「長寿社会」を推進する3つの課題

「長寿社会」を推進する3つの課題
◎Ⅰ 「高齢社会担当大臣(専任)」の設置
◎Ⅱ 参議院制度の改革
◎Ⅲ 高齢者参画による持続的な経済成長
○2013年1月9日午後、「高連協年頭学習集会」のあと、記者クラブ喫茶室での尾崎美千生さん、岡本憲之さんとの談論は、次の3つの課題をめぐるものになりました。2013年7月21日(予定)の参議院選までに、あるべき姿としての「高齢者・高齢社会の存在感」を高めるための活動への契機として、ここに整理してみます。
◎Ⅰ 「高齢社会担当大臣(専任)」の設置
○内閣府に重量感のある「高齢社会担当大臣(専任)」を設けること。副大臣・審議官・参事官・担当職員(70歳までの高齢実務者)を配属して、各省にわたる「高齢社会」政策を集約する骨太の部署を新設する。現在はというと「高齢社会対策担当大臣」(民主党政権下で10人)を置いてはいるが多くは少子化担当と兼任で、「高齢社会対策」は「共生社会政策担当統括官」が統括する1セクションとして扱われている。これこそが「10年無策」の証であり、このままでは世界に冠たる「日本高齢社会」の達成はむずかしい。
○ここは尾崎さんの領域ですが、人選としては国際的に先行する「日本長寿(高齢)社会」のシンボル的インパクトを考慮すれば、初代大臣は政界最長老的存在の人が適任。20年にわたる「国力萎縮」(デフレーション)の重要な要因に「高齢社会の不在」(年々増えつづけてきた健丈な高齢者の社会参加意識の欠如)があったことを、政治家が「10年の失政」として省みる必要があるからである。とすれば1986年に「長寿社会対策大綱」を閣議決定した総理・中曽根康弘氏(94)までさかのぼる。1994年に高齢化率14%に達して「高齢社会」入りをし、10年目の1996年に名を「高齢社会対策大綱」(橋本内閣)として閣議決定した経緯がある。1999年の「国際高齢者年」の政府主催者(小渕内閣総務庁)として携わった人でもいい。
また「社会保障」財源を安定化させる「消費税増税」法案の採決のあと、実施に必要な「経済成長」を確保し「高齢者参画」を呼びかけるには藤井裕久氏(80)が適任である。上の両氏に匹敵する表舞台に出なかった政治家(山中宰相)がいれば再登場をお願することになる。
◎Ⅱ 参議院制度の改革
○衆議院とは異る立場の国民代表が構成する参議院に。2世踏襲と世代交代がつづけば2院制の存在意義を失う。世代間や分野間や地域間の議論を活発にするために、年齢制限をやめて各地各界の経験豊かな高齢議員を多く選出する。同趣旨の主張と活動をしている学者・政治家のみなさんに「高齢者・高齢社会の存在」を意識するよう訴える。
・年代枠(三世代枠)・高年・中年・若年  ・女性枠
・分野枠 ・政治家・官僚・学者・経済人・報道関係者・芸能保持者(著名人)
◎Ⅲ 高齢者参画による持続的な経済成長
○途上諸国主導の経済のグローバリゼーションに対応して、わが国の“途上国化と若年化”が長らくつづいてきた。その間、技術・人材・資産の海外流出がつづき、そのために地域や職域の熟年・熟練高齢者は“足踏み状態”を余儀なくされ、地域・国内中小企業の衰退・疲弊(デフレーション)は限界に達している。いまこそ政治の側から、高齢者層の地域・職域参画を呼びかけて、各人が保持する知識・技術・資産を活用して、高齢者自身が必要とする新たな「モノ・サービス・居場所・しくみ(コミュニティ)」をこしらえるよう訴える必要がある。一つひとつは小さいが地域特性・業種特性をもつ成果の重なり合いが、総体としての「長寿社会(高齢社会)」の豊かさを形成する基盤となる。家計資産は高齢者が「三世代多重型」社会の形成のために活用して、持続的な経済成長をもたらすことで、後人(次世代・途上国)への新たな資産となる。
○「孫の教育費」(1500万円まで)を無税贈与にするといった次世代支援は、高齢者資産の「ヒッペガシ」政策であり“恩恵の上乗せ”であって、あっても仕方がないが、持続的な経済成長をうながす要因にはならない。
○「日本社会の再生」には、具体的には地域・職域の1980年ころ(「一億総中流」時代)の地域・職域の再生に有効性がある。「均衡ある国土の発展」のあと、高齢世代の参加(再生のための再出動)による「特性ある地域の発展」を重ね合わせることで、「みんなが安心して暮らせる地域社会」が達成される。(堀内正範 2013・1・15)