友好都市・風土が絆-東北同士の類似都市

東北同士の類似都市 

仙台市と長春市(吉林省) 

東北を代表する類似都市―といえば仙台市と長春市で異論はないだろう。
日本の東北地方最大の都市仙台市と中国の東北地区中央に位置する重要な歴史都市である長春市。

日中両国の友好都市提携が、比較的に交流の歴史の古く長い九州地方や近畿地域で進むなかで、仙台市は、市の成り立ちがよく似た性格を持つ東北地区の都市との提携を希望として中国側に打診したのだった。
中日友好協会の廖承志会長から長春市との提携について提案があったのが、一九七九年七月のことだった。その後、文書の交換や先遣隊の派遣などを通して合意に達した。

そして長春市代表団を迎えて、八〇年一〇月二七日、馮英奎市長と島野武仙台市長とが議定書に調印し、東北初の友好都市提携が成立した。

長春市は、建都して二〇〇年余になる吉林省の省都である。「一汽」(長春第一自動車工場)のトラック「解放」で知られるが、ほかに機関車、客車、トラクターなどの工場がある。吉林大学など二五の大学、一〇〇余の研究所がある緑の多い文化・芸術都市でもある。満族、朝鮮族、回族、蒙古族、壮族など四六の少数民族が在住する。近代の歴史の渦中にあっては、一九三二年から四五年のあいだ「偽満州国の首都・新京」として戦禍を免れえなかった。

愛新覚羅溥儀が執政した建物は「偽満皇宮」の名で博物館として保存されている。また官庁街は吉林大学などの施設として利用されている。かつての満映は長春映画撮影所として生まれかわり、有名な「白毛女」などを送りだし、長春は「電影城」と称された。二〇〇五年には「長映世紀城」がオープンしている。〇七年にはアジア冬季大会が開かれた。人口は約七一八万人。

仙台市は、人口約一〇二万人を擁する東北最大の都市。一六〇一年に仙台藩の城下町として伊達政宗によって開かれた。緑と文化の街で「杜の都」と呼ばれる。市内を清流広瀬川が流れ、青葉通りのケヤキ並木が街を彩るなど、環境先進都市を誇る。

両市の友好交流は、各界で着実に進められてきた。市代表団の相互訪問、行政各課の研修生の受け入れ。さらに経済視察団、「仙台フェア」「長春展」といった展示会。学術、医療交流。中学校・高校の友好校提携、児童絵画展、少年少女合唱隊、雑技公演。動物交換。放送、観光、サッカー、卓球、ロードレース、茶道、書法、囲碁のスポーツ・文化交流。在住日本人孤児の激励や「長春中日友好会館」(九八年)の開設など。多彩な成果を積み重ねてきている。

二五周年にあたる〇五年、五月一三日には祝業精市長を団長とする長春市代表団が仙台市を訪れ、藤井黎市長と会見した。両市長は新たな交流を誓い、仙台で学んだ魯迅の碑に献花した。仙台時代の魯迅についてはあわら市のところで述べている。

「二五周年記念写真展」の作品には、歴史に学びながら新たな信頼に根ざした四半世紀にわたる両市の交流の成果が、かけがえのない平和友好の証しとして写し出されている。

 東北同士の仙台市と長春市が世紀にわたって蓄積する友好交流の成果は、そのまま日中両国都市の友好交流を代表する「平和の絆」の証しとして、ひとつの標準を示すことになるだろう。(二〇〇八年九月・堀内正範)