丈人論 ―大震災を越えて「強い高齢社会」をつくろう<2>―                       

2011・4・15 
◎わが国の高齢者の役割 
 
年齢にかかわらず「自分は高齢者」と思っている人のうち80%までは元気に暮らしており、「リタイア」後も何らかの社会参加を望んでいます。それは仲間とともに65年をかけて創りあげてきた社会に親しみを持っており、さらに住み良くなることを希っているからです。これまでに培ってきた知識や経験や技術や資産を用いて、地域や職域での新たな「しくみづくり」「居場所づくり」「モノづくり」といった活動に参画する意欲を保っている証しです。
 大震災によってみずから築いてきたものすべてを失ってしまった東北地方の被災者の姿をみて、「がんばろう日本」とか「日本の力を信じてる」という声より先に、仲間のために具体的な支援に動いた人びとも多くいます。新たな出発に当たって、「65歳+」の人びとの参画は、この国の復興と創造を通じて、手つかずだった「高齢社会」の形成を進めることになります。わが国は世界一の長寿国です。65歳以上の人口比である「高齢化率」が21%を越えると国際基準では「超高齢社会」(本格的な高齢社会)と呼びますが、世界最速で高齢化が進んだわが国は、すでに23%(世界一)に達しています。
 「超高齢社会」を体現するのは、高齢者であることを自覚した65歳以上の高齢者の生き方です。2割ほどの医療・介護を要する仲間をかかえながらも、多くは健丈のうちに、青少年期・中年期にいる次世代の人びととともに、「人生の第3ステージ」である高年期を過ごしています。元気で暮らすわが国の高齢者が、世界の友人たちの支援と期待に応えて、独自の手法でどのような「日本型高齢社会」を創出するかが国際的に注視されているのです。
 ここで何よりたいせつなことは、後進の人びとの支援を受けて「強い社会保障」といった負担を期待して余生を送るこれまでの「2世代+α(アルファ)型」の受け身の暮らし方を改める時期にあることです。逆に後進の人びとの支援をしながら、史上に新たな「強い高齢社会」をめざすことにあります。
「高齢社会」というのは「病者や要介護者といった高負担の高齢者が多くなる社会」ではなく、「元気な高齢者が体現者として参画する新しい社会」であって、政治リーダーにはそういう将来の国(地域)の姿を提案する責務があります。ところが残念なことに、政権党になった民主党のマニフェストにはそういう視点がまったくないのです。だから首相になった鳩山由紀夫さん(1947年生まれ)も菅直人さん(1946年生まれ)も、60歳代になった自分と仲間たちが形成する「本格的な高齢社会」への構想を持たず、「高齢者が構成する強い高齢社会」への参画を呼びかけることもないのです。(次回4月25日)