友好都市・風土が絆-「龍馬精神」が生きる街

「龍馬精神」が生きる街

高知市と蕪湖市  

地上一三・五メートル、桂浜の龍頭岬に立つ坂本龍馬像は、はるか太平洋のかなたを見据えて立っている。龍馬が背にしているのは四国山地ではなく日本国である。高知には坂本龍馬とともに、伝説中の駿馬のもつ旺盛壮健な「龍馬精神」が息づいている。先見性のある行動によって拓く二一世紀のまちづくり「龍馬都市一〇の理念」にも、「協調と平和の精神で世界とふれあう国際交流を進める」と謳っている。

新世紀の初め、二〇〇一年四月に高知市は、「築城四〇〇年祭」を記念して、「高知サミット」を開催した。海外と国内の姉妹・友好都市の五市長ら代表者が一堂に会して、それぞれが取り組んでいる特徴のあるまちづくりを語り合い、交流を通じてお互いの発展を誓う「高知サミット宣言」を発表した。子どもたちによる「伝統芸能公演」は、民族のもつ表現の豊かさを伝え、明るい未来を思わせた。中国からは蕪湖市が参加した。

高知市と長江下流域の水運都市蕪湖市との友好都市提携の調印式は、高知市の市制一〇〇年を前にした八五年四月一九日に高知市で、趙衡蘧・横山龍雄両市長の間でおこなわれ、四国では最初の日中友好都市提携となった。

蕪湖市は、上海から三〇〇キロほど長江をさかのぼった南岸に位置する安徽省南部の都市である。一万トン級の船が出入りし、四〇余の国と地域と繋がっている。農産・漁獲は豊か。名刹広済寺と中江塔で知られる。人口は約二一五万人。

高知市は、慶長六(一六〇一)年、関が原の戦いに勲功のあった山内一豊が封じられて入国し、築城してから四〇〇年、南国土佐の城下町として栄えてきた。明治二二(一八八九)年に市制に。幕末の坂本龍馬はじめ、明治民権運動の板垣退助、中江兆民、科学者の寺田寅彦、牧野富太郎などを輩出している。夏の「よさこい祭り」は有名である。人口は約三二万人。

提携後の友好交流は教育、環境、港湾、新聞、中小企業、観光、茶道などの分野に及び、とくに書道交流は提携記念交流展以来、隔年に双方で開かれている。九三年には蕪湖市鏡湖畔に「蕪湖・高知友好会館」が完成した。経済技術開発区には、エアコンの日立家用電器や刃物製造の蕪高産業などが進出している。 

 二〇周年に当たる二〇〇五年五月には、蕪湖市から代表団を迎え、記念式典のほか「蕪湖展」や「書道交流展」を開催した。高知市内の「蕪湖園」には「一衣帯水」モニュメントが寄贈された。(二〇〇八年九月・堀内正範)