存在感のある「長寿社会担当大臣」を

存在感のある「長寿社会担当大臣」を
-民主党「高齢社会対策」担当大臣は9人目-
衆議院の「社会保障・税一体改革」法案審議(5月22日)で、野党議員から民主党の「少子化対策」担当大臣が9人目という指摘がなされて、これでも重要課題ですか?というシーンがありました。少時とはいえそのひとりであった岡田克也副総理が弁明につとめておりました。
が、もっとゆゆしきことがあるのです。
「社会保障」の将来を論じる本国会で、国際的にもモデルとなるべき「日本高齢社会」の構想を掲げて、その達成への対策を担当するはずの「高齢社会対策」担当大臣もまた9人目であり、そのことを野党議員どころか閣僚すら知らないということがあるのです(参考:福島みずほ、平野博文、荒井聡、岡崎トミ子、村田蓮舫、細野豪志、村田蓮舫、岡田克也、中川正春 議員)。そのひとり、少時とはいえ年初の内閣改造時に兼任で担当となった岡田副総理は、時節がら知っていればおそらく担当をつづけたことでしょう。
これはいったいどうしたことなのでしょうか。
原因は遠く深く省みて求めねばなりません。新世紀このかた10年余り、医療・介護・福祉などの「高齢者対策」では成果がありましたが、増えつづける元気な高齢者層に対する「高齢社会対策」が置き去りにされ、史上初であり国際的にも新たなこの課題に政治的構想力をかけて対処するような政治リーダーがいなかったことを示しています。「新世紀10年の失政」といって過言ではありません。
いま「日本高齢社会」を体現している3000万の人びと(65歳以上)の実態を知って対策を講じつつその将来のありうべき姿に責務を担うのが「高齢社会対策」担当大臣です。その存在を軽視、無視、黙止したままで、「社会保障」を論じ、目の先で支える財源を確保する「消費増税」法案の審議がおこなわれているのです。
それに加えて、同時に「高齢社会対策」の中・長期的指針となる「高齢社会対策大綱」の見直しが10年ぶりにおこなわれているのです。その仔細な内容に関心を示さない閣僚が居並ぶ内閣で、国際的に誇れる「日本高齢社会」の議論がまともにできるものでしょうか。この10年がいかに対策不在であったかを省みることもなく、高齢社会を論じ、社会保障を論じることなどできません。袋小路に引きこまれてしまったような政界への違和感を覚えます。
全国3000万人に達した高齢者(65歳以上)の姿をしっかりと見据えて、保持している知識・技術・資産の参加を呼びかけて、各地・各界の「内需」を創出すること。それによって、持続的に「増収」を得られるような地域・職域の活性化をはかること。「増税」だけが先行する国会論議に、国民とくに高齢者は納得しないし支持しないのは当然です。
国政選挙にあたって、国会議員をめざすみなさんは、青少年・中年・高年三世代の参画による「日本長寿社会」の構想を掲げて、「来日方長」(来たる日まさに長し)といえるこの国の将来の姿を争点とせねばならないでしょう。「消費税」増税が争点などといっている政治家がいかに無責任・無反省であるかを知るべきです。
内閣府に各省庁や自治体から「高齢社会」対策、広く「長寿社会」に通じた職員を専任で集積し、連携して担当する骨太の組織を構成し、国の政策全体に通じたベテラン高齢議員が専任の「長寿社会担当大臣」として就任する。そのうえで、「長寿社会戦略会議」を発足させ、「高齢社会大綱」を決定する。
1999年の「国際高齢者年」このかたの「日本社会の高齢化」対策の遅れを取り戻して、これまでの「社会保障」関連法案の審議の欠落を埋めるとともに、みんなが安心して暮らせる史上初・国際的に新たな「日本長寿社会」達成の事業を、存在感をもって推進する国のしくみの成立をここに強く求めます。(堀内正範 2012・5・25//8・10)*