[健丈な高齢者]は視野になし

 鳩山新首相の10月26日の「所信表明演説」は、「友愛政治」による「無血平成維新」によって官僚主導から政治主導に転換し、いのちを守り、国民生活を第一として、「弱い立場の人びと、少数の人びとの視点が尊重されなければならないというのが原点である」 というものでした。
「子どもやお年寄りなどの弱い立場の方々を社会全体で支えあう・・」
 障がいを持った方たちも、あるいは高齢者も、難病の患者さんも、人間は、人に評価され、感謝され、必要にされてこそ幸せ・・という「弱者としての個人」の存在が強調されています。
 善意といえば善意ですが、「健丈な高齢者」は視野になく、健丈な高齢者の参画による 「高齢社会」 への言及はありませんでした。
 菅直人副首相の「戦略室」も、財政は子育て、環境、雇用を中心に執行するというものですから、高齢者はこれまでどおり医療や介護といった「社会の被扶養者」にならないかぎり存在を認められないことになってしまいます。
 5000万人の健丈な高年者は、民主党の公約であるはずの
「高齢者の方々を年齢で差別する後期高齢者医療制度については廃止・・」
 を即座に実施するよう、志をひとつにして迫らなければなりません。5000万人による「衆志成城」です。
「無血平成維新」のキイは、「日本高年者」が持っているのですから。(茶王樹主人)

政不在・官主導で生じた現実

民主党は鳩山首相さえも
「高齢化はさておき少子化だけは」という言い方をして、
「少子・高齢化」一体での解決を軽視している。
マニフェストをみても「高齢者」は社会保障レベルで語られており、
「日本高齢社会」のグランドデザインを構想し提案するといった
将来あるべき姿への契機すらみえない。
残念ながら有力政党に期待をかけることはできない。
新世紀の潮流である「高齢化」にそなえるよう国連が訴えた
1999年の「国際高齢者年」から10年、仔細に観察・考察してきた
「日本社会の高年化」にかんする課題は30余にもなるが、
ここで、その中から官僚主導で生じた現実とのズレが際立つ課題を、
「政権交代」時の戦略として緊急に取り組むよう提案としたい。
ちなみにこの一〇月一日は、10周年目の 「国際高齢者の日」 である。
●少子化特任大臣を置いてなぜ高齢化特任大臣が置けないのか。
(内閣府。「少子・高齢化対策」は少子化重視)
●次世代育成に祖父母の「孫育て」は不要なのか。
(厚労省。「次世代育成支援」で無視される祖父母)
●合併は「地方分権+生活圏拡大+少子・高齢化」が課題だったが。
(総務省。「高齢化対策」は健丈な高年者の自立・自尊の意識による参画がない)
●地域開発の人材育成は高年者を対象とすべき。
(文科省。「公立高年大学校」のすすめ)
●あまりに乏しい「国際高齢者年十周年」の成果の海外発信。
(外務省。国連が期待した「先進国型高齢社会(日本モデル)」は未形成)
●わが家三代の暮らしが引き継げる住宅を。
(国交省。「三世代同等同居」住宅が未来型)

「政権交代」の衆院選をおえて

先の衆院選(2009・8・30)では
官僚主導から政治(国民)主導による
「政権交代」
を訴えた民主党が大勝利した。
それにより際立つことになったのは、30~40歳代の
新人議員の動きであり、政治家の若手しろうと化でもある。
しかし成立した鳩山内閣は平均年齢が60歳を越えていて
麻生内閣より高年であるとともに安定した布陣が評価され、
それをとやかくいう若がえり推進派はいないようだ。
歴史的な大敗北をした自民党でも新総裁選出にあたって
若手筋から派閥領袖の主導を排する「世代交代」が声高に叫ばれ
「政界の若年化」がいっそうすすむ気配が濃厚になっている。
しかし高年層の支持を受けた谷垣さんが選ばれることに落ち着くだろう。
繰り返すが、重要なのは年齢ではない。
長い経験と思索によって練り上げた独自の将来像をもち
それをみんなが共有する姿にできるような独自の表現力のある人物を
地域や分野の代表として政界に送り込むべきなのだ。
「たなぼた」といわれるような拙速な手法で候補者を出す政党に
この国の将来が左右されるのはいいとはいえない。
次の国政選挙である来年の参議院選を選挙民として注目しよう。
とくに自民党陣営は優れた人物が落選議員や二世のなかにもいるだろうが、
新たに広く求めて選挙民が地域の代表としてふさわしい人材の
発掘に力をつくして来年の参議院選挙に臨むべきであろう。
すでに候補ありきという姿勢では勝てないし、
なにより時代を動かす力にはなりえないからだ。
そんな野党なら不要であり、再興はむずかしい。

後期高齢者の医療費

なお高齢化が進むから当然、
後期高齢者(75歳~)の医療費は増大する。
その費用をだれが負担するのか。
「高年化社会」で国民全体の理解が得られるしくみは、
最後まで国が負担するというものだろう。
安心して長寿をまっとうできること。
けっしてその逆であってはならない。
75歳を過ぎて複数の病気にかかったり、
治療が長期にわたってしまうようなら、
早期の死を覚悟せよというのが、
新たに創設された国の医療制度の方向である。
75歳以上を対象とした
独立の 「後期高齢者医療制度」がそれ。
平成20年4月から実施されることになった。
どう言いつくろってみても、
国庫負担(5割)と現役世代支援(4割)の負担をいい
長寿を求めるなら、住んでいる家を担保にし、
個人資産を売り払ってせよというものなのである。
それがあるならいいが、
国のために尽くし、身銭を切って社会貢献をしてきた
75歳以上の善良な高年者には、
いささかつらすぎる方向なのである。

エイジレス・ライフ

高年期のありようとして、
「エイジレス・ライフ」
(年齢にとらわれない生き方)
という主張には注意しよう。
高年者が若年世代のための第二軍に
組み込まれてしまうからだ。
高年になればなるほど、
年齢は意識しなければならない。
「高年者」の「高年期」を意識した活動が、
そのまま新たな「高年化社会」の形成になる。
本稿がなんども記してきたところだ。
ところが内閣府は、「すでに高齢期を迎え、又は
これから迎えようとする世代の
高齢期における生活の参考としてもらう」ために、
エイジレスな生き方の例を募集している。
「若年世代」や「子育て世代」や「高齢世代」自身を
支えている高齢者(65歳以上)のいい事例を、
「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」
において紹介するというのだが。
われわれ丈人の会としては、
「高年期」を意識した「高年者」の活動が、
そのまま新たな「高年化社会」の形成になる
といういい事例として応募して、
内側から改革を迫らねばなるまい。

YAHOOのウエブサイト

YAHOOのウエブサイトで
検索すると、「茶王樹」はもちろん、
「高年者年表」や 「丈人力」「多重標準」
からでも本稿にたどり着くことができる。
どこでどなたが確認をしているのか知らないが、
海岸の砂のような情報の粒々のなかから、
苦労してつくりあげたラウンジ・茶王樹蔭・用の
「高年者年表」と、
7年ががりで積み上げて高年化社会の
グランドデザインを提示した
『多重標準の時代 昭和生まれの丈人力』
を拾い上げてくれたことに感謝しよう。
それでも砂浜の粒のひとつであることにかわりはないが。
制作者としてはキラリと輝く粒子として、
どこかのだれかの目に触れることに希望をもてる。
「・茶王樹蔭・」とともに
「高年者年表」「多重標準の時代 昭和生まれの丈人力」でも
本稿に出会えるようになって、
あらたな仲間が集まって 「丈風」という文字を
浮き立たせることができたなら、
あらたな時代を登場させることができるだろう。
年初に当たって書初めをしよう。
「高年社会 平和之証」

成田市生涯大学院

もうひとつ、
首都圏の高年者大学の例として、
千葉県成田市の
「成田市生涯大学院」を紹介しよう。
年々講座の充実につとめながら
着実な成果を生んでいる。
入学資格は市内に住む60歳以上の人。
3年制で、受講費用は無料。さすが成田市である。
高齢者が大切な社会の担い手として、
その豊かな能力を地域社会の向上のために
活かすことによる新たな生きがいの創造をめざす。
教養講座(10:00~12:00)と専門講座(13:30~15:30)
の両方を受講するが、カリキュラムをみると、
新たな高年化社会の担い手を育成する意気込みがみられる。
専門講座は、書道・陶芸・園芸から1つを選択。
学習表をみてみよう。
新勝寺と成田 地球環境の現在
ガンの予防と早期発見 救急講習 薬の副作用 高齢者の病気
医療保険と介護保険 健康を作る食生活 心と身体のかけはし
パソコン研修 相続税について 俳句の作り方
自分史の書き方・・
高年者なら聴講してみたいものが多い。

姫路市立好古学園大学校

もうひとつ、兵庫県の
市立高齢者大学校には、
「姫路市立好古学園大学校」がある、
昭和45(1970)年の設立。
60歳以上の人で市外の人にも門戸を開いている。
キャッチフレーズは
「生きがいの創造 生涯学習の機会と場の提供
地域社会活動への参加」
で、学園の経緯を感じさせる。
4年制、2年制、大学院がある。
学科は「園芸科」「陶芸科」「書道科」「史学科」
「美術科(洋画・木彫)」「手芸科」「音楽科」(4年制)
で定員は600人。年額6000円。

明石市あかねが丘学園

兵庫県には市レベルでは、
「明石市あかねが丘学園」(高齢者大学校)と
「姫路市立好古学園大学校」がある。
「明石市あかねが丘学園」は、
昭和56(1981)年の設立。
市内に住む60歳以上が資格。
専攻コースは「景観園芸」「生活ふくし」
「ふるさとコミュニティ」「音楽交流」「健康スポーツ交流」で
定員はコースごとで30~40人。
3年制で授業は週1回、年間35日程度。
別にクラブ活動の日がある。年額1万5000円。
2000人を超える卒業生がおり、
OBボランティアは、社会福祉協議会や学校、福祉施設
などからの要望に応じて、ふれあい活動、イベント手伝い、
伝承活動、クリーン活動などをするほか、
常設のグループが、定期的に市内の高齢者施設、
障害者施設、病院、総合福祉センターなどで
活動している。
「姫路市立好古学園大学校」は、次回に紹介する。

高齢者大学「いなみ野学園」

兵庫県の 「いなみ野学園」の
「高齢者大学講座」(4年制)は、
生涯学習を通じて仲間づくりをするとともに、
新しい生き方を創造し、
地域社会の発展に寄与できるよう
総合的、体系的な学習機会を提供する。
資格は60歳以上。入学金6000円、年額2万4000円。
登校日は週1日、年間30回で120時間。
学科は「園芸」「健康福祉」「文化」「陶芸」の4学科。
学科別学習と教養講座を履修する。
「大学院」(2年制)は専門性の高い実践的な学習を通じて、
地域社会の課題の解決を支えるリーダーとしての人材を養成する。
県立高齢者大学を修了または卒業した者が資格。
週1日、年間30回程度。
「地域づくり研究科」、「生きがい創造研究科」を設置している。
学園の昼の食堂周辺は人生論に花が咲く。
週1回(水曜)はクラブ活動の日。