拝啓 一億総活躍担当大臣 殿
編集月旦2015年10月号
★[拝啓] 一億総活躍、女性活躍、拉致、少子化、男女共生社会・・高齢社会対策担当大臣 加藤勝信 先生
秋山如粧。
加藤先生におかれましては、去る10月7日の安倍内閣改造で、新たに設けられた「一億総活躍」担当大臣に就任され、同時にいくつもの重要な課題を担当されることになり、さぞご多用にお過ごしのことと推察いたします。
新たな「一億総活躍社会」の達成という呼びかけは、オールジャパン、オールエイジズによる体制の構築であり、当然のこと「3380万人、国民の4人にひとりに達した高齢者」(65歳以上)の社会参加を期待してのことと理解しております。
改めて申すまでもなく、わが国では「高齢社会対策基本法」(前文に「長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会」の形成、基本理念として「国民が生涯にわたって就業その他の多様な社会的活動に参加する機会が確保される公正で活力ある社会」の構築を掲げる)が1995年11月に村山内閣によって制定されており、本年の11月は制定以来、節目の20年に当たります。本来ならば、内閣の呼びかけで、国民の関心が「高齢化経済社会」について高まる機会なのですが、その気配は見えません。
「高齢社会対策大綱」は、1996年に橋本内閣が閣議決定し、2001年に小泉内閣が改定し、2012年9月に「消費税」議論のさなかに、野田内閣によって11年ぶりの「大綱再改定」という経緯をたどっております。
☆この度の「一億総活躍」の呼びかけは、これまで女性・若者の「成長力」優先のアベノミクスによって後回し(温存)にされてきた高齢者層の「成熟力+円熟力」の取り込みによる活性化にあり、高齢者が保持している技術・知識・資産の活用によるオールジャパン経済社会を呼び起こす契機とするところにあると推察されます。
なぜなら新世紀15年のわが国の「高齢化対策」は、「支えられる者」という固定観念による「高齢者対策」(介護、医療、福祉、年金など)が主であり、高齢者意識の醸成、高齢者むけ製品や流通の開発支援、高年期に必要な知識や技能の習得、居場所づくり、世代交流といった「高齢社会対策」は延滞しつづけてきました。
したがって「一億総活躍社会」の実現を議論する「一億総活躍国民会議」の有識者には、オールジャパン経済社会にするために高齢世代の代表の参加が求められます。
担当の責任ある立場に就かれた加藤先生には、対策の15年延滞の経緯と実情を顧みて、「下流老人」「老後破産」といった現下の憂うべき高齢社会現象に歯止めをかけ、世代を越えてみんなが安心して暮らせる「日本長寿社会=一億総活躍社会」を招来するために、指導力を発揮されることを期待いたします。 2015年10月15日 記
[ 敬具 ]
高齢化問題ジャーナリスト
堀内正範 「月刊丈風」編集人 朝日新聞社社友 元『知恵蔵』編集長