ごあいさつ(2011年5月)

ごあいさつ
いかがお過ごしでしょうか。
 3月11日の「東日本大震災」の折には、どこにいてどんな体験をされたのでしょう。
同じ太平洋プレート震源につらなる南九十九里のわが家には実害がなかったものの、実際には呆然自失(判断の停止・活動の休止)という状態に陥りました。
 壮絶なTV映像。
 大戦後の半世紀余をかけて粒粒辛苦して築いた町、家、そして家族を、瞬時のうちに奪い去った大津波の情景は、いくら「想定外の天災」と言い重ねても胸の中に収まってくれません。福島原発の事後対処を見るにおよんで、自然への畏敬の念を没却してきた現代日本への警鐘ではないのかという疑念を断つことができないのです。
 この国の「人禍」(戦禍)のあとの長い平和の日々は、大規模な「天災」(地震・津波)の不発によって保たれていたということになります。 

 2カ月を経て、「天災」とともに「天恵」に深く思いをいたしました。この国の自然への対応は、古来その両面の理解の上に成り立っています。当然のことなのですが、大きな「天災」によって「天恵」に思いいたったということでしょうか。
 農業にせよ漁業にせよ、まちづくりや観光にせよ、「高齢社会」の形成もまた、この国の四季のめぐりの恩恵なしには語れません。拙著『日本型高齢社会』では一章をもうけて、80年代以降に急速に失ってしまった「地域の四季」「地域の特性」の再生を高齢者のみなさんに強く要請したのでした。 
 ここで課題はいっそう重くなったのですが、「日本高齢社会」の形成と「東日本大震災」の復興とを結んだ場所から、小さくとも具体的な活動をはじめることといたしました。
 わたしは一介のジャーナリストにすぎませんが、生涯現役の観察者としての立場から「警世(警醒)の言」を発する役割をつづけなければと考えています。
このたびの活動は、15年間の個人ボランティアを越える覚悟のもとで、終生にわたっての務めになりますので、活動の面でも資金の面でも厚いご支援をお願いいたします。
「唐突に失礼な」とお思いになる方もおいでかと存じますが、来し方のどこかでお会いして、何かとお世話になった方々みなさんに訴えています。
2011・5・20
南九十九里にて 堀内正範 

丈人論 ―大震災を越えて「強い高齢社会」をつくろう<4>―

2011・5・5 
◎地域の特徴を活かす
 桜前線が東北地方の被災地を通過しています。しかし満開の桜花のもとを訪れる人は例年の1割程度といいます。自然の恵みと猛威。天恵と天災。どちらもこの国の先人は畏敬の念をもって受け入れてきました。
 先の「戦後復興」(第2の国難期)を経験し、営々として築いてきた65年の蓄積を一瞬のうちに失った被災地の高齢者のみなさんは、いまが「第3の国難期」(地域社会と家庭の危機)であるともっとも強く実感しているに違いありません。全国の高齢者は、それを共有し支援することになるでしょう。
 何をどうするのか。前回記したように、長く保持してきた知識、技術、資産を投入して、地域・職域のあらたな改革(みずからが安心して暮らせる「地域高齢社会」の形成と熟練した技術を駆使した「高齢者用品」の製造)に努めること。それが大増税を避けるため国民全員で負担する「災後復興」の課題です。
 復興の契機が「地域の四季」にあるといったら唐突で言い過ぎでしょうか。
「文明開化」(第1の国難期)以来、日本近代化の一五〇年は、ひたすらな欧米追随でした。性急でひたむきだった暮らしの洋風変容。そのかぎりでは追いついても追い越すことはできません。最良の模倣までです。であるとすれば、これからこの国で暮らす者に恵みをもたらすものは何か。失われていったものを顧みると、「地域特性」と「季節感」つまり「地域の四季の暮らし」にかかわる「モノ・場・しくみ」であったものが多いことに気づきます。
身近なところでは、たとえば風鈴、うちわ、桐下駄、足袋、和服、和だんす、神だな、床の間、和風住宅、方言、女性名の「子」、ヒバリやカエルの鳴き声、安心して歩ける小路、よろずや、商店街・・。
 夏の電力省力をクールビズでというのでは論外です。「常春型(エアコン)」住宅指向から「四季型(通風)」住宅への回帰という改革意識を見失ってしまいかねません。古来、わが国の住宅は「地方性」を活かした素材や様式をもち、「季節感」を巧みに取り込みながら、一年を通じて過ごしやすい工夫をこらした「四季型(通風)住宅」でした。いまでも古都の町屋や各地の古民家で、「風土になじんだ住居の心地よさ」を体験できます。
 駆け抜けてきた「戦後昭和時代」に軽視・黙視してしまったもの。それらの姿は高齢期を過ごしているみなさんの胸の中に「なつかしい体験」として記憶されているはずです。その復興活動の一翼を担うのは「65歳+」の高齢者であるわれわれです。失われた「地域の四季」の回復を通じて、新たな内需のありようが見えてくるはずです。(次回5月15日)

丈人論 ―大震災を越えて「強い高齢社会」をつくろう<3> ―

 
2011・4・25 
◎「災後復興」の課題を担う 
 東北地方被災地の高齢者の心には、なんとか元にもどしたいという願いとそんなに頑張ってどうするという思いが交錯するといいます。陸地に打ち上げられて大破した船の傍らで、「漁をするより能のない人間だから海にもどりたい」とつぶやく高齢漁師。農地でも商業地でも、黙々と後片づけにむかう人の中に「天災人禍」という二度の災禍の復興に出会った高齢者の姿があります。
 ここで繰り返して確認しますが、「本格的な高齢社会」というのは「病者や要介護者といった高齢者が多くなる社会」ではなく、「元気な高齢者が体現して参画する新しい社会」のことです。もちろん前者をふくめてですが。ですからいまこそ、政治リーダーにはそういう将来の国(地域)の姿を構想し、国民(地域住民)にむかって達成を求める責務があります。ところがなんとしたことか、政権党になった民主党の「マニフェスト」にはそういう視座がまったくありません。ですから参画しようにも高齢者のわれわれには何のメッセージ性もないのです。
 鳩山首相は「いのちを、守りたい」と訴えた「施政方針演説」で、「ひとり暮らしのお年寄りが誰にもみとられずに死を迎える」いたましい事例を取り上げましたが、ご自分が属する「高齢社会」への参画を呼びかける発言はしませんでした。すぐれた厚生大臣であった菅首相は「高齢者は社会の被扶養者」とする政策を引き継ぎ、「強い経済、強い財政、強い社会保障」といいきっています。「福祉・介護・医療」を軸にした高負担の政策がつづかないことに気づきながら、「健丈な高齢者が参画する地域の形成」を軸とする「強い高齢社会」政策の不在が、国民の信頼を失ってきたことに気づいていないのです。
 いま65歳を中心とする50歳から80歳までの中高年者(4800万人)が形成する地域・職域コミュニティーをみんなで構想し、それぞれが保持している知識や技術や資産を有効に活用して、高齢者自身が用いやすい新たな「モノや用具や設備」を工夫し、「居場所や施設」をつくること。力を合わせて三世代がそれぞれに地域の四季を安心して暮らせる「三世代同等型の社会」を築くことが急務とされているのです。
 大震災の復興に努めている高齢者のみなさんとともに全国の地域・職域のあらたな変革に参画すること、それが大増税を避けるため国民全員で負担する「災後復興」の課題です。その活動の中心になるのが「65歳+」の高齢者であるわれわれです。(次回5月5日)
 

丈人論 ―大震災を越えて「強い高齢社会」をつくろう<2>―                       

2011・4・15 
◎わが国の高齢者の役割 
 
年齢にかかわらず「自分は高齢者」と思っている人のうち80%までは元気に暮らしており、「リタイア」後も何らかの社会参加を望んでいます。それは仲間とともに65年をかけて創りあげてきた社会に親しみを持っており、さらに住み良くなることを希っているからです。これまでに培ってきた知識や経験や技術や資産を用いて、地域や職域での新たな「しくみづくり」「居場所づくり」「モノづくり」といった活動に参画する意欲を保っている証しです。
 大震災によってみずから築いてきたものすべてを失ってしまった東北地方の被災者の姿をみて、「がんばろう日本」とか「日本の力を信じてる」という声より先に、仲間のために具体的な支援に動いた人びとも多くいます。新たな出発に当たって、「65歳+」の人びとの参画は、この国の復興と創造を通じて、手つかずだった「高齢社会」の形成を進めることになります。わが国は世界一の長寿国です。65歳以上の人口比である「高齢化率」が21%を越えると国際基準では「超高齢社会」(本格的な高齢社会)と呼びますが、世界最速で高齢化が進んだわが国は、すでに23%(世界一)に達しています。
 「超高齢社会」を体現するのは、高齢者であることを自覚した65歳以上の高齢者の生き方です。2割ほどの医療・介護を要する仲間をかかえながらも、多くは健丈のうちに、青少年期・中年期にいる次世代の人びととともに、「人生の第3ステージ」である高年期を過ごしています。元気で暮らすわが国の高齢者が、世界の友人たちの支援と期待に応えて、独自の手法でどのような「日本型高齢社会」を創出するかが国際的に注視されているのです。
 ここで何よりたいせつなことは、後進の人びとの支援を受けて「強い社会保障」といった負担を期待して余生を送るこれまでの「2世代+α(アルファ)型」の受け身の暮らし方を改める時期にあることです。逆に後進の人びとの支援をしながら、史上に新たな「強い高齢社会」をめざすことにあります。
「高齢社会」というのは「病者や要介護者といった高負担の高齢者が多くなる社会」ではなく、「元気な高齢者が体現者として参画する新しい社会」であって、政治リーダーにはそういう将来の国(地域)の姿を提案する責務があります。ところが残念なことに、政権党になった民主党のマニフェストにはそういう視点がまったくないのです。だから首相になった鳩山由紀夫さん(1947年生まれ)も菅直人さん(1946年生まれ)も、60歳代になった自分と仲間たちが形成する「本格的な高齢社会」への構想を持たず、「高齢者が構成する強い高齢社会」への参画を呼びかけることもないのです。(次回4月25日)

活動趣旨の改定(2011年5月)

半世紀余をかけて築いたすべてを一瞬にして奪い去った「天災」、そして放射能汚染という想定外の「人禍」。
みんなが等しく長寿を喜びあえる「日本
高齢社会」の創出をめざしていたわたしたちは、みんなが等しく労苦を分け合って、人生二度目の復興にも立ち向かうことになりました。同じ思いのみなさんとともに、ここに「日本丈人の会」を設けて活動を推進いたします。
<小注:「丈人」というのは「老人」(とくに内向的余生型)におさまらない社会参加型の高齢健丈者> 

 表向きのエンタテイメント(楽しませること)によって薄皮一枚の華やかさに覆われていますが、わが国がいま「第三の国難」にあることはたしかです。先の大戦の戦禍のあと、辛苦して「第二の国難」を乗り越えてきたプロセスを知っている高齢者が、いまのままこの難局を座視・黙止したままでいたのでは乗り切れません。

 わたくしは一介のジャーナリストでしかありませんが、この10年間を見定めてきて将来を展望する立場から、『日本型高齢社会』(昨年7月)を刊行して、高齢健丈者が保っている知識や技術や資産が穏やかに参加する「本格的な高齢社会」(三世代多重型社会)を提案しました。大震災後の日常性の回復のしかた(ジャーナリズムとくにTV)は納得しかねます。この国(われわれが築いてきた社会)自体が崩壊しかねません。
  史上にまれな長寿社会に生きてきて、いま高齢者(60歳以上で約4000万人)になっているわれわれは、このたびの「3・11東日本大震災」に遭遇して、「天災人禍」という災禍からの復興に務めるという史上にまれな役割を担おうとしています。さまざまな理由で全員参画はムリとしても、三人にふたりの健丈な仲間(丈人層)が、「東日本大震災」からの再生と復興に当たる被災地の高齢者を支援するとともに、みんなが等しく長寿を喜びあい、安心して暮らせる「日本高齢社会」を達成すること。それは先人が残してくれた「平和憲法」のもとでの世界にまれな「平和時代の証」です。 
 思いのほか早く、さまざまな社会的負担が高齢者の暮らしに迫ってくることが想定されます。現状のままでいれば「強い社会保障」政策の後退や大増税を覚悟せねばなりません。高齢者が力をあわせて、まず高齢者自身が暮らしやすく、そして青少年・中年・高年者がそれぞれの場で心おきなく過ごせる「本格的な高齢社会」(三世代多重型社会)の形成にむかって活動を進めることが必要であり、それは国際的な責務でもあります。 
 ここで課題はいっそう重くなったのですが、「高齢社会」の形成と「大震災」からの再生・復興とを結んだ場所から、小さくとも具体的な活動を進めることといたしました。わたしはジャーナリストとしての立場から「警世(警醒)の言」を発する役割をつづけなければと考えています。そのために活動する「丈人の会」の趣旨をご理解のうえ、参画・支援・応援をお願いいたします。
2011・5・20 
南九十九里」にて 堀内正範 記 
[活動趣旨]
◎「老人」(余生型)よりも「丈人」(社会参加型。後注1)を意識して暮らすこと。(生活意識の改革)
◎協力して高齢者が暮らしやすい「地域生活圏」や「地域文化圏」を形成すること。そこで必要とする「モノ」の製造を企業に要請し、「場」を自治体に要請する。(地域社会活動への参画)
  自治体に官民協働による「地域生涯(シニア)大学校」を設置する。(高齢者のための広域生活圏の形成)
◎内閣府に「高齢政策担当特命大臣」(専任)の設置を要請する。(本格的な日本高齢社会をつくるために国への要請) 

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[参考図書]
この10年の高齢化対策の不在を観察してまとめた「警世の書」
丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」(後注2)が国難を救う
(堀内正範著 2010・7・1 1500円・税別 武田ランダムハウスジャパン)
をぜひご覧ください。
**********                 ********** 

[お願い]

会費・活動報告 
会費は上の趣旨に賛同して活動に参画し、支援し、応援してくださるみなさんにお願いしています。
一律とせず随意とし、 参画会員・ススメの先人福沢諭吉幣1+  支援会員・樋口一葉幣1  
応援会員・野口英世幣2 を設けますが、会費なしの会員と異なる特典はありません。
会員のみなさんには適時「活動報告」をお送りします。

 

事務局 堀内正範 ほりうちまさのり
e-mail mhori888@ybb.ne.jp
Tel&Fax 0475-42-5673
keitai  090-4136-7811
hp「日本丈人の会 日本丈風の会」https://jojin.jp/ 
blog「茶王樹・南九十九里から」 https://jojin.jp
〒299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
 <後注>
1 「丈人」「丈人力」とは・・ 
わが国の「高齢社会」を体現している高齢健丈者のみなさんを励ますことばとして、「老人」に対比して「丈人」と呼ぶことに納得がえられるように思います。「老人」と呼ばれて違和感を感じるとき、「老人と呼ばれるにはまだ間がある」と感じるとき、「丈人」と呼んでみてください。納得できるみなさんが「丈人」です。古典には「四体勤め、五穀分かつ」(身体を使って労働をし、五穀を収穫する)ことをよしとする老者として現れます(『論語「微子篇」』)。高齢者を「老人」(とくに余生型)にくくってしまうと、本格的な高齢社会を形成していく当事者が見えなくなってしまうからです。
 ここでは古語の意味合いを援用して、それぞれの活動によって、これまで積み上げてきた知識や技術やさまざまな能力をどこまでも発展・熟達・深化させようとして働く力、ふつふつと涌いて出る強い生活力あるいは生命力を、「丈人力」(jojin-ryoku)と呼んでいます。 多数の健丈高齢者の丈人力によって「日本高齢社会」は達成にむかいます。
2 「平和団塊」とは・・
先の大戦後に生まれた昭和22年~24年の約700万人の人びとを、「団塊世代」(堺屋太一さんの同名書から)と呼び、教育や就職や商品開発・販売などの場での社会的影響が語られてきました。ここでは先の戦争の惨禍のあと、ご両親によって平和裏に生きることを託されて育てられた戦後生まれのみなさんを「平和団塊」(昭和21年~25年生まれ。約1000万人)の人びとと呼ぶことで、平和期がつづいたわが国の「高齢社会」の体現者としての位置づけをしています。
 それは先人が願いとした「日本国憲法」の平和主義とともにふたつながら平和の証であり、百年の計として21世紀の日本を輝かせる歴史的モニュメントであるからです。前人未到の「日本型高齢社会」の形成は、そのプロセスを含めて国際的にも注目され達成が期待されています。 
「日本丈人の会」「日本丈風の会」とは・・
「日本丈人の会」 高齢者が暮らしやすい社会をつくるための日常的なふたつの目標は、ひとつは個人としてもつ「高年者意識」(丈人意識)の成熟、もうひとつは暮らしの場での「社会の高年化」の達成です。つまり高年期にある人びとが「高年者意識」を共有しながら、「社会の高年化」をめざして「モノと場としくみ」を創出することにあります。ふたつの目標にむかってどこまで参画するかは個々人の随意ですが、その活動に身を投じることは、かけがえのない高年期の人生に果断な選択をすることになり、日また一日の成果の差は歴然としたものになるでしょう。
「日本丈風の会」わが国が幸運といえるのは、大戦後の民主主義の根つきを証明してみせた「六○年安保闘争」(いま70歳代に)や「七○年大学紛争」(いま60歳代に)といった噴出期をふくむ草の根の市民・大衆運動を体験し、その後の人生経験をふまえて柔軟な思考と行動を自得した多くのアクティブ・シニアを有していることです。「日本丈風の会」は、「社会の高年化」を意識して活動している人が中心の団体や高齢者向け用品をつくっている企業など、うるおいのある生活圏や文化圏を形成し、将来の国際基準のひとつになる「日本型高齢社会」を達成する活動に参画している団体が参加する会として想定しています。  
「地域生涯(シニア)大学校推進会議」とは・・
 市町村合併の大義のひとつは「地域を愛する人材」の養成にありました。「明治の大合併」のときにはわが村の「村立尋常小学校」が設立され、「昭和の大合併」のときにはわが町の「町立新制中学校」が合併のシンボルとして設立されました。しかし今回の「平成の大合併」にあたって、国も新市も何の構想も示しませんでした。
 地域の風土や産業、伝統・歴史、高齢期にかんする知識を学ぶとともに、長い高年期をともに過ごす仲間を得る機会を提供する公立の「地域生涯大学校」が要請されています。人材や活動の情報をプールするとともに、なにより地域で暮らす高年者が「まちづくり」の新たな目標を得る機会となるからです。地域特性を加味した独自の内容で構成したカリキュラムをもつ「地域生涯大学校」で、60歳をすぎた高年者が2~3年ほど修学することで、「まちづくり」でも多くの人材を生むことになります。設立の遅延は将来の自治体の発展に差を生むでしょう。「地域生涯大学校推進会議」では全国の実例を集めて整理し発信いたします。優れた実例やご意見をお寄せください。

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堀内正範 ほりうちまさのり
昭和13(1938)年11月1日、東京都渋谷区生まれ。終戦の年に小学1年生。都立両国高校、早稲田大学文学部卒業。朝日新聞社社友。元『知恵蔵』編集長。55歳で早期退社して中国中原の古都洛陽へ。洛陽外国語学院外籍教授を経て同学院日本学研究中心研究員。国際龍門石窟研究保護学会本部顧問。日本山東省文化交流委員会委員。「S65+」カンファレンス・スーパーバイザー。
著書:『洛陽発「中原歴史文物」案内』(新評論)、『中国名言紀行・中原の大地と人語』(文春新書)、『人生を豊かにする四字熟語』(ランダムハウス講談社)、『丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』(武田ランダムハウスジャパン)など。日中友好協会紙『日本と中国』に「平和の絆・友好都市ものがたり」「四字成語ものがたり」を連載。千葉県一宮町在住。地元南十九里浜の自然を守る住民活動にも参加。
E-mail mhori888@ybb.ne.jp
Tel & Fax 0475-42-5673
keitai 090-4136-7811
hp「日本丈人の会 日本丈風の会」https://jojin.jp/ 
blog「茶王樹・南九十九里から」 https://jojin.jp
〒299-4301    千葉県長生郡一宮町一宮9340-8

ごあいさつ(2011年5月)

 いかがお過ごしでしょうか。
 3月11日の「東日本大震災」の折には、どこにいてどんな体験をされたのでしょう。
同じ太平洋プレート震源につらなる南九十九里のわが家には実害がなかったものの、実際には呆然自失(判断の停止・活動の休止)という状態に陥りました。
 壮絶なTV映像。
 大戦後の半世紀余をかけて粒粒辛苦して築いた町、家、そして家族を、瞬時のうちに奪い去った大津波の情景は、いくら「想定外の天災」と言い重ねても胸の中に収まってくれません。福島原発の事後対処を見るにおよんで、自然への畏敬の念を没却してきた現代日本への警鐘ではないのかという疑念を断つことができないのです。
 この国の「人禍」(戦禍)のあとの長い平和の日々は、大規模な「天災」(地震・津波)の不発によって保たれていたということになります。 

 2カ月を経て、「天災」とともに「天恵」に深く思いをいたしました。この国の自然への対応は、古来その両面の理解の上に成り立っています。当然のことなのですが、大きな「天災」によって「天恵」に思いいたったということでしょうか。
 農業にせよ漁業にせよ、まちづくりや観光にせよ、「高齢社会」の形成もまた、この国の四季のめぐりの恩恵なしには語れません。拙著『日本型高齢社会』では一章をもうけて、80年代以降に急速に失ってしまった「地域の四季」「地域の特性」の再生を高齢者のみなさんに強く要請したのでした。 

 ここで課題はいっそう重くなったのですが、「日本高齢社会」の形成と「東日本大震災」の復興とを結んだ場所から、小さくとも具体的な活動をはじめることといたしました。
 わたしは一介のジャーナリストにすぎませんが、生涯現役の観察者としての立場から「警世(警醒)の言」を発する役割をつづけなければと考えています。
このたびの活動は、15年間の個人ボランティアを越える覚悟のもとで、終生にわたっての務めになりますので、活動の面でも資金の面でも厚いご支援をお願いいたします。

「唐突に失礼な」とお思いになる方もおいでかと存じますが、来し方のどこかでお会いして、何かとお世話になった方々みなさんに訴えています。

2011・5・20
南九十九里にて 堀内正範

「日本丈人の会」活動趣旨 2011・5・20改定

戦禍のあと築いたすべてを奪い去った
「東日本大震災」からの復興と
みんなが等しく長寿を喜びあえる
「日本
高齢社会」の創出をめざして
同じ願いのみなさんとともに
「日本丈人の会」は新たな活動を推進いたします。
<小注:「丈人」というのは「老人」(余生型)におさまらない高齢健丈者> 

 表向きのエンタテイメント(楽しませること)によって薄皮一枚の華やかさに覆われていますが、わが国がいま「第三の国難」にあることはたしかです。先の大戦の戦禍のあと、辛苦して「第二の国難」を乗り越えてきたプロセスを知っている高齢者が、この難局を座視・黙止したままでいたのでは乗り切れません。

 大震災後の日常性の回復のしかた(とくにTV)は納得しかねます。このままいくと、この国(われわれが築いてきた社会)自体が崩壊しかねません。わたくしは一介のジャーナリストでしかありませんが、この10年間を見定めてきて将来を展望する立場から 『日本型高齢社会』(昨年7月)を刊行して、高齢健丈者が保っている知識や技術や資産が穏やかに参加する「本格的な高齢社会」(三世代同等多重型社会)を提案しました。
 
 史上にまれな長寿社会に生きてきて、いま高齢者(60歳以上で約4000万人)になっているわれわれは、このたびの「3・11東日本大震災」に遭遇して、「天災と人禍」というふたつの災禍の復興に務めるという史上にまれな役割を担おうとしています。さまざまな理由で全員参画はムリとしても、三人にふたりの健丈な仲間(丈人層)が、「東日本大震災」からの再生と復興に当たる被災地の高齢者を支援するとともに、みんなが等しく長寿を喜びあい、安心して暮らせる「日本高齢社会」を達成すること。それは先人が残してくれた「平和憲法」のもとでの世界にまれな「平和時代の証」です。 
 思いのほか早く、さまざまな社会的負担が高齢者の暮らしに迫ってくることが想定されます。現状のままでいれば「強い社会保障」政策の後退や大増税を覚悟せねばなりません。高齢者が力をあわせて、まず高齢者自身が暮らしやすく、そして青少年・中年・高年者がそれぞれの場で心おきなく過ごせる「本格的な高齢社会」(三世代多重型社会)の形成にむかって活動を進めることが必要であり、それは国際的な責務でもあります。 
 ここで課題はいっそう重くなったのですが、「高齢社会」の形成と「大震災」からの再生・復興とを結んだ場所から、小さくとも具体的な活動を進めることといたしました。わたしはジャーナリストとしての立場から「警世(警醒)の言」を発する役割をつづけなければと考えています。そのために活動する「丈人の会」の趣旨をご理解のうえ、参画・支援・応援をお願いいたします。
2011・5・20 
南九十九里」にて 堀内正範 記 
[活動趣旨]
◎「老人」よりも「丈人」(後注1)を意識して暮らすこと。(生活意識の改革)
◎協力して高齢者が暮らしやすい「地域生活圏」や「地域文化圏」を形成すること。そこで必要とする「モノ」の製造を企業に要請し、「場」を自治体に要請する。(地域社会活動への参画)
  自治体に官民協働による「地域生涯(シニア)大学校」を設置する。(広域生活圏の形成)
◎内閣府に「高齢政策担当特命大臣」(専任)の設置を要請する。(国への要請) 

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[参考図書]
この10年の高齢化対策の不在を観察してまとめた「警世の書」
丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」(後注2)が国難を救う
(堀内正範著 2010・7・1 1500円・税別 武田ランダムハウスジャパン)
をぜひご覧ください。
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[お願い]
 2011年5月を期して本格的な活動をはじめます。活動趣旨にご賛同のうえ参画・支援・応援していただける個人・団体の会員費は次のとおりです。
 [個人会員] [団体会員]   ○初回のみ  ○毎年  ○なし
○参画会員 上記の趣旨に賛同し、努めて活動に参画。 福沢諭吉幣1
○支援会員 上記の趣旨に賛同し、活動を支援。     樋口一葉幣1
○応援会員 上記の趣旨に賛同し、活動を応援。     野口英世幣2
会員のみなさまには「活動報告」をお届けいたします。
事務局 堀内正範 ほりうちまさのり
299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮9340-8
Tel&Fax 0475-42-5673
keitai  090-4136-7811
e-mail mhori888@ybb.ne.jp
hp「日本丈人の会 日本丈風の会」http:// jojin.jp/ 
blog「茶王樹・南九十九里から」 https://jojin.jp
 <後注>
1 「丈人」「丈人力」とは・・ 
わが国の「高齢社会」を体現している高齢健丈者のみなさんを励ますことばとして、「老人」に対比して「丈人」と呼ぶことに納得がえられるように思えます。古典(『論語「微子」』)には「四体勤め、五穀分かつ」(身体を使って労働をし、五穀を収穫する)ことをよしとする老者として現れます。ここでは古語の意味合いを援用して、それぞれの活動によって、これまで積み上げてきた知識や技術やさまざまな能力をどこまでも発展・熟達・深化させようとして働く力、ふつふつと涌いて出る強い生活力あるいは生命力を、「丈人力」(jojin-ryoku)と呼んでいます。 
「日本丈人の会」「日本丈風の会」とは・・
「日本丈人の会」 高齢者が暮らしやすい社会をつくるための日常的なふたつの目標は、ひとつは個人としてもつ「高年者意識」(丈人意識)の成熟、もうひとつは暮らしの場での「社会の高年化」の達成です。つまり高年期にある人びとが「高年者意識」を共有しながら、「社会の高年化」をめざして「モノと場としくみ」を創出することにあります。ふたつの目標にむかってどこまで参画するかは個々人の随意ですが、その活動に身を投じることは、かけがえのない高年期の人生に果断な選択をすることになり、日また一日の成果の差は歴然としたものになるでしょう。
「日本丈風の会」わが国が幸運といえるのは、大戦後の民主主義の根つきを証明してみせた「六○年安保闘争」(いま70歳代に)や「七○年大学紛争」(いま60歳代に)といった噴出期をふくむ草の根の市民・大衆運動を体験し、その後の人生経験をふまえて柔軟な思考と行動を自得した多くのアクティブ・シニアを有していることです。「日本丈風の会」は、「社会の高年化」を意識して活動している人が中心の団体や高齢者向け用品をつくっている企業など、うるおいのある生活圏や文化圏を形成し、将来の国際基準のひとつになる「日本型高齢社会」を達成する活動に参画している団体が参加する会として想定しています。  
「地域生涯(シニア)大学校推進会議」とは・・
 市町村合併の大義のひとつは「地域を愛する人材」の養成にありました。「明治の大合併」のときにはわが村の「村立尋常小学校」が設立され、「昭和の大合併」のときにはわが町の「町立新制中学校」が合併のシンボルとして設立されました。しかし今回の「平成の大合併」にあたって、国も新市も何の構想も示しませんでした。
 地域の風土や産業、伝統・歴史、高齢期にかんする知識を学ぶとともに、長い高年期をともに過ごす仲間を得る機会を提供する公立の「地域生涯大学校」が要請されています。人材や活動の情報をプールするとともに、なにより地域で暮らす高年者が「まちづくり」の新たな目標を得る機会となるからです。地域特性を加味した独自の内容で構成したカリキュラムをもつ「地域生涯大学校」で、60歳をすぎた高年者が2~3年ほど修学することで、「まちづくり」でも多くの人材を生むことになります。設立の遅延は将来の自治体の発展に差を生むでしょう。「地域生涯大学校推進会議」では全国の実例を集めて整理し発信いたします。優れた実例やご意見をお寄せください。
2 「平和団塊」とは・・
先の大戦後に生まれた昭和22年~24年の約700万人の人びとを、「団塊世代」(堺屋太一さんの同名書から)と呼び、教育や就職や商品開発・販売などの場での社会的影響が語られてきました。ここでは先の戦争の惨禍のあと、ご両親によって平和裏に生きることを託されて育てられた戦後生まれのみなさんを「平和団塊」(昭和21年~25年生まれ。約1000万人)の人びとと呼ぶことで、平和期がつづいたわが国の「高齢社会」の体現者としての位置づけをしています。それは先人が願いとした「日本国憲法」の平和主義とともにふたつながら平和の証であり、百年の計として21世紀の日本を輝かせる歴史的モニュメントであるからです。前人未到の「日本型高齢社会」の形成は、そのプロセスを含めて国際的にも注目され達成が期待されています。 
堀内正範 ほりうちまさのり
昭和13(1938)年11月1日、東京都渋谷区生まれ。終戦の年に小学1年生。都立両国高校、早稲田大学文学部卒業。朝日新聞社社友。元『知恵蔵』編集長。55歳で早期退社して中国中原の古都洛陽へ。洛陽外国語学院外籍教授を経て同学院日本学研究中心研究員。国際龍門石窟研究保護学会本部顧問。日本山東省文化交流委員会委員。「S65+」カンファレンス・スーパーバイザー。著書:『洛陽発「中原歴史文物」案内』(新評論)、『中国名言紀行・中原の大地と人語』(文春新書)、『人生を豊かにする四字熟語』(ランダムハウス講談社)、『丈人のススメ 日本型高齢社会 「平和団塊」が国難を救う』(武田ランダムハウスジャパン)など。日中友好協会紙『日本と中国』に「平和の絆・友好都市ものがたり」「四字成語ものがたり」を連載。千葉県一宮町在住。地元南十九里浜の自然を守る住民活動にも参加。
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hp「日本丈人の会 日本丈風の会」http:// jojin.jp/ 
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丈人論 -大災害を超えて「強い高齢社会」をつくろう-1」

 ―大震災を越えて「強い高齢社会」をつくろう-1 

   ◎「第三の国難」に立ち向かう

 突如、大津波に襲われた村や町。一瞬のうちに濁流にのみ込まれた家々、家族。2011年3月11日、M9という史上まれな規模の地震と津波による「東日本大震災」に遭遇して、モノ・家・暮らしの場、そして親しい多くの人命を失った東北地方太平洋岸の人びと。全国民はわがこととして、復興と新たな創造への支援に力を尽くすことになりました。

 日本は明治維新、大戦後に匹敵する第三の難局(国難)に直面しているのだと実感した多くの人びと。再建は国際的注視の下で始まっています。リアルな映像とともに日本支援の輪は世界に広がっています。tsunami はご存じにように国際用語になっていますが、自然の威力と悲惨な情景はその知名度を大いに高めたことでしょう。先の大戦のあと、65年をかけて東アジアに形成された「平和国家と国民」への敬意と熱い支援が、アメリカの「ともだち作戦」をはじめ、100カ国を超える国々の人びとからとどいています。
 「第3の国難」を乗り切るためには、さまざまな力が要ります。全国民がそれぞれに保持している知力、技術力、資力を投じる覚悟が求められています。そんな潜在力はどこにあるのでしょう。それは活動の体現者となる全国民の気力にあるのですが、とくに国際的基準で「高齢者」と呼ばれる65歳以上の約3000万人の人びとの中にあるといえます。わたしは72歳ですから、われわれにあるといってもいい。
 思えば「65歳+」のわれわれ高齢者は、先の大戦の戦禍のあと、半世紀余り、わが国の社会のさまざまな持ち場でそれぞれの成果を刻んできました。貧しかったけれども平和裏に育てられ熱心に学んだ青少年時代、みんなが等しく豊かになることを願って辛苦して働いた中年時代、みんなが安心して暮らせることを希いながら自己実現を求めて過ごす高年時代・・そしてこれまでに培ってきた知識や経験や技術や資産の多くはしっかりと保持されています。それぞれが持っている潜在力をいかんなく発揮して、地域や職域での新たな「しくみづくり」「居場所づくり」「モノづくり」といった復興とあらたな創造の活動に参画することが求められています。
 この難局の中で「S65+」のわれわれがなすべきことは、欧米型の先例に頼ることなく、われわれ独自のプロセスによって史上まれな「日本型高齢社会」を形成することにあります。次回からその構想を提案したいと思います。
hp「S65+」ジャーナル 2011・4・5 掲載
堀内正範(カンファレンス・スーパーバイザー)
 

     

シニア用語事典「丈人と老人」

「丈人」と「老人」
率直な実感として、「老人」と呼ばれて収まりがいい人ならそのままでいいが、みずからを高年者と認めながらも、いま通用している意味合いで「老人」と呼ばれたくない、あるいは呼ばれるにはまだ間があると感じる場面では、「偉丈夫」や「大丈夫」がもつ高年健丈者として「丈人」と呼んでみる。それで納得できた人が「丈人」である。日ごろ実感している「老人」とは方向の異なるありようが「丈人」であり、「高年意識の多重標準」であることの理解に意味がある。「丈人」を意識することで、「余生一途」の人生とは異なった「強い高年期人生」がはじまる。

HP「日本丈人の会」を手直ししました

「3・11東日本大震災」から2カ月、余震がなおつづいていますが、その復興をはたしながら、「強い社会保障」(政府の政策)とともに「強い高齢社会」(民間の活動)をつくる活動が急務になってきました。
その「強い高齢社会」(民間の活動)を達成するひとつの拠点として、高齢健丈者(丈人)が参画する「日本丈人の会」は、いっそうの力をつくします。
その対応のために [ HP「日本丈人の会」日本丈風の会」 ]  を手直しいたしましたのでご覧ください。20110515