丈人論-「強い社会保障」とともに「強い高齢社会」を<3>-

◎人生を支える三つのカテゴリー
 高齢期の人生が、先行き不明な「余生一途」ではなく、5歳きざみの年齢階層としてだれもが迎える「賀寿期(5歳層)」として、「古希期」や「喜寿期」や「傘寿期」を(女性はさらに「米寿期」が加わる)意識して、先行き愉快にすごせる「場所」や利用しやすい「モノ」の形成があっていいのです。
 そういう高齢健丈者の人生を支えるのは、「からだ、こころ(ざし)、ふるまい」という三つのカテゴリーでの活動です。「強い高齢社会」というのは、この三つそれぞれの領域で活動する高齢者が、自在に参画できる「場やしくみ」や利用しやすい「モノ」を新しく形成していくプロセスでもあります。 
1 「からだ=体・身」に関して。
 健康な「からだ」の保持はだれにとっても生涯にわたる最大の関心事です。高齢者仲間の会話は、お互いの支障(持病)の問い合いからはじまります。目や耳や歯の機能保全のことから心臓、肝臓、胃腸といった臓器の症候、各部位のがんに関する最新情報。そして薬、予防法、健康体操、ウオーキングまで、「からだ」に関する話題はつきません。食生活・衛生・医療・介護の分野の進歩と充実は、「強い社会保障」と「強い高齢社会」の基盤となっています。
2 「こころ=心・志」に関して。
 「こころ」のありよう、生きがいは人生を大きく左右します。「こころざし」として強く意識するものとそうでないものとがありますが、だれもが心の拠りどころとしての目標を持って暮らしています。人間(自己と他者)への理解の深化、蓄えてきた知識による正確でバランスよい判断や洞察、そして歴史や伝統への関心の広がり、さまざまな文化活動など、内面的な充実は人生の大きな喜びであり、「こころ」の交流の豊かさが人生の成果ともいえます。
3 「ふるまい=技・行為」に関して。
 生涯を通じてどこまでも進化する能力は、個人的には「ふるまい」として表現されます。工芸技術の練磨、芸能芸術の巧みな表現などからは、ひとつひとつ到達した「ものづくり」技術の高みや磨きあげられた「所作」の粋を知ることができます。暮らしに身近かな家庭用日用品からは、「モノ」に込められた親わしさが伝わってきます。熟達した技術が形になったさまざまな制作品は触れて快く、年を重ねて洗練された挙措ふるまいは見て美しいものです。
この三つのカテゴリーへの関心の度合いは個人によって異なりますが、「だれもが安心して暮らせる日本高齢社会」を創出するためには、この三つのカテゴリーで個性的で実現可能な目標をもちながら「素敵な高齢者」として日々を過ごす健丈な高齢者(本稿では丈人層)の存在が基本となります。そしてその総和が「日本高齢社会」の豊かさの表現となるのです。2011・6・5   s65+ジャーナル<7>