〇四年には、西安で「中日韓友好都市書法篆刻交流展」が開かれた。また京都市内の学生による「二一世紀の遣唐使」が訪れて、西北大学での交流や現地企業の就労を体験した。両市は文字通りの「温故知新」を実践する未来志向の歴史都市同士である。(二〇〇八年九月・堀内正範)