新情報--岡田副総理、「高齢社会対策」担当大臣はあなたです。

岡田副総理、「高齢社会対策」担当大臣はあなたです。
1月13日の内閣改造人事で、「高齢社会対策」担当大臣が蓮舫議員から岡田克也副総理に変更になりました。
といっても、全国の高齢者のみなさんはご存じないだろうと思います。ひょっとすると、たくさんの職務を兼任することになった岡田さんも気づいてないかもしれないのです。岡田さんの担当は、行政改革、社会保障・税一体改革、公務員制度改革、それに内閣府特命担当大臣として、行政刷新、「新しい公共」、少子化対策、男女共同参画までが新聞発表で、「高齢社会対策」の名は見えません。「日本高齢社会」は国際的にも注目されているのですが。
これまでのところ、週2回の記者会見でも、岡田さんから関連の発言はないようですし、記者からの関連の質問もないようですから、単なる担当大臣の変更であって、内容に変更が起きるようすはありません。
これはいったいどうしたことなのでしょう。
高齢者(65歳以上)はことし3000万人に達します。これだけの人びとが体現している「高齢社会」が重要でないわけはないのですが、政策としては、医療、介護、年金などの「高齢者対策」としての「社会保障」が相変わらずの国の政策であって、「高齢社会対策」ではないからです。「高齢社会」を体現している元気な高齢者は毎年増えつづけてきたものの、これまでは施策として大きな予算措置を講ずるような経済社会的な難題を生じなかったということでしょうか。1999年の「国際高齢者年」のあと、この国の10年余の高齢社会対策の推移を観察しつづけてきた立場からいえば、政治リーダーの「高齢社会」構想の不在(政治不在ゆえの官僚主導)が、この国の穏やかな社会の変革を阻害してきたといわざるをえないのです。ひとことでいえば「歴史的な失政」です。歴史家はそう記すでしょう。
21世紀の重要な課題であるからこそ、国は1995年(65歳以上は1825万人)に「高齢社会対策基本法」を制定し、1996年に対策の中長期的指針となる「大綱」を閣議決定し、2001年に「大綱の見直し」をおこない、今般、10年ぶりに「大綱の見直し(作りかえ)」をすすめているのです。その基本にあるのは、ことしから高齢者の仲間入りをする200万人余の「団塊の世代」の人びとが体現している--支えられる高齢者から支える高齢者への「高齢者像」の変革です。
内閣改造のあった前日の1月12日、内閣府では、「高齢社会対策大綱」の見直しのための「報告書素案」について、有識者検討会が開かれていました。「報告書素案」について、清家篤座長(慶応大学塾長)を中心にして6人の委員の方々の議論がおこなわれ、その結果をふまえて2月には最終案が提案され、予定では年度中に高齢社会対策会議が開かれて「見直し大綱」が閣議決定されようとしているのです。
支えられる高齢者から支える高齢者への意識の変革をもとめるなら、広く国民とくに高齢者にその経緯も内容も知ってもらわなくてはなりません。知られることなく6人の委員の意見が聴取されただけで、中長期の指針が決められようとしています。「見直し」はまずその議論の手法にあるのですが、そのことに岡田担当大臣の認識は届いていないようです。
野田総理が「大綱見直し」を指示したのは昨年10月14日でした。趣旨説明をおこなったのは当時の蓮舫担当大臣で、2012年から「団塊の世代」が65歳に達して経済社会情勢に変化が見込まれるというのがその主な理由とされています。
「報告書素案」にも、「団塊の世代」の参加による高齢者意識の変化、全世代の参画、「ヤング・オールド・バランス(世代間の納得)」、「シルバー市場の活性化(総理の指示に応えて)」そして「互助(顔の見える共助)」の必要性など、「高齢社会」が実質的に動く時期にさしかかっているという認識が示されています。
この国の「高齢社会」の変革にかかわる重要な会議の経緯を、蓮舫大臣がそういう認識をもって、岡田大臣に引き継いだようすはありません。
そして同じ1月12日、内閣府から至近の距離にある憲政記念館会議室では、高連協による「高齢社会大綱の見直し」に際しての「高連協提言」(別掲)の発表会が開かれました。
「提言」は、普遍的長寿社会は人類恒久の願望であり、「高齢化最先行国」として世界に示す施策とすべきこと、高齢者は能力を発揮して社会を活性化し充実感を持って生きること、就労の場における年齢差別の禁止、基礎自治体との協働、少子化社会対策、より良い社会を次世代に引き継ぐこと、ほかを提案。将来像としては、世代間の平等、持続可能性等の観点から「釣鐘型社会」を想定しています。
樋口恵子、堀田力代表の提言者としての発言はじめ出席高齢者のみなさんの議論があったのですが、報道関係者の姿は少なく、残念ながらニュースとして伝えられたようすがありません。野田総理、岡田担当大臣の手元には届いているのでしょうが、1999年いらい民間にあって高齢社会のありようにかかわってきた人びとの貴重な「提言」と発言を、一般の高齢者に伝えるメディアもないというありさまなのです。
岡田副総理から記者会見で「大綱見直し」への言及はなく、記者からの質問もなく、「高齢社会対策大綱」の検討は 公開の機をえないままで推移しています。岡田さんは「日本が沈みつつあるということをいろいろな場面で実感」しているので「歯止めをかけたい」とまでいいながら、優れた知識と経験と気力と資産を保持している3000万人(票)の先輩たちに参画も支援も求ようとしていません。3000万人の高齢者の穏やかな参画をえないゆえに「日本が沈みつつある」ことに気づかない高齢社会対策担当大臣、これではこの国の何かが変わるとは思えません。
岡田副総理、あなたは「高齢社会対策」担当大臣でもあるのです。