四字熟語-正心誠意

せいしんせいい 

「政治に求められるのは、いつの世も『正心誠意』の四文字があるのみです」といって、野田佳彦首相は所信表明演説で勝海舟が政治家の秘訣とした四字熟語を引用した(『氷川清話』から)。が、海舟は同時に「何事でもすべて知行合一でなければいけないよ」とも言っている。それを知る自民党議員からすかさず国会運営の強引さを「言行不一致だ」とせめたてられ、会期を修正して誠意を示した。

海舟の談話や記事を集めて『氷川清話』を発行しベストセラーとした吉本襄が陽明学の普及者であったことからも、出典は明徳を明らかにし天下を平らかにする本末を説く八条目「格物、致知、誠意、正心、修身、斉家、治国、平天下」(『大学』から)のうち「正心誠意」からと知られる。「修身斉家」や「格物致知」もここからきている。

閑話だが、南宋の著名な詩人楊万里は誠斎を号とし「正心誠意」を旨とした。とすれば海江田さんはライバルに同名の万里座右の銘を先に使われたことになる。

 王陽明『伝習録』など

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」2011・10・5号
堀内正範 ジャーナリスト