丈人論 ―「強い社会保障」とともに「強い高齢社会」を<1>―

 2011・5・15 
◎高年期のライフサイクル 
 現代のわれわれからみても、「われ十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲するところに従って矩(のり)を踰(こ)えず」(『論語「為政篇」』から)と、みずからの人生を顧みた孔子のライフサイクルは、2500年後の今日でもおよそのところ納得されています。
 現代風にわかりやすく表現すると、「志(目標)をもって学んで三十歳で社会参加・労働参加し、五十歳代で成果を確かめて、六十歳でお互いの生き方の相違を認めつつ七十歳代で自己実現を図る」ということであり、「余生」とは遠い前向きな姿勢で顧みています。孔子は73歳で亡くなりましたから80歳、90歳がないのは残念ですが。
「強い地域高齢社会」を達成するためには、数多くの強い高齢者がそれも全国各地に広く等しく「高年期」を意識して暮らしていることが必要な条件になります。そのためにはこれまでの発達心理学による若年層に手厚い分類とは異なる「日本高齢社会」に見合った「高年期のライフサイクル」が共有され、日々の活動を支えていることがたいせつです。
「青少年期」    ~24歳 自己形成期 第1ステージ 2977万人
       (25歳~29歳 次期へのバトンゾーン)    743万人
「中年期」  30歳~54歳 社会参加期 第2ステージ 4252万人
       (55歳~59歳 次期へのバトンゾーン)   864万人
「高年期」  60歳~84歳 社会参加と自己実現期 第3ステージ  3574万人 
「長命期」  85歳~    自己実現期          394万人
         (平成22年11月1日現在確定値。総務省「人口推計」から)
 とくにこの「第3ステージ」を意識した高年者層が「高齢社会」を担う主体者として姿が明確にすることで、高齢弱者を支える「二世代+α型」の「強い社会保障」とともに多重標準としての「三世代同等型」の「強い高齢社会」が合わせて形成されていきます。各地にさまざまな「高年者コミュニティー」が創出され、活動が広がり、優れた技術による「高年者用品」が熟練技術者によって案出されることになります。生活意識の高いこの国の高齢者がいつまでも途上国製の「百均商品」に埋もれて暮らすとは考えられません。
これが内需の要であり、若手政治リーダーが「内需はもうだめだから」などと発言するのはもってのほかのことなのです。(次回5月25日)