四字熟語 「能者多労」

能者多労
のうしゃたろう

大津波後の復興現場で、連日、中心になって事後処理に当たっている人の姿に胸がつまる。次々に持ち込まれる難題に対処するのは並みの能力ではできない。長く培ってきた知識や経験を駆使して、「能者は労多し」というのが実情だろう。

技芸に優れている人の技芸が労多しとせずに生涯にわたって熟成していくように、能ある人というのは「労多し」と感じていないところが救いである。

「巧者は労にして知者は憂、無能者は求める所なく飽食して敖遊」(『荘子』から)ということになれば、能あることが悩ましくさえ思えてくる。労をいとわない献身的な人びとの知識や技術が活かされて復興は進む。

まだ雪の残る北国の雑然とした事務室で、住民の切実な要望に応対する職員の背後の壁に「雪中送炭」(雪中に炭を送る)という色紙を見た。雪の中を炭を載せた車が行く情景は鮮やかで、率直に心を温めてくれる。困っている人に救済の手を差し伸べるはずの職員が多数行方不明だという。

『紅楼夢「一五回」』など