丈人論―「強い高齢社会」へのしくみづくり<6>―

◎「三世代同等型社会」をめざして 
8月15日は戦後66回目の「終戦記念日」です。ということは平和になった最初の年1946年に生まれた「平和の世代」が、65歳の高齢期を迎えたということになります。戦争のない平和の時代に生きることを両親から託された1946年生まれの人びとのなかには、仙谷由人、鳳蘭、宇崎竜童、吉田拓郎、北山修、柏木博、岡林信康、市川団十郎、田淵幸一、堺正章、坂東真理子、大島理森、菅直人、猪瀬直樹、藤森照信、倍賞美津子といった知名の人びとがいます。その後につづく1947~49年生まれのベビーブーマーである「団塊」(本稿では「平和団塊」)の人びとも60歳代になりました。 
戦後5年間(1946~50年)に生まれた1000万人を超えるみなさん(「平和団塊」の人びと)が、労苦して積み重ねてきた知力、技術力を萎えさせず、保持する資力を駆使して「自己実現」への人生を歩むこと。それが理念である「日本国憲法」とともに具体的な平和の証である「日本高齢社会」形成の道筋であるということはすでに述べたところです(6月5日・6月15日)。
心・技・体ともに充実して活動に実が入る「時めき人生」のまっただ中にあるみなさんの能力を温存できない企業、本来の「日本高齢社会」創成への道程を提案する政治リーダーの不在は、この国の不幸な現実です。現政権もなお「強い社会保障」に固執して、高負担(毎年約1兆円増)のそれを増税でまかなおうとしています。この高齢者を社会の「α(アルファ)」とする旧来の「二世代+α型」社会ではなく、高齢者が「自立」し、みずからを「ケア」しつつ「社会参加」することによる「三世代同等型」社会の形成が、平和裏に達成する「本格的な高齢社会」への道であることを、8月15日を機に改めて確認せねばなりません。
それによってはじめて高齢者が「尊厳」をもって長寿を喜んで生き、納得して次世代に後を託して生涯を終えることができるからです。8月15日、近代化のきびしい経緯を担い、戦禍に斃れた300万余の先人の霊に祷るのは、その悲痛な人生によってあがなわれた「平和の時代」であることを再確認するとともに、平和であるゆえに得た長寿をたいせつに生きること、高齢期を敬愛されて安心して暮らせる社会をつくること。
「東日本大震災」からの復興が世界の注目となるなかで、後に来る世界の途上国の人びとにとって「標準的モデル」となる高齢社会形成のフロントランナーであるわれわれは、国際的願いである「高齢者のための国連原則」(上の五つ。国連五原則。1991年採択)を胸に刻んで、60歳代~70歳代の高齢健丈者が中心となって新たな穏やかな生活圏である「三世代同等型社会」(本格的な高齢社会)のすみやかな達成をめざすことを、もう一度しっかりと誓えればいいと思います。(次は8月25日)
「S65+」ジャーナル 8月15日
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー)