四字熟語「力排衆議」

力排衆議 りきはいしゅうぎ

ふつうには権威や権力によって多数意見を強引に抑え込むことにいうが、複数の人のそれぞれの主張を聞き、ひとつひとつ論破して自分の意見に同調させることを「力排衆議」(力して衆議を排す)という。

後者の論法をやってのけたのが、三国時代・蜀の諸葛孔明である。強力な魏の曹操との和睦に向かおうと決めていた呉の孫権幕下の文武の者たちに対して、単身で乗り込んだ孔明は舌戦によって張昭以下を次々に黙らせた。その結果、魯粛の裁断によって劉備と孫権による長江連合が成立する。衆議にきわだつ先見性と実行の手段と論戦に確信がなければほんとうの「力排衆議」にはならない。歴史は苦難のときに、こうした力を持つ「非常之人」を登場させて、新たな局面をつくりだしてきた。

次の首相選びでは「大震災復興」をテーマに自薦他薦の候補を一堂に集めて舌戦を展開する。国民の前で衆議を尽くした末に「力排衆議」をなしえた人物に大任を託せればいいのだが。

『三国演義「四三回」』から

『日本と中国』「四字熟語ものがたり」 2011・7・5号
堀内正範 ジャーナリスト