四字熟語-不争之徳

不争之徳
ふそうのとく

周朝の末期、争いを常態としていた時代に、老子が残した信言集『老子』五千余語(八一章)の最後のことばが「不争」である。

人為に期待しなかった老子が、善き人の為すべき極みとしたのが「不争の徳」であった。
老子はまず「善く士たる者は武ならず」(ほんとうの武人というものは武力をかざさない)と説く。そして「善く戦う者は怒らず」(ほんとうに戦う者は怒りによっては行わない)というのである。怒りによる争いの勝利は怨みを残すからである。さらに「善く敵に勝つ者は与せず」(ほんとうに敵に勝つ者は四つに組んで敵を完敗させるようなことはしない)という。そしてなお「善く人を用いる者は之がために下となる」(ほんとうに人を用いる者は相手の下手に出る)という。
武ばらず、怒らず、完膚なきまでにせず、上手に出ず。これがほんとうの勝者の為すべきことであり、万物を利する水のようであれという。「為して争わず」、人為で争いのない世界をつくるのはむずかしい。

『老子「六八章」』から

四字熟語-買空売空

買空売空
ばいくうばいくう

「空を買い、空を売る」というのは、実態としての現物の介在がなく価格変動からの差益を得るためにおこなう商売上の投機行為にいう。かつては奸商呼ばわりまでされたが、いまや「大衆資本主義」の盛時、株式による「買空売空」は日常茶飯事のことである。紛争の尖閣問題に関して中国側が、持ち主と国がおこなう売買を「買空売空」とするような使い方もある。

景観に売る価値がある超高層マンションも「空を買い空を売る」対象になる。東京スカイツリー効果も空間価値による利益だからそのうちである。タワー世界一だがビル世界一はドバイにあるブルジュハリファ(八二八メートル)。中東のドバイは、砂漠に超近代都市を現出し、世界一ならなんでも集める。オイルマネーで空中楼閣を築く「買空売空」国家といえよう。

架空の売買で暴利を得たり逆に大金を失うこともある。いずれにしても「粒粒辛苦」して働いている実業の人からすれば「それが人生か」ということになる。

「大清宣宗成皇帝聖訓」など

四字熟語-虚位以待

虚位以待
きょいいたい

席を空けて必要とする人物を待つことを「位を虚けもって待つ」という。待たれる側からすれば、期待に応えようとする心境が動くいい成語である。

古くは「虚左以待」として使われたのは、車の席が左が上座とされたことからで、異動が喬遷(出世)によるならば喜びもひとしおといった場面である。

いまでもよく企業内ではもちろん知名企業が就職募集をしたり、市人事部が高校卒業生に奉職を呼びかけたりする時にいわれる。百社を超える企業が参加して数千人規模の就職面接会を催すともなれば壮観な「虚位以待」の人材市場が展開されることになる。

市による専門職の幹部や銀行による博士課程の学生の応募を求める場合などが心持よく響くのは、いずれの場合も席に着く相手に対する特別な敬意が示されているからで、オリンピックの種目別代表の座が決定者を待つ間でも同様である。みんなに歓迎されてそんな座につく経験をしてみたいものである。

『欧陽文忠公集「奏議集」』

月刊「丈風」 2012年9~10月号

月刊「丈風」 2012年9~10月号 目次
!!「丈風」2012年9~10月号
!編集月旦1001
!!緊急提案(請願)1001
三世代年表・人口流行語流行歌
!高齢社会白書平成24年版・下
編集人 堀 亜起良(堀内正範)
日本丈人の会https://jojin.jp代表  朝日新聞社社友  高連協オピニオン会員
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