◎内閣府に「高齢社会対策担当大臣」(専任)を
国際的にも注目されるわが国の「本格的な高齢社会」(高齢者が安心して暮らせる社会)を推進するには、まず国のしくみとして内閣府に「高齢社会対策担当大臣」がおり、省庁を統括して結ぶ太い動線が整っている必要があります。
内閣が代わるごとに総理大臣によって各大臣が任命され、官邸への呼びこみ、辞令交付、そして記者会見、このところ見慣れた光景になりました。そのうちの「内閣府特命担当大臣」には兼務で政策がふりわけられます。「少子化対策」も「高齢社会対策」も、ともに省庁を越えた重要課題です。「少子化対策担当」には辞令が出て記者会見の折り意見を聞かれますが、「高齢社会対策担当」は発表されないため注目されず、だれが担当かわからないのです。
平成7(1995)年に「高齢社会対策基本法」が成立して15年、毎年出されている『高齢社会白書』(内閣府)をみますと、最近では閣議決定時での担当大臣が野田聖子、福島みずほ、そして蓮舫大臣となっています。この顔ぶれからも、合わせて担当する「少子化対策」などに重点をおいた人選であることが推測されます。今回は「少子化対策」が与謝野馨大臣の兼務となり、少子化対策を除く「共生社会政策」が蓮舫大臣となりました。したがって「高齢社会対策担当大臣」は蓮舫議員なのです。
6月7日(火。9:52~10:00。第4合同庁舎会見室)の記者会見で、蓮舫大臣は閣議決定したばかりの「高齢社会白書」と「子ども・若者白書」の報告をしました。が、折りから記者の質問は大連立や総理の早期退陣といった政局問題に終始し、ふたつの白書への質問はなかったようです。「高齢社会白書」の閣議決定の記事さえ出なかった新聞もあるといいます。
こんなことでいいわけありません。
蓮舫議員が「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、行政刷新)」として少子化を除く「共生社会政策」を担当し、「内閣府政策統括官(共生社会政策担当)」は村木厚子さん。そのもとに「高齢社会対策担当」参事官の小林洋子さん。若い政策調査員がいますが、「仕事と生活の調和推進室」と兼務だったりしますから、内閣府に省庁を結ぶ太い動線が整っているとはいえません。
「国及び公共団体はもとより、企業、地域社会、家庭及び個人」の相互の協力のもとに、「雇用、年金、医療、福祉、教育、社会参加、生活環境等にかかわる社会システム」を不断に見直し、適切なものとしていく(基本法の前文)ためには、専任の大臣がいて当然の時期なのです。
まずは組閣時に「内閣府特命担当大臣(高齢社会政策担当)」の辞令を、そして専任大臣を。それを実現できるのは、長く着実に経緯を見据えてきた高連協(高齢社会NGO連携協議会)などに参加する組織や専門学者のリーダーシップであり、分厚い高齢者層の人びとの熱い支援です。
「S65+」ジャーナル 2011・6・25
堀内正範