友好都市・産業の絆-最先端技術を駆使する古都

最先端技術を駆使する古都

姫路市―太原市(山西省) 

日本人なら姫路といえば「白鷺城」を思い浮かべるように、中国人なら太原といえば「晋祠」を思い浮かべる。ともに忘れられない都市なのである。

ともに輝かしい歴史をたどり、優れた文化遺産をもつ姫路市と太原市。 
両市の友好提携への動きは、両市の交流を期待する人びとの尽力の成果をかさねて、一九八四年に太原市の友好都市考察団が姫路市を訪れたことからはじまった。

太原側からその折に友好都市提携の申し入れと視察団派遣の招聘を受けた姫路市は、翌八五年に訪中視察団を派遣した。その視察報告を受けて、姫路市からも提携の申し入れをおこない、八七年一月に太原側から国内手続きが完了した旨の親書が届き、姫路側が訪問団を送って協議を重ねた。

かくして八七年五月二〇日、楊崇春市長ら太原代表団を姫路市に迎えて、戸谷松司市長との間で友好都市協定書の調印にこぎつけたのだった。戸谷市長は「志有る者は事ついに成る」という中国のことわざを引いて、
「国際平和のために隣国同士、努力していこう」 
とあいさつ、楊市長は、
「末長い友情を後世のために大切にしていきたい」
と希望を述べた。

太原市は、山西省の省都である。北京から南西に五〇〇キロに位置している。古都として北京、西安、洛陽ほど知られてはいないが、中国史の中では重要な役割を果たしてきた「歴史文化名城」である。二〇〇三年に「開城二五〇〇周年」を迎えた。

唐を開いた李淵はここから出て全土を掌握した。周初に晋国を拓いた唐叔虞(周武王の次子)を祀る「晋祠」で知られる。北宋時代に建立された聖母殿に現存する三三体の侍女像は、どれも表情や服装が美しい塑像の傑作である。また清末の資本家の邸宅「喬家大院」は、大・小院が二六、部屋が三一三室という大規模なもので、八六年から「祁県民族博物館」となっている。中国映画コン・リー主演の『紅夢(大紅灯篭高高掛)』はここを舞台に撮影されたものである。

太原市はいま、採炭と重工業化から生じた大気・水質汚染に対して、日本からの環境整備事業への借款や「CP(クリーン・プロジェクト)モデル都市」としての取り組みによって脱皮を図っている。人口は約二九〇万人。

姫路市は、兵庫県南西部に位置し、瀬戸内海に臨む中核市。「国宝・姫路城」は巧妙な守りの構造を優美な姿につつんだ日本城郭の傑作として、日本初の世界遺産に登録されている。また天台宗の古刹「書写山円教寺」は壮大な大講堂、食堂、常行堂をもつ建造物として知られる。
近年は播磨科学公園都市として最先端技術開発による経済の活性化にも取り組み、国際会議や大会を誘致するなど国際交流都市をめざしている。人口は約四七万人。

交流の実際となると、太原市は内陸都市なのでお互いに難があるが、これまでの両市の交流は、経済・科学技術・環境保護・都市建設などの市視察団のほか、青少年交流を中心におこなわれている。語学研修生は毎年相互に実施、技術研修生の受け入れ、中学・高校生の派遣と受け入れもつづく。書画展、太原雑技団の公演、牡丹の受贈なども両市をつなぐ行事である。

提携記念に「友情が大きく育つ」ことを祈って、一九八七年に市役所敷地に植樹された紅梅は、毎年、鮮やかな花を咲かせている。(二〇〇八年九月・堀内正範)