安倍総理の所信表明演説を「高齢者参加」で読む(2013年1月28日)

安倍総理の所信表明演説を「高齢者参加」で読む(2013年1月28日)
残念ながら58歳の為政者の意識に、「高齢者参加による社会改革」は不在(政策に不在)です。安倍総理の演説からは新「高齢社会対策大綱」が指摘した「人生90年時代の支える側の高齢者」への呼びかけが聞こえません。美辞を求めて信言から離れています。人気と施政は夏までもたず、わが国の自力での浮揚はいよいよむずかしくなります。
以下は高齢者の視点による読み込みです。こういうものであれば、支える側の意欲が生まれるのですが。参議院選までに、国際的に期待されている日本の自力再生、戦後をつくった高齢者層の潜在力をどう呼び起こすかにかかっています。(堀内正範)
・(高齢者としての)決意の源は、深き憂国の念にあります。
・(3000万人の高齢者が参画して)持続的な経済成長を通じて(新たな)富を生み出すことができなければ「経済全体のパイ」は縮んでいってしまいます。
・私たち(高齢者)の安心を支える社会保障の基盤も揺らぎかねません。
・(高齢者のみなさんの参画をえて)これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示します。
・大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして(とくに高齢者層による新たな)民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」
・「(各世代それぞれの)成長による富の創出」
・「(すべての高齢者の)暮らしの安心・(高齢者のもつ技術・知識・資産の参画による)地域活性化」
・(とくに高齢者層による新たな)民間の投資と(新しい国産製品とサービスによる)消費が(増えつづける高齢者層によって)持続的に拡大する成長戦略
・「(生まれたばかりの子ども、育つ世代、生み育てる世代、生をいとおしむ世代のすべての国民が)健康で長生きできる社会」
・(これまでの歴史になかった)新たな富と雇用も生み出します。
・「(ヒューマン・)イノベーション」(<生から死までの人間存在にかかわる>技術革新)と(三世代多重型社会への)制度改革
・(「人生90年時代」の)未知の領域に果敢に挑戦をしていく精神
・今こそ、(国際的に先行する「高齢社会」形成で)世界一を目指していこう
・若者もお年寄り(注:ここだけ。弱者の視点で)も、年齢や障害の有無にかかわらず、全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。
・「(高齢者が生涯にわたって)自らの力で成長(熟達・深化)していこう」という気慨を失ってしまっては、個人も、国家も、明るい将来を切り開くことはできません。
・(高齢者が)自らの中に眠っている新しい力を見いだして、これからも成長(熟達・深化)していくこと
・「強い日本」を創るのは、他の誰でもありません。私たち(3000万人の高齢者)自身です。
 

「長寿社会」を推進する3つの課題

「長寿社会」を推進する3つの課題
◎Ⅰ 「高齢社会担当大臣(専任)」の設置
◎Ⅱ 参議院制度の改革
◎Ⅲ 高齢者参画による持続的な経済成長
○2013年1月9日午後、「高連協年頭学習集会」のあと、記者クラブ喫茶室での尾崎美千生さん、岡本憲之さんとの談論は、次の3つの課題をめぐるものになりました。2013年7月21日(予定)の参議院選までに、あるべき姿としての「高齢者・高齢社会の存在感」を高めるための活動への契機として、ここに整理してみます。
◎Ⅰ 「高齢社会担当大臣(専任)」の設置
○内閣府に重量感のある「高齢社会担当大臣(専任)」を設けること。副大臣・審議官・参事官・担当職員(70歳までの高齢実務者)を配属して、各省にわたる「高齢社会」政策を集約する骨太の部署を新設する。現在はというと「高齢社会対策担当大臣」(民主党政権下で10人)を置いてはいるが多くは少子化担当と兼任で、「高齢社会対策」は「共生社会政策担当統括官」が統括する1セクションとして扱われている。これこそが「10年無策」の証であり、このままでは世界に冠たる「日本高齢社会」の達成はむずかしい。
○ここは尾崎さんの領域ですが、人選としては国際的に先行する「日本長寿(高齢)社会」のシンボル的インパクトを考慮すれば、初代大臣は政界最長老的存在の人が適任。20年にわたる「国力萎縮」(デフレーション)の重要な要因に「高齢社会の不在」(年々増えつづけてきた健丈な高齢者の社会参加意識の欠如)があったことを、政治家が「10年の失政」として省みる必要があるからである。とすれば1986年に「長寿社会対策大綱」を閣議決定した総理・中曽根康弘氏(94)までさかのぼる。1994年に高齢化率14%に達して「高齢社会」入りをし、10年目の1996年に名を「高齢社会対策大綱」(橋本内閣)として閣議決定した経緯がある。1999年の「国際高齢者年」の政府主催者(小渕内閣総務庁)として携わった人でもいい。
また「社会保障」財源を安定化させる「消費税増税」法案の採決のあと、実施に必要な「経済成長」を確保し「高齢者参画」を呼びかけるには藤井裕久氏(80)が適任である。上の両氏に匹敵する表舞台に出なかった政治家(山中宰相)がいれば再登場をお願することになる。
◎Ⅱ 参議院制度の改革
○衆議院とは異る立場の国民代表が構成する参議院に。2世踏襲と世代交代がつづけば2院制の存在意義を失う。世代間や分野間や地域間の議論を活発にするために、年齢制限をやめて各地各界の経験豊かな高齢議員を多く選出する。同趣旨の主張と活動をしている学者・政治家のみなさんに「高齢者・高齢社会の存在」を意識するよう訴える。
・年代枠(三世代枠)・高年・中年・若年  ・女性枠
・分野枠 ・政治家・官僚・学者・経済人・報道関係者・芸能保持者(著名人)
◎Ⅲ 高齢者参画による持続的な経済成長
○途上諸国主導の経済のグローバリゼーションに対応して、わが国の“途上国化と若年化”が長らくつづいてきた。その間、技術・人材・資産の海外流出がつづき、そのために地域や職域の熟年・熟練高齢者は“足踏み状態”を余儀なくされ、地域・国内中小企業の衰退・疲弊(デフレーション)は限界に達している。いまこそ政治の側から、高齢者層の地域・職域参画を呼びかけて、各人が保持する知識・技術・資産を活用して、高齢者自身が必要とする新たな「モノ・サービス・居場所・しくみ(コミュニティ)」をこしらえるよう訴える必要がある。一つひとつは小さいが地域特性・業種特性をもつ成果の重なり合いが、総体としての「長寿社会(高齢社会)」の豊かさを形成する基盤となる。家計資産は高齢者が「三世代多重型」社会の形成のために活用して、持続的な経済成長をもたらすことで、後人(次世代・途上国)への新たな資産となる。
○「孫の教育費」(1500万円まで)を無税贈与にするといった次世代支援は、高齢者資産の「ヒッペガシ」政策であり“恩恵の上乗せ”であって、あっても仕方がないが、持続的な経済成長をうながす要因にはならない。
○「日本社会の再生」には、具体的には地域・職域の1980年ころ(「一億総中流」時代)の地域・職域の再生に有効性がある。「均衡ある国土の発展」のあと、高齢世代の参加(再生のための再出動)による「特性ある地域の発展」を重ね合わせることで、「みんなが安心して暮らせる地域社会」が達成される。(堀内正範 2013・1・15)

四字熟語-信言不美

信言不美
しんげんふび

老子は「信言は美ならず」という。心に響く信言というものは必ずしも美しくはないという。美しく整えようとすることで失うものがある。老子にはまた「大弁若訥」(大弁は訥なるがごとし)があって、まことの弁舌は訥々としているものだ、という。努力してもさわやかな弁説とはいかない人には実感のあることばだろう。訥々とした語り口のなかに「大弁」を聞く老子の人間理解には、限りない優しさと率直さを覚える。
周末のころ、李耳(老子。生没年とも不詳)は、人生の終わりに近く、衰亡の淵にあった周室を離れて西方へと隠遁の旅に発つ。函谷関で関令の尹喜に熱く懇望されて書き残した五千余語が信言集『老子』である。その最後に「為而不争」(なして争わず)と書き、「信言は美ならず、美言は信ならず」と謙遜のことばを残して山中へと消えていった。
われわれの代表として国政に携わる人のことばが心の底にとどかない。老子自身の「大弁若訥」がどんなものだったのかを思う。

『老子「八一章」』から

 

 

「月刊丈風」2013年1月号

「月刊丈風」2013年1月号
「丈風」2013年1月号 PDF
人生90年時代をどう生きるか
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日本長寿社会を推進する
月刊 丈風 じょうふう
編集人・堀 亜起良 堀内正範
https://jojin.jp mhori888@ybb.ne.jp
65歳からの情報誌
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2013年1月号 目次

5日・小春  20日・大寒
2013年1月号
     前月号まで
編集月旦      編集月旦2013癸巳元旦
新情報  高連協年頭学習集会 201319
 プレスセンター日本記者クラブ宴会場
 新年のあいさつ  樋口恵子代表   高連協樋口代表挨拶2013
 60歳からの雇用と就業 厚労省職業安定局 小川誠部長
 年頭学習会資料1 年頭学習会資料2 年頭学習会資料3
 質疑応答 厚労省職業安定局 岡崎淳一局長 小川誠部長
司会・堀田力代表
(未)
新情報 「高齢社会対策大綱」(2012・9・7 閣議決定)を読む2
高齢社会対策大綱を読む2
 第2 分野別の基本施策 1就業・年金等分野に係る基本的施策
2012総選挙・2013参院選への提案
高齢者潜在力(知識・技術・資産)を日本再生の援軍
提案2013参院選
3つの課題 高齢社会担当大臣・参議院改革・持続的経済成長
 3つの課題20130109
新情報   東京大学高齢社会総合研究機構  東京大学IOG
「長寿社会のまちづくり」柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会
 高齢社会検定試験(6月実施準備中)
◎ほん 『頑張って生きよう! ご同輩』
 高齢社会NGO連携協議会編著   「頑張って!ご同輩」2012
新編集 現代シニア用語事典「人生90年時代」を生きることば』
『現代シニア用語事典』
 連載3「家庭用品の途上国化と国産化」  『現代シニア用語事典』連載3
 現代シニア用語TODAY 長寿時代のライフサイクル他
シニア用語TODAY
特集    賀寿期5歳層
「古希期」(70~74歳)・人名録        賀寿期「古希期」
「喜寿期」(75~79歳)・人名録       賀寿期「喜寿期」
「傘寿期」(80~84歳) ・人名録       賀寿期「傘寿期」
「米寿期」(85~89歳) ・人名録       賀寿期「米寿期」
本誌制作 三世代(8歳~100歳)年表 人口・流行歌・流行語
三世代年表人口流行語流行歌
寄稿 「人口爆発」から「高齢化」の21世紀へ 尾崎美千生
 人口爆発から高齢化へ
 高齢者が活躍する場を創造しよう  岡本憲之(JTTA)
    活躍する領域の創造
小論  「日本長寿社会」は三世代多重型 堀内正範
「日本長寿社会」は三世代多重型
セミナー「丈人のススメ・人生90年時代をどう生きるか」
セミナー八重洲20120725
統計資料 高齢者の社会活動と月収 有訴率
高齢者の社会活動と月収  有訴率
2012年12月号(年鑑)       「丈風」2012年12月号         
◎web「月刊丈風(じょうふう)」
:衆口一詞(誌)の拠点として毎月15日にweb版を公開。
〇仁人なる人は言を。原稿・資料・ご意見の送付は mhori888@ybb.ne.jp  へ。
〇富貴なる人は財を。活動へのご支援 (年間3000円) を下記口座に。
三菱東京UFJ銀行築地支店普通口座 「丈人丈風の会」
(ジョウジンジョウフウノカイ)1192946  (いいくに君子録)
編集人・堀亜起良 堀内正範
朝日新聞社社友(元『知恵蔵』編集長)  高連協オピニオン会員
tel & fax  0475-42-5673 〒 299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
blog  らうんじ・茶王樹・南九十九里から https://jojin.jp
2013・1・15
 

四字熟語-掩耳盗鈴

掩耳盗鈴
えんじとうれい

「耳を掩いて鈴を盗む」というのは、盗もうとした鈴(鐘)が音をたてたので聞かれるのを恐れて自分の耳をふさいで実行したというもの。だれにも知られている自己欺瞞にいう。古くは鐘だったが、現今は「掩耳盗鈴」でよく使われる。 日本政府が「尖閣国有化」をしておいて中国と交渉する態度もその例とされる。
この「故事成語」を子どもたちが古装を身につけて寸劇として演じていた。いま各地で七歳から一四歳の小中学生が出演者となって「中国成語故事」(一千集)の撮影に臨んでいる。五年余をかけて撮影して全国のTV局から放送し、伝統文化教育の補助教材として出版されるという。
先人がなした事跡(故事)を後人が人生の糧として記憶し記録し用いてきた「故事成語」は、漢字の特徴を活かして四字に整えられており、歴史文化の精髄なのである。中国の子どもたちは小学校教材で二八〇項目、中学校教材で四六〇項目ほどの「故事成語」を学んでいる。

沈徳符『万暦野穫編二』など

高齢者の潜在力(知識・技術・資産)を日本再生の援軍に

2012総選挙・2013参院選への提案

高齢者の潜在力(知識・技術・資産)を日本再生の援軍

「国民分断」論争でなく「住民総和」構想を

○このたびの総選挙そして2013年の参院選は、わが国が自力浮揚するために、どの道を選ぶかの正念場です。持続する経済成長をなしとげる新たな道へ踏み出さねばならないからです。

○国民の暮らしを守る「社会保障」の財源を確保する「消費税増税」法案は、2012年6月衆院、8月参院で採択されましたが、実態を論じる場はありませんでした。「医療」「介護」「年金」「少子化対策」の議論は「国民会議」の有識者に委ねられましたが、決めるのは国民です。

○総選挙は全国の選挙区で、「高齢社会」と「社会保障」の姿を住民が候補者と話し合い、具体策の実現を付託する場だったはず。そしてその実現には3000万人に達した高齢者(65歳以上)の潜在力を呼び起こして地域の力を結集する「住民総和の政治参加」が必要だったはずです。

○にもかかわらず、各党の公約や各種メディアの関心は、原発・TPP・尖閣・憲法など「国民分断」の論争ばかり。地域住民の声は届かず、「住民総和」によって達成にむかう「日本長寿社会」(健全な社会保障)を構想できる国会議員がどれほど選出されたのでしょうか。

現役シニアの参画で健全な「社会保障」を堅持

○際立った増税論議の一方で、目立たずに有識者と内閣官僚によって11年ぶりに新「高齢社会対策大綱」が閣議決定(9月7日)されました。すべての高齢者が知るべき重要な指摘がなされています。これまでの「人生65年時代」の「支えられる高齢者」像を改めて、「人生90年時代」の「支える側の高齢者」(現役シニア)を登場させて、課題解決の要件としていることです。
○長寿として享受している65歳からの高齢期(65+25年)を、旧来のままの「余生」として送るのではなく、保持している知識・技術・資産を活用して、地域・職域に新たな「モノ・居場所・しくみ」をこしらえること。一つひとつは小さくとも、これが総体として「日本長寿社会」の達成に寄与するという将来像を納得して、一人ひとりの現役シニアがどこまで存在感を示せるかです。
○医療・介護で「支えられる高齢者」は2割ほどおりますが、大多数は安心して暮らせる「高齢社会」形成への参加を望んでいます。国会が将来構想を掲げ、現役シニアが積極的に参画して応分の存在感を示すこと。こうして健全な「社会保障」の現場が堅持されることになります。

「活力ある長寿社会」が持続する経済成長の要

○わが国の高齢者は、この10年、史上初・国際的に新たな社会を体験できないでいます。1999年の「国際高齢者年」に国連が提唱した高齢者五原則「自立、参加、ケア、自己実現、尊厳」のうち「ケア」には成果が認められますが、一人ひとりの高齢者が自立意識をもって参加し、目標である「みんな(all ages)のための社会」の実現をめざす活動を展開してこなかったからです。
○多事多難な課題に苦闘している青少年・中年の現役世代とともに、現役シニア層が加わった三世代協働による新たな「活力ある長寿社会」の形成こそが、持続する経済成長の要です。
○代表である国会議員が最重要の政策とし、各地各界のリーダーがそれぞれの立場で対応し、現役世代と高齢者一人ひとりが暮らしの中で持続可能な自己目標を掲げて実現に踏み出すとき、「長寿社会」の先行モデルとしての成功事例を案出しつつ、自力浮揚する確かな道が見えてきます。
2012年12月8日~13年1月9日
***提案者 「活力ある長寿社会」を推進する有志の会
尾崎美千生(元毎日新聞社政治部記者 michio1@jcom.home.ne.jp
岡本憲之(高連協理事・JTTA理事長 okamoto@npo-jtta.jp
堀内正範(朝日新聞社社友・「月刊丈風」     https://jojin.jp 編集人 mhori888@ybb.ne.jp
(事務局)tel&fax 0475-42-5673 〒299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8

四字熟語-気吞山河

気吞山河
きどんさんが

意気さかんにして山河も呑むほどの勢いがあることを「気は山河を呑む」といいます。意気さかんである度合いはさまざま。大きいところでは雲夢(楚にあった大沢)の八つや九つを呑んでやろうという「気呑雲夢」となり、はては牛斗(牽牛星と北斗星)を呑む「気呑牛斗」や宇宙まで呑んでしまう「気呑宇宙」となったりします。中国史上で稀有の意気さかんな人物として知られる英傑、漢の劉邦と天下を争った楚の項羽は「抜山蓋世」(力は山を抜き、気は世を蓋う)であったと伝えられています。
平成不況が長引いている上に「消費税増税」では気勢はあがらず「気息奄々」ですが、要は人。景気も気のうちですから「気呑山河」の勢いがほしいところ。年齢を問わず、ひとりひとりが保持する知識、技能、資産を活かして地域・職域に活力を呼び起こす以外にありません。みなさんの「気吞・・」がなにを吞むかによります。力づよい・・を入れて、みずからの気勢をさかんにしてください。

金仁傑「蕭何月下追韓信」など