臨池学書
りんちがくしょ
日中国交正常化四〇周年記念特別展「書聖王羲之」展をみた。東京国立博物館平成館に一六三作品が展示されていたが、四世紀の東晋時代の王羲之原跡はないから、のちに精巧に臨摸された複製によって神髄をうかがうことになる。
今回も三〇〇年後に唐の太宗がみずからの昭陵に副葬させた有名な「蘭亭序」(行書)は、歴代の逸品のうち、わが国の博物館・美術館・個人が秘蔵する作品が合わせ展示されて、両国が共有する「書の文化」の奥深さを伝えていた。
王羲之が草書の目標として慕ったのが後漢時代の張芝。張芝は池に臨んで書の力を養い、池水が墨で真っ黒になったという。羲之もそれにならって盛名をえたことから「臨池学書」がいわれ、その古跡は「墨池」と呼ばれた。いま紹興市の「蘭亭」には「曲水の宴」の跡は残るが、池は「鵝池」だけ。しかし羲之が刻苦して書を学ぶ姿を後人が慕って、「臨池」というと書論や書学など書に関する学問を指すようになっている。
『後漢書「張芝伝」』から