現代シニア用語事典-「高齢社会対策大綱」の見直し

「高齢社会対策大綱」の見直し
内閣改造前日の平成二四年一月一二日に、内閣府では「高齢社会対策大綱」見直しの有識者検討会が開かれ、「報告書素案」について、清家篤座長(慶応大学塾長)など六人の委員による議論がおこなわれていたのです。内閣改造はニュースでしたが、こちらはニュースになったようすはありません。
一〇年ぶりの大綱検討の主な理由は、刻み目の年であるとともに、やはり「団塊の世代」が六五歳に達して、経済社会情勢に変化が見込まれるためというものです。(一〇月一四日「高齢社会対策会議」での蓮舫担当大臣の趣旨説明)
内閣府には五年前の有識者検討会など内部蓄積があるとはいえ、六人の委員で五回の会議での決着では、共生社会政策の一施策としてのあつかいの域を出ないものです。
香山リカ、関ふ佐子、園田眞理子さんの三人の大学研究者、団塊の世代の漫画家弘兼憲史さん、前高浜市長の森貞述さん、それに前回の見直しに座長をつとめた清家さんがいるとはいえ六人の委員。オブザーバーは厚労省、文科省、国交省の課長・参事官。閣議もできる広い円形の会議室がどよめくような将来構想をめぐる議論が展開できるでしょうか。
検討された「報告書素案」にも、「団塊の世代」をふくめて「人生九〇年時代」の高齢者意識の変化が指摘されています。全世代型の参画、ヤング・オールド・バランス(世代間の納得)、シルバー市場の活性化(野田総理の指示に応えて)、そして互助(顔の見える共助)の必要性など、支えられる側におさまらないアクティブ・シニアによって、「高齢社会」が実態として動くという認識が示されているのです。
その後の議論で、六五歳からが高齢者という基準そのものが実情に合わなくなっているという指摘がされて、これはニュースになりましたが、いま国際基準である六五歳を動かす議論は、問題の解決を複雑にすることになりかねません。
そして同じ一月一二日、内閣府にほど近い憲政記念館会議室では、高連協(高齢社会NGO連携協議会)による「高齢社会対策大綱の見直し」に当たっての「高連協提言」の発表会が開かれていました。高連協は一九九九年の「国際高齢者年」の活動を機に発足し、以来この一〇年余り、民間団体として一貫して高齢者活動の支援、実施に尽力してきました。
「高連協提言」はこう提言しています。
普遍的長寿社会は人類恒久の願望であり、高齢化最先行国として世界に示す施策とすべきこと、高齢者は能力を発揮して社会を活性化し充実感を持って生きること、就労の場の年齢差別の禁止、基礎自治体との協働、少子化社会対策、より良い社会を次世代に引き継ぐこと、そのほかを提案。将来像としては、世代間の平等、持続可能性等の観点から「釣鐘型社会」を想定しています。
参加者の議論があり、樋口恵子、堀田力両代表から提言者としての発言がありましたが、報道関係者の姿は少なく、これもニュースとして伝えられたかどうか。
「高齢化」は二一世紀の国際的課題として早くから予測されており、わが国でも一九八六年六月にはすでに「長寿社会対策大綱」を閣議決定(第二次中曽根内閣)しています。
その後、一九九五年一一月に「高齢社会対策基本法」を制定(村山内閣)し、対策の指針となる「高齢社会対策大綱」を一九九六年七月に閣議決定(橋本内閣)し、二〇〇一年一二月(小泉内閣)に見直しをおこないました。
そして今回、二〇一一年一〇月に野田内閣が一〇年ぶりの見直しを決めて、作業を進めている最中なのです。
高齢社会政策の中・長期の指針となる「大綱」そのものは、「報告書」を踏まえて府内で作成し、関係省庁の調整を終えて閣議決定されることになります。
決定する前にパブリック・コメントはもちろん、各界の「参加意識」を持つ高齢者が議論に参加する検討会を一般公開でおこなって、広く内容を告知する経緯を経ることも新しい動きに対応する手順のひとつとして想定されるのですが。 (まったなし「日本長寿社会」への展開 2012・3・11)