高齢者(3000万人)が「日本長寿社会」を担うとき

高齢者(3000万人)が「日本長寿社会」を担うとき 
政治家の構想力不在で「日本長寿社会」は10年遅れに
わが国議会(衆議院)は、2012年6月26日、「消費増税法案」の採決をおこないました。法案の衆議院通過に安堵したのは、国民ではなく成立につとめた財務省関係議員と財務省です。新世紀このかた10年余り、史上初であり国際的にも期待されている「日本長寿社会≧高齢社会」形成への構想を、わが国議会は衆議して国民に提案し、達成への参加を呼びかけることをしませんでした。無策できた「10年の失政」を顧みることなく、増税というしわよせを国民に、とくに高齢者層に負わせようとしているのです。それは政治家の構想力の不在によりますが、いうまでもなく国民の側とくに高齢者の沈黙の結果でもあります。
先の大戦後の日本社会を、粒々辛苦して復興し発展に尽くした人びと。その人びとの高齢期の暮らしに手厚く報いる「社会保障」(「支えられる高齢者」への医療・介護・福祉)では成果を積んできましたが、史上初で国際的には新しい「日本高齢社会」形成への対策としては見るべき成果がありませんでした。みんなが安心して暮らせる「高齢化社会」としては、構想としての活動がなかったのですから成果もありません。明らかな「政治不在」です。
「わが国は世界のモデルになりうる。何もしないまま極東の片隅で、お年寄りの多い元気のない国になるかの瀬戸際だ」(野田首相)などという発言はうつろに響きます。
年ごとに増えつづけて3000万人に達した高齢者(65歳以上)は、いまやみずからを成員とする「日本長寿社会」(「支える高齢者」層の主導による三世代同等多重型社会)の充実・達成にむかわねば、政治のツケを負ったうえ、若年層からは社会への無関心を責められることになります。
このまま進めば、さまざまなしわよせが高齢者層に迫ってくることが想定されます。高齢者への敬意が薄れ、尊厳を保って晩年を過ごすことができなくなります。その対応はいまや高齢者自身が存在感を高めておこなうよりありません。

3000万人に達する高齢者

 わが国の「高齢者」(65歳以上)は、昨年9月の「敬老の日」恒例の発表によると2980万人となっており、今年は3000万人に達します。これは単にボリュームが大台に乗って存在感を増すというだけではなく、日本社会に質的な変容をもたらすという意味で注目されているのです。
すでにご承知のとおり、今年から「団塊の世代」のみなさんが「高齢者」の側に加わります。先の大戦での敗戦の後、両親から「平和のうちに生きて」という願いを託された毎年200万人余の戦後ッ子。昭和22(1947)~昭和24(1949)年に生まれた人びと。
昭和22年生まれというと、ビートたけし、星野仙一、蒲島郁夫、鳩山由紀夫、千昌夫、荒俣宏、小田和正、北方謙三、西田敏行、池田理代子さんなどで、知識も技術も芸域も充実して、各界を代表する現役の人びとです。
「ごくろうさま」と声をかけたいところですが、ここではむしろ新たな存在である「支える高齢者」として過ごしてほしいと願うところでもあるのです。
平和ではあったものの平坦ではなかった65年。戦後昭和の復興期から成長・繁栄期そして平成の萎縮期にいたるステージを体験してきてなお元気で暮らしているみなさん。長命の両親(母親のみかも)を介護して支え、子どもの住宅ローンを支え、孫の物品のめんどうをみるという家庭内でもそうですし、すでに現れはじめていますが、「シニア・ビジネス」の展開によって、シニアを対象とする本物指向のモノやサービスで内需を支えることになるからです。 

アクティブ・シニア(支える高齢者)層が登場

これまでのような「支えられる高齢者」ではなく、「支える高齢者」として、それぞれ蓄えてきた知識・技術・経験・資産そしてみんなで豊かになろうという「大同意識」を合わせ活かして、熟成期の「時めき人生」を送ること。
水玉模様のようにいくつものコミュニティに参加して、多彩に愉快に自らのライフスタイルを案出して暮らすこと。そういうアクティブ・シニアの暮らしぶりが、「長寿社会」のありようを変えていくと推測されているのです。
総不況と大災害による「平成萎縮」のあと、「支える高齢者」層が推進する「地域・職域再生」という新たな局面が登場することになります。これが各地・各界にもたらす質的な変容は、推測ではなくすでに構想の域にあります。
みんなが安心して暮らせる「長寿社会」の形成は、すべての世代(all ages)の人びとの参加によりますが、焦点を絞れば高齢者(older persons)が新たに達成する「すべての世代のための高齢社会」がその中心になります。
世界のトップランナーである日本の3000万人の参加意識をもつ高齢者が、どういう新しい社会を創出するかは、「三・一一大震災」後の復興とともに国際的にも注目されているのです。(「まったなし”日本こ長寿社会”への展開」https://jojin.jp/429 ほかから 2012・7・1)