投桃報李
とうとうほうり
大地が少しずつぬくもって桃李の花の季節になった。古来から桃李は花を愛で実を喜ぶ果樹として親しい。桃を贈られたのに対して李を贈って報いることが「投桃報李」である。
「われに投ずるに桃を以ってし、これに報いるに李を以ってす」と『詩経』に記されていて、お互いに高価なものではなく、季節の訪れとともに友を思うほどのもののやりとりというところが快い。
同じ『詩経』に「投瓜報玉」があって、こちらは投じられた木瓜に報いるのに瓊琚(美しい色の玉)を以ってするということ。女性の愛の証としての木瓜に応じる男性の側の手厚い返礼の思いがこもる。また施された小さな恩義を忘れずに心をこめて厚く報いる場合にも用いられる。
さらに友誼のためのやりとりとはいえ、「投珠報玉」ともなると、お互い高価なもの同士ということになる。しかし実は珠玉のような詩の応酬だから、これはもっとも費用がかからない贈答なのである。
『詩経「大雅・抑」』より