四字熟語-陽春白雪 

陽春白雪

ようしゅんはくせつ

外は雪のストックホルム。市庁舎内のノーベル賞晩さん会会場には、山中伸弥教授の隣に文学賞の莫言氏。日中の名士が並んだ。一二月一〇日のこと。

その前日、恒例のストックホルム大学でのスピーチで、中国文学の現状を問われた莫言氏は、「陽春白雪と下里巴人」といって会場の笑声と掌声を誘った。通訳には意味が分からず、自ら「高級な白酒を好む人もいれば普通の白酒を好む人もいる。それぞれ味わいがあるように文化の受容は多様化している」と補足した。

春の明るい陽光と白雪。この美しい四字熟語は、高尚な楚の音曲の名に与えられている。一方の卑俗な音曲は「下里巴人」(巴蜀のひなびた里人)。対比には文学者らしく気をつかって格差ではなく多様性といった。「下里巴人」は数千人が和して歌えるのに「陽春白雪」は数十人。自分の作品がどちらにも受け入れられている現状へのとまどいもみられる。双方を理解できる「雅俗共賞」の人は実はもっと少ないからである。

楚辞「宋玉対楚王問」