四字熟語-天衣無縫

天衣無縫
てんいむほう

書店の雑誌コーナーで、「女性ファッション」誌のあまりの多さに驚くとともに違和を感じてこの成語を思い出した。天女や仙女が着けている「天衣」には縫い目がないことを「天衣無縫」という。たしかに飛天や仙女像をみると、衣装に縫い目(人為のあと)を見ない。内に秘められた美の表出には人為(ファッション)を排したのびやかで自然な衣がふさわしい。

そこから言行が自然で障りのないようす、詩文や書画が技巧の跡を感じさせずに造形されていること、事物のありように破綻がないことなどに、日中でひろく用いられている。

年初の北京でズービン・メータ指揮のイスラエル・フィル新年音楽会があり、演奏に合わせて書家の李斌権が「龍蛇走る(筆勢の洒脱で非凡なこと)」草書で毛沢東と李白の詩を揮毫した。この芸術合作を「完美無欠、天衣無縫」と伝えていたのをなるほどと思ったが、前記の違和感は、女性雑誌群から内なる美の表出を感じなかったからであろう。

牛嶠『霊怪録「郭翰」』など