四字熟語 「決勝千里」

決勝千里 けっしょうせんり

米海軍特殊部隊による「ジェロニモ」作戦によって、パキスタンの隠れ家でオサマ・ビンラディンは死亡した。この作戦をオバマ大統領はワシントンの指揮室で見ていた。直接指揮したわけではないが、これで支持率が上がったという。

千里も離れた遠方での戦局を指揮して勝利することを「決勝千里」という。漢の劉邦は宿敵楚の項羽を破って皇帝に推された時、諸侯を集めて洛陽で宴を張った。その席で三人の臣下をほめ上げたのである。

まず帷幄のなかにいて戦略を立てて千里先での勝利を見通す戦略家としての張良。次に財政を安定させ軍兵への糧道を絶たない蕭何。そして攻める城は必ず落とす用兵に巧みな韓信。自分より優れている能力をもつ三人を用いることで天下がとれたのだと諸侯の前でほめ上げたのである。

こういう傑出した臣下三人を「人中三傑」というが、自分よりも能力が優れた部下がいたから天下がとれたのだといえる大将もさすがである。 

『史記「高祖本紀」』から。

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・6・5号
堀内正範 ジャーナリスト