四字熟語-胸有成竹

きょうゆうせいちく

竹は竹かんむりの字が多いことからも、さまざまな用途をもった植物として親しまれてきたことがわかる。まず筆がそうだし、竿、箒、箸、箱、籠、笛、笠、節や筋もそうである。また竹はそのたたずまいを愛されて、詩画としても数多くの名品が残されている。

北宋時代の四川に文与可という竹の画に秀でた人がいた。ことのほか窓外の竹を愛でて、春秋、朝夕、晴雨といった自然の変化の中での竹を仔細に観察して描いた。同時代の文学者晁補之は「胸中に成竹あり」と称賛している。描く前に画が胸中に完成しているのだから上手なはずである。

ことをなす前にすでに胸中にしっかりした結果が見えている(成算がある)例として用いられる。
折りしもTPPへの加入問題に対する野田首相の態度について、「人民網」は「賭博かそれとも胸有成竹?」の見出しを付けた。賭博ということはないだろうが、といって国民を納得させる「成竹」が胸中に描けているのかどうか。 

晁補之『鶏肋集・八』から

四字熟語-邯鄲学歩

かんたんがくほ

いま若者は都ぶりをどこで学ぶのだろう。原宿か青山あたりだろうか。

ひとりの若者が都ぶりの歩き方を学ぼうとして、北国燕のいなかから趙の都邯鄲にやってきた。「邯鄲に歩を学ぶ」である。しばらく努めてはみたもののサマにならない。あきらめて故郷へ帰ろうとしたが、元の歩き方を忘れてしまって歩けない。そこで這って帰るしかなかった‥。

あこがれて都会へ出たものの挫折して故郷に帰る。しかし故郷でも受け入れられなくなる例もある。
古くから中原の古都であった邯鄲市にちなむ成語は一五〇〇余もあって「成語典故の郷」と称している。市内に「趙台」や「成語典故苑」を設けて彫像や碑文に託して展覧している。よく知られるものに「刎頸之交」「完璧帰趙」「奇貨可居」「背水一戦」「黄粱一睡(邯鄲之夢)」それにこの「邯鄲学歩」も。いまも明代の遺構を伝える石づくりの「学歩橋」が沁河に架かっている。蘭陵王入陣曲は日本から邯鄲に「秘曲帰趙」した。

『荘子「秋水篇」』など

 

 

四字熟語-江郎才尽 

こうろうさいじん

誰がそうだとはいいづらいが、テレビやマスコミに出づっぱりでいる人の中に「才人」ではなく「才尽」といってよい人を見かける。みずから顧みれば、ことばに冴えがなくなり行動に切れ味がないのだから本人が気づかないわけはない。

南朝の宋、斉、梁の三代に仕えた江淹は、若いころには精彩のある擬古詩を発表してもてはやされたが、高官にのぼるにつれて文思に冴えを失い、晩年になると文才を使い尽くしたかのようになり、「江郎才尽」といわれるようになった。
「才尽」といわれようとも三代に仕えた能力は並みでない。保身のために演じたのだとする見方もあるが、「才尽」の歴史的シンボルとされたのだから、実際それに近かったのだろう。

政権が目まぐるしく代わる時代、保身のために何度も面だけを革める「才尽」型の人物にこと欠かない。一方に芸能、工芸の分野には無形文化財保持者(人間国宝)に指定され、生涯輝きを失うことなく向上する姿を示す才人もいる。 

『梁書「江淹伝」』から

『日本と中国』連載「四字熟語ものがたり」より
堀内正範 ジャーナリスト

 

 

丈人論―「エキスポS65+ 第1回」を迎えて<3> ―

◎元気な65歳+のみなさんは「全員集合!」

11月15日、「第1回・エキスポS65+」は開幕します。
毎年、晩秋に「エキスポS65+シニアの祭典」が開かれることになる幕張メッセ会場は、将来への展望を考慮すれば、この総合イベントにふさわしい。

優れた生活意識をもつ日本の高齢購買層のみなさんが、いつまでも途上国製品にうずもれて暮らしつづけることはありえないでしょう。「グローバル化」(日本の途上国化・アジア途上諸国の日本化)が一段落して、アジアの人びとがどうやら豊かになれることが見えたところで、一歩進んだ「やや高安心の国産優良品」がわが国の高齢者の生活にうるおいをもたらすことになるでしょう。足踏みしていた日本企業の高年技術者が産み出す高齢者むけ製品は、これから高齢社会を迎える各国の注目を浴びることになり、内需拡大と国際性が確実に見込まれるからです。今回の「エキスポS65+シニアの祭典」はその第一歩であり、具体的に多くを期待することはできませんが、そこに向かう意欲と契機は会場にあふれていることでしょう。

そして出番を感じて、新たな居場所を求めて、孤立を脱するために、将来に備えるために、65歳+のみなさんが幕張に集まってきます。
展示会場の中心には、将来のシニアマーケットを模索してさまざまな小売・製造企業が出展しており、暮らしの現場に配慮した衣・食・住・趣味・健康・備えといったエリアごとの各ブースでは、「造る者」と「使う者」が触れては語り、選んでは語り、次の製品に期待する語りあいの場がそこここに見られるでしょう。みなさんより若い企業現場の社員たちはそこから多くのきっかけを得られるはずです。企業のPRセミナーもぜひ見た上で、高齢者の立場で、とくにご夫婦で、家庭内にうるおいをもたらすさまざまな製品への要請を出してほしいのです。生活意識の高い来場者からの要望は、新たな高齢者向け国産優良製品を産み出すきっかけになるに違いありません。

野田総理が10月14日の「高齢社会対策会議」で、「居場所と出番」「孤立防止」「現役時代からの備え」とともに新たな視点といって期待する「高齢者の消費の活性化」は、当事者である高齢者が企業現場に直接に要請する幕張メッセから始まるといっていいでしょう。高齢者が使いやすいモノや安心して暮らすためのサービスは「高齢社会」形成の基盤を造ることになります。

多彩なフォーラムは高齢者の明日の安心への生き方を示してくれるでしょう。16日の「高連協ディベート」は注目です。議論の展開によっては、高齢社会先進国の日本から世界にむかって「幕張宣言」が発せられるかもしれません。
なにはともあれ、11月15日は「元気な高齢者のみなさん、全員集合!」の時なのです。(次回は11月25日)

「S65+」ジャーナル
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 

 

丈人論―「エキスポS65+ 第1回」を迎えて<2> ―

「エキスポS65+」は「最先端のモデル」をつくる 
千葉県初の宰相である野田佳彦総理は、15日の幕張メッセ「エキスポS65+」開会のときに祝辞を寄せてくれる手はずになっており、すでにイベントの情報はお手元に届いています。
野田総理は10月14日の朝、官邸でおこなわれた「高齢社会対策会議」(第20回)の席で、10年ぶりの「高齢社会対策大綱」の見直しにあたって、
「人類史上、前人未到のスピードで高齢化が進んでいると思いますが、悲観的になるのではなく高齢化社会にしっかり向き合って世界最先端のモデルを作っていくということが、大綱作りの基本的な考え方になると思います」
と前置きした上で、
「一つは、高齢者の居場所と出番をどう用意するか、二つ目は高齢者の孤立をどう防いでいくか、三つ目は現役時代からどう高齢期に備えができるのか、以上三つが基本的な視点ですが、あえてもう一つ付け加えるならば、高齢者の消費をどう活性化していくのか、ということも大事な視点だと思います」
と基本的な視点を提示しました。三つはすでに『高齢社会白書』にも述べられている内閣府の対策項目ですが、一つ付け加えて「高齢者の消費をどう活性化していくのか」といったとき、「S65+」が念頭にあったかもしれません。
「S65+ シニアの祭典」の立場からすれば、総理、まだそんな総論をいっているのですか、といいたいところです。「居場所と出番」を用意しているし、「孤立」を防ぐ集いであるし、「高年期の備え」を示そうというのですし、それに加えて「高齢者の消費をどう活性化していくのか」は、本イベントの中心課題なのですから。65歳以上の高齢者が健康であり、物心ともに暮らしが豊かになり、安心して過ごせることをめざして開催する初の総合イベントなのですから、「最先端のモデル」をつくることになります。
「S65+」こそ、総理が期待する高齢社会対策に沿う民間主導の総合イベントなのです。国・自治体の10年の対応の遅れがこの国の高齢者の人生を安心から遠くしているのです。1999年に全国展開した「国際高齢者年」の活動をまとめあげた総務庁高齢社会対策室のような太い動線をもつ組織がありませんし、何より首相直轄の内閣府に「専任」でかまえる高齢社会対策担当特任大臣がおりません。野田総理、これこそ検討すべき第一の基本的課題です。
65歳+のみなさんを迎えるメッセ会場の準備は整いつつあります。マラソンの瀬古さんとの8kmウオークもよし。鳥越さんのガンに勝つ生きざまや65歳新入生である坂東学長の品格ある講演を聴くもよし、樋口さん・堀田さんの白熱シニア公開討論会に参加するもよし。展示会場では宅配弁当の試食やサンプル・サプリのお試し、メディカルサポート、ヘアケア、無料健康相談、無料相続相談、無料最新健康機器の試用などなど、そのあと休憩コーナーで出会った同年の人と懐かしい思い出話に興じるもよし。多彩な出会いの場を用意した「シニアの祭典」の開会は眼の前まで迫っています。(次は11月15日) 
「S65+」ジャーナル
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー) 

丈人論―「エキスポS65+ シニアの祭典」を迎えて<1>―

◎みんなが楽しめる「シニアの祭典」
11月15日~17日の開催にむけて、「エキスポS65+シニアの祭典」の展示会、フォーラム、ウオーキング用それぞれの広報パンフレットができあがりました。先後しますから目に止まる時と場は異なるでしょうが、おおかたは興味深く受け止められているようです。フォーラム、ウオーキングは個別ですが、中心となる展示会用は「総合パンフレット」(4つ折り、B5仕上がり)になっていて、これが多く出回り、会場に持参して割引用になります。
こういう時節ですから、意図どおりの反応でない批判や疑問もあります。そのひとつに「元気な65歳以上のあなたのための祭典」というのだから高齢シニアだけが対象で、60歳になったばかりの団塊世代の人や子どもや孫たちはおよびでないのか、というものです。主催者としては、孫をつれて、子とともに、夫婦でもよし、仲間同士でもよし、もちろんひとりでもよし、それでも主体になるのは65歳+の人びとであってほしいという願いをこめた呼びかけにちがいないのです。
善意で使う「みんなのため」は、主体者を示さないために力にならない例にこと欠きません。新世紀での高齢化社会を予測して、国連は1999年を「国際高齢者年」と定めて、「すべての世代のための社会をめざして」をテーマにしました。21世紀初頭に高齢期を迎える人びとに「高齢者意識」を求めなかった“国連の善意”は、実際の活動を強めることに向かいませんでした。
平成7年(1995年)に成立した「高齢社会対策基本法」の前文は名文です。
「我が国は、国民のたゆまぬ努力により、かつてない経済的繁栄を築き上げるとともに、人類の願望である長寿を享受できる社会を実現しつつある。今後、長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の形成が望まれる。そのような社会は、すべての国民が安心して暮らすことができる社会でもある」
これは当時の国民の声の表現なのですが、だれがどうするかの指摘がない主体者不在の名文なのです。みんなが安心して暮らせる社会をつくるための「元気な65歳以上のあなたのための祭典」であり、みんなで集って「新感覚のライフスタイル」を考えてほしいという願いがこめられた呼びかけなのです。
「総合チラシ」の表紙は、イベント対象となるシニア代表のご夫婦によるカバー写真。秋の昼近い明るい野にふたりが立っている。視線の先で見ているもの(未来)はすこしずれていても手でしっかりとつないでいる。女性のスカートの藍色をうすく遠く引いたバックの群青色の背景はやさしい。白抜きのキャッチ「知らなかった、こんなイベントがあるなんて!」もそのとおりでいい。
とくに新聞折り込みでこの「総合ちらし」に出会ったら、上に述べたように「わが国の高齢社会」を築き上げるためには65歳+のみなさんの意識的な活動があってはじめて達成に向かうのだという、主催者から主体者への熱い呼びかけだと理解してほしい。みんなが安心して暮らせる社会を実現するための「元気な65歳以上」に対する呼びかけであって、本意はみんなの祭典なのです。それもあって3日目の17日は「三世代交流」を企図した構成を試みています。
ご夫婦でもよし、仲間同士でもよし、孫をつれても、子とともにでもよし、ひとりでぶらりでもよし。このパンフレットを手に、みんなが楽しめる「幕張メッセシニアの祭典」に出かけてほしいのです。(次は11月5日)
「S65+」ジャーナル 
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー)