「地方大学シニア大学院」
「教育立県」を宣言してもしてもいなくても、どこも地域活動のための人材の育成に力を入れている。シニア期になって「J+Uターン」をして地元回帰をし、地域の高齢社会事業に参加しようとする人びとのための「シニア大学院」や国際友好都市からの研修者に熟練技術を教える「国際交流大学院」といった需要に応えるあらたな施設による人材の育成は、地方大学の多角的事業として模索され成果をみせている。先行する都市部の私立大学の事例も、シニア向けカリキュラムの参考になっている。
「シニア大学院」は、県立大学や地方大学の公開講座をもとに、地方の文化発信・技術伝承の拠点として重要な機能をはたすことになる。地域経済、地場物産、地方文化・言語・歴史、伝統工芸など、地域で暮らす人びとの「シニア期の人生」を豊かにするための基本となる「地域関連シニア講座」が提供されるからである。個性のある魅力的な地方の風土と暮らしを実現するには、地元大学の「シニア大学院」が送り出した地域シニア修士の地道で幅広い参加と支援が欠かせないからだ。
同じ時期に同じキャンパスで、オヤジは「シニア大学院」で、ムスコは大学課程で学ぶというのは、「高齢社会」にあって当然とする大学構想である。六〇歳からのシニア期二五年を視野に入れた「シニア科講座」で、スキル・アップ(技能向上)をめざすオヤジや先輩たちの熱心な姿が、同じキャンパス内でグータラに過ごしていた現役学生に与える影響が大いに期待される。「大学重層化」のメリットである。
「シニア大学院」には五〇歳をすぎて「パラレル・キャリア」指向の人びとが学びにくるわけだから、大学側の名誉教授やシニア教授のスキル・ブラッシュ(さび止め)にも役立つことになる。八五歳の名誉教授の授業は人生の滋味を帯びた人気講座になる。
自治体による「地域シニア大学校」と合わせて「日本高齢社会」形成の基礎事業である。