「月刊丈風・寄稿」人生2回時代におけるキャリア形成の標準モデル

人生2回時代におけるキャリア形成の標準モデル        
岡本憲之
特定非営利活動法人 日本シンクタンク・アカデミー理事長  
「平均寿命65歳」から「平均寿命90歳」時代へ
「平均寿命65歳」の時代には、いわゆる高齢者は介護や医療を必要とする虚弱者のイメージが強かった。また高齢期の人生についても、余生とか老後といったように否定的に捉えられがちであった。しかし「平均寿命90歳」も夢ではなくなった今、65歳以上を虚弱な高齢者として扱うことに多くの人が疑問を感じている。
実際、高齢者が虚弱である期間は比較的短く、高齢期の大部分の期間はほぼ健常である。しかも高齢期がここまで長くなってくると、もはやそれを余生とは呼べず、「2回目の人生」と呼ぶべきである。
ところで「2回目の人生」とはどのような人生なのか。それは単に定年延長によって従来の会社人生を引き伸ばす。あるいはより長い余生を送ることではない。新たにもう1回の人生を用意するのだ。高齢期の身体や精神の特性に適合し、今まで蓄積してきた知識や経験を活かせる活動を行うことである。社会を支えるための何らかの役割を持ち、生きがいのある新たな人生を始めてこそ2回目の人生といえる。
そのために必要なのは、高齢期の健康や能力の特性を把握し、若いうちから健康長寿を目指すことである。それらを踏まえ、高齢期の新たな職域開発、あるいは学習やキャリア形成はどうあるべきかなど、考えるべき課題は多い。これからの高齢社会では、若者にとっても、将来の「2回目の人生」に向けた人生設計の夢と希望が膨らむ。
「支える側の高齢者」としての人生設計
わが国では少子高齢化が進み、社会の人口構成も「平均寿命65歳」の時代から大きく変わってきた。そんな高齢社会を持続可能なものにしていくためにも、これまでのように高齢者を一律に「支えられる側」として捉えるのではなく、元気な高齢者には社会を「支える側」に回ってもらうことが望まれる。そのため人生設計の標準モデルも、高齢期に活躍することを前提としたものに変えていかなければならない。そして教育学習を通じたキャリア形成のあり方についても、従来の「1度きりの人生」時代の標準モデルではなく、「人生2回」時代の新たな標準モデルを考えていく必要がある(下図)。

教育学習・キャリア形成から見た人生設計の標準モデル 

「1度きりの人生」時代の標準モデル(左)
「人生2回」時代の標準モデル(右) 

・年齢別人口構成    ・キャリア形成
・1度きりの教育学習機会(左)  ・2回の教育学習機会(右)

(JTTA「毎月コラム」2012年5月から)