2011・5・5
◎地域の特徴を活かす
桜前線が東北地方の被災地を通過しています。しかし満開の桜花のもとを訪れる人は例年の1割程度といいます。自然の恵みと猛威。天恵と天災。どちらもこの国の先人は畏敬の念をもって受け入れてきました。
先の「戦後復興」(第2の国難期)を経験し、営々として築いてきた65年の蓄積を一瞬のうちに失った被災地の高齢者のみなさんは、いまが「第3の国難期」(地域社会と家庭の危機)であるともっとも強く実感しているに違いありません。全国の高齢者は、それを共有し支援することになるでしょう。
何をどうするのか。前回記したように、長く保持してきた知識、技術、資産を投入して、地域・職域のあらたな改革(みずからが安心して暮らせる「地域高齢社会」の形成と熟練した技術を駆使した「高齢者用品」の製造)に努めること。それが大増税を避けるため国民全員で負担する「災後復興」の課題です。
復興の契機が「地域の四季」にあるといったら唐突で言い過ぎでしょうか。
「文明開化」(第1の国難期)以来、日本近代化の一五〇年は、ひたすらな欧米追随でした。性急でひたむきだった暮らしの洋風変容。そのかぎりでは追いついても追い越すことはできません。最良の模倣までです。であるとすれば、これからこの国で暮らす者に恵みをもたらすものは何か。失われていったものを顧みると、「地域特性」と「季節感」つまり「地域の四季の暮らし」にかかわる「モノ・場・しくみ」であったものが多いことに気づきます。
身近なところでは、たとえば風鈴、うちわ、桐下駄、足袋、和服、和だんす、神だな、床の間、和風住宅、方言、女性名の「子」、ヒバリやカエルの鳴き声、安心して歩ける小路、よろずや、商店街・・。
夏の電力省力をクールビズでというのでは論外です。「常春型(エアコン)」住宅指向から「四季型(通風)」住宅への回帰という改革意識を見失ってしまいかねません。古来、わが国の住宅は「地方性」を活かした素材や様式をもち、「季節感」を巧みに取り込みながら、一年を通じて過ごしやすい工夫をこらした「四季型(通風)住宅」でした。いまでも古都の町屋や各地の古民家で、「風土になじんだ住居の心地よさ」を体験できます。
駆け抜けてきた「戦後昭和時代」に軽視・黙視してしまったもの。それらの姿は高齢期を過ごしているみなさんの胸の中に「なつかしい体験」として記憶されているはずです。その復興活動の一翼を担うのは「65歳+」の高齢者であるわれわれです。失われた「地域の四季」の回復を通じて、新たな内需のありようが見えてくるはずです。(次回5月15日)