「高齢社会対策大綱の見直し」に対する「高連協提言」 2012・1・12 報告

「高齢社会対策大綱の見直し」に対する「高連協提言」 2012・1・12 報告
昨年末、2011年12月28日の新情報「高齢社会対策大綱の見直し」稿で、
全国の高齢者のみなさん、平成二四年一月一二日、蓮舫担当大臣のもとで内閣府で開かれる「第三回高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」の報告書素案に注目してほしい。そして同日同時に、近くの憲政記念館会議室で、高連協(高齢社会NGO連絡協議会)が開催する「高齢社会大綱の見直し」に対する「高連協提言」発表会を合わせ注目してほしい 。
と訴えた。
内閣府の検討会は、今回は6人全員の出席のもとで、「報告書素案」が提案されて検討がおこなわれました。12日に提案された「素案」は内閣府のホームページで読みましたが、「団塊の世代」の取り込みに苦慮し、「互助(顔の見える共助)」の必要性、「全世代の参画による超高齢社会」への変革、「ヤング・オールド・バランス(世代間の納得)」という視点、「時間貯蓄・ポイント制」といった評価基準の多様化の提案、「シルバー市場の活性化」を加えて総理の指示に応えるといったところが、「見直し・追補」として見てとれます。
その後に、「おわりに」の内容をふくめて検討されましたから、会議録をみませんと細部はわかりませんが、「全世代型」や「ユニバーサル・デザイン」をいいながら三世代それぞれが世代としての特徴を活かした暮らし方、とくに高齢者から若年・中年へ配慮した参画への言及がないこと、高年社員による高年者向け商品製造による新しいしごとの創出、「エージング(引き延ばし)」とともに緩やかに形成されるべき「三世代コミュニティ」への推移、そして「意識変革(多重化)」などへの展開が欠けています。
全容の評価は、会議録の公表をまって行います。
1月13日の内閣改造で、高齢社会対策担当大臣が蓮舫議員から岡田克也副総理に変更になりましたが、当人から「大綱見直し」の言及はなく記者からの質問もなく、軽視(無視)されたまま推移しています。岡田さんは「日本が沈みつつあるということをいろいろな場面で実感」しているので「歯止めをかけたい」とまでいいながら、すぐれた先輩たちに「参画も支援」も求ようとしない。これでは何かが変わるとは思えません。
一方、高連協の「提言の会」は、憲政記念館会議室で別添のような「提言」を発表しましたが、朝日新聞の記者がきていただけで、樋口・堀田両氏をはじめとする高齢社会を体現している立場からの発言が、ニュースとして外部へ知られたようすはありません。
これはゆゆしき事態です。
別添
高連協「高齢社会対策大綱の見直し」に当たって提言
                                                      2012年1月12日 
内閣総理大臣
野田佳彦 様
高齢社会NGO連携協議会(高連協)共同代表 樋口恵子、堀田力
理事役員・有志一同
   高齢社会NGO連携協議会(以下「高連協」)は、高齢社会への対応・対策の促進を願い活動する我が国のNGOが、1999年国連が定めた「国際高齢者年」を機に創設した連合組織で、国連が提唱する高齢者の五原則(自立、自己実現、社会参加、ケア、尊厳)を基に、「高齢者(シニア)の社会参加活動の促進」を掲げて諸活動を展開しております。
  高連協の活動は、活動会員による定期的オピニオン調査(60歳以上2000名対象)の結果を踏まえた全体活動、そして、60余の加盟団体が相協力して展開している活動ですが、そのテーマのほとんどは国が示す「高齢社会対策大綱」の方針と内容に関わるものです。
 したがって、我々は「高齢社会対策大綱」には多大の関心を持っており、その見直しは高齢化社会の進行上必要なことと考えます。野田総理の高齢社会対策会議冒頭の挨拶と指示は、付言された「高齢者の消費の活性化」を「高齢者の生活行動の活性化(当然「消費」も活性化する)」と解せば、我々シニアは大いに共鳴するところです。
 以上のような観点から、我々は、社会参加活動に関わるシニアのオピニオンとして「高齢社会対策大綱の見直し」に当たって提言申し上げます。 
 「提 言」 
前文 
 我々シニアは、終戦、社会倫理の転換、貧困からの脱却のための経済成長から経済大国そしてバブル崩壊を生きて来た。この間日本人は平和な社会と生活の質の向上により、その指標とされる「平均寿命」の急速な伸長を得て、世界最高レベルの長寿を享受している。
 しかしながら、寿命の伸長とともに、子どもの自立・就労や結婚年齢のエイジング(加齢化)もすすみ、1980年以降は急激な出生減、少子化現象をきたしている。 
 普遍的長寿社会は、人類恒久の願望であり、世界各国とも目指す社会である。しかし、それを具現化しつつある我が国がそのモデル国と見做されるためには、低下した出生率の回復が望ましく、世代間の平等や家族・民族の持続可能性を目指した社会的努力が必要であろう。現在の我が国社会に必要なのは、我々が目指すべき社会像・将来像である。
 「高齢社会対策大綱」の見直しに当たっては、当面我が国における高齢社会対策としてのみならず、全世界的課題である高齢化の最先行国として、我が国が世界に示すことのできる施策となるよう、これを策定すべきである。
 上記「前文」を踏まえて、我々高連協は以下のとおり提言する。 
1.普遍的長寿社会においては、高齢者は、他の成人層と同じく、その能力を存分に発揮して社会を活性化するとともに、自らも充実感を持って生きることが求められる。
・  高齢者に対し、高齢であることを理由として社会生活からの引退を促すような制度や社会的風習は廃絶しなければならない。
・  社会的活動とくに就労の場における非合理的な年齢差別を廃し、積極的な高齢者の能力を活用するため、「年齢差別禁止法」を制定する。

・  「高齢者であっても、その能力を可能な限り社会に生かすことは、その権利であると同時に社会的義務である」という思考を醸成する。

・ 高齢者が能力を発揮するためには、人生後半のための情報、学習機会の提供が不可欠である。

2.「高齢社会対策大綱の見直し」においては、大規模かつ多様な高齢者への対応が求められるが、大綱に示す基本姿勢に則り、横断的かつ柔軟な取り組みをもって施策が推進されることが肝要である。
・  普遍的長寿社会において、総ての人が幸せな生涯を過ごすため、高齢者の尊厳保持を究極の目標として、高齢者に関する諸施策が総合的で整合性のあるものとすべきである。
・  高齢者の自主性を生かした社会参加活動を活性化するため、基礎自治体が地域社会の特性を生かし、高齢者の「居場所」と「出番」をつくり、高齢者を含めた住民との協働事業が促進されるよう施策の展開を図る必要がある。
・  弱体化した地域医療サービスについては、総合医を中核にした初期医療サービス体制を構築すべきである。そして、訪問診療も併せた幼児・児童と高齢者への対応サービスを推進する必要がある。
・  「高齢社会対策大綱」の見直しとその推進には、高齢有識者やシニア活動実践家の参加が不可欠である。 
3.我が国社会に求められる社会像、将来像としては、世代 間の平等、持続可能性等の観点から、人口、資産、就労面で解りやすい「釣鐘型社会」を想定したい。
・  先祖・親世代と同様、現代の高齢者も、より良い社会を次世代に引継ぎたいと願っている。
・  人口構造上の釣鐘型社会の想定には、国際移民の活性化も必要であるが、先ずは「少子化社会対策」の推進が重要である。
・  地域社会の老若男女がこぞって子育てにも介護にも参加し、四世代共住の支え合い型地域社会をつくることが肝要である。
以上
高齢社会NGO連携協議会(高連協)
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