清平世界
せいへいせかい
太平の世のこと。二〇四の国と地域から一万人余の選手が参加して「協調、友情、平和の絆」を訴えたロンドン五輪は、和諧的清平世界における「闘う祭典」である。期間中は戦争・紛争を停止するという「オリンピック停戦」は古代ギリシャ以来の人類の平和への夢。この国で「八・一五」に祈念するのも平和の継続への願いからである。
人民が平和のうちに暮らす姿は「夜不閉戸、路不拾遺」(夜に戸を閉ざさず、路に遺ちたるを拾わず)として表現されている。すでに『礼記「礼運」』に「外に戸を閉じず、これを大同という」と記されており、いつの時代にも治世の目標となってきた。
『三国演義「八七回」』では蜀の民が「両川の民、夜に戸を閉ざさず、路に遺ちたるを拾わず」と太平を欣び楽しみ、世直しに立ちあがった梁山泊の男たちも同様の太平の世(『水滸伝「一回」』)を夢見る。
この国は今「安心して暮らせる」世の中を実感できているだろうか。
羅貫中『平妖伝二四』など