四字熟語-十指連心

じっしれんしん

 十本の指のすべてが心臓に連なっていることを「十指連心」という。十指がみなつながっており、一指が痛めば全身が痛むことを「十指連心の痛み」という。だれもが体験的に知っているこの感覚は、肉親や同志のつながりを強く意識して、それぞれが持つ能力を出し合って協力することに例えられる。

「十指には長短あれど、痛みはみな相い似たもの」というのも、それぞれの立場はちがっても、関係が親密である成員ひとりひとりが、同一の目標にむかって困難を乗り越えようと呼びかける場面で用いられる。家族、親族(宗族)を中心にした組織が水玉模様のように重なり広がっている中国社会では、どこにも頼るべき知り人がいない「挙目無親」(目を挙げれども親無し)といった状況だけは避けて暮らすことになる。

十指では「十指繊繊」を添えておきたい。こちらは女性の繊細な十指が、筝の弦を爪弾いているようすをいう。音色も優美だが弦の上の指の動きも美しい。 

(湯顕祖『南柯記』など)

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」2011・10・25号
堀内正範 ジャーナリスト