突如、大津波に襲われた村や町。一瞬のうちに濁流にのみ込まれた家々、家族。3月11日、M9という史上まれな規模の地震と津波による「東日本大震災」に遭遇して、なお被災地で避難生活を送る高齢者のみなさんの心には、なんとか元にもどしたいという願いとそんなに頑張ってもという思いが交錯するといいます。
一度の人生に「天災人禍」という二度の災禍に見舞われて、その復興に立ち会う高齢者の姿。大破した船の傍らで、「漁をするより能のない人間だから」とつぶやく高齢の漁師。半世紀かけて築いてきたものが瓦礫になって覆いかぶさる農地や商業地。黙々と自宅の後片づけをする老夫婦・・。復興の力は地元民の気力と協力を置いてありません。
ここで確認しておきたいのは、「本格的な高齢社会」というのは「病者や要介護者といった高齢弱者が多くなる高負担の社会」であるとともに、「多数の高齢健丈者が参画して体現する新しい社会」であるということです。高齢化率が世界一(23%)になっているこの国(地域)の政治リーダーには、将来の「高齢社会構想」を示し、全国の高齢健丈者にむかって復興への参画を呼びかける責務があるのです。
ところが政権党になった民主党の「マニフェスト」にはそういう視座がありません。「福祉・介護・医療」を軸にした「強い社会保障」という政策を引き継ぐことはたいせつですが、「健丈な高齢者が参画する地域・職域の形成」を軸とする「強い高齢社会」構想が不在であることが、政治が信頼を失っている主要因なのです。
いまや60歳からの高年者(約4000万人)が「地域・職域コミュニティー」をみんなで構想し、それぞれが保持している知識や技術や資産を有効に活用して、高齢者自身が用いやすい「モノや用具や設備」を工夫し(内需拡大)、地域の特徴を活かした「居場所や施設」をつくること(地域再生)。力を合わせて三世代がそれぞれに安心して暮らせる「三世代同等型の社会」(本格的な高齢社会)を築くことが急務なのです。
大震災の復興に努めている被災地の高齢者のみなさんを激励するとともに、全国の地域再生への変革に参画すること。それが将来の大増税を避けるため国民全員で負担する「災後復興」の課題です。その活動の一翼を担うのは潜在能力を保持する高齢者です。
高連協オピニオン会員 堀内正範